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Lenovo全製品の修理をNEC PCの群馬事業場で実施
~マザーボード修理の内製化を初めて公開
2016年11月18日 12:29
レノボ・ジャパンは、群馬県太田市のNECパーソナルコンピュータ群馬事業場において、2016年夏から、レノボ製品の全ての修理を開始。このほど、その様子を報道関係者に公開した。
NECパーソナルコンピュータの群馬事業場は、かつてはNECブランドのデスクトップPCの生産なども行なっていたが、生産を全て山形県米沢市の米沢事業場に統合。それに合わせて、NECブランドのPCの修理および顧客サービス関連業務を行なう拠点となっている。
一方、レノボ・ジャパンでは、従来は外部委託していたが、NECパーソナルコンピュータに対する修理業務の委託を徐々に拡大し、群馬事業場へと業務を移管。両社の修理サービスの統合を図ってきた。
NECパーソナルコンピュータ サービス事業本部 統括マネージャの土屋晃氏は、「LenovoブランドのPCの修理を開始したことで、装置の修理量は従来比1.6倍に増加。保守部品も同様に1.6倍に増加している。国内シェアで30%を占める製品の修理が群馬事業場で行なわれ、保守用部品の調達、保管も群馬事業場で行なっていく。規模の観点からも、社員一同が社会的貢献をしているという使命をもって取り組んでいる。群馬事業場は、サポートおよびサービスに必要な機能を保有したマザーファクトリーを目指す」とする。
一方、レノボ・ジャパンの横田聡一執行役員専務は、「サービス品質が高い群馬事業場が、その長年のノウハウを活かし、Lenovo製品の保守、修理を行なうことは、Lenovoユーザーに対して、迅速な修理対応と、品質の高いサービスを提供できることに繋がる」と前置きし、「従来の体制においても、ThinkPadについては、ほとんどが国内での修理対応が可能であったが、国内で修理できないものについては、アジアパシフィックの拠点で修理を行ない、さらにワールドワイドでの品質対応を行ない、最終的には大和研究所で対応することになっていた。新たな体制により、群馬事業場からより正確な、質の高い情報を共有でき、さらに、実機を迅速に入手して解析することができる。これまでは問題発生から1カ月以上経過している場合もあったが、問題の早期対応により、初動での対策効果も期待でき、次の製品で問題が起きないようにできる。また、群馬事業場の高いスキルを持ったサービスチームが対応するため、難しい問題も群馬事業場で解決できる割合が高まり、大和研究所に持ち込まれる件数を減少することも期待できる。さらに、部品の配置やケーブル配線が修理がしにくいといった課題を設計に反映することで、修理時間や修理コストの削減に繋げたい」と述べた。
NECの修理ノウハウをLenovoに活かす
NECパーソナルコンピュータ群馬事業場は、87,805平方mの敷地面積を持ち、約550人が勤務している。
1984年7月にPCの生産拠点としてスタート。2002年7月からは保守サービス拠点に転換。現在、修理を行なうテクニカルリペアセンターのほか、問い合わせに対応するコールセンター、NEC認定のリユースPCの再生拠点としての役割も担っている。
2014年6月からはLenovoブランドのタブレットの修理を開始。2016年7月3日からはLenovoブランドのコンシューマ製品であるideaシリーズの修理を開始し、同年8月1日からは、コマーシャル製品である「ThinkPadシリーズ」の修理を開始している。
これまでNECブランドのPCの修理は、コンシューマ製品に限定しており、コマーシャル向けPCの修理は、NECフィールディングが行なっていた。その点では、コマーシャル向けPCの修理を群馬事業場で行なうのは、今回のThinkPadが初めてとなる。
「コマーシャルPCでは、商談への影響なども大きく、1件の再修理の重みがある。スピードと品質を実現しながら、修理対応を行なっていく必要がある。企業ユーザーごとの特性に合わせて、個別企業の要求に対応できる専任者を配置した特別対応ラインを用意するといったことも行なっている」(NECパーソナルコンピュータ サービス事業本部・栗原一男氏)という。
さらに、Lenovoブランドの全製品の修理を開始したのに合わせて、Lenovo独自の修理履歴管理ITシステムを新たに開発。「これは、NECパーソナルコンピュータの修理管理手法を踏襲したものであり、棚番と呼ばれる仕組みを利用して、個々の修理品の管理を行なっている。今後、この仕組みが全世界のLenovoで利用されることになり、それぞれの国においても、TANABANという言葉が利用されることになる」(同)という。
同システムは、6月8日から稼働しており、まずはタブレットの修理で活用。NECパーソナルコンピュータのシステムとは別のシステムとして稼働している。
「群馬事業場では、より速く、より確かにを目指して進化を続けてきた。故障診断の確かさ、修理の確かさ、修理の速さ、修理価格および修理内容の分かりやすさを通じて、今後も顧客満足度を高めたい。これはLenovoブランドの製品においても同様である」(NECパーソナルコンピュータの土屋センター長)とした。
LenovoブランドのPCの修理はどう進められるのか
では、群馬事業場におけるLenovoブランドのPCの修理体制の様子を追ってみよう。
LenovoブランドのPCの修理は、個人ユーザー、企業ユーザーともに、宅配便を利用して、群馬事業場にダイレクトでの修理品を配送する方法と、販売店などに持ち込んだものをルート便によって回収し、群馬事業場に持ち込まれるケースとに分かれる。
修理が必要になった場合、ユーザーはコールセンターに問い合わせて、どちらの方法で修理を依頼するかを選び、宅配便による引き取りか、販売店への持ち込みを行なうことになる。いずれかの方法で群馬事業場のリペアセンターに持ち込まれたPCは、着荷受付ののちに、故障診断を行ない、故障原因となる状況を再現する。
ここで有償の修理が必要になった場合には、見積書を発行して、有償での修理作業に移行してもいいかどうかをユーザーに確認。さらに、パスワード設定などにより修理の進行が妨げられる場合には、連絡書を通じて、情報提供を依頼することになる。ユーザーからの問い合わせ回答を得て、修理が始まると、部品倉庫から部品を取り寄せて、部品交換を行なう。
部品倉庫は、NECブランド向けと、Lenovoブランド向けに分かれており、共有で使用する部品はない。
NECブランド向けでは、8,600平方mの倉庫内に、31,000種類、140万個の部品を保管。Lenovoブランド向けでは、1,500平方mの倉庫内に12,000種類、83,900個の部品を保管している。
Lenovoブランド向けの部品については、東京の部品保管倉庫と、全国12拠点のFSL(Forward Stocking Location)に出張修理用の部品を持っており、群馬事業場の場合は、出張修理用の部品は基本的には保管していない。
一方で、NECブランド向けの保守用部品は、全てが一度、群馬事業場を通過。群馬事業場で修理をする部品の保管だけでなく、全国8カ所の出張修理拠点や、量販店などによる認定自営保守店への部品供給も群馬事業場から行なっている。また、コマーシャルPCの修理を行なうNECフィールディングにも、群馬事業場から部品を供給している。ちなみに、群馬事業場の修理エリアから要求された修理部品は、13分以内に修理エリアに配膳することが決められているという。
LenovoブランドのPCの修理エリアは、「タブレット」、「ideaシリーズ」、「ThinkPadシリーズ」、「ideaシリーズのデスクトップ」、「ThinkPadのデスクトップ」に分かれており、修理作業は1人が1台を担当し、最後まで行なう。
修理の際に不要になった部品の廃棄やリサイクルも、群馬事業場で行なうことになる。修理が完了すると、検査を行なった後に、清掃、梱包を行なって、出荷されることになる。販売店に持ち込まれたPCの場合は、販売店に返し、そこでユーザーが受け取るスタイルになっている。
今回のLenovoブランドのPCの修理環境を実現する上では、NECパーソナルコンピュータが蓄積してきたノウハウを数多く反映している点が見逃せない。
先にも触れたように棚番の考え方を取り込んだ修理履歴管理ITシステムの採用のほかにも、従来はUSBメモリなどを活用していたHDDイメージのインストールを、ネットワークを通じて配信。これもNECパーソナルコンピュータのノウハウを活用したものだという。
「サーバールームにLenovo向けのイメージを追加。ネットワークインストールの実現によって、インストールに関わる時間と、作業の繁雑さを解決できる」(NECパーソナルコンピュータの栗原氏)という。
また、テストツールにおいては、Lenovoブランド製品向けのものを用意。NECパーソナルコンピュータがこれまで実現してきた修理完了品質の確保と統一化を実現するとともに、修理情報ナレッジを構築して、情報共有のほか、ノウハウやスキル共有まで行なえるようにした。
さらにnaviと呼ぶ進捗管理システムにより、各案件の進捗状況を見える化し、日次での管理が行なえるようにもしている。
こうした取り組みにより、既に、初回修理解決率や工場内修理時間は、ターゲットとした指標をクリアしており、「今後は、工場内修理は1日で完了する比率を高めたい」としている。
短期間での修理を実現した事例として、LenovoブランドのPCの場合、販売店経由の修理では約2週間かかると言われたものが、群馬事業場における工場内修理を1日で完了できたことから、販売店に持ち込んでから、修理が完了して、ユーザーの手元に返るまでに、5日間で済んだ例が出ているという。
「今後は、Lenovo製品の選択理由の1つに、Best Support-Serviceを掲げてもらえるようになりたい」(NECパーソナルコンピュータの栗原氏)と意欲を見せる。
マザーボード修理の内製化の意味とは?
今回のNECパーソナルコンピュータ群馬事業場の公開において、同社が初めて明らかにしたものがあった。それは、マザーボード修理の内製化である。この現場を公開したのは今回が初めてだ。
もともとNECパーソナルコンピュータでは、マザーボードの修理は生産および開発を委託している海外ODMに任せていた。修理に持ち込まれたPCにマザーボードの不具合が発生した場合には、マザーボードの修理を、日本法人などを通じて直接ODMに依頼するか、窓口となる会社を通じてODMに修理を依頼するかのどちらかだった。修理規模は月16,000枚の規模に達し、そのうち3割が前者、7割が後者だった。
「だが、ODMに修理を委託すると、海外修理のためリードタイムが長く、それを埋めるための回転用資産を持つ必要があったほか、修理費用が高くなること、新規開発生産がなくなったODMの場合には修理品質やデリバリー体制が悪化。最悪の場合には、ODMの都合で修理が中止されるといったことも起こる可能性があった。保守部品の供給が絶たれ、装置の修理ができなくなる事態も起こりうる危険性があった」という。
群馬事業場では、こうした課題解決に向けて、2007年度上期から、NECパーソナルコンピュータ主体の国内マザーボード修理体制の構築に着手。2010年上期には有償サービス分に関しては内製化に移行。2011年上期からは無償サービス分の内製化も開始したという。
「マザーボードの修理を内製化したことで、故障解析や部品交換などの修理技術の向上に加えて、PCの修理チームと共同調査により、確実な修理を実現するなど、修理品質を改善。同一部品の故障の場合のアラーム基準を開発部門と連携して設定し、傾向性問題の品質改善も行なえるようになった。さらに、日々の修理結果を通じて、在庫品質に不安があるものは再チェックをして在庫品質を確保。波形観測によって明らかになった劣化部品の予防交換を実施して、修理品質も確保できている」という。
こうした内製化への取り組みの結果、在庫不良申告率は70%も改善。修理リードタイムは4分の1に削減し、リペアに関わるコストは80%低減したほか、保守部品在庫は4分の1に削減されたという。
「マザーボードはPCのさまざまな機能が集約された部分であり、修理品質の変化に大きな影響を及ぼす。内製化することで、修理品質の向上とコスト削減を両立できる」(NECパーソナルコンピュータの土屋センター長)とする。
現時点では、NECブランドのPCを対象にしたものであるが、2017年には、LenovoブランドのPCも対象にする予定だという。こうした取り組みも、NECブランドおよびLenovoブランドのPCの修理品質を高めることに繋がっている。