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NTTコミュニケーションズが教育支援システム開発のコードタクトを買収
2020年1月28日 16:47
文部科学省のGIGAスクール構想を発表など、教育分野へのIT導入の促進が注目を集めるなか、NTTコミュニケーションズ(NTT Com)は、同社が掲げる「スマートエデュケーション」への取り組みを強化。その一環として、授業支援システム「schoolTakt(スクールタクト)」を開発するコードタクトの株式を取得し、連結子会社化したと発表した。
NTT Comは、創業以来、約20年間にわたって教育のICT化を支援。総務省や内閣府などの「実証事業への参画」や、教育クラウドサービス「まなびポケット」の提供などによる「サービス化」、コンサルティングや校内LAN/WAN能の整備、デジタルコンテンツの提供をはじめとする「自治体における個別案件」への取り組みを、三位一体で推進しているのが特徴だ。
「学校のICTインフラ整備などのソリューションを提供する上で、現場での課題や苦労を熟知しており、学校現場からの信頼を得ているのが、NTT Comの特徴である」(NTTコミュニケーションズ 第三営業本部担当部長兼NTT Comスマートエデュケーション推進室長の宮川龍太郎氏)とする。
2017年度から提供を開始した「まなびポケット」は、全国60以上の教育委員会、400以上の学校、20万以上の児童、生徒、教職員に利用されているという。
「まなびポケットは、多種多様なデジタル教材を提供する学習系パブリッククラウドサービスであり、マルチOS、マルチブラウザに対応。提供する約20種類のアプリケーションや、Office 365やGsuiteも、すべてシングルサインオンで利用できる。現場では、生徒がサインオンをして、学習を開始するまでに5~10分かかるが、シングルサインオンによって、こうした現場の負荷を低減できる。また、まなびポケットを通じて蓄積される行動/学習データを分析して、個々人の習熟度や目指す姿に応じた教育を実現できる」という。
将来的には、日々蓄積されるスタディログなどのデータを分析。学習塾などとの連携を進めるなど、新たなデータ流通ビジネスを創出することも狙うという。
「これからは、学歴よりも、学習歴が重視されると考えており、まなびポケットはそれを支援するツールになる」などとした。
NTT Comが提唱するスマートエデュケーション
NTT Comでは、ICTやデータを活用して社会課題を解決する「Smart World」と呼ぶコンセプトを打ち出しており、それを具現化するために、2019年10月1日に、新たに5つの推進室を設置。その1つが、スマートエデュケーション推進室となる。
「スマートエデュケーション」は、ICTによって教育現場を革新。「いつでも、どこでも学ぶことができる、まなびのプラットフォームの提供」、「個々人がやりたいことや習熟度に応じたテーラーメイド型の教育を提供」、「個々人の心身の状況や、クラスの状況を把握し、教員にアラートがあがる仕組みの提供」、「個々人の学習や活動のログデータの分析、提供による新たな価値と市場の形成」という4つの観点から取り組んでいるという。
「デジタル技術を活用して、学力格差の是正、教員の負荷軽減、不登校やいじめの抑止など、教育現場の課題を解決していく」とし、「文部科学省のGIGAスクール構想は、2,318億円という規模の国費が投入されるものであり、当社が各自治体を支援するチャンスにもなる。だが、現時点では、どう運用していくのかという点が発表されていない。それらを含めた要項が発表された時点で、当社のアクションプランを説明する機会を設けたい。教育分野のICTは、整備よりも、利活用が進むことが大切であり、そこを支援していきたい」などと述べた。
一方、今回、連結子会社化したコードタクトは、2015年に設立した企業で、代表取締役兼CEOの後藤正樹氏は、IPAが行なっている未踏スーパークリエータに認定されているほか、総務省先導的教育システム実証事業のプロジェクトマネージャーなどを務める傍ら、プロオーケストラ指揮者という顔を持つ。
同社が開発した「schoolTakt」は、タブレットやスマートフォン、PCなどのさまざまなデバイスで利用できる授業支援システムで、現在、500校、5万人が利用しているという。
schoolTaktにプリセットされているさまざまな教材や、教員などが持っているPDF素材や写真をアップロードして授業に活用でき、同時に、生徒の学習状況をリアルタイムに把握したり、生徒同士の解答を共有したりといったことが可能になるため、「みんなで学び合う」という学習環境が構築できるという。これまでにも、まなびポケットのアプリケーションの1つとして提供されてきた。
コードタクト 代表取締役兼CEOの後藤正樹氏は、「当社は、いまの時代にあった教育へと、現場をアップデートすることを目指している。いまは、生徒が主体性を持った教育が求められ、協働的な学びが増加することになる。そうした教育環境の実現を支援することになる」とした。
また、「schoolTaktは、現場の先生の声を受けて進化する授業支援システムであり、朝のホームルームや学校行事の振り返り、職員会議など、授業以外の活動でも利用できる特徴がある。さらに、新学習指導要領やEBPM(証拠に基づく政策立案)推進にも対応している」と説明。生徒同士による協働学習や、生徒間の人間関係の分析、可視化を通じた学級経営支援などを実現するソリューションを提供しているほか、教育現場におけるデジタルトランスフォーメーションを推進。教育現場から得られる生徒の学習データや校務データなどを安心、安全に活用し、個々の生徒の適した学習環境を提供。教育領域における新たな価値創造を進めていくことになるという。
「schoolTaktのコミュニケーションログの分析により、授業状態の可視化、危険な状態の生徒の早期発見が可能になる。今後は心理アンケートとの掛け合わせにより、さらなる精度向上にも取り組むことができる」(NTTコミュニケーションズの宮川氏)としている。
NTT Comでは、今回のコードタクトの連結子会社化について、「コードタクトとは、長年の信頼関係があり、まなびポケットの開発の一部をコードタクトに委託してきた経緯もある。今後、スマートエデュケーションの取り組みを加速させることができる」(NTTコミュニケーションズの宮川氏)とする一方、コードタクトの後藤CEOは、「GIGAスクール構想により、学校への1人1台の整備が進むなど、環境が大きく変化するなかで、よりスピードが求められる。そのためにNTT Comとしっかりと組むことを考えた。当社は、開発力はあるが、営業力やマーケティング力が弱い。それを補完できる。また、今後は、企業への導入進め、企業における学習力とマッチさせて、子供たちが将来目指す方向を提示するといった使い方も見込みたい」などとした。