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シャープ、「BIG PAD」とタブレットを活用した介護施設支援

タッチ操作でゲームを楽しみながらトレーニングできる

 シャープは、BIG PADおよびタブレットを活用した介護施設支援ソリューション「頭の健康管理サービス」を製品化。2019年8月1日から提供を開始する。

 介護施設の利用者の「アセスメント(興味・関心チェック)」から「訓練計画作成」、「日々のおすすめ訓練提示」、「訓練結果の記録・管理・見える化」までをシームレスに支援する日本で初めてのサービスであり、介護施設における高齢者の生活機能訓練に関わる一連の業務をサポート。介護施設スタッフの作業量を削減し、業務効率化に貢献することができるとしている。

 「頭の健康管理サービス」では、東北大学加齢医学研究所所長である川島隆太教授の監修による「スピード勝負」など、認知機能を刺激する5カテゴリ20種類の「頭の健康ゲーム」を提供。40型タッチディスプレイ「BIG PAD」の大画面を使い、簡単なタッチ操作でゲームを楽しみながらトレーニングすることができる。

 東北大学では、同ゲーム群を、1日に15分程度行なうことにより、認知機能に作用する処理速度の向上などに効果があることを実験で実証。学術論文として発表している。

40型の「BIG PAD(PN-L401C)」とともに提供される「頭の健康管理サービス」
認知機能を刺激する5カテゴリ20種類の「頭の健康ゲーム」を提供
2人でできるゲームも用意。高齢者層でも簡単に操作できるUIを採用している

 これらのゲームは、BIG PADに表示されるチェックリストにより、利用者の興味や関心の絞り込みと目標設定を行なうことで、記憶力や計算力といったトレーニングすべき認知機能を自動的に抽出した結果、設定されることになる。

 たとえば、チェックリストから、「買い物をする」といった項目を選び、そこから「商品を思い出す」、「商品を探し出す」といった行動のなかで、「してみたい」、「している」といった興味、関心の度合いを選択。さらに、期間や頻度などのトレーニング量などの基本情報を設定するだけで、これらのアセスメント結果に基づく訓練計画プログラムを自動作成。利用者ごとに、日々のおすすめ訓練ゲームを表示する。

 さらに、訓練結果や履歴は、BIG PADおよびクラウド上で自動的に管理。集計結果はチャートとグラフで表示され、これをもとにアセスメントを繰り返すことで、より効果的に認知機能に刺激を与えることができるという。

 また、クラウドを活用していることから、ゲーム内容を改良したり、メニューを追加したりといったことも可能だという。

BIG PADに表示されるチェックリストにより、利用者の興味や関心の絞り込む
訓練計画として記憶力や計算力といったトレーニングすべき認知機能を自動的に抽出
個人を管理できるICカードはオプションで提供
ICカードリーダーで個人認証を行なう

 なお、アセスメント機能は、森ノ宮医療大学保健医療学部の横井賀津志教授と藍野大学医療保健学部の酒井浩教授による共同研究開発の成果に基づいて、シャープが開発。また、BIG PADに表示されるチェックリストは、厚生労働省が推奨する「興味・関心チェックシート」に準拠して、一部の重点項目を詳細化したものになっている。

 さらに、オプションで提供するICカードおよびICカードリーダーによって、簡単に個人認証を行ない、利用者ごとに最適な「おすすめゲーム」を表示したり、訓練結果や履歴を記録、管理、見える化ができるようになる。

 「利用者ごとの訓練結果や履歴は、自動的にBIG PADおよびクラウド上に記録されるため、施設スタッフは、各利用者の利用状況や訓練結果の推移を、ブラウザ上で確認し、状況に応じたきめ細かな対応や支援を行なうことが可能になる」(シャープ ビジネスソリューション事業本部ビジュアルソリューション事業部第一技術部新規開発チームの佐田いち子課長)という。

 さらに、在宅時にも同様のサービスが利用できるように、タブレット端末用健康管理サービスとして、「未病倶楽部」を提供。日々の生活のなかで、体重や血圧などの健康情報を記録したり、タブレット端末から「頭の健康ゲーム」を利用できる。施設スタッフは、各利用者の各種情報や経時変化を「健康グラフ」や「健康レポート」としてブラウザから確認することができ、介護サービスに活かせる。

 シャープでは、今回の製品化に向けて、2012年から自治体や高齢者団体との連携により、実証実験を行なってきた経緯がある。

 2012年からは、奈良県王寺町の高齢者団体「未病クラブ」における実証実験を行ない、2014年からは奈良県、神奈川県の公募事業に参加。2015年からは経済産業省の公募事業として、三重県亀山市とともに亀山市シルバー人材センターとの協業を開始。今回製品化した「頭の健康管理サービス」に関しては、2017年から、癒しのデイサービス川西、スーパーデイサービス癒しの伊丹館、癒しのデイサービス尼崎、社会医療法人若弘会介護老人保健施設竜間之郷といった介護施設でのトライアルを実施してきた。

シャープ ビジネスソリューション事業本部ビジュアルソリューション事業部の山本信介事業部長

 「高齢者の声を反映し、健康管理や介護ニーズを発掘するとともに、高齢者でも使いやすいUIの研究も進めてきた。ゲームの操作などにおいては、シャープ独自の『シニアシフトUI』により、高齢者でも直感的に操作できるように改良した」(シャープ ビジネスソリューション事業本部ビジュアルソリューション事業部の山本信介事業部長)という。

 介護サービスの提供事業者にとっても、「頭の健康管理サービス」を利用することで、顧客満足度の向上、他施設との差別化、業務効率化、介護報酬の加算申請といったメリットがあるという。

 そして、「シャープのBtoB向けディスプレイビジネスのノウハウ、販売体制、実証実験の成果、大学が持つ知見を組み合わせて、製品化したものになる」と位置づける。

 山本部長は、「2015年には約450万人だった介護サービス利用者は、2020年には約531万人に拡大し、全国の介護施設の不足数は約181万人分に達するとみられている。一方で、介護保険法の改正により基本報酬が削減され、介護施設では、介護職員の人手不足、人件費の高騰といった問題も生まれている」と紹介。

 「介護サービスには、在宅サービス、通所サービス、入所サービスがあるが、今回の『頭の健康管理サービス』は、通所サービスをメインターゲットとしたソリューションになる。生活機能訓練におけるアセスメントから訓練計画の作成、訓練実施、結果集計といった作業は、介護施設のスタッフにとって大きな負担になっていたが、この介護施設支援ソリューションを利用することで、業務の手間を3~4割削減できるだろう」とした。

 ビジネスソリューション事業本部ビジュアルソリューション事業部第一技術部新規開発チームの佐田いち子課長は、「これまで結果集計は手書きで行なっているという介護施設が多く、データ活用には限界があったが、このソリューションを活用することで、データのデジタル化や可視化が可能になり、データを活用することで、介護サービスの強化にもつなげることができる」としている。

 「頭の健康管理サービス」の価格はオープンだが、40型の「BIG PAD(PN-L401C)」、コントローラボード「PN-ZB03C」、ディスプレイ用スタンド「#FST03B」の標準構成ハードウェアの価格は、年間106,000円。20種類の頭の健康ゲームによる施設基本ライセンスを加えると、年間25万円程度になるという。

 さらに、オプションで提供されるICカードやICカードリーダーは、30人が利用すると想定して、年間114,000円、ICカードによる個人管理ライセンスが年間48,000円。これに機能訓練ライセンスを加えると、オプション全体で年間498,000円になる。

 そのほか、在宅時に利用する10型のAndroid搭載専用タブレットは5~6万円を想定。在宅時にゲームや測定記録や体調記録、食事記録、服薬管理などを行なうための健康管理ライセンスは10人が利用した場合、年間144,000円となる。

タブレットで利用できる健康管理サービス「未病倶楽部」
自宅にいてもさまざまな情報を記録できる
カレンダー形式でわかりやすい操作環境を実現