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Kryo 485/Adreno 640搭載など、「Snapdragon 855」の技術が明らかに
~DSPにはTensorアクセラレータを新規搭載、SoC全体で7TOPSの性能を実現
2018年12月6日 11:42
Qualcommはアメリカ合衆国ハワイ州マウイ島において、プライベートテックイベントSnapdragon Tech Summitを12月4日~12月6日(現地時間)の3日間にわたって開催している。2日目は初日の基調講演で発表された次世代SoC「Snapdragon 855」の技術的なスペックなどを公開した。
Snapdragon 855は、CPUのKryo 485、GPUのAdreno 640、DSPのHexagon 690、ISPのSpectra 380、4GモデムのSnapdragon X24 LTE modemから構成されているSoCだ。CPU/GPU/DSPからなる第4世代のAIエンジンを搭載しており、前世代に比べて3倍のAI性能を実現している。
また、無線関連ではWi-Fi 6(IEEE 802.11ax)に対応しているほか、WiGig(IEEE 802.11ad)の新しい規格となるIEEE 802.11ayが使えるなどの特徴を備えている。
A76ベースカスタムのKryo 485は45%性能が向上、GPU/DSPと併せてSoC全体で7TOPSのAI性能を実現
Qualcommが発表した新しいSnapdragon 855は、前世代となるSnapdragon 845となる後継製品で、CPU、GPU、DSPなど全般にわたって手が入れられており、大規模なアップデートとなっている。
Snapdragon 855 | Snapdragon 845 | Snapdragon 835 | Snapdragon 820 | Snapdragon 810 | Snapdragon 805 | Snapdragon 800 | |
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CPU | Kryo 485(8コア)/64bit | Kryo 385(8コア)/64bit | Kryo 280(8コア)/64bit | Kryo(4コア)/64bit | Cortex-A57/53(8コア)/64bit | Krait 450(4コア)/32bit | Krait 400(4コア)/32bit |
GPU | Adreno 640 | Adreno 630 | Adreno 540 | Adreno 530 | Adreno 430 | Adreno 420 | Adreno 330 |
DSP | Hexagon 690 | Hexagon 685 | Hexagon 682 | Hexagon 680 | Hexagon DSP | ||
ISP | Spectra 380 | Spectra 280 | Spectra 180 | 2xISP | |||
システムキャッシュ | 5MB | 3MB | - | ||||
モデム(CAT、下り) | X24(CAT20, 2Gbps) | X20(CAT18, 1.2Gbps) | X16(CAT16, 1Gbps) | X12(CAT13, 600Mbps) | X10(CAT9, 450Mbps) | X7(CAT6, 300Mbps) | n/a |
プロセスルール | 7nm | 10nm(Samsung 10nmLPP) | 10nm(Samsung 10nmLPE) | 14nm | 20nm | 28nm | |
発表 | 2018年Q4 | 2017年Q4 | 2016年Q4 | 2015年Q4 | 2014年Q2 | 2013年Q4 | 2013年Q1 |
おもな搭載製品の出荷 | 2019年1H(予定) | 2018年1H(予定) | 2017年1H | 2016年 | 2015年 | 2014年 | 2013年 |
CPUとなるKryo 485は、ArmのCortex A76ベースのカスタムデザインになっており、8コアだがコアは3つの部分に分かれている。
1つはプライムコアと呼ばれる最大2.84GHzまでクロックが引き上げられるシングルコア。2つ目はパフォーマンスコアと呼ばれる最大2.42GHzになる3コア。3つ目は1.8GHzまで引き上げられる1.8GHzの4コアとなっている。
ただし、プライムコアとパフォーマンスコアは同じ電力供給下で動くという仕組みだ。Qualcommは明言していないが、ArmのDynamIQベースの動作だと思われる。また前世代(Snapdragon 845のKryo 385)から搭載されているシステムキャッシュも3MBから5MBへと増やされている。メモリはLPDDR4xに対応しており、最大で2,133MHzで動作する。
これらの改良によりCPUの性能は従来世代のSnapdragon 845に搭載されていたKryo 385と比較して45%性能が向上しているという。
GPUはAdreno 640となり、内蔵FPのALUが50%増えており、前世代に比べて性能が20%向上するという。対応するAPIとしてOpenGL ES 3.2、OpenCL 2.0 FPに加えて、モバイル向けのGPUとしては初めてVulkan 1.1に対応している。
また、HDR10+、HDR10、HLG、Dolby VisionなどのHDRの各規格もサポート。H.265/VP9のハードウェアデコーダを搭載しており、H.265やVP9に対応した動画を再生するときに、より低い消費電力で再生することができる。
DSPとなるHexagon 690 Processorは、従来から内蔵されているスカラーエンジン、ベクターエンジンがそれぞれ前世代に比較して1.2倍、2倍に強化されている。さらに今回の世代から新しくHexagon Tensor Acceleratorと呼ばれるTensor演算のアクセラレータが用意されており、深層学習(ディープラーニング)の推論を専門に行なうエンジンが用意されている。
Qualcommでは以前よりAI関連の処理は、CPU/GPU/DSPをまとめて扱うソフトウェアを提供することで行なってきたが、そうしたAIのエンジンが第4世代に進化して、より性能が上がっている。
CPUはFP32とINT8、GPUでFP32とFP16、そしてDSPではINT16とINT8を混在して扱えるようになっており、それらをソフトウェアのランタイムがリアルタイムに最適なハードウェアに割り当てながら処理していく仕組みになっている。
これにより、Snapdragon 855はAI性能は7TOPSを実現しており、前世代のSnapdragon 845に比較して3倍になっており、7nm世代のAndroid向け他社製SoC(HUAWEIのKirin 980)に比べて2倍の性能を実現していると説明している。
オプションチップと合わせて5Gに対応、Wi-Fi 6/IEEE 802.11ayなどの新Wi-Fiに対応
Snapdragon 855は5Gに対応している。ただし、5Gは外付けのモデムチップとなるSnapdragon X50 5G modemと組み合わせて実現される。
Snapdragon X50 5G modemは、5Gのみに対応したシングルモードのモデムになっており、4G以前との互換性はSnapdragon 855に内蔵されているSnapdragon X24 4G modem(Cat20対応、下り最大2Gbps)により実現される。このため、OEMメーカーは4Gのみ必要ならSoC単体で実装すればいいし、5Gが必要な場合にはSnapdragon X50 5G modemを別途搭載するというかたちでデザインを分けることができる。
なお、Qualcommでは無線周りを、RF、そしてRFフロントエンド、アンテナを1つのモジュールとして提供しており、ミリ波の5G向けには「QTM052」という1モジュールで提供しており、OEMメーカーが簡単にミリ波の5Gアンテナを実装できるようにしている。
セルラー以外の無線も強化されている。最大の特徴はWi-Fi 6(IEEE 802.11ax)に標準で対応していることだ。現在はドラフトとしての搭載になるが、将来規格が固まれば正式対応が謳われることになるだろう。
QualcommのSoCはいわゆるWiGigで知られる超広帯域通信のIEEE 802.11adに対応していたが、今回のSnapdragon 855ではその上位規格となるIEEE 802.11ayに対応している。IEEE 802.11ayはWiGigと同じく60GHzで通信するが、通信方式などの改善などにより、最大で176Gbpsの通信速度を実現する。
これによりWiGigでは対応することが難しかった4Kディスプレイのワイヤレス化などが期待される。なお、Qualcommのスペックでは10Gbpsまでの対応となっている。
また、カメラで撮影した静止画や動画の処理を行なうISP(Image Signal Processor)もSpectra 380に強化されている。
デュアルパイプであることに変化はないが、新しくハードウェアのCV(Computer Vision)エンジンが内蔵。複数の物体認識、複数の物体追尾、物体の分類、60フレームの深度認識、6DoFの動体追尾、画像安定化などの処理がCVエンジンを利用して行なうことができ、かつそれらの処理にCPUやGPU、DSPなどを使う必要がなくなるため、消費電力を削減できる。
また、HDRの処理も強化されており、ポートレートモードで4K60 HDRの動画を処理可能。HEIFにも対応している。
Snapdragon 855は7nmプロセスルールに基づいて生産され、ファウンダリはTSMC。すでにOEMメーカーに対してサンプル出荷が開始されており、2019年の前半にSnapdragon 855を搭載した商用製品が市場に投入される見通しだ。