PC短評
ゲーミングUMPC最高峰「AYANEO KUN」。顔認証やタッチパッド搭載でパッケージも超豪華!
2023年12月1日 06:14
AYANEOが12月上旬に発売を予定する「AYANEO KUN」は、AYANEOシリーズでは最大となる8.4型液晶ディスプレイを搭載するのが特徴のゲーミングUMPCだ。ディスプレイ解像度は2,560×1,600ドット、IPSパネルのタッチスクリーンを採用し、CPUはRyzen 7 7840U。
メモリ容量とストレージ容量、本体カラーの違いから全3モデル展開する。本体カラーがブラックフェザー、メモリ容量16GB、M.2 SSD 512GBの「AYANEO KUN-16G/512G-BF」が17万6,900円、本体カラーは同様でメモリ容量32GB、M.2 SSD 2TBの「AYANEO KUN-32G/2T-BF」および、メモリとストレージは同様で、本体カラーがホワイトシルクの「AYANEO KUN-32G/2T-WS」が各20万6,900円。いずれも予約時には1万円割引きで販売する。
「AYANEO KUN」で新たに追加になったギミックとしては、前面に備える顔認証機能対応のカメラ、左右下部寄りの位置に追加となった小型タッチパッド「インテリジェントタッチ」、背面にはカスタムバックボタンとしてRC1/RC2、LC1/LC2の4ボタンを追加、従来の十字キーの位置には8方向入力「フローティングD-pad」、背面に備える無段階調整可能な「レイジースタンド」など。
OSはWindows 11 Home(64bit)だが、これまでのシリーズ同様、ゲームを簡単に起動したり、ハードウェア設定などが簡単に行なえる独自ランチャーソフト「AYASpace 2.0」を備える。
そのほかの仕様はバッテリ容量75Wh、USB4×2、USB 3.1、無線LANはWi-Fi 6E、Bluetooth 5.2、microSDカードスロットはスタンド内に備える。電源ボタンには指紋認証センサーを内蔵する。
今回は上記3モデルとは異なり、クラウドファンディングのIndiegogoで購入可能なメモリ64GB、ストレージ4TB搭載、本体カラーはシルバーウィングの最上位モデルをお借りしたので、実際の使用感などについて紹介したい。
豪華木製化粧箱を採用! 新機能追加や最大TDP 54W対応など盛りだくさん
「AYANEO KUN」で最初に驚かされるのは本体を入れる化粧箱だろう。一般的には硬質の紙製の物が大半だと思うが、これがなんと木製なのだ。蓋はアクリル板を使っており、開閉はアクリル板をスライドすることで行なう。アクリル板の裏には水墨画風の画像が印刷された紙が入っており、少なくともPCが入っているようには見えない不思議な感覚の作りとなっている。同梱するマニュアルも雰囲気のある縦長の物で、独自の世界観を構築している。
本体の特徴は前述の通り、「AYANEO」シリーズでは初となる8.4型サイズのディスプレイを採用。解像度2,560×1,600ドットのIPSパネルを採用しており、高精細なAAAゲームを高精細なままで動作させるのに適している。
内蔵CPUはRyzen 7 7840Uだが、最大TDPは54Wまで対応しており、同社「AYANEO 2S」のTDP30Wと比べて2倍近く上げることが可能で、よりハイパワーでの駆動が可能な仕様となっている。TDPを上げると問題になるのが発熱量だが、同社独自の新冷却システム「KUNPeng」を採用して高発熱にも対応できるようにしているようだ。
なお、TDP 54W設定のままで「ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク 」をエンドレスループで実行した時のバッテリ駆動時間を測定してみたところ、大体1時間4分30秒くらいだったので、バッテリ駆動時間を伸ばす場合は、USB PD対応のモバイルバッテリを使ったり、TDP設定を下げるなどして調整が必要になるだろう。なお、TDP設定の最小値は5Wとなっている。
本体前面左部にはこの手のポータブルUMPCとしては珍しく、Windows Hello顔認証に対応する前面カメラを採用する。顔認証の動作についても試してみたが、位置合わせで時間が掛かる場合もあるが、手持ちが容易なサイズのため、調整しやすい。従来同様、電源ボタン内蔵の指紋認証センサーも備えるので、両方設定して置いて、好みに応じて使い分けるのがいいだろう。
前面左右の下部にはタッチパッド「インテリジェントタッチ」を搭載。マウス操作の代わりに利用できる。ただしサイズが小さめな事もあり、一般的なノートPCと比べるとちょっと扱いに工夫が必要となるので、マウス設定や「AYASPACE 2.0」上での割り当てや調整などを工夫して、自分だけの設定を考える必要がありそうだ。
個人的にありがたいと感じるのは背面の4ボタンだ。ゲームパッドで遊ぶ場合、ゲームタイトルによっては、背面ボタンが有効的に使えるタイトルも多く、このようなタイトルでは背面ボタンの有無でゲームの効率が段違いに変化する。個人的には4ボタンもあると全ては制御しきれないので、左右1ボタンずつの2ボタンでいいので、もう少し小型モデルでも全面的に採用してほしいところだ。
本体重量は実測945gあるので、長時間持ち続けてのプレイは腕にくる。そのような場合でも、本体背面に備える「レイジースタンド」と外付けのゲームコントローラやキーボードを使うことで、据え置きのような感覚でも使うことができる。無段階の角度調整となっているため、視点に応じて調整できるのはありがたい。
個人的に残念だったのは、十字キーの代わりに採用となった「フローティングDパッド」だ。十字キーをアナログスティックのような感覚で操作できるという点においては快適な動作を見せるが、上下左右をしっかり押したい時には十字キーの方が役に立つ場面が多い。ここは完全に好みの問題になるのだが、個人的には十字キーは継続してほしかった。
TDP 54W設定時は最高のパフォーマンスを発揮
これまでの「AYANEO」シリーズ同様、ハードウェア設定をコントローラ操作で簡単に調整できるランチャーソフト「AYASPACE 2.0」も標準で搭載。コントローラ設定やTDP設定、ビデオメモリ設定などを簡単に変更できるほか、インストールしたゲームなどを登録して実行可能なランチャー機能も備える。
従来の「AYASPACE 2.0」同様、全画面表示で細部の設定が可能なモードと、画面右端に表示される簡易モードが用意されているのも同様で、TDP設定などはこちらからでも設定できるので、持ち運びの際などはこちらから操作する方がやりやすい。
また、今回からは新たに画面上の上下左右のいずれかの画面端にリアルタイムのパフォーマンス情報を表示する機能が追加された。パフォーマンス情報を常時表示したい場合や、フレームレートの動きを見る場合などに重宝する機能なのでありがたい。
ここからはベンチマークのスコアをチェックしておこう。なお今回の「AYANEO KUN」はメモリ64GB、ストレージ容量4TBの最上位モデルで、国内発売モデルより高スペックのため、テスト結果は参考程度としてほしい。なお、TDPは最大の54Wに設定、ビデオメモリ設定は最大の20GBでテストしている。
まずはCPUを使ったレンダリング速度でパフォーマンスを計測する「Cinebench R23」では、マルチコア11,385pts、シングルコア1,111ptsだった。同じCPUを採用する「AYANEO 2S」と比べるとシングルコアではやや劣るが、マルチコアは「AYANEO KUN」が上回っていた。また、PCMark10のスコアも5,467となっており、「AYANEO 2S」と比べてやや高めとなった。
GPUパフォーマンスをチェックする3DMarkも一通り試した。先ずはビデオメモリが6GB以上必要なSpeed Wayは、ビデオメモリを20GBに設定したため、正常に動作した。ほかにも一通りの項目を実行してみると、いずれもほかのRyzen 7 7840U搭載製品と比較して、わずかに上回る結果となっている。CPUその物は同じでも、TDPを上げることでパフォーマンスがアップしているわけだ。一方でパフォーマンスがアップしているといっても微差でしかない辺りは、同じCPUである以上仕方のないところだろう。
「ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク 」についても実行したが、こちらは「AYANEO KUN」のスコアがあまり伸びない結果となった。原因については不明だが、この辺りは本体のチューニングの可能性などもありそうだ。
ユニークな仕掛けが盛りだくさん
以上、AYANEOの最新モデル「AYANEO KUN」について一通り触れてみた。単にディスプレイを大型化しただけでなく、大型化で生じた本体各部の空きスペースを活かして、新たなギミックや機能を追加する貪欲さはユーザーにとっては非常にありがたい。
特に冷却性能を向上させる改良により、TDP上限を伸ばしてパフォーマンスを向上した点は、より大型のディスプレイを備える「AYANEO KUN」にとって大事な要素だけに、ここに注力した点はさすがといえる。
Ryzen 7 7840U搭載ゲーミングUMPCは同社からも数製品、各社からも多く製品が発売されており、どれを選ぶかは悩ましいポイントとなっている。「AYANEO KUN」は最大TDP54Wによる性能向上や、顔認証対応前面カメラなど、他社との差別化がかなり際立った1台となっている。室内を持ち運びながら使ったり、出張や喫茶店など、落ち着ける場所でのんびりゲームをすることが多い層にとって、「AYANEO KUN」は選択肢の候補として魅力の1台となるだろう。