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マウス、西日本修理拠点となる広島サービスセンターを本格稼働。その取り組みを追った
2024年3月21日 10:34
マウスコンピューターが、サービス体制を強化する。2023年11月に新設した西日本エリアの修理拠点である広島サービスセンターを本格稼働させるほか、新たに自営保守サービスを開始する方針を公表。コールセンターにおける受電率向上や平均応答時間の改善を目指す。また、広島市に開設した広島サービスセンターの様子を初めて報道関係者に公開した。
マウスコンピューターの軣秀樹常務取締役は、「マウスコンピューターは、『期待を超えるPC』を提供するために、長野県の自社工場で生産するMade in Japan、最適な1台を提供するJust for Youとともに、PCの困りごとに対して、24時間いつでも電話で相談ができるFull Supportを実現している。コールセンターは、お客様の不具合や課題を解決することが役割であり、サービスセンターは製品の不具合や問題を解決することが役割である。
2023年度に30周年を迎えたのに合わせて新たなことに挑戦しているが、その1つがサービス体制の強化であり、広島サービスセンターの設置になる。自社で運用している強みを活かして、次世代のコールセンター、次世代のサービスセンターを先導していきたい」と述べた。
本稼働する広島サービスセンターを訪れ、同社のサービスへの取り組みを聞いた。
コールセンター機能の分散
マウスコンピューターでは、修理を行なうサービス拠点として、埼玉県春日部市の埼玉サービスセンターと、新設した広島サービスセンターの2拠点体制を敷いている。また、問い合わせ対応を行なうサポート拠点として、沖縄県沖縄市の沖縄コールセンター、鳥取県米子市の米子コールセンターを持つ。2023年から埼玉サービスセンターでも約10人体制でコールセンター機能を併設。広島サービスセンターにも2024年夏に向けて10人体制でコールセンター機能を持たせる予定だ。
沖縄はコンシューマ向けサポートを中心に幅広く対応、米子はコンシューマ向けサポートとともに、eコマースの販売サポートを担当。埼玉および広島で法人向けサポートを担当することになる。
「コールセンター機能は、沖縄が主力だが、台風などの影響を受けやすいという特徴がある。コールセンターシステムのクラウド化により、在宅勤務でも対応ができるようにしたが、2023年8月の台風直撃により沖縄本島では約2日間に渡る停電が発生。受電率を大幅に下げたが、米子と埼玉がバックアップ体制を敷き、止めずに運用ができた。こうしたBCPの観点からもサービスセンターにコールセンター機能を持たせた。さらに、法人向け対応の充実や、販売数量の増大にあわせた問い合わせ体制の強化という狙いもある」とした。
コールセンターでは、電話、メール、LINE、AIチャットによる24時間対応を行なっており、問い合わせの50.9%が電話によるものだという。「夜中にオフィスにPCの設置工事を行なっている際にトラブルが発生し、電話で対応したという例もある。個人だけでなく、法人の深夜利用もあり、24時間対応は継続的に行なっていく。今後はAIの品質改善を進め、チャットボットの利用比率を増やしていきたい」とする。
コールセンターの主要指標
同社では、コールセンターの主要指標の進捗状況について公表した。かかってきた電話を受けつけることができた受電率は88.4%と、2022年度の73.7%からは改善しているが目標の90%には届いていない。また電話に出るまでの平均応答時間は61秒という実績であり、2022年度の144秒よりは改善しているが、45秒の目標には届いていないという。「受電率は上期が悪かったが、2023年9月以降は90%を達成している。改善の取り組み成果が出ている。平均応答時間も9月以降、改善がみられている」という。
また、最初の入電だけで解決する一次時解決率は19.8%と目標の20%にほぼ到達。対応した顧客の満足度に関するアンケートでは89.1点と高い評価を得ているという。
コールセンターでは、オペレータ同士や拠点間の連携強化、開発および品質、修理部門との連携強化のほか、対応品質の改善や障害情報の共有、技術勉強会を実施。2024年度からは、オペレータを支援するAI音声認識システムの導入を検討するという。「AI導入には遅れがある。他社に追いつけるようにAIを活用したい」と述べた。
一方、サービスセンターでは、2023年4月から標準品質保証を3年間に延長や72時間以内の修理完了、5年間の修理対応、法人サポートメニューの拡充を進めていることを示しながら、「今後は、法人向けPC事業の強化と、3年間標準品質保証の実施により、現在は半分以下となっている法人向け比率と無償修理対応比率が増加すると見ている。今後はいずれも半分を占めることになる」と想定。それに向けた体制強化を進めていくという。
主要指標の進捗状況をみると、平均修理納期が70時間となっており、前年実績の60時間から悪化している。だが、5年前までに販売した製品の修理可能率は99%を達成。修理を行なった製品が3カ月以内に再び不具合が発生し、再度修理を行なうことになる再返却率は5.10%と、前年実績の5.99%から改善した。
「平均修理納期では目標は達成しているが、前年実績よりも悪化しているのは、再返却率の改善に向けて、修理品質を重視したことが背景にある。修理したものが再返却されることはあってはならないことが前提だが、修理の際に不具合の状況が未再現となり、お客様の環境によってのみ不具合が発生するということもある。2023年度は、未再現率を減らすことに注力したため、結果として平均修理納期が延びた。だが、最終的には、質が高まれば、納期が短縮することにつながると考えている」とした。
軣常務取締役によると、修理を行なうPCのうち、ハードウェアの不具合は半分以下であり、BIOSやドライバといったソフトウェアに関わる不具合がかなりの比率を占めているという。そうした状況も、不具合の未再現率を減らすことの難しさにつながっているという。また、Windows 11のビルドが上がると、ソフトウェアや周辺機器がその対応に追いつかず、修理依頼が増加するケースが多いという。
着実に平均修理納期を短縮してきたマウスコンピューターだが、再返却率の改善、未再現率の削減という修理品質に改めて着目したこと、さらには新たな広島サービスセンターの設置などの新たな施策への取り組みが、現在の72時間以内の修理完了という体制を、60時間以内という次の水準へと引き上げるきっかけになるかもしれない。
サービスの拡充
一方、サービスセンターでは、センドバック修理やピックアップ修理といった通常修理サービスに加えて、持ち込み修理サービス、出張修理サービス、パーツ配送サービスなどにも対応。「顧客にとってなにが必要なのかを考えながらサービスメニューを拡充している」という。
また、法人向け導入支援サービスとしては、AutoPilot ID登録代行サービス、マスターイメージコピーサービス、評価用サンプルの貸し出し、ラベル作成サービスなどを用意。通常構成にはないPCの製造などを行なう専用カスタマイズサービスや、ダンボールやビニール袋などの梱包資材の使用を少なくしてほしいといった個別の要望に合わせた各種配送サービスも提供している。
今後は初期設定代行サービスを行なう計画も明らかにし、「まもなくリリースできる」とも述べた。
マウスコンピューターでは、同社初となるChromebookを市場投入することを発表しているが、「Windows PCとは違う修理ノウハウが求められている。Googleの指導のもとで、発売前から修理に対する準備をしているところである」と語った。
さらに、買い換えを促進するためのPC下取りサービスや、不要になったPCを有効に廃棄することを支援するPC買取りサービスを実施。2024年度からは買取りサービスにおいて、個別見積もりや他社PCの買取りも行なえるようにするという。
加えて、法人向けオンサイト修理を、埼玉サービスセンターおよび広島サービスセンターから直接行なえる仕組みも新たに構築する考えも明らかにした。
軣常務取締役は、「サービスセンターは、プロフェッショナルな集団であり続けることが求められており、新技術の知識から、はんだごての使い方まで幅広い学習を進めていく必要がある。また、生産拠点である飯山工場で実現しているペーパーレス化の仕組みをサービスセンターにも導入していく」と語った。
なお、同社サービス部門では、能登半島地震で被災した製品への特別修理対応を発表しており、マウスコンピューター製品およびiiyama液晶ディスプレイ製品を対象に、修理診断費用と修理作業費用を無料にしている。
新展開の自営保守サービス
新たに開始するのが自営保守サービスである。
品質管理や修理機能を持つ販売パートナーを対象に、自主保守契約パートナーを認定。全国規模で展開し、修理期間の短縮などにつなげるという
「現在、西日本エリアを中心に、全国13社と話し合いをはじめている。修理品質を高めるための教育体制もつくり、自営保守パートナーを着実に拡大していきたい。すでに、自社が販売したマウスコンピューター製のPCだけでなく、ほかのパートナーが販売したPCも保守をしたいという声がある。さらなる短納期を実現したり、地域ならではのつながりを活かした手厚いサポートを実現したりといったことを期待している。自営保守サービスを通じて、地域の雇用創出にも貢献したい」としている。
自営保守サービスによる比率を10%にまで拡大することで、修理品の移送期間が短くなり、迅速に修理作業を開始できるため、納期を短縮することにも直結。マウハコンピューター全体の平均修理納期の短縮にもつなげるという。
現在、マウスコンピューターのサービス本部の陣容は267人、そのうち、埼玉サービスセンターが124人、広島サービスセンターが24人、沖縄コールセンターが98人、米子コールセンターが21人となっている。都道府県別修理入荷状況をみると、広島サービスセンターが対応する西日本エリアは約3分の1を占めているという。
法人ユーザーを中心とした修理サービスの強化
今回、公開した広島サービスセンターは、西日本地区における修理サービスの強化を目的に、2023年11月1日から稼働しており、当初は、九州・沖縄エリアを対象にスタート。2024年4月からは、中国・四国にまで対象エリアに拡大し、2024年7月には大阪府を除く近畿へ展開し、2024年12月を目標に、大阪府を含む西日本エリア全体をカバーすることになる。現在は24人体制だが、これを50人規模に拡大する計画だ。
従来は、埼玉県春日部市の「埼玉サービスセンター」で、全国の修理をカバーしていたが、2拠点体制とすることで、法人ユーザーを中心にした修理サービスの強化を進める。
マウスコンピューターの広島サービスセンター長の亀井賢氏は、「広島サービスセンターは、エディオングループで販売していたマウスコンピューター製PCの専門修理拠点として、2007年から2人体制で稼働しており、直近まで8人体制で運用していた。
今回、約16年間の実績をベースに、西日本エリアをカバーする拠点に拡張することになった。旧拠点は廿日市にあったが、広島市内であればスタッフがそのまま通勤できる距離にあること、広島市の人口は119万人であり、地域採用にも有効であるというメリットがある」とする。
広島サービスセンターを設置したGLP広島IIは、2023年3月に竣工した新たな建屋であり、カフェテリアスペースやガーデンテラス、無人コンビニなどを用意。社員が働きやすい環境を整えているのが特徴だ。「晴れている日はガーデンテラスから宮島をみることができる」という。
また、物流センターとの一体拠点となっているため、佐川グローバルロジスティクスとの連携により、迅速な入出荷が可能になるメリットも活かす考えだ。
「埼玉サービスセンターから九州、中国、四国に輸送するには2日間を要していたが、広島サービスセンターからの輸送であれば1日で済む。返却日数の短縮とともに、輸送コストの削減も可能になる」という。
広島サービスセンター
広島サービスセンターは、JR広島駅から広島電鉄江波線に乗り、終点の江波駅から徒歩 約17分の場所にある。JR広島駅から車で移動すると約20分の距離にある。広島港に近い倉庫が立ち並ぶエリアで、広島高速3号線吉島インターチェンジからも近い。
4階フロアの1,080平方mを使用。埼玉サービスセンターの約半分のフロア面積となる。約6mの天井高を最大限に活用するためにネステナを設置しており、最大84パレットのスペースを確保。長期保管用部品なども在庫し、約7年間のサポートが実現できるほか、埼玉サービスセンターの保守部品や飯山工場で生産する際に使用する部品も在庫し、これまで契約していた外部倉庫を削減できるという。
広島サービスセンターの状況を写真で追ってみる。
サービスセンターの取り組み
一方、サービス本部の働き方改革および休み方改革の取り組みについても触れた。
コールセンターでは、2022年からクラウド化を進めるとともに在宅勤務を促進。さらに、フレックス制度が取り入れにくいという点を考慮し、これまでの半日単位から1時間単位で有給休暇を取得できる仕組みを独自に用意。子供の迎えや送り出しなどに活用する社員が多いという。
マウスコンピューターの軣常務取締役は、「コールセンターのテレワークには積極的に取り組み、働きやすい環境を整えながら、障がい者雇用も促進していきたいと考えている」と述べた。
さらに、従業員の健康増進および健康維持を重視。インフルエンザ予防接種支援を家族にまで拡大したり、健康診断費用補助を用意したりといった制度もある。また、女性活躍の場を作るために、厚生労働省が推進する子育てサポート企業を対象にした「くるみん認定」を取得。女性活躍や子育て支援策を強化し、「女性が働きやすく、活躍できる場を増やして、女性の雇用比率を高めたい」(軣常務取締役)と述べた。
なお、今回の説明会では、PCを修理に出したり、不具合に関して問い合わせをしたりする際に、最適な準備をしてほしいとの呼びかけも行なった。
軣常務取締役は、「まずは、問い合わせをする際にFAQを見てもらい、それをもとに、指定された順番で、トラブルシューティングを試してもらった後に問い合わせをしてほしい。トラブルシューティングを行いどんな状況であったのかが分かると判断がしやすい。
また、どんな使い方やどんな作業をしている時に起きているのか、どんな頻度で起きているのかといったことを、できるだけ具体的に伝えてほしい。さらに、どんな周辺機器に、どんな風に接続しているのかといった状態が分かれば、不良症状を確認したり、不具合を再現できたりといったことにつながる。使い方を詳しく教えてほしい」と語った。
また、修理作業の際に、マイクロソフトアカウントのパスワードが必要になるケースが多く、「エラーコードを取得したいという場合などに使用したいと考えており、その点でも協力をお願いしたい」と語った。