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面倒な月末処理はAIに丸投げダー!Microsoft 365 Copilotの自動化エージェントが登場へ

MicrosoftのCopilot Studioを利用すると、Microsoft 365向けに自動化エージェントをノーコードで作成、カスタマイズが可能

 Microsoftは21日、ロンドンで開催しているイベント「AI Tour」において「Microsoft 365 Copilot」および「Dynamics 365」(顧客関係管理などの機能を持つ基幹システム統合型ビジネスツール)向けの新機能として「autonomous agents」(自動化エージェント)を、11月よりプレビュー提供を開始すると発表した。

 Microsoft 365 Copilot向けのautonomous agentsは、企業向けに独自のCopilotをノーコードでカスタマイズできる「Copilot Studio」の新機能として今年(2024年)5月に開催されたMicrosoft Buildで発表されたもの。生成AIの機能を利用して企業のビジネスプロセスを自動化して、ビジネスパーソンにとっては無駄な時間を消費して得るものが少ない事務仕事などをAIが肩代わりしてくれる機能になる。

無駄な時間ばかりかかる事務仕事、データ処理などの作業を自社の業務に合わせてAIが自動実行するエージェントを作成

自動化エージェントにより、ワークフローが自動処理されて最後外部の協力業者に外注するメールを出すまで自動化されているデモ

 Microsoftは昨年(2023年)よりOpenAIとの協業の枠組みを積極的に活用して、生成AIの機能を積極的に同社製品に取り込んでいる。その中でも、企業向けの生産性向上ツールであるMicrosoft 365のオプションプランとして提供されている「Microsoft 365 Copilot」は、ビジネスユーザーの生産性を向上させる生成AIとして注目を集めている。

 生成AIというと、プロンプトに何かを入れて生成AIが答えるという形のチャットボット的な機能が連想されると思うが、実は一番便利なのは、人間がしている何か(たとえば事務仕事など)を生成AIに代わりにやってもらうことで、人間は別のことをやることで業務効率を上げることだ。

 たとえば、時間だけがかかって実益が少ない仕事の代表と言えば、月末の経費精算とか、請求書の作成、送付などではないだろうか。我が国でも法律が整ってきたことで、それらの仕事のデジタル化が始まっているが、それでもまだまだ人間がやらないといけないことが多い。経費申請で言えば、領収書のデジタル保存には対応が進んでいるが、領収書の内容を人間が手入力して、それを上司にメールで回して承認をもらって……といった非効率なシステムになっているところも少なくないだろう。

Copilot Studioでカスタマイズしている様子、トリガーとなる条件を設定している
生成AIが正しい判断を下せるように、その情報ソースとなるファイルを指定してより正確な判断をしてもらえるようにする
作成した自動化エージェントをレビューしたりも可能

 そうしたことを解決するMicrosoftのソリューションが、Microsoft 365 Copilotをローコードもしくはノーコードでカスタマイズする「Copilot Studio」向けの新機能になる自動化エージェントで、そうした非効率な業務プロセスなどを自動化してできるだけ人間の介在を少なくする仕組みだ。

 前出の領収書処理の例で考えれば、領収書を読み込んで、支払先、金額などを自動で読み取って文字に変換して経理システムへの申請、上司の申請承認リクエストなどのプロセスを自動化しておけば、ユーザーは領収書をシステムに投げるだけで経費申請を終えられる。そうした自動化のプロセスを行なう自動化エージェントを、Copilot Studioで作成して従業員に提供できれば、業務の効率化が実現できる。

 また、ビジネスの現場ではMicrosoft 365 Graphなどのグラフィックツールを利用して、データの見える化をしているビジネスパーソンは少なくないだろう。そうしたユーザーも、毎月データを取り出して集計したりしていたと思われるが、自動化エージェントを使えば、このデータを毎月決まった日に作ってという指示さえ出しておけば、自動的にデータが作成することが可能になる。

 ほかにも、新しい従業員を雇用した時には、ここのサイトから社員バッジの作成申請やビジネス用のPCやスマートフォンの申請などを人間が入力し、それをIT管理者が手動で手配していたと思うが、自動化エージェントを利用すると、Entra ID作成をIT管理者が行なえば、あとは自動化エージェントがPCやスマートフォンの発注から発送手配までを自動で行ない、従業員の手元に自動でPCが届くというシステム構築も可能になる。

 Microsoftによれば、Clifford Chance(法律事務所)、McKinsey & Company(コンサルティング企業)、Pets at Home(英国のペット用品小売事業者)のような企業が既にCopilot Studioの自動化エージェントを業務に導入しており、売り上げを増やし、コストの削減を実現しているという。

Dynamics 365向けには10個の新しい自動化エージェント機能を提供、年末からプレビュー提供

Dynamics 365のSales Qualification Agent

 Microsoftが提供するDynamics 365は、基幹システム、顧客関係管理などの機能を持つ統合型ビジネスツール。そのDynamics 365にも自動化エージェント機能が追加されるが、今回のAI TourではDynamics 365向けに10個の新しい自動化エージェント機能を提供することが発表された。

 そのうち代表的なのが「Sales Qualification Agent」(セールス条件エージェント)、「Supplier Communications Agent」(供給事業者通信エージェント)、「Customer Intent and Customer Knowledge Management Agents」(顧客要望・顧客情報管理エージェント)の3つになる。

 Sales Qualification Agentは顧客にパーソナライズされた電子メールを送る、適切な価格調査などを通じて、顧客に販売する機会を最大化するなどのセールス活動を自動化するエージェント。Supplier Communications Agentは、サプライヤーの成績や納期の達成率などを自動で追跡することで、サプライチェーンの効率とコストを最適化するためのエージェント。Customer Intent and Customer Knowledge Management Agentsは、カスタマーサービスを最適化するエージェントになる。

 Copilot Studioによる自動化エージェント機能は、5月に行なわれたMicrosoft Buildで発表しクローズドベータテストが行なわれてきたが、11月にシカゴで開催される「Microsoft Ignite」に合わせてそのプレビュー版の提供開始が行なわれる計画だ。

 また、Dynamics 365の自動エージェント機能は、年末から来年(2025年)の初頭にかけてパブリックプレビューとして提供される予定だ。