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向こう4年でモバイルPCの4台に1台以上が2in1に

~JEITAがAVおよびIT需要予測を発表

 一般社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)は、AVおよびIT機器の世界需要動向調査を発表した。

 同調査は、1991年に開始して以来、今年で28回目となるもので、PCやタブレット端末などのIT機器、フラットパネルテレビやBD/DVD、音声機器などの主要AV機器、カーAVC関連機器の世界需要を調査。報告書は、表紙の色が黒いことから、「黒本」の通称で呼ばれている。

 今回の調査では、2in1 PCが2017年には構成比が15.3%であったものが、2022年には28.7%にまで拡大すると予測。ノートPCの4台に1台以上を、2in1 PCが占めることになる。

 一方で、タブレット端末は、新規需要の飽和やスマートフォンの大画面化による情報端末の集約化が進み、市場縮小が継続する。また、PCの世界需要は、新OSの買い換え需要が進むものの、2020年以降はその反動もあって減少に転じ、2022年のPC需要は2億6,200万台となり、2017年の2億6,830万台を下回ると予測した。

消費増税と東京オリンピックも需要にプラス

 今回、JEITAが発表した調査および予測は、2017年の結果をベースに、経済要因などを加え、2022年の世界および日本の需要予測を取りまとめたものであり、富士キメラ総研が協力した。

 電子情報技術産業協会 AVC部会 AV&IT機器世界需要動向調査 タスクフォース主査の風間美佐子氏(シャープ)は、「2022年までの調査および予測を行ない、2018年12月の4K/8Kの実用放送、2019年の消費増税、2020年の東京オリンピック/パラリンピックなどの動向を盛り込んでいる」とした。

 また、富士キメラ総研 第一部門主任の塩原一平氏は、「AVおよびIT機器の需要は、全体的に見ると右肩上がりというわけではない。市場規模が年間5,000万台以上であり、プラス成長になると予測されているのは、フラットパネルテレビ、ノート型PC、4K対応テレビ、放送と通信連携対応テレビの4つしかない。

 だが、中身を細かく見ると、ネット配信対応、4K/8Kテレビ、自動運転、カーナビ、ADASといったカテゴリは、いまは規模は小さくても成長するだろう。通信機能、ネットワーク機能、機器間連携機能を搭載したスマートAV機器の需要拡大が進展することになり、今後の需要を見通す上でのキーワードは、『スマート化』と『IoT』である」と総括した。

 2019年10月が見込まれている消費増税に関しては、「多くの製品において、2019年9月前後に需要が高まるだろう。とくに、高価格の製品が影響を受ける可能性がある。フラットパネルテレビは地デジ特需からの買い換え時期と重なるため、消費増税の影響度はさらに高まる。また、テレビと需要が連動するケーブルテレビ用セットトップボックスやホームシアター音響システムも影響を受けて需要が増加する」。

 さらに、東京オリンピック/パラリンピックの影響としては、「臨場感を味わうことが訴求点となり、地デジ特需からの買い換え時にも重なるため、4Kを中心とした大型フルフラットテレビの需要が高まるだろう。ホームシアター音響システムもテレビと連動して需要が増加する」と予測した。

電子情報技術産業協会AVC部会AV&IT機器世界需要動向調査タスクフォース主査の風間美佐子氏(シャープ)
富士キメラ総研 第一部門主任 塩原一平氏
地域別/製品別市場規模
2022年に向けた動向
製品ポジショニング
日本市場の動向

PCおよびタブレットは成熟市場に

 今回の調査からPCおよびタブレット端末の需要動向を見てみよう。

 2017年のPC市場に関しては、新興国では経済拡大に伴う企業投資や新規需要がみられるものの、先進国では新規需要が飽和状態にあり、世界全体では成熟市場となっている。そのため、新OSへの買い換えやOSサポート終了などが、おもな需要変動要因と位置づけている。

IT機器の動向

 富士キメラ総研 第一部門主任の塩原一平氏は、「スマートフォンとタブレットの棲み分けが進んでおり、個人向けPC市場も落ちついてきた」と前置きし、「2017年は買い換えにより法人需要が増加したことで、需要はプラスに転じ、新OSへの買い換えによる法人需要の増加は2019年まで続く。だが、2020年以降はその反動により、微減に転じる」と予測した。

 世界のPC市場は、2017年は前年比1.2%増の2億6,830万台の実績となり、2019年には2億7,300万台とピークを迎えるが、2020年には2億7,000万台と減少し、2022年には2億6,200万台になると予測した。

 また、日本のPC市場は、2017年は前年比0.8%減の1,510万台であったが、2018年は1.0%増の1,620万台、2019年は2.2%増の1,620万台と、増加すると予測。だが、2020年は0.9%減の1,750万台、2021年は0.7%減の1,670万台、2020年は0.7%減の1,600万台と、減少に転じる見込み。

 なお、2017年における法人向けPCと個人向けPCの構成比は60.3%対39.7%であったが、2022年には64.1%対35.9%となり、法人向けPCの比率がさらに高まるという。

PC市場
トピックス

 塩原氏は、「2018年以降の国内の法人向けPCは、教育のICT化の進展に伴い好調に推移。さらに、Windows 7のサポート終了が2020年に控えており、需要増が発生する。だが、2020年以降は法人向け買い換え需要の反動により、需要が縮小に転じる。

 2in1 PCのラインアップ拡充のほか、5G、WiGig、IEEE 802.1111axなどの高速無線規格の導入などにより、2in1 PCの需要が高まり、タブレットおよびPCとしてフレキシブルな利用が拡大。また、個人向けPCでは、CPU性能とグラフィック表示機能を強化したゲーミングノートPCが一定の需要を獲得すると見られる。

 PCディスプレイやノートPC、タブレットとともに、4Kディスプレイ搭載モデルが登場し、PCディスプレイは8Kモデルも登場する」と予測。

 さらに、「Gigabit/sクラスの高速通信に対応することで、サービスの幅が広がり、宅内のスマート化が進むことで、ホームハブとしての需要も期待できる」と指摘した。

 全世界の2in1 PCは、2017年には2,400万台、構成比は15.3%であったものが、2022年には4,700万台が出荷され、構成比は28.7%に拡大すると予測。

 「2in1 PCが広がることで、ノートPCとタブレット端末のボーダレス化が進展するとともに、シンクライアントシステムやクラウドサービスのさらなる進化により、長期的には、デスクトップ向けPCディスプレイや液晶一体型PCと、2in1 PCとの境目が少なくなる可能性がある」と指摘した。

市場動向
2in1 PCの動向

 デスクトップPCでは、日本においては、微減傾向が続き、2017年には前年比0.8%減の353万台だったものが、2022年には332万台へと減少する。

 ノート型PCは、2017年には前年比0.9%減の698万台となるものの、2018年および2019年は微増が続き、2019年には735万台に拡大。だが、その後減少し、2022年には728万台になると予測した。

 「従来は、モビリティ環境においてノートPCを利用する際にセキュリティの問題があったが、セキュリティ強化が進んだことで課題が解決されつつある。これもデスクトップPCからの置き換えが促進される理由になっている。今後も、ノートPCへと需要のシフトが進んでいくことになる」とし、2017年には66.4%のノート型PCの構成比は、2022年には68.7%にまで高まることになると予測した。

タブレットは10型以上の大画面モデルが約4割に

 タブレット端末は、世界市場では、2017年には前年比4.4%減の1億9,600万台と予測。その後もマイナス成長が続き、2022年には1億5,800万台となる。2015年以降、8年連続でのマイナスになると予測している。

 また、日本では、2017年は前年比2.2%増の910万台となり、2022年までプラス成長が続くと予測。2022年には940万台に達すると予測した。

 そのうち、個人向けは620万台、法人向けは320万台と予測している。個人向けは2018年以降はマイナス成長が続くが、法人向けはプラス成長を継続することになる。

タブレット端末
個人/法人割合

 8型未満の画面サイズの製品は、2017年には42.7%の構成を占めたが、2022年にはこれが34.4%に縮小。これに対して、10型以上の製品比率は、2017年には27.9%であったが、これが38.4%と、4割近くにまで上昇すると予測している。

 「タブレット市場は成熟化しており、市場減少は徐々に下げ止まるものの、スマートフォンがさらに大画面化する影響を受け、将来予測に対しては明るい材料は少ない。具体的には、6型以上のディスプレイを搭載した大画面スマートフォンが急速に増加していくことで、7型クラスの小型タブレットの市場がとくに減少するだろう。

 スマートフォンは、ハイエンドを中心に、縦長ディスプレイのトレンドがあることも、タブレット市場を浸食する要因の1つになる。また、個人向けは大画面化を含めた高機能化により、単価向上が進む一方、法人向けでは文教などの新たな分野での普及を図っていくことになる」とした。

市場の食い合い
画面サイズ

4K/8Kでは日本が世界市場をリード

 一方で、今回の調査では、テレビの需要動向に関して、4Kおよび8Kについても予測している。

 これによると、2017年の全世界における4Kへの対応率は31.8%であるのに対して、2022年には57.9%と約6割に達すると予測。そのうち、日本では2017年には35.0%であったものが、2022年には63.7%に達すると予測した。

 「日本では、4Kコンテンツの配信において多様な方式で先行し、これが世界に先駆けて4K対応製品への買い換えが進行した理由」と分析した。

 また、8Kテレビの対応率では、2022年には世界では1.3%だが、日本では3.8%になると予測。

 「日本では、世界に先駆けて8Kテレビの製品投入が開始されたこと、8K放送が2018年末に開始されることから、2019年以降には、フラッグシップモデルとして、8Kテレビへの買い換え需要が増加するとともに、徐々に需要が高まっていく」と予測した。

 だが、4Kおよび8Kでは、中国が日本を上回る形で普及すると予測。2022年においては、4Kでは73.4%、8Kでは4.3%に達すると予測している。

 スマートスピーカーについては、富士キメラ総研の予測として発表。2020年の世界市場では、2016年の約9.2倍となる、5,000万台強の市場規模に達するとみている。

4K TV
地域別動向
8K TV
地域別動向