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NVIDIA、Snowflakeのデータクラウドに生成AI開発環境を統合。企業の生成AIをより手軽に提供可能に

NVIDIAとSnowflakeがSnowflakeデータクラウド上で生成AIの開発環境とNVIDIA GPUの統合を発表

 NVIDIA CEOのジェンスン・フアン氏と、Snowflake CEOのフランク・スルートマン氏らは6月26日17時(現地時間)、Snowflakeの年次イベント「Snowflake Summit 2023」に登壇し、Snowflakeが提供する生成AIソリューションにNVIDIAの開発環境が統合されることを明らかにした。

 今回の発表は、同社が提供しているLLM(大規模言語モデル)ベースの生成AI向けの開発プラットフォームとなる「NeMo platform」を、Snowflakeが提供しているクラウドデータソリューションと一体的に提供するというもの。

 Snowflakeのデータクラウドを利用する顧客が自社のデータや、Snowflake上で取引されている著作権やプライバシーに配慮されたデータなどを活用して生成AIに向けて学習を行ない、エンタープライズグレードの生成AIサービスを提供することを可能にする。

データ流通市場などユニークな機能を提供しているSnowflakeデータクラウド

 Snowflakeは、2012年に創業したクラウドサービス事業者(CSP)で、Amazon傘下のAWSやMicrosoft Azureといった大手CSPが提供するストレージサービスと同様にクラウドストレージにデータを保存し、それを活用したさまざまなサービスを顧客企業に提供している。同社はそうしたサービスを総称して「Snowflakeデータクラウド」と呼んでいる。

 たとえば、データレイクと呼ばれるさまざまな種類のデータを保存しておくストレージサービスと、マシンラーニング(機械学習)のサービスを組み合わせることで、画像認識を行なうといったアプリケーションの構築が容易に行なえる。

 Snowflakeのもう1つユニークな点は、そのクラウドに保存しているデータを、Snowflakeの顧客企業同士が「Snowflakeマーケットプレイス」というサービス上で売り買いできることだ。

 もちろん、その際に顧客企業のエンドユーザーのデータからプライバシーに関わる部分を削除するなどしており、そうしたプライバシーへの配慮はきちんと行なわれている。

 逆に言うと、購入する側の立場からすれば、著作権やプライバシーといったAIの学習で問題になる部分への配慮はすでに行なわれているデータを入手できるので、コンプライアンスに配慮したままAIの学習に使えるということがメリットになる。

 そうしたユニークなサービスがSnowflakeの強みで、近年は顧客企業を増やしており8千社を超える顧客企業を獲得しており、その顧客が保存している商用データはすでにエクサバイトを超える容量になっている。

 その結果、Snowflakeデータクラウド上に保存されていくデータは加速度的に増えており、Snowflakeのビジネスが拡大していくという好循環に入っている。

NVIDIAの生成AI開発環境「NeMo」とSnowflakeデータクラウドが一体となって提供

NVIDIAとSnowflakeの協業の概念図。ソフトウェア開発環境をNVIDIAが提供し、そのNVIDIA GPUやストレージなどのハードウェアはSnowflakeが「Snowflakeデータクラウド」として提供する形となる

 今回NVIDIAが発表したのは、そうしたSnowflakeデータクラウドに、同社の生成AIのソリューションを統合するという内容だ。具体的には同社が提供しているLLM(大規模言語モデル)を利用したNVIDIA NeMo platformを、Snowflakeが提供するデータクラウドに統合する。

 Snowflakeの顧客はNVIDIAが提供するソフトウェア開発キットを活用して、Snowflakeのクラウド上にある自社データ、あるいはSnowflakeマーケットプレイスを通じて入手した他社データなどを利用。Snowflakeが用意するGPUハードウェアで学習を行ない、自社のサービスに特化したLLMベースの生成AIサービスなどを提供可能になる。

 また、以前NVIDIAが発表した生成AIに規範を与える仕組みとなる「NeMo Guardrails」も今回のNVIDIAとSnowflakeが協業して提供する仕組みの中で利用できる。

 それにより、Snowflakeの顧客は、事業者が想定している以上のことを生成AIが提供するなどのトラブルを防げるようになり、より安全な生成AIの提供を可能にする。

 こうした機能を利用することで、自然な応答のチャットボット、翻訳サービス、情報検索、コンテンツ生成などのさまざまなサービスを利用可能になり、それらを学習から推論まですべてをSnowflakeのデータクラウド上で完結できる。

 それにより、すでにSnowflakeのデータクラウド上にデータを保存している顧客や、これからSnowflakeのデータクラウドの利用を検討しており、同時に生成AIのサーバーアプリケーションを構築していきたい顧客が容易に生成AIの利用を開始できるようになると両社は説明している。