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2020年に必要なコア数は?クロックは? “PCの中心”CPUはこう選べ

 かつてはクロックの高いモデルほど高性能と相場が決まっていたCPUだが、最近はコア数がどんどん増えてグレードも細分化される一方、自分の用途に合ったモデルを選ぶのが難しくなっている。2020年の最新CPUを選ぶポイントを整理しよう。(TEXT:マルオマサト)

自作PCのパーツ選びはまず「CPU」から

CPUの例。ヒートスプレッダという放熱用金属板の下に「ダイ」という小さな半導体チップがある

 自作PCの構成は自由といっても、パーツの規格が一致していないと組み合わせられない。優先度の高いパーツをまず選び、それに合うパーツを決めていこう。基本的にはCPUから考えていくのがよいだろう。CPUはまさにPCの中心と言えるパーツで、その役割はOSやアプリにプログラムされた命令を取り込んで実行すること。その性能によってPCシステム全体の基本的な快適度が決まる。現在のCPUはさまざまな機能を内蔵していて複雑だが、IntelのCoreシリーズとAMDのRyzenシリーズに大別される。

【表】CPUのスペックはここをチェック
製品名コア数/スレッド数定格/最大ブーストクロック対応メモリ倍率アンロックPCI Express内蔵GPUTDP実売価格
Core i7-9700K8C/8T3.6GHz/4.6GHzDDR4-2666/2ch16レーン(Gen3)UHD 630(1.15GHz)95W44,000円前後
Ryzen 7 3700X8C/16T3.6GHz/4.4GHzDDR4-3200/2ch20レーン(Gen4)65W44,000円前後
  • コア数/スレッド数
    コアはCPU内部にある、実際に命令を実行する回路のこと。コアが多いと多くのスレッド(ひとかたまりの命令)を並行して処理でき性能面で有利。クリエイティブ用途では同時処理スレッド数が性能に直結する
  • 定格/最大ブーストクロック
    内部の回路が動作する速さ。アプリの最適化不要で性能全般に影響し、CPU構造やコア数などほかの条件が同じならクロックが高いほうが性能がよい。ブースト機能対応CPUは最大クロックが重要
  • 倍率アンロック
    アンロックは、いわゆる「オーバークロック(OC)」可能モデル。動作クロックの制限が解除されているので、OC対応マザーボードを使って本来より高いクロックで動作させられる。ただし、動作保証はない
  • PCI Express
    CPUに直結されているPCI Expressインターフェースのレーン数。ビデオカードやSSDの接続に使われる。最新世代のPCI Express 4.0(Gen4)は1レーンあたりの転送速度が3.0の2倍に向上している
  • 内蔵GPU
    多くのCPUはGPU機能も統合している。ビデオカードのGPUに比べると描画性能は低いが、動画再生などはスムーズにでき、ゲームができるものも。ビデオカードが不要なのでコストの抑制、省電力化に効果的
  • TDP
    発熱、消費電力の目安。本来は冷却機構を設計するための指標で数値が大きいほど強力な冷却が必要。CPUの構造が同じなら数値が大きいほうが消費電力も大きいと考えてよいが、実際の電力を示すものではない

用途によって必要な性能は違う

 CPUのスペックの違いや価格は、必ずしも性能に直結するとは限らない。とくにたくさんのコアを活かすにはアプリケーションの最適化が不可欠で、どのくらいのコア/スレッド数までを想定して設計されているかで違ってくる。クリエイティブ、とくにプロ向けのツールではメニーコアへの最適化が進んでおり、コアが多いほど速くなる。それはCINEBENCH R20のCPUスコアでも実証されている。逆に言えば、最適化されていない用途で高価な超メニーコアCPUを使っても価格ほどのメリットは得られないし、動作クロックの高いCPUに逆転されることもある。Webブラウズなどの日常操作、オフィスアプリでの作業も含めたPCの総合性能を見るPCMark 10のスコアにそれが表われている。

 ゲームで高fpsを出すには動作クロックの高いCPUがよい。コアに余裕があるとOSタスクの影響で遅くなりにくいため、6~8コアで動作クロックの高いCPUが最適だ。

【表】目的によって重視すべきスペックは変わる
目的このスペックを重視
ゲームが目的なら動作クロック重視
写真や動画ならコア数/スレッド数重視
コスパ優先なら内蔵GPUモデル

ゲーマーにオススメのCPU

最大5GHzの高クロックが効く
IntelCore i9-9900K
実売価格:61,000円前後
最大クロック5GHzでシングルスレッド性能に優れており、ハイエンドビデオカード利用時にも高いフレームレートを維持できる。8コア16スレッドと余裕があるのでゲーム配信にも強い。
内蔵GPUなしでコスパよし
IntelCore i5-9400F
実売価格:18,000円前後
6コアで最大4.1GHzのスペックならGPUの足を引っ張らない。ゲーミングPCなら当然ビデオカードを別途搭載するため、GPU非搭載はデメリットにならずコストパフォーマンスは抜群だ。

クリエイティブ用途にオススメのCPU

16コア32スレッドのメニーコア
Advanced Micro Devices
Ryzen 9 3950X
実売価格:99,000円前後
Ryzen 9の最上位モデル。16コア32スレッドというウルトラハイエンド並みのメニーコアで、CGレンダリングやエンコード、写真編集まで安定して爆速。Ryzen Threadripperに比べて扱いやすい点も魅力。
高コスパ&高ワット効率
Advanced Micro Devices
Ryzen 7 3700X
実売価格:44,000円前後
価格的に入手しやすい8コア16スレッドのRyzen 7でもクリエイティブを一通り快適に楽しめる性能を持つ。TDP 65Wとワットパフォーマンスも良好で、静音性や消費電力を気にする層にもお勧めできる。

おサイフに優しいオススメのCPU

ゲームもできる内蔵GPU性能
Advanced Micro Devices
Ryzen 3 3200G
実売価格:13,000円前後
低価格帯CPUとしては随一の内蔵GPU性能。ブラウザベースのカジュアルゲームが快適にプレイできるのはもちろん、メジャーなFPSも画質設定を落とせばプレイできる。CPU性能も悪くなく、コスパは絶大。
GPU非搭載の廉価モデル
IntelCore i3-9100F
実売価格:9,500円前後
低価格モデルとしてはめずらしくGPUを搭載しない分、CPU性能はパワフル。ビデオカードが必須になるが、激安ゲーミングPC、ビデオカードが流用できる場合などにはかなりお買い得だ。

DOS/V POWER REPORT 2020年春号では「PC自作のキホン」と題し、PC自作の“今”をふんだんに盛り込んだ自作入門特集を掲載している。2020年春号ではこのほか、巻頭企画「Threadripper 3990Xのトリセツ」、第2特集「鬼コスパゲーミングPC作成術」などを掲載。さらに160ページの豪華付録小冊子「PC自作用語辞典」も付属し、PC自作初心者から上級者までマストバイの1冊です。

【検証環境】

マザーボード:<Socket sTRX4>ASRock TRX40 Taichi(AMD TRX40)、<Socket AM4>GIGA-BYTE X570 AORUS MASTER(rev. 1.0)(AMD X570)、MSI X370 GAMING PRO CARBON(AMD X370 ※Athlon 200GEのみ)、メモリ:G.Skill F4-3200C14D-16GTZR(PC4-25600 DDR4 SDRAM 8GB×2 ※各CPUの定格で動作)×2(※Athlon 200GEのみ8GB×2)、ビデオカード:NVIDIA GeForce RTX 2080 Ti Founders Edition、SSD:Western Digital WD Black NVMe WDS100T2X0C[M.2(PCI Express 3.0 x4)、1TB]、OS:Windows 10 Pro 64bit版