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Lenovo、側面排気がなくなったのに冷却性が向上したゲーミングノート「Legion」の秘密
2024年3月28日 11:32
Lenovoは27日(タイ時間)、タイの首都バンコクにおいてメディア向けイベントを開催し、AI PCを実現する礎となるCore Ultraプロセッサを搭載したスリムノート「Yoga」シリーズ、およびゲーミング向けの「Legion」、「LOQ」シリーズを展示した。本記事ではLegionとLOQシリーズを紹介する。
イベントでは多くのゲーミングノートが展示されたが、いずれもCESなどで発表済みとなっているほか、「Legion 7i(16", Gen 9)」、「Legion 5i(16", Gen 9)」、「Legion Pro 7i(16", Gen 9)」の3製品が日本ですでに発売済み。そこでこの記事は基調講演や後に行なわれたインタビューの様子を交えつつ、LegionとLOQシリーズについて改めておさらいしたい。
ゲーミングノートの最重要ファクタは放熱
今やゲーミングノートにおいてもっとも重要となっているテーマの1つが「放熱」だ。CPUやGPUといったプロセッサから十分ゲーム性能を引き出したいと思うのであれば、より高クロックで回せば良いのだが、高いクロックで回すには電力が必要で、電力が増えると必然的に熱も増加する。
そうした熱をしっかり処理できなければPCは不安定になったり、性能が低下する原因となるわけだが、手っ取り早く放熱性を向上させる手段がヒートシンクやファンといった冷却機構の大型化。しかし冷却機構が大型化すれば必然的にノートPC全体として重量や厚みが増えることとなり、現実的ではない。
そのため「限られた重量や厚さの中で冷却性を向上させることが課題であり、その解決に向けて設計を行なってきた」と、ゲーミング製品担当のClifford Chong氏(Category Manager (Gaming), Consumer business, PCs and Smart Devices, Lenovo AP)は語る。
そこで今回のLegion 7i、Legion 5i、LOQシリーズでは「ColdFront Hyper」と呼ばれるユニークな冷却機構を採用。ゲーミングノートにおいて、他社や従来製品含めて、一般的にはヒートシンクや排熱口を増やしていくことで性能向上を図っており、主に排気口を左右側面にも設けることで改善してきた。
しかしColdFront Hyperでは、底面の左右から吸ったエアフローを、背面のヒートシンク部、そして内部中央に吐き出すファンを採用した。内部中央はシーリング材でほぼ密閉した状態となっていて、そこにCPU/GPU本体、VRM(電源回路)、VRAMといったほかの発熱部品が集中しており、ヒートパイプもあるため、それらもエアフローによって冷やすようになっている。
これにより側面排気口を廃することに成功したほか、薄さと重量を維持しつつ、供給できる電力を増やしつつ、表面温度は2℃低下、ノイズは2dB低減できたという。
機種ごとの最大電力を具体的に見ると、LOQシリーズはPerformanceモードの電力が145W(従来から10W増)、Extremeモードの電力が160W(25W増)、Legion 5iではそれぞれ170W(10W増)、190W(30W増)、Legion 7iではそれぞれ145W(10W増)、175W(40W増)となった。一方でキーボードの表面温度や騒音などは従来より低下したという。
Legion 9iの水冷に隠されたもう1つの意義
基調講演では触れられず、インタビューでは台湾メディアがLegion 9iに搭載された水冷について質問がなされ、Clifford Chong氏はこれにも答えていた。
以前の記事でも触れた通り、Legion 9iは「世界初の水冷ゲーミングノート」であり、薄さや軽量性と性能の両立を図るために水冷を採用している。分解モデルでは、GPUを取り囲むVRAMの上を水路が通っていたのだが、Chong氏によればもう1つの狙いがあったという。
そもそもLegion 9iの水冷機構は極めてコンパクトで、水量も決して多いわけではない。この部分だけでは、大きく冷却性を向上させるようなことはしていないという。
しかしご存知の通り、ゲームにおいてGPU負荷は一定しているわけではなく変動的だ。たとえば爆発のシーンでは一時的にGPU負荷が上がる可能性がある。負荷が上がると当然GPU温度も上昇し、熱のスパイク(山)のようなものが発生する。こうしたスパイクに反応してGPUはクロックを下げるが、こうした挙動によりフレームレートが不安定となりカクつきの原因となるという。
水冷を用いることで熱のスパイクを抑え、温度変化をなだからにできる。こうすることで、クロックの大きな変動を抑えてフレームレートを安定化させているというわけだ。
AIとゲームの関係
インタビューでは、「AIとゲーミングの関係性」についても問われた。今回のイベントはIntelとMicrosoftも名を連ねており、クリエイター向けのYogaシリーズでCore Ultraを搭載したり、キーボードにCopilotキーを設けることでAI PCを実現することが背景にある。ところがLegionやLOQシリーズは第14世代Coreや第12世代Coreを搭載しており、直接関係ないように思える。
また、AIと言っても、ChatGPTのような会話ボットや、Stable Diffusionが代表するような生成AIが今のところはメインを占めていて、ゲームには直接関係なさそうだ。
これについてChong氏は「AIはまだはじまったばかりにしか過ぎない」という。「GDC(Game Developers Conference)では、AIを取り入れた次世代ゲームの可能性を見出すことができたが、そこではNPCとの会話にAIを取り入れる例が紹介された。
今のRPGなどのゲームはNPCと会話するにしても、セリフが固定であり、プレイヤーは与えられた会話の選択肢を選んで会話を進めるだけであった。しかしAIを取り入れた未来のゲーム中のNPCとの会話はチャットボックスになるだろう。プレイヤーは自ら言いたいことを入力してNPCと自由に会話し、その世界に結果を反映することができる。そうなればゲームの世界への没入感は一段と高まる」と示唆した。
さらにチャットボットや生成AIとは無縁だが、Legionシリーズにはマシンラーニングに基づいて開発された「AI Engine+」というAIチップを搭載しており、ゲーム中のFPS値を検出し、それに基づいて最適な性能を提供できるようシステムのチューニングを行なっているとのことだった。