ニュース

経験から社員に!?世界最軽量PCを作る「富士通FMVパソコン組み立て教室」

 島根県出雲市の島根富士通は、2024年8月24日、小中学生を対象とした「富士通FMVパソコン組み立て教室」を開催した。

 今回で17回目となる夏季恒例のイベントで、今年は20組の親子が参加。14型ワイド液晶搭載ノートPCとして世界最軽量の約689gを実現した「LIFEBOOK WU-X/H1」と、バッテリが64Whの軽量モデル「LIFEBOOK WU2/H1」のいずれかを組み立てることができた。両機種とも、インテルCore i5、16GBメモリ、256GB SSDを搭載。参加費用は12万4,800円。組み立てたPCは、検査後に配送される。

 参加者は、小学校5年生が5人、6年生が5人、中学校1年生が3人、2年生が1人、3年生が6人となったほか、島根県内からの参加は8人。東京都や千葉県、愛知県、広島県、大阪府、兵庫県、福岡県からも参加した。

 また、「LIFEBOOK WU-X/H1」が12人、「LIFEBOOK WU2/H1」を8人が選択。LIFEBOOK WU-X/H1は天板カラーがブラックだけだが、LIFEBOOK WU2/H1は3色から選択ができ、内訳は、グレーが2人、ブラックが3人、ホワイトが3人となった。

 午後1時からスタートした組み立て教室では、冒頭に富士通クライアントコンピューティングの大隈健史社長が挨拶。「島根富士通は、日本でPCを生産している工場では一番大きく、一番進んでいる。その場所でみなさんにPCを作る体験をしてもらう。島根富士通を感じてもらい、ひと夏の思い出にしてほしい」と述べた。

島根県出雲市の島根富士通
前日午後3時30分から会場の準備を開始
準備は順調に進んでいった
テーブル1つ1つに工具やケーブルなどを配置する作業が進む
メインの看板も運び込まれた
部品を運ぶためのAGVの設定も開始
石見神楽の「やまたのおろち」をテーマにした装飾を行なう
開催当時の受付の様子。島根県内の参加に加えて、県外からも多くの親子が参加した
今年の組み立て教室では、ふくまろが大活躍した
地元のキャラクターがお出迎え。(右から)島根県観光キャラクターのしまねっこ、安来市のあらエッサくん、湯の川温泉のやがみちゃん
ゆるキャラと記念撮影する親子が多かった
教室が始まるまではショールームを自由に見学。細かい部品がと搭載された基板に子供たちも興味津々
参加した20人の小学生、中学生たち
いよいよ組み立て教室の会場へ
参加者を迎える富士通クライアントコンピューティングの大隈健史社長(一番左)や島根富士通の神門明社長(左から2人目)
組み立て作業をサポートする先生を務める島根富士通の社員
組み立て教室の進行は島根富士通の社員が担当した
挨拶する富士通クライアントコンピューティングの大隈健史社長

 今回の組み立て教室では、富士通クライアントコンピューティング入社5カ月目の浜辺舞鈴さんの協力を得て、組み立て作業を行なってもらった。実際の製造ラインでは258点の部品を13分で組み立てるが、組み立て教室では41点の部品を90分間で組み上げることになる。

 組み立ての様子を写真で追ってみる。

取材に協力してくれた富士通クライアントコンピューティングの浜辺舞鈴さん
パーツが入ったボックスを、やまたのおろちを模したAGVが牽引して登場
パーツが入ったボックスを受け取る
ボックスのなかには大きな部品が入っている
Cカバー。ここに部品を組み込んでいくことになる
Cカバーにはキーボードなどが組み込んである
マザーボード。世界最軽量PCを支える心臓部だ
天板。LIFEBOOK WU-X/H1の天板カラーはブラックだけ
天板にはすでに液晶パネルが搭載済み
バッテリパック
裏面のDカバー
SSDなどの部品も用意されている
組立に使用するネジ。さまざまな種類のネジがある
手袋を装着し、エプロンも着用する
続いてアースバンドを装着し、準備は完了
最初に取り出したのがCカバー
キーボードの裏面部のネジを5本締める。生産ラインではこの部分だけで74本ものネジが使われている
最初の作業に使われるネジが、今回の作業のなかで最も小さいネジ
想定外の小ささにいきなり大苦戦
続いてマザーボードを取り出す
マザーボードの取り付け作業
コネクタまわりを固定する金具を取り付ける
金具をネジで固定する
キーボードフレキをマザーボードに接続する
フレキケーブルの接続作業が続く
細かい作業の連続だ
スピーカーケーブルを接続。ここで前半が終了
休憩時間には、しまねっこが応援に駆け付けて、ダンスを披露した
大隈社長も、しまねっこと記念撮影
後半戦がスタート。ここから大隈社長が組み立てに参戦
液晶パネルケーブルの整線から開始。ヒンジ金具を手前に倒す
液晶パネルを本体に取り付ける。ケーブルを挟み込まないように注意
無事に取り付けができた
液晶パネルのケーブルを接続する
社長の作業を、横で新入社員が見学するというなかなか見られない構図
液晶パネルケーブルに続き、カメラケーブルの接続が完了
作業場所や作業のコツなどは島根富士通の社員がサポート
ヒンジ部をネジで固定
細かい作業も順調にこなす大隈社長
ヒンジ部のカバーを取り付ける
液晶パネルの取り付け作業が終了し、笑顔をみせる大隈社長
作業は再び浜辺さんにバトンタッチ。SSDの取り付けを行なう
SSDをネジで固定する
バッテリの取り付け作業
ドライバはほとんど使ったことがないという浜辺さんだったが、ネジ締めにも慣れてきた
Dカバーを取り出して、スピーカーケーブルを接続する
組み込み作業がすべて完了したところ
Dカバーを取り付ける
Dカバーを、10本のネジを使って締める。広報の大塚恭恵さんも作業に参加
子供たちの作業にも熱が入る。この作業だけは保護者が手伝ってもいいことになっていた
最後に本体の歪みを防止するための特別なネジを2本締める
最後の1本のネジを笑顔で締める浜辺さん。これで作業が終了かと思いきや……
油断をしたのか、最後のネジでネジ山を潰すという大失態
最後のネジは島根富士通の社員がしっかりと締め付けた
液晶パネルのシートを取り外して、いよいよ起動の瞬間に
参加者全員で一斉に起動ボタンを押した
無事にPCが起動した
起動したPCの壁紙には参加者の写真が表示された
最後に記念撮影
大隈社長も記念撮影に参加
今年は動画編集に挑戦。専門企業のスタッフが作業をサポートした
テーマは「WE LOVE IZUMO」。出雲良さを伝える15秒CMを制作した
オープンニングの撮影から開始。元気よく「WE LOVE IZUMO」と叫ぶ
ビデオ編集ソフトを使って作業を進める。自ら作り上げたばかりのPCで作業する
操作が分からないところはスタッフが教えてくれる
あらかじめ用意された出雲に関する画像データを組み合わせて時間内に完成させた
FMVに搭載されている「ふくまろ」と会話して、AIを体験する「ふくまろ交流」
工場内に場所を移動して「匠と勝負!ネジ締め競争」を開催
20本のネジを締めるのに36秒という匠が登場
大隈社長も参加したが、子供に負けてしまう結果に
約4時間に渡る組み立て教室が終了。最後は社員がお見送り
しまねっこもお見送りに参加

組立教室を経て社員になった

 組み立て教室終了後、富士通クライアントコンピューティングの大隈健史社長と、島根富士通の神門明社長がインタビューに答えてくれた。

 大隈社長は、自らの組み立て作業の様子を振り返り、「作業はばっちりで、スムーズにできた。2年前に参加したときにはネジの締め加減が分からなかったが、今回はそのあたりの加減も間違いない」と笑いながら回答。

 「参加者の笑顔を見ることができ、いいイベントを開催できた。自分で作ったPCに電源が入り、画面が表示されたときに、パーッと顔が明るくなる様子を見て、やって良かったと改めて感じた。また、私自身にとっても、普段は、PCの中身に触れる機会が少ないが、自分たちが売っているPCの中身を確認したり、微細化や軽量化へのこだわりが、細部にまで行き渡っていることを再確認したりできる機会になった」とコメントした。

 さらに、「私は、小学校のときにはミニ四駆を改造したり、中学校では自作PCを作ったりした経験があるが、いまの子どもたちはモノづくりの機会が減っているように感じる。参加者には、純粋に日本のモノづくりのすばらしさを体験してもらい、『工場ってこんな風になっているんだ』、『PCの中にはたくさん部品が入っているんだ』ということ知ってもらうことに意味がある。プラスして、富士通クライアントコンピューティングや島根富士通の良さを知ってもらえばいい。これは、日本に生産拠点を持っている企業の責任の1つだと考えている」と述べた。

 そして、「できることならば、富士通クライアントコンピューティングの全社員に組み立てを体験させたい。コロナ禍で止まっていた新入社員の組み立て実習をすでに再開しており、今年(2024年)11月に実施する予定だ。モノづくり企業の私たちは、机上で資料を見ているだけでは駄目だ。現場でどんなことが行われているかを理解した上で、商品企画や開発、販売といった仕事に従事すべきである」と語り、「来年の組み立て教室も、機会があれば挑戦したい」と、大隈社長自らも再度組み立てに挑む意思を示した。

富士通クライアントコンピューティングの大隈健史社長
島根富士通の神門明社長

 一方、島根富士通の神門社長は、「小中学生にモノづくりの楽しさを知り、興味を持ってほしいということから、夏休み期間中に親子で参加できる組み立て教室をスタートした。工場見学を通じて、日本の出雲で、PCが作られていること、そこで磨き上げられてきたモノづくりの素晴らしさを体験してもらうことができる」とし、「これまでは、学校でのPC利用の広がりなどにあわせて、プログラミングの学習を併催してきた。だが、今年の組み立て教室では、学校では教えてくれないことをやろうと考えて、約30分間の動画編集教室を組み込んだ。作る楽しさとともに、使う楽しさも体験してもらえる場にしている。動画編集は、画面が大きく、高い性能を持つPCだからこそできる作業の1つでもある」と述べた。

 神門社長も、小学校時代には、年齢が1つ違う兄と、飛行機やカヌーを作っていたという。「考えて、手を動かして、モノを作り、失敗をして、また考えるという体験をしてきた。飛行機は空を飛ばないし、カヌーは何度も沈没する。だが、そこにモノづくりの楽しさがある。組み立て教室では、ここ数年、世界最軽量のノートPCの組み立てに挑戦してもらっている。島根富士通の社員にとっても組み立てが難しいPCに、小中学生にも挑んでもらうことが、モノづくりのいい体験になる」と語った。

 今回の組み立て教室では、参加者全体のPCが無事に起動した。

 実は、島根富士通の中には、子供の時に、組み立て教室に参加したことがあり、その後、社員になったケースがある。今年の入社エントリーの中にも、組み立て教室の参加経験者がいるという。さらに地元の小学校の社会科見学で島根富士通を訪問し、その経験から今回の組み立て教室に参加した子供もいるという。こうした組み立て教室などをきっかけにして、モノづくりに対する関心を高めたり、島根富士通に興味を持つという子供姿も見られているというわけだ。