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光造形方式のパーソナル3Dプリンタと高機能フィラメントに注目
~「3D Printing 2017」レポート
2017年2月28日 12:36
2017年2月15~17日、東京ビッグサイトで3Dプリンティングに関する展示会「3D Printing 2017 Additive Manufacturing Technology Exhibition」(以下、3D Printing 2017)が開催された。
この展示会は、nano tech 2017の併催展示会の1つとして開催されたもので、今回(2017年)が3回目の開催となる。3Dプリンティング市場の発展を受け、展示会の規模、出展社数ともに前回を上回り、多くの来場者を集めていた。ここでは、3D Printing 2017の展示の中から、特に読者の関心が高いと思われる展示を紹介する。
光造形方式のパーソナル3Dプリンタ「Form 2」を展示していたFormlabs
Formlabsのブースでは、液体レジンを紫外線で硬化させる光造形方式のパーソナル3Dプリンタ「Form 2」とその出力例が展示されていた。
Formlabsは、光造形方式のパーソナル3Dプリンタ「Form 1」で話題を集めたベンチャーであり、kickstarterでのクラウドファンディングに成功。その後、改良版のForm 1+をリリースしたが、今回展示されていたForm 2は、一から新たに設計された新モデルである。最大出力サイズが145×145×175mm(幅×奥行き×高さ)に拡大されたほか、精度もさらに向上している。レジンの種類も増えており、キャスト用レジンやタフレジンなども利用できる。
3D Dream Workshopが光造形方式の3Dプリンタキットを展示
台湾の3D Dream Workshopは、光造形方式のパーソナル3Dプリンタ3製品を展示していた。このうち「Crystal」と「Amber」は、組立キットとして販売し、最も低価格なCrystalは、1,500ドル程度になる予定とのことだ。
「Pearl」は完成品として販売され、価格は2,000ドル程度になる予定。光造形方式の3Dプリンタとしては破格の安さだが、まだ日本での販売代理店などは決まってないとのこと。3製品とも基本仕様はほぼ同じで、最大出力サイズは125×125×150mm(同)で、積層ピッチは0.1/0.05/0.025mmである。
ユニークな製品を多数展示していた日本バイナリー
各種3Dプリンタの代理店となっている日本バイナリーのブースには、ユニークな製品が多数展示されていた。
「FilaBot EX2」は、FDM方式の3Dプリンタで使われる樹脂フィラメントを製造する装置である。樹脂を粒状に加工したペレットを原料として使い、糸状のフィラメントを製造することができる。ペレットを混ぜ合わせることで、新しい色のフィラメントを作ることも可能だ。
小型3Dスキャナ「SCANIFY」は、0.1秒で3D形状とテクスチャを同時取り込み可能であり、分解能も最高350nmと高い。
FDM方式のパーソナル3Dプリンタ「Lulzbot TAZ 5」は、オープンソースハードウェアベースの製品であり、積層ピッチは最小0.075mmと小さく、ノズル温度も最高300℃まで上げられるので、多様な材料を利用できることが利点だ。同じくFDM方式のパーソナル3Dプリンタ「Airwolf 3D HD」は、デュアルヘッド搭載で同時に2色または2種類の材料での出力が可能だ。
デルタ方式を採用したFDM方式のパーソナル3Dプリンタ「Pharaoh XD」は、一般的なFDM方式の3Dプリンタの1/10となる最小0.01mmという積層ピッチを実現する。また、FDM方式のパーソナル3Dプリンタ「MarkTwo」は、ケブラーやガラス繊維、ナイロン66などの材料を利用できることが特徴だ。
さらに、ヒト細胞を使用して3Dモデル作成が可能なベンチトップ型3Dバイオプリンタ「inkredible+」や導電性インクや導電性接着剤を使って基板上にパターンをプリントすることができる卓上型PCBプリンタ「Squink」、粉末方式のフルカラー3Dプリンタ「ComeTrue T10」、ポータブル3Dスキャナ「GO! SCAN 3D」も展示されていた。
CNCとしても利用できる多機能3Dプリンタを展示していたブルレーインク
秋葉原に3Dプリンタショールームを開設しているブルレーインクは、多機能3Dプリンタ「Zmorph」と光造形方式のパーソナル3Dプリンタ「Form 2」を展示していた。Zmorphは、FDM方式の3Dプリンタであるが、ヘッドを交換することで、CNCフライスとしても利用できることが特徴だ。ブースでは、ベニア板を切削するデモを行なっていた。3Dプリンタとして利用する場合も、デュアルノズルヘッドとシングルノズルヘッドの選択が可能だ。
3Dプリンタ出力物の積層跡を滑らかにする装置を展示していたPolymaker
高品質なフィラメントメーカーとして有名なPolymakerのブースでは、FDM方式の3Dプリンタの弱点である積層跡を消して滑らかにする「Polysher」が展示されていた。Polysherは、アルコールをミスト状にし、その中に出力物を入れて20分程度放置しておくだけで、積層跡がなくなり、艶のある表面が得られるというものだ。人体に有害な有機溶剤を使わないので、家庭でも気軽に使える。
ただし、Polysherで処理できるのは、専用フィラメント「PolySmooth」を使って出力したものだけで、一般的なABSやPLAには対応していない。PolysherおよびPolySmoothは、現在kickstarterでクラウドファンディングを行なっているほか、同社のWebサイトで予約注文を受け付けている。価格は、Polysherが299.99ドル、PolySmoothが39.99ドルである。
そのほか、同社の高品質フィラメントの展示が行なわれていた。新フィラメントの「PC-Plus」は、ポリカーボネートべースのフィラメントであり、機械的強度が高く、耐熱性も高いことが特徴だ。
形状記憶ポリマーフィラメントや特許出願中の多層フィラメントなど
フィラメント工房のブースでは、前回の3D Printing 2016でも展示されていた形状記憶ポリマーフィラメントのデモが行なわれており、来場者の注目を集めていた。形状記憶ポリマーフィラメントは、3Dプリンタからの出力時の形状を記憶しているが、冷えた状態でも比較的柔らかく、手で自由に曲げることができる。手で変形させた後に、お湯につけると、3Dプリンタから出力されたときの形状に戻るというものだ。
PP/炭素繊維フィラメントは、ポリプロピレンに炭素繊維を混ぜたフィラメントであり、ABSの3倍の強度を持ち、ポリプロピレンのしなりと炭素繊維の硬さを併せ持つという。また、ノズルクリーニングフィラメントは、ノズルの内部をクリーニングするためのフィラメントであり、フィラメント交換時に使うことでノズル詰まりを防ぐことが可能だ。これらのフィラメントは、すでに販売が開始されており、Amazonなどで購入できる。
フィラメント工房が特許出願中の新フィラメントが、多層フィラメントである。これは、フィラメントの内層と外層に異なる樹脂を組み合わせることで、単一材料では得られない高機能を実現するというものだ。2種類のフィラメントを交互に積層することで、複合材料的な出力を実現するというデモは見たことはあるが、フィラメント自体が被覆付きの電線のように、外層と内層の2種類の材料で構成されているというのは、おそらく世界初であろう。多層フィラメントは現在開発を進めている最中とのことだが、期待したい。
クラレが水溶性フィラメント「mowiflex」を展示
クラレは、同社が開発した水溶性フィラメント「mowiflex」のデモを行なっていた。mowiflexは、ポリビニルアルコール樹脂であり、水に溶ける性質がある。そのため、FDM方式の3Dプリンタでサポート材料として利用すれば、出力後、水につけておくだけでサポートの除去が可能になる。
これまでのサポート材料は、溶かすにはリモネンなどの特殊な液体が必要なものが多かったため、家庭などで利用するには廃液処理も含めてハードルがやや高かったが、mowiflexなら手軽に利用できる。mowiflexをサポート材料として利用すれば、ボールベアリングなどを一発で出力することが可能だ。
香るフィラメントや紫外線で光るフィラメントを展示していたホッティーポリマー
ホッティーポリマーは、同社が開発したユニークなフィラメントの展示を行なっていた。「香るHPフィラメント」は、その名の通り、独自に開発した軟質フィラメント「HPフィラメント」をベースに、香り成分を配合したもので、バラの香りやラベンダーの香り、せっけんの香り、ユーカリの香りがするサンプルが展示されていた。芳香剤や防虫剤などへの応用が期待される。
「HPフィラメント(UV反応タイプ)」は、ブラックライトなどの紫外線を当てると発光する性質があるため、アクセサリ的な応用が考えられる。そのほか、3Dプリンタのフィラメント供給用チューブ「スベアップチューブ」や摺動性を向上させる「スベアップ」も展示されていた。
3Dプリンタで作られた等身大フィギュアを展示していたフュージョンテクノロジー
国産3Dプリンタメーカーのフュージョンテクノロジーでは、同社のFDM方式の大型3Dプリンタを使って製作された等身大フィギュアを展示していた。このフィギュアのモデルとなったのは、「To LOVEる -とらぶる- ダークネス 2nd」に登場する「モモ・ベリア・デビルーク」であり、いくつかのパーツにわけて3Dプリンタで出力後、塗装をして組み合わせたものだという。このフィギュアの出力に使われたのが、「COCO MIYAGI 76」であり、最大出力サイズは600×600×700mm(同)と大きい。
そのほか、最大出力サイズが200×200×480mm(同)のFDM方式の3Dプリンタ「M2048TP」や最大出力サイズが200×200×300mm(同)のFDM方式の3Dプリンタ「M2030TP」、最大出力サイズが310×310×450mm(同)のFDM方式の3Dプリンタ「M3145TP」、最大出力サイズが400×400×400mm(同)のFDM方式の3Dプリンタ「M4040TP」も展示されていた。
卓上超小型射出成形機を展示していたデジタルファクトリー
デジタルファクトリーのブースでは、卓上超小型射出成形機「EasyMold」が展示されていた。通常の射出成形機は、金属型を利用する大きく高価な装置であるが、EasyMoldは、3Dプリンタで製作された樹脂型を利用することが特徴だ。
3Dプリンタとしては、光造形方式のものを利用することが想定されている。EasyMoldは、本体サイズも小さく、重量も13kgと軽いので、オフィスなどでも気軽に利用できる。EasyMold本体の価格は680,000円(税別)であり、センドバック方式の年間保守契約サービスも用意されている。
Stratasysの新製品を展示していた丸紅情報システムズ
丸紅情報システムズは、同社が代理店となっているStratasysの業務用3Dプリンタを展示していた。「Eden260S」は、インクジェットプリンタに似たPolyjet方式の3Dプリンタであり、FDM方式に比べて積層段差の少ない、高品質な出力が得られる。ハイエンドモデルでは、フルカラー出力も可能であり、カラー出力を活かしたさまざまな出力例が並んでいた。
また、FDM方式の大型3Dプリンタ「FORTUS 900mc」の出力例や、FDM方式の業務用3Dプリンタの新製品「F370」も展示されていた。F370の最大出力サイズは355×254×355mm(同)と大きく、ASA/ABS-M30/PC-ABS/PLAの4種類の材料を利用できる。
日本3DプリンターがFDM方式の3Dプリンタの新製品「Raise3D」シリーズを展示
日本3Dプリンターのブースでは、新製品の「Raise3D」シリーズの展示を行なっていた。Raise3Dシリーズは、FDM方式ながら最小積層ピッチ0.01mm、Z軸解像度0.00125mm、X/Y軸解像度0.0125mmという、高い精度を実現していることがウリだ。さらに、従来のPLAの10倍の衝撃強度を誇るT-PLAや、粘りや強度に優れるT-ABS、環境に優しいPETG、透明度が高いPTG、カーボンフィラメント、木質フィラメント、ゴムライクフィラメントの7種類もの材料を利用できることも魅力である。
Raise3Dシリーズは、最大出力サイズの違いなどによって3つのモデルが用意されており、「Raise3D N2」の最大出力サイズは、305×305×305mm(同)、「Raise3D N1」の最大出力サイズは、205×205×205mm(同)、「Raise3D N2 Plus」の最大出力サイズは、305×305×610mm(同)である。Raise3Dは、フルカラーのタッチ画面を搭載しており、進捗状況などが一目で分かるほか、出力中の温度調整なども可能だ。