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液晶モニターシェアNo.1のアイ・オーが考える次の一手

第49期の方針

 株式会社アイ・オー・データ機器は25日、都内で記者向け説明会を開催し、第49期(2023年7月~2024年6月)上期の振り返りと下期のトピックについて説明した。

 冒頭では同社会長の細野昭雄氏が挨拶。1976年に創業してから48年が経った今、「海外勢と同じようなハードウェアを作るだけではビジネスにならない」とし、「アイ・オーならではのサービスを持ち合わせなければならないと考え、注力している」と戦略を明らかにした。

 その具体的なものの1つが「PlatCast」という、スマートフォンでQRコードを読み取りWebページにアクセスするだけで、音声配信が聴けるというもの。元々はスポーツ観戦や美術館といったイベントの場で使うことを想定していたのだが、2024年1月1日に発生した能登半島地震の際に、自治体からPlatCastを使って災害情報を発信できないかという打診があり、これを無料提供することを決めたという。

 現時点での課題としては「災害時に重要になる配信をプッシュできないこと」だが、これからはSMSに代わるRCS(リッチコミュニケーションサービス)を利用すれば可能になり、GoogleやAppleも取り組んでいることから有望視されている。アイ・オーではこうしたトレンドも取り入れて対応していく意向を示した。

細野昭雄氏
PlatCast

BCNでモニターシェアNo.1のアイ・オー、今後も注力

 続いて同社広報宣伝部 部長の西田谷直弘氏が、第49期の上半期の振り返りと下半期のトピックについて説明。特に現在主力ビジネスである液晶モニターとストレージについて注力していく意向を示した。

 アイ・オーはPC総合周辺機器メーカーなのだが、実は液晶モニターに関してBCN(店頭POS売上データに基づくもの)で10年連続でシェアNo.1を誇っており、出荷台数は1,680万台を超えている。アイ・オーが選ばれている理由としては、そもそもの実績に加え、環境配慮や健康配慮の機能、国内エンジニアによる独自チューニング、独自の電源設計、国内メーカーならではの安心サポートがあるからだと分析している。

 2023年後半に投入した「BizCrysta」シリーズは、SDGsに代表されるようなサスティナブルと健康に配慮したのが特徴で、今後継続して注力するほか、一般ユーザーやゲーマーには、SNSでの発信、「ギガクリシア」といったキャラクターの確立、ファイナルファンタジーXIVとのコラボにより「GigaCrysta」シリーズの認知度が高まってきており、さらなる活動を展開していくとのことだった。

 一方、ストレージに関しては上期に筐体やCPUを見直しラインナップ刷新を行なった。今後も3-2-1ルール(データを3つ、2種類の媒体に保存し、1つはオフライン)を応用したバックアップを提案し、市場を拡大していきたいとする。

西田谷直弘氏
BCNランキングNo.1のアイ・オー
アイ・オーが選ばれる理由
法人向けのBizCrysta
個人向けのGigaCrysta
ストレージ製品の充実
DASも注力
とめずに入れ替えするサービスも提供
スティック型SSD。形状ではなく、用途に合わせてしっかり提案したいとする
下期の強化点

アンバサダープログラムで、ユーザーとの接点を増やす

 さらに同社は今後、パワーユーザーの意見を取り入れた製品開発をしていくべく、アンバサダープログラムを行なっている。発表会には、司会進行役としてやまだひさし氏を迎え、ゲストとして音楽プロデューサーの前迫潤哉氏、作家のイリエナナコ氏、カメラマンの緒車寿一(チャーリー緒車)氏を交えたトークセッションが開かれた。

アンバサダープログラムの開始
やまだひさし氏
音楽プロデューサーの前迫潤哉氏
作家のイリエナナコ氏
カメラマンの緒車寿一氏
細野会長も交えたトークセッション

 前迫氏は、アイ・オーの21:9のアスペクト比のモニターを愛用しているという。DTMにおいても映像制作においても、タイムラインが横に伸びるため、「どんなに長いモニターがあっても構わない」という。これに対し細野会長は、「(バックライトを使わない)自発光LEDのモニターがもう少しで小型化できそうなので、これを利用すれば完全なベゼルレスが実現し、好きなだけ横に繋げられるようになるかもしれない」などと答えた。

 また、音楽をやっているので、「音系の周辺機器は出さないのですか?」という質問に対し細野会長は、「実は十数年前にシンガポールのCreativeと協業しており、音系はそちらを選んでもらえれば」とした。

 イリエ氏はアイ・オーの小型のポータブルSSDを活用しており「従来のHDDと比較して信頼性がかなり向上し、持ち運びがしやすいためどんどん外出先で使っている」という。アイ・オーへのリクエストとして「カラバリを増やしてもらって、既に持っているユーザーでも追加で買う際に、所有欲を満たすような製品ラインナップの充実に期待したい。」などと語った。

 一方、緒車氏は普段からピボット可能な大型の液晶を活用し、ポートレート写真の確認でも便利に使っているが、「カメラで高速なCFexpress対応が増えている」としてCFexpressカードの展開をリクエスト。これに対し細野氏は「速度もそうだが、今年(2024年)後半はデジタル透かしを入れられるカメラ/ストレージに注目している。生成AIが流行したり、不正な画像コピーが問題視される中、これまではタイムスタンプぐらいしか証拠にならなかった。画像から容易にトレースでき、カメラマンがオリジナルを主張できるようなデータの保存を考えたい」とした。