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Intel、NAND事業売却後も2025年までは自社ブランドウェハを製造。新SSDを多数発表
2020年12月16日 23:00
米Intelは15日(現地時間)、「Intel Memory and Storage Moment 2020」と題したイベントを開催し、Optaneや3D NAND技術を利用した製品などを紹介。同社の3D NAND製品は、韓国のSK Hynixに売却されることがすでに発表されているが、買収完了は来年の終わり頃になる予定で、それまでは新製品がIntelブランドで提供されることになる。
2025年まではIntelブランドの3D NANDのウェハでの製造が可能
Intelと韓国SK Hynixは10月に、IntelのNANDメモリやストレージ事業を90億ドル(約9,500億円)で売却する契約を結んだことを発表。2021年後半の各国政府の承認の後、2021年中に正式に事業が譲渡される計画になっている。
そうしたSK Hynixとの契約について、Intel上席副社長兼NAND製品/ソリューション事業部事業部長のロブ・クローク氏は「NANDビジネスはグローバル規模で拡大しており、SK Hynixのリーダーシップのもとでさらに伸ばしていくのが従業員や株主にとって最善だと判断した。中国大連のNAND工場の引き渡しなどSK Hynixとの契約は2021年中に各国政府の承認をもって行なわれる予定」と述べたが、SK Hynixとの契約により、2025年まではIntelがNANDウェハを生産することができ、知的財産権も保持できることを明らかにした。
事業を売却することを発表したことで、チャネルや顧客などに今後製品が提供されなくなるのではないかという不安が広がっていることに対して答えたかたちだ。
また、クローク氏は「2022年にはSSDとHDDのTCOは逆転する。今後もNANDの市場は拡大していくだろう」と述べ、HDDをSSDが置き換えるというトレンドは続き、TCO(Total Cost of Ownership、総保有コスト)でNANDがHDDを下回ることで、最終的にはデータセンターのストレージもHDDからNANDへのシフトが加速していくという見通しを語った。
クライアントPC向けのIntel SSD 670p、Intel Optane Memory H20が発表
じっさい、今回のIntel Memory and Storage Moment 2020では、新製品が多数発表。昨年(2019年)の同名のイベントと同様で、クライアントPC向けのNAND型SSD「Intel SSD 600シリーズ」、OptaneとNAND型SSDを混載し、Optaneをキャッシュとして利用することで高速化する「Intel Optane Memory Hシリーズ」最新製品のほか、データセンター向けのSSDやOptane、さらには2021年投入が計画されている「Optane Persistent Memory」の第3世代製品に関しても言及があった。
クライアントPC向けのIntel SSD 600シリーズの最新製品として発表されたのがIntel SSD 670pだ。Intel SSD 600シリーズは、QLC(1つのセルに4ビットのデータを格納できるNANDのこと)の3D NANDを利用した製品として販売されている。以前IntelはTLC(1つのセルに3bitのデータを格納できるNAND)の3D NANDを利用した製品としてIntel SSD 760pなどのIntel SSD 700シリーズを販売していたが、今後はクライアントPC向けのNANDはQLCに移行する方針を明らかにしており、2017年にIntel SSD 660pをリリースし、2019年にはその改良版となるIntel SSD 665pを発表していた。
今回発表されたIntel SSD 670pはその後継となる製品で、昨年Intelがサンプル製造に成功したと発表した144層の3D NANDを採用している。また、Intel SSD 600シリーズの特徴である「Dynamic SLC Cache」が新しいコントローラを搭載することで改良されている。
Dynamic SLC Cacheとは、QLC NANDの弱点となる速度(1つのセルに4bitのデータを格納するため、1つのセルに1bitのデータを格納するSLCや3bitのデータを格納するTLCなどに比べて、アクセス時間が遅くなる)を改善するための技術で、QLCを擬似的にSLCのように使う(SLC Cacheと呼ばれる)。これによりSLCやTLCに近い性能を維持しながら、QLCの長寿命という特徴をあわせ持つことができる。改良されたDynamic SLC CacheによりIntel SSD 670pは、Intel SSD 660pに比べて約11%ほど性能が向上しているという。
Intel SSD 670pは容量が512GB、1TB、2TBという3つのSKUが用意されるが、固定されたSLCの容量と動的なSLC容量はそれぞれ512GBが固定6GB/動的64GB、1TBは固定12GB/動的128GB、2TBは固定24GB/動的280GBとなっている。インターフェースはPCI Express Gen 3で、フォームファクタはM.2となる。
Optaneと3D NANDが混載されるIntel Optane Memory Hシリーズには、新しくIntel Optane Memory H20が発表された。従来提供されてきたIntel Optane Memory H10の後継となる製品で、DRAMに近いレイテンシを実現するOptaneを一種のキャッシュとして利用することで、より高速な読み書きを可能にする。3D NAND部分の容量としては512GB、1TBの2つのSKUが用意され、キャッシュ部分となるOptaneの容量は32GBとなる。
いずれの製品も、性能に関しては言及がなかったが、Intel SSD 670pは2021年の第1四半期に、Intel Optane Memory H20は2021年の第2四半期にOEMメーカーの製品などに搭載されて提供される予定。
世界最高速のデータセンター向けSSDとなるIntel Optane SSD P5800X、Intel SSD D7シリーズなど
データセンター向けには、Optaneをフラッシュメモリの代わりとして利用することで高速なSSDを実現するIntel Optane SSD、また3D NANDを利用しているデータセンター向け製品「Intel SSD Dシリーズ」の新製品などが発表された。
Intelが、データセンター向けのSSDとして世界最高速と自称するのが「Intel Optane SSD P5800X」だ。次世代のOptaneメディアを搭載することで従来製品から性能をさらに高めた製品となる。PCI Express Gen 4に対応し、400GB/800GB/1.6TB/3.2TBの容量をU.2フォームファクタで実現している。
また、Intelは144層の3D NANDを採用したデータセンター向けの新しい製品としてTLCのIntel SSD D7-P5510、QLCのIntel SSD D7-P5316をそれぞれ投入する。
TLCのIntel SSD D7-P5510はU.2フォームファクタで3.84TB、7.68TBの容量を実現しており、クラウドストレージのキャッシュ用としての用途が考えられている。従来そうしたキャッシュにはOptaneも利用されてきたが、容量の面でOptaneは3D NANDには適わない側面があり、144層の3D NANDでTLCのIntel SSD D7-P5510が投入されることにより、容量とコストの面で選択肢を増やしたいというのがIntelの狙いだ。
QLCのIntel SSD D7-P5316はウォームストレージと呼ばれるデータ処理を行なうHPCやサーバーなどでHDDに変わって、低コストにデータを保存しておくストレージとして使われる製品となる。U.2(15mm)ないしはE1.Lのフォームファクタで提供され、最大で30.72TBのモデルまで用意。1Uのラックマウントサーバーに搭載すると1PBの容量を実現できる。
Intel Optane SSD P5800Xは2021年に、Intel SSD D7-P5316は2021年の前半に出荷開始が予定されており、Intel SSD D7-P5510は既に出荷が開始されている。
Ice Lake-SPベースのXeonプロセッサーは2021年にずれ込み、Crow PassはSapphire Rapidsで対応
Intelは2019年に投入した第2世代のIntel Optane Persistent Memoryの後継製品として、第3世代製品(開発コードネーム:Crow Pass)を計画していることをすでに明らかにしている。Crow Passは従来は開発コードネームIce Lake-SPで知られる次世代Xeonプロセッサで提供する予定だったが、この計画は変更され、次次世代XeonプロセッサとなるSapphire Rapidsで対応することになったと明らかにした。
また、同時にこれまで2020年内と説明してきたIce Lake-SPは2021年の発表、投入に変更されたことも、明らかにした。第3世代Xeonとしては、4ソケット以上版となるCooper Lakeは発表済みだが、2ソケットのIce Lake-SPに関してはまだ発表がなかったが、2021年にずれ込むことが正式に明らかにされたかたちだ。