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Qualcomm、次世代AI PC向けアプリ開発環境「Snapdragon Dev Kit for Windows」

Snapdragon Dev Kit for WindowsはSnapdragon X Eliteを搭載した開発環境

 Qualcommは、Microsoftが5月21日~5月23日(現地時間)に米国ワシントン州シアトルで開催する「Microsoft Build」に合わせ、Snapdragon X Eliteなど40TOPS以上のAI処理能力を持つNPUを搭載した「次世代AI PC」に向けたアプリケーションを開発するための開発環境として「Snapdragon Dev Kit for Windows」を提供開始すると発表した。

 また、AIアプリケーション開発環境「Qualcomm AI Hub」を、PC上でAI推論処理を行なうAIアプリケーションの開発向けにも活用できるように拡張を行なったことを明らかにした。

比較的低価格に入手できる開発キット

ポート類などは従来のWindows Dev Kit 2023と同じようなポートが用意されており、開発者の利便性に配慮している

 Qualcommは、Snapdragonブランドで、Windows on Arm(WoA)と呼ばれるArm版Windowsに対してSoCを提供している。WoAは、Windowsデバイスの大部分を占めているx86プロセッサとは、ISAが異なっており、x86 ISAに向けて書かれたソフトウェアは、OS上でArm ISAからx86 ISAへ変換されて実行されている。

 もちろんそうした変換でも動作することは動作するのだが、性能面では不利になるので、いかに早くArmネイティブに対応したアプリケーションを増やせるかが普及する上で大きな課題になっている。

 そこで、Qualcommは、ArmネイティブのWindowsアプリケーションを開発するユーザーに開発キットを提供している。というのも、Arm版Windowsを搭載したデバイスはノートPCの形状になっており、キーボードやディスプレイも含まれているため、開発環境としてはやや高価すぎるからだ。

 昨年(2023年)のBuildで発表された「Windows Dev Kit 2023」では、SoCにSnapdragon 8cx Gen 3、32GBメモリ、512GBストレージという構成のミニPCで、Arm ISAのWindowsアプリケーションを開発して、デバッグなどを行なうことが可能になっている。米国では599.99ドル(日本では9万9,800円)という価格で販売されてきた。

SoCにはSnapdragon X Eliteを搭載している
USB Type-Cポートなどを利用して2ディスプレイ構成で利用も可能

 今回発表されたSnapdragon Dev Kit for Windowsも用途としては同じだが、SoCがSnapdragon X Eliteに強化され、ArmネイティブのWindowsアプリの開発だけでなく、同時にMicrosoftが次世代AI PCと呼んでいるCopilotのオンデバイス実行を行なうAI PC向けのAIアプリケーション開発にも活用できることが大きな違いとなる。

 Microsoftは次世代AI PCの要件として、NPU単体のAI処理性能に40TOPSを求めており、現状、市場で手に入るWindowsが動作するSoC(AMD、Intel、Qualcomm)で、NPU単体で40TOPS以上の要件を満たすのがQualcommのSnapdragon X Eliteだけだからだ。

 そうした次世代AI PC向けアプリケーションの開発を40TOPS以上のNPUで確認したい開発者にとってはSnapdragon Dev Kit for Windowsは見逃せない選択肢となりそうだ。

 Qualcommによれば、米国では既に本日よりプリオーダーが始まっており、価格は899.99ドル(1ドル=156円換算で14万398円)が予定されている。2023年モデルはMicrosoftから販売されていたため、Snapdragon X Elite搭載の新モデルもMicrosoft経由で提供される可能性が高い。

Qualcomm AI HubがWindowsのオンデバイスAIアプリケーションの開発に対応、簡単に次世代AI PC向けのアプリを構築

Qualcomm AI Hub

 Qualcommは以前からSnapdragonを搭載したAndroidデバイス向けのソフトウェア開発環境として「Qualcomm AI Hub」を提供してきた。今回QualcommはSnapdragon X Eliteを搭載した次世代AI PCが登場することに合わせて、Qualcomm AI HubをWindowsデバイス上でのオンデバイスAIアプリケーション開発にも拡大したことを明らかにした。

 Qualcomm AI Hubではオープンソースの生成AIファウンデーションモデル、Hugging FaceやGitHubでも提供されているようなファウンデーションモデルがSnapdragonに最適化された形で提供される。PyTorch、TensorFlow、ONNXなどの主要なフレームワークに対応しているほか、バイナリのコンパイルまで簡単にWindows上でオンデバイスAIを実現するアプリケーションを開発することができるようになる計画だ。