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オーディオ評論家がズバリ診断!

~マザーボードの高音質サウンド機能は本当に高音質か

 PCのオンボードサウンド機能。この機能が普及したせいで、わざわざサウンドカードを増設するユーザーは少なくなった。また、最初からこの機能を当てにせずに、いきなりUSB DACなどを接続して、ハイレゾ音源再生などを楽しむ人も増えてきている。さて、この「オンボードサウンド機能」。いったいどのくらいの品質なのか。オーディオ的視点で聴き比べてみた。

TEXT:ゴン川野
アナログレコード、CD、ハイレゾの3世代音源を耳で経験。バブル期には海外ハイエンドメーカーを取材しまくり、現在は地道にWebコンテンツ@DIMEにてPCAudioLabを連載中。真空管アンプにスピーカーキットからハイレゾ、ラズパイまで守備範囲はやたら広い

ネットでよく聞くこんな意見

・ハイレゾ音源なんか聞かないから、オンボードで十分じゃないかな……
・最近のマザーはサウンド機能が強化されていると言うけれど、そんなに違いがあるの? ・PCにヘッドフォンを付けても音量が上がらない……。どうして?
・そもそもPCケースの中はノイズだらけなんだから、いくら頑張ってもたかが知れてるよ(笑)

見えないから気になるPCの音質オーディオ的な評価をしてみよう

 オーディオの音源がデジタル化されてから、PCオーディオというジャンルが生まれた。現在ではPC主体のユーザーとオーディオ主体のユーザーが同じ音源を別々の方法で再生していることが多い。どんな再生方法を選ぶかはユーザーの求める音や予算、スペースなどによるが、PC視点で見るとマザーボード、サウンドカード、外付けUSB DACの順でオーディオに近付いていく。

 PCのサウンドに関しては、いろいろな言説があり、どの部分が音質に影響を与えているのか、有効なカスタマイズ方法は何か、音質を左右するスペックなどがネット上で議論されている。オーディオマニアの間でも同様の議論がアナログ時代からあり、デジタルになってからDACの音質やジッタ、クロックなど、以前はなかった要素が加わってきた。この両者の間には共通点も多いに違いない。

 今回はオーディオ的視点から、マザーボードのオンボードサウンドがどの程度のクオリティを持っているかを検証する。ハイレゾ音源を使いイヤフォン&ヘッドフォンとアクティブスピーカーを使って視聴を行なってみた。

試聴環境と方法

 マザーボードの種類は多岐にわたっているため、サウンド機能が強化されたハイエンド製品と、サウンド機能にも気を配ったスタンダードクラスの製品から代表選手を選んでテストすることとした。

 さらに比較用リファレンスとして1万円以下のUSB DACも準備。それに加えて8年落ちのノートPCを古いPC環境のサンプルとして用意した。この4つの環境で音の違い評価していく。

 なお、視聴にはオーディオ用として評価の高いヘッドフォンとイヤフォン、アクティブスピーカーを使い、それぞれのヘッドフォン出力とライン出力を聞き比べた。接続ケーブルにはORBのオーディオ用を使用。サンプリング周波数192kHz、量子化bit数24bitのハイレゾ音源を中心にジャズ、ロック、女性ボーカルなどジャンルの違う音楽を聞いた。

試聴曲
井筒香奈江
「Laidback2018」(192kHz/24bit)
エコーなどを使わず純粋にボーカルを収録した一連のアルバムでオーディオファンに人気の井筒香奈江の最新作。ハイレゾ音源はWAV、FLAC、DSDから選べ、CDとレコードも発売されているので試聴に最適。
Izutsu Kanae Official website.

8年落ちのノートPC

 「軽量」、「長時間」、「頑丈(タフ)」をコンセプトに、多くのビジネスマンに好まれた2010年発売の法人向けモバイルノートPC。Core i5-560M vProを搭載し、最高15時間のバッテリ駆動に対応していた。メモリは標準で2GB、ストレージはHDD、OSはWindows 7を搭載するという、今となってはサブ機にすることすら心もとないスペックだ。

スタンダードマザーボード

 9世代Intel Coreシリーズに合わせてリリースされた、Z390採用のミドルレンジのゲーミング向けマザーボード。シンプルな装備のみに絞った仕様ながら、大型のビデオカード用にPCI Expressスロットを強化するSteel ArmorやRGB LEDライティング機能、32Gbps対応の高速なM.2対応など、ゲーミングを楽しむ要素が搭載されている。

ハイエンドマザーボード

 MSIのZ390搭載フラグシップマザーボード。18フェーズのVRMを搭載して多コアの新CPUの安定駆動に対応するほか、4-wayのマルチGPUをサポートするなど、高い拡張性を備えている。サウンド機能も豪華で、6.3mmのフォンジャックがそのまま挿さるコネクタのほか、マザーボードでありながらハイレゾ認証を取得するという徹底ぶりだ。

1万円以下のUSB DAC

 FX-AUDIO-は日本で設計、中国で生産という手法で、ハイコスパで高音質な製品を供給しているブランドだ。DAC-X6JはUSB接続で96kHz/24bit、同軸または光接続で192kHz/24bitに対応するUSB DACで、別売りのACアダプタで駆動する。アンダー1万円ながらこだわりのパーツを採用している。

オカルト診断。高級マザーボードのオンボードサウンドは中級DAPレベル。決してオカルトではない!

 今回の企画の話を聞いて、サウンドカードでなくオンボードサウンドでまともな音が出るのだろうか? とまず疑問に思った。2004年からHD Audio規格に準拠してハイレゾ対応になったらしく、8年落ちのノートPCでもFLACのハイレゾ音源を再生することができた。イヤフォンの音はイマイチだが、アクティブスピーカーなら、それなりにハイレゾ感も味わえる。それなら最新版のマザーボードはどうなのか。

「MPG Z390 GAMING PLUS」は、低音の量感を重視したバランスだが、高音が刺さるようなこともなく、わりとハイファイ指向の音。ヘッドフォンではややゲインが不足しており、スピーカーに接続したほうが好印象だった。

 「MEG Z390 GODLIKE」はハイエンドオーディオ用DACを搭載、音質対策部品などを使っているだけあって、オンボードサウンドとは思えない音の完成度。サウンドカードはもういらないとさえ感じるほどでどれを接続しても文句なし。音が鮮明で粒立ちがよく、輪郭もシャープでハイレゾ再生向きだ。とくに低域の解像度が高いのがよい。オーディオ機器との接続はステレオミニからRCAピンの上質な変換ケーブルを使いたい。

 PC内部という劣悪なノイズ環境、ほかの機器と共有の電源部を使いながら、ここまで高音質が出せたことに、マザーボードの進化を感じることができた。

使い慣れたヘッドフォンやイヤフォン、スピーカーで、納得のいくまで何度も試聴を繰り返す川野氏。側で聞いていても、機材を入れ換えるたびに音が変わるというのは新鮮な体験だった(編集部)
【試聴環境】CPU:Intel Core i5-8400(2.8GHz)、メモリ:Kingston Technology HyperX FURY HX433C16PB3K2/16(PC4-26600 DDR4 SDRAM 8GB×2)、ビデオカード:ZOTAC International ZOTAC GeForce GTX 1050 Ti Mini ZT-P10510A-10L(GeForce GTX 1050 Ti、4GB)、SSD:Micron Technology Crucial P1 500GB 3D NAND NVMe PCIe M.2 SSD CT500P1SSD8[M.2(PCI Express x4)、500GB]、電源ユニット:Corsair RMx White Series RM850x(850W、80PLUS Gold)、CPUクーラー:サイズ 超天(トップフロー、12cm角)、PCケース:Fractal Design Define R5、OS:Windows 10 Pro 64bit版、音楽再生ソフト:Jriver Media Center

告知

本記事は、DOS/V POWER REPORT1月号「特集 事実か、オカルトか。「PCの真実」を探る」からの抜粋です。この特集では、PCに関する噂や常識として流布されている事柄が根拠のある事実なのか、思い込みに近いものなのか、はたまた古い常識が新しい常識に置き換わったのかなどを、各種検証によって明らかにしていきます。