ニュース

Microsoft上級副社長、日本におけるHoloLens展開戦略を語る

米Microsoftのエグゼクティブバイスプレジデント兼Microsoftグローバルセールスマーケティング&オペレーションズプレジデントのジャンフィリップ・クルトワ氏

 米Microsoftのエグゼクティブバイスプレジデント兼Microsoftグローバルセールスマーケティング&オペレーションズプレジデントのジャン-フィリップ・クルトワ氏が来日し、日本におけるHoloLensの提供開始などについて言及した。

 クルトワ氏は、「日本のユーザーは、12月2日から、Microsoftストアを通じて新たなエクスペリエンスに出会うことができる。それがHoloLensである」と前置きし、「HoloLensは、Mixed Reality(複合現実)を体験できる、これまでにない新たなカテゴリの製品である。これをもとに開発者がアプリを開発し、働き方やライフスタイルを変えることができる」と語った。

 また、VR市場は、2016年には52億ドルの市場規模から、2020年には1,620億ドルに拡大するとの予測を示しながら、「日本は、HoloLensのビジネスにとっても重要な国であり、日本から革新的なアプリケーションが生まれると信じている。製造業、建設業、ヘルスケア、教育など、さまざまな事例が登場することを期待している。既に日本ではJALが、整備士とパイロットの研修に応用するPoCを開始しているが、より多くの人にHoloLensを体験してもらい、人が持つ能力を高めてほしい」などと述べた。

 今回、クルトワ氏の来日はわずか1日だったが、そのわずかな時間を使って訪問した建設会社では、HoloLensを使って、作業現場の人たちが、より正確な仕事ができるようにしたり、リモート環境から運用ができるようにすることで、現場のトラックやブルドーザーをより少ない人で操作できるようにしたいという話が出たことを紹介。「HoloLensのような最新デバイスと、クラウド、機械学習、コラボレーションサービスを組み合わせることで、日本の会社のデジタルワークスタイル変革を推進していきたい」と語った。

HoloLensを持つクルトワ氏

 また、「この5~6年は、R&Dへの投資を加速し、Microsoftの変革を牽引してきた。その成果として、Windows 10やHoloLens、コグニティブサービスといったさまざまなイノベーションを市場に提供することができた」と語り、「先頃発表したSurface Studioは開発者やデザイナー向けの新たな製品であり、Windows 10がクリエイティブな世界に踏み出すことができた。Surface Dialも新たな使い方を提案するものになる。さらに、多くのデバイスメーカーから、優れたWindows 10搭載デバイスが登場しており、これもWindowsの特徴となっている。Microsoftが、デバイスビジネスにフォーカスする姿勢はこれからも変わらない」とした。

 一方で、Microsoftが最重要項目として取り組んでいるのがクラウドである。

 クルトワ氏は、「Microsoft Azureの特徴は、ハイパースケーラブルであること、信頼性されるクラウドであること、そして、高い拡張性を提供できることである」と発言。「世界中に40カ所以上のデータセンターを持ち、150カ国以上でサービスを提供しており、それぞれの国のニーズにあわせた対応も行なっている。例えば、先頃、ドイツにデータセンターを開設することを発表したが、これはドイツのプライバシー法に準拠したデータセンターになっている。中国でも、日本でも同様で、どの国においても、セキュリティ、プライバシー、コンプラインスの新たな法規制にも対応していくことになる」と語った。

 また、「Microsoftは、クラウドの初期段階から、オンプレミスと同じ機能を提供することにこだわってきた。AWSやGoogleのクラウドサービスと差別化できるポイントは、顧客に対して、サービスやアプリをデータセンターでプロビジョニングして、パブリッククラウドで提供でき、さらに、ハイブリッドクラウド環境を実現できる点にある」とも述べた。

 だが、クラウドシフトを加速するのに伴い、収益性の悪化が指摘されている。

 これに対しては、「Microsoftでは、2018年までにクラウドビジネスを200億ドルに拡大する計画を掲げている。この計画は、クラウド分野において、最も速い成長を遂げることになる。大企業や中小企業まで幅広い企業に活用されているOffice 365や、フォーチュン500社のうちの8割が使っているAzureなどが、これを牽引することになる。クラウドを加速していくことは、正しい方向に向かっていると言えるものであり、クラウドは最重要な取り組みであることには間違いはない」とした。

 なお、公表されていない日本マイクロソフトの業績については、「好調であり、クラウドも成長している」と語った。

 Microsoftでは「世界中の全ての人々とビジネスの持つ可能性を最大限に引き出すための支援をすること」をミッションに掲げているが、この点についても言及。「日本においても、長年にわたって顧客のビジネスを変革させる手伝いを行なってきた。デジタル変革の事例は、日本でもいくつかの成果が出ている。例えば、富士通と今年6月に発表した提携では、富士通グループの社員16万人がOffice 365を活用し、この導入ノウハウをベースに、日本およびグローバル市場において、ワークスタイル変革を実現するグローバルコミュニケーション基盤の導入を促進することになる。また、今年4月に発表したトヨタとの提携では、Toyota Connectedという会社を設立し、Azureを活用して、先進的なサービスを提供することになる」とした。

 トヨタとの提携では、2017年FIA世界ラリー選手権に参加しているTOYOTA GAZOO Racingの「テクノロジー・パートナー」としてMicrosoftが参画。Microsoftの技術を活用してレース活動やチームデータ共有のための情報プラットフォームを開発し、レース活動を強化する内容にも触れた。

 AIおよびコグニティブサービスについても触れ、「AIは、人にとって代わるのでなく、人の能力を拡大する役割を果たすことになる。人の潜在能力を拡大するには、AIを活用すべきであり、AIは強いインフラを作り、強いアプリ、強いサービスを作ることができる。そのためには、コグニティブサービスが重要である。Microsoftのコグニティブサービスでは、音声認識、感情認識などがあり、これらを活用することで、人の能力を拡大できる」とした。

 ここでは、日本でのAI活用は重要なテーマであると指摘。「日本の人口減少は、経済的な課題に繋がる。例えば、建設業界では、人口減少により、熟練工がいなくなるという課題がある。マシンラーニングやコグニティブサービスを活用して、工事の内容を理解し、何が起こるかを予兆し、生産性を上げるといったができるようになるだろう。MicrosoftのコグニティブサービスとAzureプラットフォームを組み合わせることで、高度なシナリオを作ることができる。その点でも、日本の企業とって、AIは大きなチャンスがある。日本のISVやSIerがノウハウを活用することができる場で創出される」と述べた。