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Google、オンラインゲームサーバーの“クラウド移行”を支援

ジャック・ビューザー氏

 Googleは13日、都内で記者会見を開催し、オンラインゲームサービスを提供している企業に対して、そのサーバーのクラウドへの移行などを支援するエコシステム「Google Cloud for Gaming」を構築し、推進していることを紹介した。

 説明にあたったのは、来日したGoogle Cloud ゲームインダストリー ソリューション ディレクターのジャック・ビューザー氏。同氏はゲーム業界に25年務めているベテランで、かつてはGoogleが提供していたストリーミングゲームサービス「Stadia」の初期メンバーでもある。その同氏は今、オンラインゲームのサーバーのクラウド化を推し進めているという。

 そもそもゲーム全体の歴史を振り返ると、かつてゲームはパッケージの形式で販売されていて、プレイヤーがそれを3~4カ月プレイし、プレイに飽きたら別のゲームを買う、というスタイルだった。

 しかしやがてゲームがオンライン化されると、ゲーム開発者はプレイヤーを飽きさせないよう、順次アップデートを提供していくスタイルへと変化していった。これをGoogleでは「ライブゲーム」と呼んでいる。

説明会の趣旨
ゲームは今やライブサービスになっている
既にクラウド化をしている企業も多数
ゲーム向けに展開しているサービス「Google Cloud for Games」

 こうしたライブゲームにおいて課題となるのが、その背後にあるインフラ、つまりゲームサービスを提供するサーバーである。ゲームを提供する企業がサーバーを自前で調達して、サービスを展開する(つまりオンプレミス)となれば、当然セキュリティ脅威への対策、ハードウェアの陳腐化、プレイヤー人口の急増や急減に対するスケーラビリティ、管理する人材の確保といったあらゆる面で課題になる。

 たとえばパッチを当てる作業やハードウェアの入れ換え、サーバーの増設は即座にできるわけではないため、「メンテナンス」と称してサービス自体を止めなければならない。当然、サービス提供期間が長ければ長いほど、そこに使われている技術も古くなるわけで、古い技術を扱える人材の確保も難しくなる。するとゲーム開発者は本来、ゲームの設計に注力しなければならないところ、インフラといったコンピュータサイエンス分野にも精通する必要があるだろう、というわけだ。

 この問題を解決するためにGoogle Cloudが今取り組んでいるのが、こうしたライブゲームサービスのクラウド化への移行だ。つまりインフラ関連を全てGoogleに任せることで、ゲーム開発者は上記の課題から解放されるというものである。

 ちなみに意外に思われるかもしれないが、こうしたライブゲームのクラウドへの変革は日本デベロッパー発からの要望とのことで、「(データベースの)Cloud Spannerが使えたら……」という声に応える形で、全世界に展開することになったという。実際にバンダイナムコもSpannerを使っていると言い、導入により超低レイテンシを実現しつつ、データベースのことを気にせずにゲーム開発に注力できるようになったという。

 また、Googleの「BigQuery」を使うことで、大容量データに対する分析を可能となり、AIやディープラーニングにより、開発者がより容易にデータを利用できるようになり、ユーザー体験の向上に努められるようになるという。

Cloud Spannerを採用するメリット
Google Cloudを習得するための「E.G.G.(Expert of Google Cloud for Gaming)プログラムの展開

 もちろん、従来のオンプレミスからクラウドへの移行はすんなりできるわけではないし、開発者によっては異なる細かなニーズもあるが、Google Cloudとしては開発者と緊密に連携していき、ロードマップを敷いていくことでクラウド化を支援していきたいとのことだった。また、サービスが古ければ古いほどクラウド化の難易度も上がっていくわけだが、Google Cloudとしてはむしろそこにチャレンジすることこそにやりがいを見出しているとのことだ。

 なぜ他社ではなくGoogleなのか? Googleならではの強みは? と問われると、同氏は「そもそもGoogle自体がライブサービスを提供している会社だから」と答える。Googleはハードウェアやソフトウェアを売る(ことを主体とした)会社ではなく、常に革新し続けるサービスを提供し続けている会社であり、そこで得られた知見やノウハウは他社にはなく、それが大きな強みになっている、とのことだった。