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Microsoftの語る、教育への投資の重要性とテクノロジーのあり方

米Microsoft ワールドワイドエデュケーション担当 バイスプレジデント Anthony Salcito氏

 日本マイクロソフト株式会社は、教育分野の取り組みに関する記者説明会を開催した。

 説明会には、米Microsoft ワールドワイドエデュケーション担当 バイスプレジデントのアンソニー・サルシト(Anthony Salcito)氏が登壇し、グローバルにおけるMicrosoftの教育分野での状況などを説明した。

教育の節目

 同氏は、「持続可能な経済成長」と「質の高い生活」を送る上で、教育というものが重要であることに社会が気づき始めたと述べ、現在教育分野は重要な節目に差し掛かっているとした。

 ビジネス分野では大きな変化が進んでいるが、変化によって必要なスキルも変わるため、全体で人を求める基準が変わっていると説明。デジタルトランスフォーメーションによって、人に求められてくるのはより高い創造性や協調性、リーダーシップなどの人間的要素であると述べ、日本社会がとくに認識すべき点はそこで、デジタルトランスフォーメーションは技術のための変化ではなく人のための変化であることを認識すべきだとした。

 そして職場でのみ要求されるスキルだけでなく、人と人との関係を構成する要素などは人間が中心であり、つまり学校で学ぶものであると語り、子供たちが才能を世界の課題を解決に発揮できるような世界を実現するには教育の変革が必要であるという。その教育への投資を自信を持って行なうことが重要で、教育機関や団体のリーダー、ひいては社会のマインドが変わらなければならないとした。

産業革命
第4次産業革命の時代
デジタルトランスフォーメーションは技術でなく人を変化させるもの
Hacking Culture

 テクノロジーを活用した教育において、教師など教育者は役割が減るのではないかという危惧も聞かれるが、教育者の重要性は減らず、むしろ逆に重要性が高まるとした。

 ビジネスの変化に見合った教育が求められるなかで、テクノロジーによって学習はパーソナルなものとなり、子どもたち個々が直面する問題も個別に解決することが可能となると述べ、前述のように教育者の重要性は増すが、同時に役割も替わりつつあると説明。

 その教育者の役割の変化も、クラウド活用などによる働き方の改革や、データを活用した新たな指導などがテクノロジーによって可能になるとした。

Education Agency(教育機関)ではなくStudent Agency

 同氏は、これからの教育に必要な観点として、「学ぶこと」自体ではなく「なんのために学ぶのか」を重視した、教育そのものではなく子どもを中心に考えた「Student Agency」の考えを紹介。

 当然ながら、子どもたちが学んでいることと未来はマッチしていなければならないが、実際にはそうなっていないことが多々ある。それは内容だけでなく、評価方法もしかりで、学ぶ意味や、なぜ評価に今の方法が使われるのかが明確になっていないためだとした。そのために、意味があり卒業後に役立つ学びが「子どもたちの幸福」につながると語った。

 先進的な例として、フィンランドでは教育において子供の幸福を最重要視しており、肉体の健康や対人関係といった健全性のケアを進めており、Microsoftの研究でも、幸福度の高い子どもは対人関係の結果も良いことがわかっているという。

 ビジネスでは、コラボレーション経済が進んでおり、社会に出たあとの職場においても、他者と共同で問題に解決することが求められるため、社会性や感情の学習は重要なファクターであり、教育を通じてリーダーを養成していくことが、幸福な学生を増やすための変化につながるとした。

Student Agency

教育におけるテクノロジーの立場

 Microsoftでは、MinecraftやGitHub、教育向けソーシャルネットワークサービスのFlipgridといった買収を通じ、教育機関への提供サービスを拡充している。

買収した企業/サービス

 ビジネスにおいては、場所を問わない働き方の変化など、流動性やダイナミクスが高まり、グローバル化も進んでいる。テクノロジーがビジネスの中核となっていくだけでなく、温暖化などの世界規模の問題解決にもテクノロジーで解決することが目指されている。

 同氏は、そういった世界のなかで、求められる能力と実際の子どもとのあいだにはギャップがあると述べ、大学のような高等教育に限らず、幼稚園生から準備が必要になっていると説明。

 未来を駆動する5つのテクノロジーとして、大量のデータを処理する人工知能(AI)、デジタルデバイスとクラウドを結ぶIoT、没入型ツールでより理解を深められる複合現実(MR)、セキュアな情報処理を実現するブロックチェーン、さまざまな問題の解決につながる量子コンピューティングを挙げ、「遠い未来」として描いていた世界は、もはや「近い未来」として迫りつつあるとし、その時代に適応できる人材が求められるとした。

 同社では、「トランスフォーメーションフレームワーク」として、教育全般にわたって「今後どちらに向けて変化してくことになるのか」をまとめたフレームワークを提供しており、学ぶという作業に伴う、教えるためのオペレーションやリソース、データの効率よい提供といった要素が網羅されている。

 このフレームワークはMicrosoft以外のテクノロジーを交えることも考えられており、従来のように伝統的な紙ベースのものも教育では教えることが必要であるとした。

 同氏は、今の状況はチャンスを目の前にしているのだと語り、これはMicrosoftの成功についての話ではなく、デジタルシフトと変革が目の前に迫り、グローバルにベストプラクティスを活用し、学生たちが健康に「活発な市民」となって社会に参加していく未来を作ることが重要で、同社はそのためのコミットメントを続けていくと述べた。

働く場所のトレンド
未来を駆動する次世代の技術
教育への技術活用例
テクノロジーを使って障碍などを乗り越え誰もが学ぶことができる環境を実現する
AIの倫理
Microsoftの掲げる企業理念
Transformation Framework

国内での事例

 日本マイクロソフト株式会社 業務執行社員 パブリックセクター事業本部 文教営業統括本部 統括本部長の中井陽子氏は、国内での事例について紹介。

 ビジネス領域だけではなく、教育機関におけるクラウドの採用も加速しており、年々倍化しているという。大学での採用がより進んでいるが、義務教育機関でも採用が進んでいるとした。

 デバイスに関しては、現在は5.7人で1台のPCを共有するという普及率だが、Windows PCに限って見ても、2018年でデバイス数は13%増で、2019年度は15%増となっており、4年後には現在の2倍になっているのではないかとの見通しを示した。

日本マイクロソフト株式会社 業務執行社員 パブリックセクター事業本部 文教営業統括本部 統括本部長 中井陽子氏
文科省などを対象とした教育ラウンドテーブルを開催
国内教育機関でもクラウド/デバイス採用が進む
2019年の事例
初等中等教育
高等教育
東海大学での事例
近畿大学での事例
今後の注力分野