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Zoomが国内法人で好調。テレワーク向けシステム「Zoom for Home」などで攻勢をかける

 ZVC(Zoom Video Communications) JAPAN株式会社は、Zoomに関する日本における事業戦略について説明した。

 同社によると、Zoomの新規契約金額は前年比2倍、売上高は約3倍に拡大。10ライセンス以上の「ビジネスライセンス」の導入企業は、2019年7月には2,500社だったものが、7月には15,000社以上に拡大したという。また、東京のデータセンターに加えて、2020年8月には大阪にデータセンターを開設。急増している日本のユーザーの安定的な利用をサポートするという。

 さらに、Zoom for Homeに対応した初の専用デバイスである「DTEN ME」を、日本において10月から販売することも明らかにされた。税別価格は90,000円。

DTEN ME
ZVC JAPAN カントリーゼネラルマネージャーの佐賀文宣氏

 ZVC JAPAN カントリーゼネラルマネージャーの佐賀文宣氏は、「日本市場に、Zoomに対する大きな潜在需要があることは予想していた。それは、アプリのダウンロード数が、米国についで日本が2番目であったということからも感じていた。だが、いまの規模までに4年かかると思っていたものが、日本法人設立から1年半で達成してしまった。予想外にビジネスが広がっている。

 この半年間で大手企業での採用が増加したのに加えて、東京大学や京都大学など、教育機関での採用が爆発的に増えた。また、最新のNPS(ネットプロモータースコア)では、72という高い数値となっており、Zoomを利用している人からの評価が高い」とし、「2020年度下期以降は、Zoom Roomsを積極的に提案していきたい」と述べた。

日本オフィス設置から約1年で大きく成長

 ZVC JAPANは、2019年7月に日本にオフィスを開設。当初は20人体制でスタートしたが、現在55人体制に拡大。年内には80人体制になるという。

 Zoomは、過去1年間で300以上の機能強化を図ったほか、セキュリティに関しても、2020年4月から開発リソースを集中させており、「世界中の外部専門家の支援を受け、日本からもNTTデータに、本社のCISO評議会に参加してもらった。

 また、積極的に仕様を公開してペネトレーションテストや、バグバウンティプログラムも強化した。さらに、初心者でもセキュリティ機能が簡単に利用できるように変更したり、市場でもっとも安全な暗号化を実現したりといったことも行なった。こうした取り組みを、透明性を持って公開している」などとした。

 国内における販売体制の強化にも取り組んでおり、販売パートナーでは、新たに野村総合研究所(NRI)とNTTデータが加わり、9社の体制となったほか、ディストリビュータとしてSB C&Sと契約。半年間で約300社の新規契約を獲得したという。

 「米国では90%が直販であるが、日本では70%が販売パートナー経由によるものとなっている。全国でZoomを販売できる体制が整っている。日本では、Zoomとさまざまなアプリ、ハードウェアなどを組みあわせたソリューションとして、パートナーが販売するエコシステムの構築に力を注ぐ」と語った。

 テクノロジーパートナーも11社となり、日本に参入したNeatframe(neat.)が新たに加わった。「ユーザーは、日常的に使っているアプリケーションとZoomを組みあわせて便利に使いたいと考えている。SlackやBox、Dropboxといったソフトウェア企業もテクノロジーパートナーとなっており、日本においても、一緒になってソリューションを提案している」と述べた。

 そのほか同社では、カスタマーサクセスマネージャーを通じたユーザーの利用促進の支援を進めていることも示した。

信頼性向上のためデータセンターを東京と大阪の2カ所に展開

 大阪への新たなデータセンターの開設については、「当初の計画どおり」としながら、「急激に増加している日本のユーザーに安定した環境で使ってもらえる狙いがある。データセンターの拡充によって、東京のデータセンターに障害が発生したり、アクセスが集中してパフォーマンスが落ちた場合にも、距離が近い大阪のデータセンターを活用した負荷分散が可能になる。

 また、2020年末までに日本での導入を目指しているクラウド通話システムのZoom Phoneに対応するといった狙いもある。ここではビデオ会議やWeb会議よりも、音声品質が重視される。近くにデータセンターがあったほうが、品質が高まる」と語った。

 Zoomでは、AWSやMicrosoft Azure、Oracle Cloud Infrastructureといったパブリックラウドも活用しているが、「これらは、急激な需要の増加に対応するための二次的なリソースとして使っている」と説明した。

 MM総研の調べによると、コラボレーションツールの利用率は、グループウェアの73%についで、Web会議システムが63%を占めている。そして、Web会議システム利用者の3分の1が今年(2020年)に入ってから利用を開始しており、一気に利用者が増加していることがわかる。Web会議システムのなかではZoomの利用率がもっとも高く、35%のシェアがあるという。

 佐賀氏は、「これまでビジネスの中心的なツールではなかったビデオ会議システムが、チャットやメールに代わって、中心的なツールになってきた」と指摘する。

 ITreviewの調査によると、2019年2月時点では、Zoomの認知度はSkypeやWebExに比べても低かったが、2020年4~6月の最新調査では、Zoomの認知度は圧倒的となり、満足度も高いといった結果になっているという。

 さらに、日経コンピュータによる最新の顧客満足度調査において、ビデオ・音声会議システム/サービス部門において、Zoomがはじめて1位になった。

テレワークを支えるZoom対応のオールインワン型デバイス

 このようにZoomは、日本においても、Web会議システムとして急激に利用者数が増加し、認知度も高まっているが、Web会議システムとしての普及戦略をさらに加速させる一方で、いくつかの新たな施策を展開する考えを示す。

 1つ目は、Zoom for Homeの展開だ。

 Zoom for Homeは、テレワークをサポートする新たなソフトウェアとハードウェア機器を組みあわせた製品で、ZoomのユーザーアカウントでZoom for Home対応デバイスにログインでき、追加のライセンスが必要ないのが特徴だ。

 対応機器は一体型の専用会議システムとなっていることから、いつでも会議を開始することが可能で、「会議をはじめる前に、コードを接続したり周辺機器を用意したりといったことがない。臨時の会議でも、予定された会議でも、簡単にはじめることができる」という。

 Zoom for Home対応の初の専用デバイスとして開発されたのが、「DTEN ME」である。

 DTENがZoomとの提携によって製品化したもので、27型タッチディスプレイを採用したオールインワン型デバイスとして製品化。高解像度ビデオのワイドアングルカメラを3台搭載し、160度の角度まで撮影できるほか、会議や電話におけるクリアな音声を確保するためマイクロフォンアレイを8個装備し、インタラクティブな画面共有やホワイトボード機能などを搭載。

 すべてのZoom Rooms機器との相互互換性があり、ユーザーは必要なハードウェアを選択し、自宅のリビングルームやマウンテッドディスプレイなど、あらゆるスペースで最適な通信環境を整えた在宅勤務体験を作り出すことが可能だ。

DTEN INC. Senior Manager Sales and Engineering, APACの黒瀧信一氏

 DTEN INC. Senior Manager Sales and Engineering, APACの黒瀧信一氏は、「設定は簡単で、ITやネットワークの知識がなくても、箱から出して約5分で設定が完了し、すぐに会議がはじめられる。Zoom Meetingのライセンスを持っていれば誰でも、箱から取り出してそのまますぐに接続できる」とする。

 DTEN MEは、日本では10月から販売を開始。価格は90,000円。「個人が家庭で利用するさいにも購入しやすい価格であり、企業が社員に支給するという点にも配慮した価格設定にしている」とした。全世界で、1年間で100万台の販売を目指しているという。

 ZVC JAPANの佐賀氏は、「これまでの会議室向けハードウェアは、会議室に紐づいたライセンスが必要であり、自宅で利用することは想定していなかった。だが、Zoom for Homeによって、在宅勤務を快適にするために、個人のミーティングアカウントはそのままに、会議室ソリューションで動かせるようにした。電源だけつなげば会議専用システムとして快適に使える。カレンダー情報とも連携できる」などとした。

オフィス以外への展開も目指すZoom Rooms

 2つ目は、Zoom Roomsソリューションの強化だ。いわば、ビデオ会議システムとしての提案の加速である。

 ここでは、Neatframe(neat.)のZoom Roomsソリューションについても説明した。同社は、ノルウェー・オスロに本社を置くZoomソリューションの専業企業だ。日本では、2020年9月から本格的な活動を開始する予定である。

Neatframe Ltd. カントリーマネージャーの柳澤久永氏

 Neatframe Ltd. カントリーマネージャーの柳澤久永氏は、「neat.は、Zoomと同じ将来ビジョンを持ち、共同で研究、開発を進め、Zoomをビデオ会議で使用するさいの専用ソリューションを提供している企業。パソコンなしの専用のハードウェアを開発し、簡単で、誰でも導入できるのが特徴である。これにより、究極的とも言えるエレガントな製品を提供できている」と自信をみせる。

 製品として、ディスプレイ一体型でホワイトボード機能を持つ「neat. Board」、ディスプレイ上部に設置できるサウンドバー「neat.Bar」、操作を行なったり会議室の使用状況を表示するための「neat.Pad」をラインナップ。会議室に入室すると外にあるneat.Padの表示が緑から赤に変わり、使用中であることを示し、室内にあるneat.Padをタップすれば、スケジュールに基づいて会議がはじめられる。また、センサーを通じて、会議室の温度や湿度、CO2の状況など計測。快適な環境で会議ができているかも判断できる機能も持つ。

 「オフィスの会議室だけでなく、パーソナルオフィスやホームオフィスでの利用のほか、教育分野向けの提案も加速させたい。フィットネスジムでの利用など、これまでのZoom Roomsという範囲から外れた提案もしていきたい」などとした。

Web会議から電話、ビデオ会議まで広くサポートするZoom

 そして3つ目が、2021年から日本でビジネスを本格化させたいとするクラウドPBXサービスの提供を加えた、共通コミュニケーションプラットフォームの実現だ。

 ZVC JAPANの佐賀氏は、「ビジネスコミュニケーションは、オフィス電話(PBX)、会議室と会議室を結ぶビデオ会議、パソコンなどを利用して行なうWeb会議といったカテゴリーに分かれ、それぞれがべつべつのプレーヤーによって、べつべつに進化してきた。いずれも、アナログからデジタルになり、それがソフトウェア化し、コストが下がり、クラウドサービス化することで柔軟なサービスを提供できるようになってきた」と前置きし、「Zoomは、Web会議だけでなく、クラウド上から電話機やビデオ会議を使うこともでき、ビジネスコミュニケーションのさまざまなサービスを提供できる」とする。

 佐賀氏によると、この半年間にWeb会議の利用は爆発的に増えたが、在宅勤務が増加したことで、オフィスで使用するビデオ会議向けライセンスの販売は減少したという。

 「だが、いまはオフィスに戻る流れが生まれ、オフィスのなかの会議室を使うことが増えたため、販売が戻りつつある。さらに、在宅勤務の社員もオフィスでの会議に入ることになるため、オフィスと在宅をインテグレーションした環境も必要になる。今後は、ビデオ会議の需要がさらに高まってくるだろう。

 また、在宅勤務をしながら、会社の電話を取ることができるといったニーズに対する関心も高まるだろう。いずれもZoomによって解決できる。今年(2020年)度後半以降は、ビデオ会議やPBXの用途も積極的に提案したい。それにより、オフィスと同様に安全で快適な環境をホームにも構築することを支援する」と述べた。

 さらに、「Zoom App マーケットプレースを通じて提供されるAPIを活用して、SlackやMicrosoft Teamsなどとシームレスに連携して利用できるのもZoomの特徴である。Zoomは、Web会議のためのツールではなく、サービスプラットフォームであるということを認識してもらいたい」などと語った。