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日本マイクロソフトは、いかにしてコロナ禍の社会を下支えしたか
2020年10月7日 17:37
日本マイクロソフト株式会社は7日、2021年度の経営方針記者会見を開催した。会見では、同社代表取締役 社長の吉田仁志氏が登壇し、2020年度の振り返り、2021年度の経営戦略について説明を行なった。
同氏は、長期間に渡って顧客の成功を支援するために必要なこととして、同じ目線でよりよく理解しサポートしていく姿勢が大切だとした上で、デジタルトランスフォーメーション(DX)はマイクロソフトの戦略そのものであるとし、経験や学びを顧客に提供していきたいとした。
2020年度はコロナ禍で社会を支える技術を提供
2020年度の振り返りとしては、新型コロナウイルス感染症の影響による社会の変化もあり、同社では、コマーシャルビジネスのほぼ半分をクラウドが占めるかたちとなり、パブリッククラウドについても調査結果によっては1位を獲得するなど成長を見せたという。
NTTとのグローバル協業の締結により企業向けソリューションを展開。新型コロナウイルス感染症関連では、厚生労働省における感染者情報を一元管理するシステムの構築、Q&A形式で同感染症に関する情報を提供するAIチャットボットの開発などを行なった。また教育機関向けには、Microsoft Teamsなどを活用した学びを止めないためのリモート学習環境の構築支援を実施した。
コロナ禍によりDXが加速し、重要視されるようになった一方で、日本がIT後進国であるという事実も露呈したと述べ、日本全体にDXが必要だと強調した上で、同社では社会改革に向けたDXの実現に取り組んでいくとした。
2021年度は政府や国内産業のDXを推進
中期経営戦略としては、まず政府・自治体のDXについて触れ、クラウドによるデジタルガバメントの実現に貢献していくとした。クラウド化により、業務の一元化と、それにともなって発生するデータの一元化と基盤の構築、さらにこれらを活用した行政を横断するコミュニケーションの確立などを進めていく。
続いて、国内産業については、コロナ禍の影響を大きく受けた分野を支えていきたいとした。物流分野では、荷物の情報をAzure上に集約し、ビッグデータ分析による配送ルートやオペレーションなどを実現するソリューションを提供。製造業では、製造現場のデータを収集して、生産や設備の状況、作業員の動きなどの見える化を実現するほか、HoloLens 2やDynamics 365を活用したリモート化もサポートする。
小売業では、AzureとAIを活用した遠隔操作ロボットの配備で、在庫管理や商品陳列の自動化を実現。中小企業向けには、リモート環境の整備やワークショップ/トレーニングなどの支援に加え、低価格なサブスクリプションサービスの提供などを通じてDXの実現を推進する。
セキュアで包括的なクラウドソリューションを提供するマイクロソフト
こういったDXやイノベーションの推進には、ソフトウェアとクラウドコンピューティングが欠かせない。同社ではまず、これらのソリューションを支えるセキュリティ基盤の確立。サイバー攻撃を監視する専門チームではAIを使った分析を実施している。
また、クラウドやリモートワークの普及により、内部での不正や情報漏洩などのリスクも高まっており、企業では社内外を問わずセキュリティが大きな課題となっている。同社の提供するソリューションでは、社員のIDからデバイス、データ、クラウドインフラまで包括的でセキュアなソリューションを提供できると強調した。
コロナ禍では、働き方の変化によって、Microsoft TeamsやMicrosoft 365の利用が急速に広がった。会議時間では1日あたり50億分以上にのぼるという。これらのツールは生産性の向上だけでなく、AI活用した分析も可能で、働き方の見える化や効率化の提案も可能となる。
将来的に必要になるとみられるIT人材やデジタル人材についても注力し、政府や自治体を含めた、社会人のIT人材の育成を推進。実践的なAI知識の習得を目的とした経営層向けビジネススクールにおけるカリキュラムの拡張や、AI/IoTなど先端技術に関するエンジニア向けトレーニング、無償のオンライン講座といった学生向け教育コンテンツ、IT教育に関する教員向けトレーニングなどを充実させる。「アウトソースからインソースへ」をキーワードに、ローコードやノーコードなどをいかした簡単で効率的なアプリケーション開発も推進していく。
同社では、IaaSからSaaSまで幅広い選択肢を用意するだけなく、各種サービスを世界63カ所のデータセンターで展開。高速かつ大規模で包括的なクラウドソリューションが提供できる唯一のベンダーであるとアピールし、自社の変革を進めつつ、顧客や社会のDX実現を支援していくとした。