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「こんな工程が加わっているとは思いもしなかった」。FMV Note Cのデザイナーも驚愕する作業を体験~島根富士通でパソコン組み立て教室を開催

 富士通クライアントコンピューティングは、2025年8月23日、島根県出雲市の島根富士通において、「第18回富士通FMVパソコン組み立て教室」を開催した。イベントでは小学校5年生~中学校3年生までの親子21組が参加。「FMV Note C(FMV WC1-K1)」の組み立てに挑戦した。

 島根富士通の宮下浩之社長は、「今日は、モノづくりの楽しさとともに、難しさも体験してほしい。だが、社員がサポートするので、安心して挑戦できる。今日、組み立ててもらうFMV Note Cは、若い人たちに向けて開発した新たなPCである。そのコンセプトやこだわりも知ってもらい、モノづくりの大切さ、技術のすばらしさを体験し、未来の夢や希望、将来のきっかけになることを期待している」と語った。

パソコン組み立て教室が行なわれた島根富士通
島根富士通で開催する組立教室は今年で18回目だ
参加者を迎えた島根富士通の宮下浩之社長と、地元のゆるキャラであるあらエッサくん、やがみちゃん
正午をすぎると参加者が訪れはじめた
組み立て教室の参加者たち。21組の親子が参加した
組み立て会場に入る参加者たち。社員が迎えた
開会の挨拶をする島根富士通の宮下社長

 抽選で選ばれた21組が参加。島根県内から9組が参加したほか、東京都や神奈川県、愛知県、大阪府、兵庫県、広島県から参加した親子もいた。男子は16人、女子は5人。また、小学校5年生が3人、6年生が9人、中学1年生が5人、2年生が2人、3年生が2人だった。

 島根富士通の生産ラインでは、232点の部品を使い、わずか13分でFMV Note Cを組みあげるが、組み立て教室では37点の部品と29本のネジを使い、作業を6分の1に簡素化して、90分間で組み上げることになった。

 組み立てたFMV Note Cは、13.3型液晶ディスプレイを搭載したA4ぴったりサイズのノートPC。大学生の利用を強く意識して開発したモデルであり、アルミの削りだしによるスタイリッシュなノイズレスデザインとともに、ファンレス構造を採用。持ち運びやすく、使いやすいのが特徴だ。

 CPUには、Core Ultra5 134U(12コア/14スレッド)を採用。16GBメモリ、256GB SSDを搭載する。参加費用は、13万4,800円で、組み立てたPCは後日配送される。

 本体カラーは3色のなかから選択が可能で、ミストグリーンを選択した親子が10組、エクルベージュが6組、スモークグレーが5組だった。

 今回の組み立て教室では、単にPCを組み立てるだけでなく、FMV Note Cの魅力を、子供たちに伝えることにも力を注いでいた。

 今回の組み立て教室のサブタイトルは、「ファンがない!とっても静かなノートパソコンを親子で作ってみよう!」としており、組み立てを開始する前に、FMV Note Cが静かなPCであることを説明。ファンレス設計のメリットや、それを実現するためのこだわりを紹介したほか、アルミの切削加工であることで、美しい形状を実現していることも訴求した。

 子供たちに分かりやすいように、「プレス加工はクッキーの型抜きのような作り方で、早くたくさん作れるが、美しく組み合わせられない。しかし、切削加工の技術は、ドリルで削る木彫りのクマみたいな作り方であり、時間はかかるが、複雑な形や美しい造形を作ることが得意である」と説明した。

FMV Note Cのデザインにかける思い

 組み立てが終了したあとには、FMV Note C ブランドマネージャーである富士通クライアントコンピューティング マーケティング本部クリエイティブセンター デザイナーの堀志織氏が、FMV Note Cのデザインのこだわりなどについて説明を行なった。

 FMV Note Cは、若手社員を中心に構成した「FMV From Zero Project」によって開発したPCで、堀氏はその中核メンバーの一人だ。

参加者にFMV Note Cのこだわりや、デザイナーの仕事について説明する堀氏
コンセプトモックも公開。ピンクカラーの試作も行なっていた

 「がんばる時間を心地よい時間へ。」をコンセプトに製品化したFMV Note Cは、大学生へのヒアリングを重ね、スペックやデザインを検討。PCを開けるたびに心がおどる「Noiseless Design」、静かな場所で、作業に集中できる「Comfortable Silence」、毎日の作業をもっとスムーズにする「Original Apps」の3点を、心地よさを実現するこだわりと位置づけている。

 堀氏は、「FMV Note Cは、20代の3人の若手社員が中心となって作られたPCである」と前置きし、「箱を開けるときの体験」、「毎日わくわくするPCの色」、「お気に入りの場所に持っていきたくなるPC」というFMV Note Cのデザインの考え方について説明した。

 「FMV Note Cは、専用箱を用意し、開けた時にきれいに収まっている状況を作りたいと考えた。これを島根富士通における手作業による梱包で実現している。また、PCのカラーは、白、黒、赤といったように、分かりやすい色が用意されることが多いが、FMV Note Cでは、あまり差がない微妙なニュアンスのカラーを採用した。そのため、購入時点で迷うという体験を楽しんでもらうことができる。

 さらに、外側と内側で色が違うバイカラーデザインとしたことで、開けるときにワクワクすることを狙った。持ち運ぶときには、快適な手触りにこだわり、ラウンドフォルムを採用。それを実現するためにアルミの切削加工を行ない、カバー1枚を作るのに1時間かけている。底面のネジ止めも斜めにすることで、なめらかできれいな仕上がりを実現している。こんなところにまでこだわったPCである」と解説した。

 電源ボタンは、押し間違いを防ぐためにほかのキーよりも重くしたり、上下の方向キーはつなげているため、ほかのキーと形が違い、見なくても操作ができたり、キートップの文字は独自のオリジナルフォントを採用して、視認性を高めていることなども紹介した。

 また、デザイナーの仕事についても説明。「色や形を考えるだけでなく、使い方や伝え方を考えるのも、デザイナーの仕事である。使うところ、触るところ、見るところといった体験すべてに関わり、使う人にとって、より良い状態にするのがデザイナーの仕事である」とした。

 PCを作る仕事は、企画、開発、製造、保守、調達、プロモーション、営業と多岐に渡っていることらも触れ、その仲間の一人としてデザイナーが働いており、さまざまな部門の社員と相談しながら、筐体デザインや色、説明書などをデザインしているという。

 「FMV Note Cには、“こうだったらいいな”という気持ちがたくさん詰まっている。組み立て教室を通じて、FMV Note Cの良いところが皆さんに伝わっていたらうれしい」と語った。

こちらは初期段階に3Dプリンタで作り上げたモック
電源ボタンだけ押し下げの力を重くしているという
FMV Note Cの上下キーは一体化している
キートップの文字はオリジナルフォントを採用し、視認性を高めている

 組み立て教室では、約90分間で、組み立て作業が完了。最後に参加者全員で電源スイッチを入れたところ、すべてのPCが無事に稼働。会場からは歓声とともに、大きな拍手が湧いた。

動画編集体験や工場見学も

 その後、参加者は、完成したPCを使って、動画編集に挑戦。地元TV局の山陰中央テレビの映像制作子会社であるTSKエンタープライズDCのスタッフの指導によって、出雲をPRする動画を作成した。

 さらに、工場見学を行ない、生産ラインの横では、島根富士通の社員とネジ締め競争を行なうイベントも開催された。

 閉会の挨拶を行なった富士通クライアントコンピューティング 執行役員常務 コンシューマ事業本部長の高嶋敏久氏は、「今日、作ったPCは、相棒として大切に使ってほしい」と参加者に呼びかけたあと、同社の取り組みについて説明。「富士通クライアントコンピューティングは、PCの企画、開発、生産までをすべて国内で行なっている。出雲で作ることで実現できる品質や、モノづくりへのこだわりがある。2025年1月には、FMVをリブランディングした。これまでの富士通PCという訴求から、FMVを前面に打ち出すことに変更している。ぜひ、FMVというブランドを覚えてほしい」と語った。

TSKエンタープライズDCによる動画編集教室
親子が一緒になって動画作業を進めた
ブリント基板製造ラインを見学する参加者たち
島根富士通のブリント基板製造ラインの様子
参加者と島根富士通の社員によるネジ締め競争を行なった
島根富士通のネジ締めの匠は同じ時間内に2倍となる20本のネジ締めを行なうハンデ戦
やがみちゃんも応援
閉会の挨拶する富士通クライアントコンピューティング 執行役員常務 コンシューマ事業本部長の高嶋敏久氏

 今回の組み立て教室では、子供たちに混じって、FMV Note C ブランドマネージャーの堀志織氏も参加し、自ら組み立てに挑戦した。さらに、作業の途中からは、高嶋執行役員常務も急遽参戦。堀氏は自らがデザインしたFMV Note Cの組み立て工程に、想像を超えた異例ともいえる手法が用いられていることに、「こんな工程が加わっているとは思いもしなかった」と驚きをみせ、その作業に苦戦する一方、高嶋執行役員常務は、細かい部分にまで組み立ての工夫が施されていることを体感。組み立て作業をサポートした社員から、部品の取り付けが正しく行なえていることを確認され、「OKです」と言われ、安堵の表情を浮かべるシーンもあった。

 今回の組み立て教室では、高嶋執行役員常務と、堀氏の組み立てに密着してみた。

FMV Note Cの組み立てに挑むデザイナーの堀氏
工場内で部品配送に使用している無人搬送車(AGV)が「石見神楽Ver」に変身して、大型部品を届けた
島根富士通が新たに導入した自律走行搬送ロボット(AMR)もお披露目した
大型部品が入った箱を受け取る堀氏
大型部品が入った箱の中身
さまざまな種類のネジを使って組み立てる
まずはアースバンドを装着
Dカバーを取り出す
メインボードのネジ締め作業からスタート。メインボードには約1,300個の部品が搭載されているという
筐体の縁の部分は段差を持たせた構造により強度を高めている。アルミ切削加工ならばの構造。黒い部分は放熱用シート。大きなシートを採用し、アルミに熱を放出する
中央にある突起はCカバーを支え、キーボードのたわみを防止するという。削り出しならでは構造の1つだ
こちらは温度センサー。アルミ筐体の温度を計測し、制御する
次の作業はSSDとDカバーを、金具を使って固定する
SSDをネジで固定する
CPUの上に注射器でコンパウンドを塗布
富士通クライアントコンピューティング プロダクトマネジメント本部の小中陽介本部長代理がコンパウンド塗布の作業に参加
ヒートシンクの取り付け作業。ファンレス構造であることがわかる
ヒートシンクをネジで固定する
バッテリの取り付け作業の様子
バッテリ部分にさまざまなロゴを表示。これにより筐体にロゴマークを貼付しないように工夫したという
Dカバーの中央部にあった突起はバッテリの間を通してCカバーを支えることになる
バッテリの取り付け作業ではシート治具を使って斜めにして作業を行なった。これは実際の組み立て工程でも使用している工夫の1つだ
Dカバーへの組みつけが完了したところ。ここで約10分間の休憩
後半の作業開始にあわせて、高嶋執行役員常務が急遽参戦。液晶ディスプレイの取り付け作業からスタート
ヒンジ部をネジ止めする。ケーブルを挟み込まないように注意して作業
幹部が集合して高嶋執行役員常務の作業を見守る。(後列左から)島根富士通の山根淳副社長、島根富士通の宮下社長、FCCLの小中本部長代理
メインボードにディスプレイのケーブルを接続する。細かい作業に苦戦する高嶋執行役員常務
作業をサポートする島根富士通の錦織舞さんが接続をチェック。「OKです!」の言葉に安堵する高嶋執行役員常務
ケーブルを固定する金具をネジ締めする
続いてケーブルの配線作業を行なう。メインボードと金具の間に押し込むように作業する
バッテリケーブルを接続する
バッテリケーブルのコネクタ接続を曲げた構造としているのは、振動を加えてもケーブルが抜けにくくするための工夫だ
Cカバーを取り出す
タッチパッドケーブルの接続作業
タッチパッドケーブルは折り曲げてテープで固定する
キーボードケーブルの接続作業を行なう。まっすぐに差し込む
部品の組み込みとケーブルの接続作業が完了したところ。ほぼ完成したように見えるが、このあとに驚きの作業が待っていた
今回の作業で最も難しいとされた作業が始まる。まずはCカバーをDカバーの端から、2mm手前にずらして置く
続いて、左でF3、F4、F5キー、右手でF9、F10、F11キーを押しながら、カバーをスライドさせる。間違えて電源ボタンを押さないように注意する。デザイナーのこだわりで、上下に段差がない形でカバーを重ねるために用意された異例の組み立て方法だ
この作業がうまくいかず、堀氏は大苦戦。堀氏自らデザインしたFMV Note Cの組み立てに、「こんな工程が加わっているとは思いもしなかった」と驚きの様子
今度は高嶋執行役員常務が挑戦。毎日、この作業を行なっている錦織さんは、「慣れると簡単ですよ」と横から余裕のコメント
なんとか完成。次はCカバーをDカバーにはめ込む。パチンというまで押し込む。押し込む場所は全部で5カ所
カバーのネジ締め。ラウンドフォルムを実現するためにネジは斜めから行なうというこだわりだ
堀氏は「斜めのネジ締めは、大変だろうと思ったが、意外にスムーズにできた」と感想。しかし、実際の現場では電動ドライバーを用いており、まっすぐネジ締めを行なうことに慣れている錦織さんは逆に難しい作業だと述べていた
これで組み立ては完成。電源ケーブルを差し込む
参加者全員で電源ボタンを入れる
FMVのロゴが表示され、無事に起動した
完成したFMV Note Cを前に記念撮影。高嶋執行役員常務は、「生産ラインは何度も見ているが、実際に組み立て作業をしてみて、これらの作業を短時間に行なう島根富士通の社員のすごさを感じた。匠の技によって作られていることを実感した」と語っていた