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ゲーミングキーボードの違い、分かってる?

~知っておきたい八つのキーワード

 ゲーミングPCにおいてキーボードは自分の手であり足である。精密操作や手数勝負のゲームでは高性能ゲーミングキーボードが必須。ゲーミングキーボードの“うたい文句”をどう読み解けばよいのか、重要なキーワードに絞って解説していこう。(TEXT:加藤勝明)

アクチュエーションポイントとは?

 キー打鍵時に内部のスイッチがOFFからONへ切り換わるポイント、これを「アクチュエーションポイント」と呼ぶ。一般的なメカニカルキースイッチでは、2.2mm程度押し込んだところにアクチュエーションポイントがある。だが高速入力が命のゲーミングキーボードには、1.5mm程度に設定されたスイッチ、すなわち“スピード軸”を採用した製品もある。キーをなでるように打鍵すれば反応するので高速打鍵が可能だが、少々慣れが必要だ。

OFFの状態から押し込んでいくと、通常のキーボードは2.2mm付近でONになり、3~4mmで底打ち(ボトムアウト)する。アクチュエーションポイントを浅くすれば、コンマ何秒か打鍵を速くすることができる
Cherry MX RGB RedとSpeed Siiverのアクチュエーションポイント差は0.7mm。写真はやや誇張されているが、左のRGB Redがある程度押し込まないと反応しないのに対し、右のSpeed Silverはほんの少し押し込むだけで反応する

荷重って何?

 キーボードの中に入っているスイッチ、いわゆるキースイッチは中にラバードームやスプリングなどを仕込んで押し込んでも戻るようになっている。この反発力の重い・軽いがキーの荷重と呼ばれるものだ。

 荷重は軽いものでは30g(軽く触れれば沈む)、重いものは80g(意識的に押さないと沈まない)までさまざまだが、ゲーミングキーボードは荷重が重過ぎると指が疲れてしまうため、45g~50g程度のスイッチが使われることが多い。

左は荷重45gのCherry MX RGB Red(赤軸)、右は60gのCherry MX Black(黒軸)。ゲーミングキーボードでは荷重の重さが仇となるため黒軸はほとんど使われない。赤軸のような軽めのスイッチがゲーミングキーボードの主流だ

配信者は音に注意!

 メカニカルキーボードは打鍵音が大きめなのが欠点。ゲーム配信する場合は、静かなキーボードが欲しくなる。カチカチ鳴るクリッキータイプは論外だ。Razer Yellowのような静音キースイッチを搭載したキーボードを選ぶのも手だが、リニアやタクタイルタイプの場合、キーキャップの根本にOリングを仕込むことで、底打ち時の騒音を緩和できる。

キーボード用Oリングをキーキャップの軸受けに1個か2個装着するだけで打鍵音がソフトになる

このスペックって必要?

 メカニカルキーボードのうたい文句としてよく見られるのが“アンチゴースト”と“Nキーロールオーバー”の二つ。前者は押してもいないキーが反応しないような回路設計を言うが、普通にメカニカルキーボードを設計すれば、実装されて当たり前だ。Nキーロールオーバーは“すべてのキーが同時押し認識可能”なことを示すが、今のPCゲームでそこまで必要なゲームは少ない。普及タイプの“6キーロールオーバー”、余裕が欲しければ“10キーロールオーバー”で十分だ。

代表的なキースイッチの違い

 キースイッチはスイッチの構造の違う「メカニカル」と「メンブレン」が2大勢力。さらにメカニカルは打鍵時のフィーリングでさらに細かく分類される。メカニカルキースイッチの定番“Cherry MXシリーズ”で使われている軸の色で区別するのが定番だが、ロジクールの「Romer-G」などの新興キースイッチの登場により“リニア”、“タクタイル”などの分類法も使われはじめた。

 メンブレンは静かでソフトな感触がメリットだが、打鍵感のキレや動作の確実性という点ではメカニカルに劣る。メカニカルはフィーリングがよく選択肢も広いのが強みだが、長期使用時は摩耗する欠点がある。音が静かで耐久性の高い静電容量無接点式が最強と言えるが、製品が高価かつ製品バリエーションが少ないという泣きどころがある。

 また、最近は動き検出に光を使う“光学スイッチ”を採用するメーカーも出てきた。耐久性も高く入力遅延も短いということで今後採用例が増えそうだ。

リニア(赤軸)
力をかけるとスッと沈み込む感触が特徴。アクチュエーションポイントに素早く到達できるのでゲーミングキーボードでは定番的な存在だ。安価な製品で見られる「中華赤軸」とはCherry MX Redに仕様を似せた(荷重45g&リニア)中国メーカー製スイッチのことだ
タクタイル(茶軸)
ある点まで押し込むと急激に荷重が抜けるのがタクタイル。Cherry MX Brownが代表例なので茶軸と呼ばれることも多い。アクチュエーションポイント前で荷重が最大化するので高速入力には不向きだが、打鍵感がよいので実務向けのキーボードでの採用例が多い
クリッキー(青軸)
タクタイル感に加え、金属の“カチッ”という音が鳴るタイプのスイッチ。Cherry MX Blueが代表例なので青軸と呼ばれる。クリック音はゲーミング的にまったく無用の存在だが、フィーリングが軽快に感じるので一定の人気がある。ただしネット配信には向かないので注意
スピード(銀軸)
アクチュエーションポイントが浅く、入力速度が速いスイッチをスピード軸と呼ぶ。日本ではリニアで荷重45gと軽いCherry MX Speed Silverが代表例だが、スピードでもタクタイルやクリッキータイプのスイッチも存在する(完成品キーボードでの採用例はほぼゼロ)
静電容量無接点方式
REALFORCEシリーズで有名なスイッチの方式。メカ的接点を持たないので耐久性が高く、スッと沈み込むような独特のタクタイル感に魅せられたファンも多い。機構的には最強だが回路設計が一番難しく、価格も高めなのが最大の難点。ゲーミング向け製品は希少
メンブレン
フィルム基板で回路を構成できるので、安価な製品に多い。メカニカルに比べるとスイッチの精度や高速反応性に劣るが、ソフトな打鍵感と静音性が好みという人も多い。最近はメカ的にクリック感を追加した“メンブレニカル”というタイプも出現している

リニアとタクタイルの違いはどこ?

リニア
スイッチの荷重特性をグラフ化して、タイプの違いを見てみよう。リニアは底打ちするまでほぼ一定のペースで荷重が上がっていく(赤線)。荷重45gのスイッチの場合、押し始めは軽い30g台だが、アクチュエーションポイント付近で45gになる
タクタイル
荷重55gのタクタイルスイッチの特性。押し始めて1.5mm程度で重さが最大化しその後急降下(赤線)。このすり鉢状の領域が“カクッ”というフィーリングの正体だ。スイッチの戻り(青線)時にも谷があるが、これがキーを上げるときのキレを生み出している

テンキーレスは有利か?

 PCゲームではWASD周辺のキーを使うことが多い半面、テンキーを使うゲームは少ない。テンキーは帳簿入力には便利だが、ゲームには無用。テンキーがない分マウスを左手に近い場所に置けるので、マウス捌きもラクになる。

マクロキーは有効?

 マクロキーは手動入力では成功率の悪い操作を確実にやりたい場合は有用だが、マクロ利用が規約で禁止のゲームもあるので注意。また、マクロを実現するための常駐ツールがアンチチートツールに引っかかる危険性もある。

本記事は、DOS/V POWER REPORT9月号「特集・買うか、作るか、ゲーミングPC」からの抜粋です。この特集では、完成品、自作を問わず、ゲーミングPCを幅広く取り上げます。メーカー製のデスクトップPC、ノートPC、自作PC、ゲーム向けのPCパーツ選び、ゲーミングマウス&キーボード、ディスプレイなど、PC業界の先端をゆくエッジの効いたゲーミング関連製品を多数紹介しています。