ニュース

パナソニック、電子デバイス用銅材料を青色レーザーで加工するプロセス実証センターを開設

 パナソニック スマートファクトリーソリューションズ株式会社は2021年12月1日に大阪府豊中市の事業所に電子デバイス用銅材料を高出力・高ビーム品質の青色レーザーで加工するためのプロセス実証センター Advanced Material Processing Connect Lab(AMP Connect Lab)を開設すると11月26日に発表し、説明会を開いた。

 昨今、各国が推進するグリーントランスフォーメーションにおけるCO2排出量削減に向けて、電動自動車の開発・普及が進んでおり、搭載される駆動用モータや二次電池などの各電子デバイスの高効率化/小型化の開発も加速している。こうした電子デバイスには多くの銅材料が使われている。銅をいかに精度よく加工できるかがモノづくりにおける課題となっている。

 パナソニックでは、銅を品質良く加工できる青色レーザー加工機を開発しており、今回、その青色レーザー加工機で加工実証を行えるプロセス実証センターを開設した。

波長合成技術で精密加工が可能な青色レーザー加工機

Advanced Material Processing Connect Lab(AMP Connect Lab)

 同社の青色レーザー加工機は、複数の異なる波長をもったダイレクトダイオードレーザー(DDL)から放射されたビームを回折格子上に重ね、1つのビームに結合させる「波長合成技術」を用いることで(2020年1月29日発表)、高いビーム品質での高出力でのレーザー発振を特長としている。熱伝導溶接、キーホール溶接、切断加工において、凝固後の溶接金属内に生じる空洞や気泡(ポロシティ)や溶接加工時に発生する溶融金属の飛散(スパッタ)の発生抑制、熱歪みの少ない加工、深い溶込みによる強い接合強度の実現が可能となっている。

 特に、近赤外レーザーでは光を跳ね返してしまう銅材料に対して、光吸収率が良くビーム品質が高い。このことから電子機器や電子デバイスの狭隘部で、小スポット径で周囲への熱影響が少なく、深い溶込みの溶接が可能となっており、さらなる小型化や軽量化を実現することができ、構造設計の自由度も高めることができる。

 加えて、レーザー発振の光出力ヘッドの発振端面と加工対象の距離を十分に確保できるリモート加工も特長であり、量産工程での生産性向上も期待できるという。加工工程における省エネ・CO2削減も可能となる。

試作された青色レーザー発信器。発振波長445±20nm、出力400W。ファイバー径50μm
加工サンプル。横幅50mm、縦20mm。銅二枚重ね溶接で厚み0.3+0.3で0.6m。目盛り線の幅は約70μm

改善プロセスが自律で回る「Autonomous Factory」を目指す

パナソニック スマートファクトリーソリューションズ株式会社 代表取締役社長 CEO 秋山昭博氏

 パナソニック スマートファクトリーソリューションズ株式会社 代表取締役社長 CEOの秋山昭博氏は、パナソニックの国内4法人が2022年4月にパナソニックコネクト株式会社として統合されることと、同社の「現場プロセスイノベーション」について改めて解説した。パナソニックではものづくりの知見と現場の改善ノウハウ、サプライチェーンをつなぐことで顧客の課題解決にあたることを「現場プロセスイノベーション」と呼んでいる。秋山氏は「各事業所と連携し、ワンチームでお客様の課題解決にあたっている」と語った。

 プロセスオートメーション事業部のスマートファクトリーソリューションズ社は電子部品の実装機や半導体製造装置などからなる回路形成プロセスと、溶接機や溶接ロボットそしてレーザー加工の領域の熱加工システムを事業領域としている。それぞれ特殊な商品で、顧客に応じた設備/ソリューションを展開しており、世界各国に拠点がある。

パナソニック「現場プロセスイノベーション」
スマートファクトリーソリューションズ社の事業領域は回路形成と熱加工

 事業部で目指す姿は「Autonomous Factory」。顧客とともに創造する提供価値のレイヤーを拡大し、エッジデバイスを装置に繋げていくことで、ファインプロセスコントロールで価値を作り続ける工場を目指すという。秋山氏は「これまでは装置の売り切りだけだったが、全体提案をすることで顧客と繋がり続けるビジネスモデルを目指し、収益性の高いところに移行していくことで事業成長を果たしていきたい」と述べた。

スマートファクトリーソリューションズ社のネットワーク
「Autonomous Factory」を目指す

銅を加工するための青色ダイレクトダイオードレーザー(DDL)事業

パナソニック スマートファクトリーソリューションズ株式会社 DDL 事業開発センター 所長 大塚隆史氏

 今回の青色ダイレクトダイオードレーザー(DDL)事業については、DDL 事業開発センター 所長の大塚隆史氏が解説した。パナソニック熱加工システム事業部の主力は溶接機とロボット、レーザー加工機の開発・生産である。レーザー加工機については40年以上の歴史がある。顧客ニーズの変化に合わせて、近赤外線レーザーを使ったレーザー加工機を市場に投入している。

パナソニックの熱加工システム事業の経緯
ラインナップ

 だが、さらに市場は変化している。大塚氏は自動車業界を例にして、ものづくりの変化について改めて紹介した。自動車は環境規制や車体の軽量化などのニーズと同時に剛性アップによる安全性担保が求められている。これによってアーク熔接に加えてレーザー溶接部が増加している。

 パナソニックは2017年に子会社化した米・テラダイオード社の波長合成技術(WBC)を使い、レーザー溶接ロボットシステム「LAPRISS」を製品化している。要するにプリズムを使ってレーザーの光を一点に集める技術だ。この技術によって他社よりも高品質のビームを実現している。ビームが絞れていると焦点距離と焦点深度も長くなり、多少のワークのばらつきも許容されるという。現在、「LAPRISS」でレーザー発信器とロボット、コントローラ、加工ヘッドまでワンストップで提供している。

ものづくり課題の変化
変化に対応するためのレーザー加工技術の進展
波長合成技術(WBC)を使って高品質ビームを実現
高品質ビームで加工の自由度が高まる

 今回の青色レーザー加工技術は、主に自動車に搭載される二次電池や電子部品の加工に用いられるものだ。CO2規制による電動化の進展の結果、それらの需要はどんどん伸びている。特に銅を使う加工のニーズが高まっている。

非鉄材料の微細自動加工のニーズが高まっている
電動化により難しい加工ニーズが増大している

 銅は光の吸収率が高く、鉄やニッケルに比べると加工が難しい。鉄やニッケルなら近赤外光で加工ができる。ところが銅は近赤外線は10%程度しか吸収されない。つまり、ほぼ反射されて加工ができない。だが青色レーザーは吸収率が高いので加工ができる。また、ミラーを使うことで二次元、三次元の加工ができる。これによりスループットと加工ワークの設計自由度が向上する。

青色DDLの技術優位性
高出力・リモート加工を両立

 今回開発した青色レーザー加工検証機については、今後2022年度に商品リリースを計画している。「Advanced Material Processing (AMP) Connect Lab」で12月から顧客と実証実験を進め、加工品質の検証を行なっていく。

2022年度の商品化を予定
AMP Connect Labで加工実証を実施