西川和久の不定期コラム

ASUS「M70AD-JP003S」

~NFCやQi、UPSを搭載した万能デスクトップ

 2013年8月にUPSとQiを搭載した同社のデスクトップPC「M51AC-JP005S」をご紹介したが、今回は、NFCも加わった「M70AD-JP003S」が編集部から送られて来た。「Nexus 7(2013)」と「Xperia A SO-04E」の連携も交えて試用レポートをお届けする。

UPS/IEEE 802.11ac/Bluetooth/Qi/NFCを搭載したフル装備デスクトップ

 プロセッサはCore i5-4440。4コア4スレッドでクロックは3.1GHz。Turbo Boost時3.3GHzまで上昇する。キャッシュは6MB、TDPは84W。チップセットはIntel H81 Express。メモリは2スロットあり、8GB/DDR3-1600×2の計16GBとなる。ストレージは1TBのHDDと、光学ドライブとしてDVDスーパーマルチドライブを搭載。OSは64bit版Windows 8.1だ。

 グラフィックスはプロセッサ内蔵Intel HD Graphics 4600。HDMI×1、DVI-D×1、ミニD-Sub15ピン×1の出力を備えている。

ASUS「M70AD-JP003S」の仕様
プロセッサCore i5-4440(4コア4スレッド、クロック3.1GHz/TB:3.3GHz、キャッシュ6MB、TDP 84W)
チップセットIntel H81 Express
メモリ16GB(8GB×2)DDR3-1600 (PC3-12800)、スロット2(空き0)、最大16GB
HDD1TB
光学ドライブDVDスーパーマルチドライブ
OSWindows 8.1(64bit)
グラフィックスプロセッサ内蔵Intel HD Graphics 4600/HDMI×1、DVI-D×1、ミニD-Sub15ピン×1
ネットワークGigabit Ethernet、IEEE 802.11a/b/g/n/ac、Bluetooth 4.0
インターフェイスUSB 3.0×2、USB 2.0×6(前面×2、背面×4)、PS/2×1、カードリーダ、NFC、Qi、音声入出力
拡張スロットPCI Express x16×1、同x1×1、Mini PCI Express x1×1
ストレージベイ5インチオープン×2(空1)、3.5インチオープン×2(空1)
電源300W/UPS付き
サイズ/重量175×412×433mm(幅×奥行き×高さ)/約9.8kg
価格99,800円

 ネットワークは、Gigabit Ethernet、IEEE 802.11a/b/g/n/ac、Bluetooth 4.0。このクラスのデスクトップPCにIEEE 802.11ac対応のWi-Fiと、Bluetoothまで搭載しているのはやや希少だ。

 その他のインターフェイスは、USB 3.0×2、USB 2.0×6(前面×2、背面×4)、PS/2×1、カードリーダ音声入出力。

 拡張スロットは、PCI Express x16×1、同x1×1、Mini PCI Express x1×1で全て空き。ストレージベイは、5インチオープン×2(空1)、3.5インチオープン×2(空1)。300Wの電源とUPSを搭載している。ただし、UPSは停電時などにOSを休止状態へ移行する機能だけを持つ。

 本体サイズは175×412×433mm(幅×奥行き×高さ)、重量約9.8kg。価格は今回の構成で99,800円となる。

 ここまでは一般的Haswell搭載デスクトップPCにUPSを加えただけだが、面白いのは、無線充電のQiと、近距離無線通信のNFCまでも搭載していることだ。先のWi-FiやBluetoothも含めて、スマートフォンなどと一緒に使うことを考慮した構成となっている。

 なお、プロセッサをCore i7-4770(4コア8スレッド、3.4GHz/3.9GHz)へ変更、GPUとしてGeForce GTX 650を搭載、光学ドライブをBDドライブにした上位モデル「M70AD-JP004S」は139,800円だ。

左側面。空調用のメッシュがある。右側には何も無い
前面。カバーが上がっている状態ではコネクタ類は見えない
前面(カバー無し/アップ)。USB 3.0×2、USB 2.0×2、音声入出力、カードリーダ、DVDスーパーマルチドライブ
背面。USB 2.0×2、PS/2、HDMI、DVI-D、ミニD-Sub15ピン、Ethernet、USB 2.0×2、音声入出力
内部。プロセッサの右側にメモリスロット×2。拡張スロットは全て空き
NFC EXPRESS DESKTOPS起動。NFCに対応したAndroidデバイスへEXPRESS DESKTOPSをインストールし、本体上部に置くと、NFCで接続される
Qi充電中。Qi対応デバイスを本体上部に置くと充電ができる。この時、右手前のLEDが光る
電源ユニット。ピーク出力300W
付属品。USB接続のマウスとキーボード

 筐体は写真からも分かるように、少し前面が傾いたデザインになっている。高さが433mmと、机の上に置くには丈があるため、床に設置した場合、この方が各ポートにアクセスしやすい。

 右側面には何もなく、左側面は空調用のメッシュがある。前面は普段カバーで覆われ、ポート類は何も見えない状態だ。カバーを下ろすと、USB 3.0×2、USB 2.0×2、音声入出力、カードリーダ、DVDスーパーマルチドライブが現れる。

 背面には、USB 2.0×4、PS/2、HDMI、DVI-D、ミニD-Sub15ピン、Ethernet、音声入出力がある。前面にしかUSB 3.0がないのは、外付けの大容量ストレージを常時接続する場合、少し痛いところか。内部の拡張スロットは全て空きの状態になっている。

 そして上部の平らな部分には前述のQiとNFCがある。今回はNexus 7(2013)と、Xperia A SO-04Eを使って試してみた。前者はQiとNFC、後者はNFCに対応している。

 まずQiは、Nexus 7(2013)でうまく作動した。充電が開始されると本体上部右側にあるLEDが点灯する。

 NFCに関しては、Xperia A SO-04Eは問題無く動いたが、Nexus 7は、NFCセンサーの位置の関係だろうか、縦向きに置いても横向きに置いても、平らなプレートからNexus 7がはみ出してしまい(はみ出さない後ろの位置に置くのはもっとNG)、NFCで接続できたりできなかったり微妙な状態だった。

 デバイスで操作するには、PlayストアからAndroid版のNFC EXPRESS DESKTOPSアプリをダウンロードする。iPhoneやiPadはNFC非搭載なので、iOS版は無い。

 NFCを使って行なえる機能は、Windowsログオン(WINDOWS 8 LOGON)、PC側のNFC Express Desktopsで予め登録したアプリの起動(QUICK LAUNCH)、デバイスからPCへの写真転送(PHOTO EXPRESS)となる。

 実際使った感想は、面白いのは面白いが、個人的には実用性をあまり感じられなかった。と言うのもNFCは、その性格上、端末をPCから離して使うことができず、PC上部のプレートにデバイスを置いたままにしなければならない(操作前後はこの限りではない)。この場合、Windowsログオンもアプリの起動も手元のキーボードから操作した方が手っ取り早いと思ってしまう。

 写真の転送については確かに便利だが、SkyDriveなどと併用すると、Wi-Fiに接続した時、自動的にクラウドへ転送する機能があるので、気が付けばバックアップ済の状態になっている。そう考えるとわざわざNFCを使う必要は無いのではと思ってしまう。

 とは言え、これは筆者が永年PCを使い慣れているからであり、初心者ユーザーには分かりやすく便利に感じられるのではと思う。

NFC Express Desktops/WINDOWS 8 LOGON
NFC Express Desktops/QUICK LAUNCH
NFC Express Desktops/PHOTO EXPRESS
NFC EXPRESS DESKTOPS(Android)/Home
NFC EXPRESS DESKTOPS(Android)/WINDOWS 8 LOGON
NFC EXPRESS DESKTOPS(Android)/QUICK LAUNCH
NFC EXPRESS DESKTOPS(Android)/PHOTO EXPRESS

構成はCore i5-4440搭載デスクトップPCとして標準的

 OSは64bit版のWindows 8.1。メモリを16GB搭載しているので、Intel HD Graphics 4600と併用しても十分余裕がある。

 スタート画面は、ASUSアプリ以降の10アプリを追加、デスクトップはタスクバーに3つアプリがピン止めされているだけでシンプルだ。また上部にあるのは「ASUS Launcher」で、クラウド/マルティメディア/システム/お気に入りのアイコンが見える。

 HDDは1TB/7,200rpm/32MBの東芝「DT01ACA100」が使われ、C:ドライブとD:ドライブの2パーティションとなっている。容量は順に150GBと約767GB。C:ドライブの空きは120GBだった。

 DVDスーパーマルチドライブは松下「DVD-RAM UJ8E1」を搭載。Wi-FiはIEEE 802.11a/b/g/n/acに対応した「Realtek 8821AE Wireless LAN 802.11ac PCI-E NIC」、BluetoothもRealtek製だ。Gigabit EthernetはIntel製が使われている。

スタート画面。ASUSアプリ以降の10アプリが追加分
起動時のデスクトップ。上に見えるのは「ASUS Launcher」
デバイスマネージャ/主要なデバイス。HDDは1TB/7,200rpm/32MBの東芝「DT01ACA100」。DVDスーパーマルチドライブは松下「DVD-RAM UJ8E1」。Wi-FiはIEEE 802.11a/b/g/n/ac対応の「Realtek 8821AE Wireless LAN 802.11ac PCI-E NIC」、BluetoothもRealtek製。Gigabit EthernetはIntel製
HDDのパーティション。C:ドライブとD:ドライブの2パーティション。容量は順に150GBと約767GB

 プリインストールのソフトウェアは、Windowsストアアプリは、「ASUS WebStorage」、「Fingertapps Instruments」、「Fingertapps Organizer」、「Fresh Paint」、「Jigswar」、「Music Maker Jam」、「マカフィーセントラル」と少なく、多くはオーソドックスなアプリで構成されている。

アプリ画面
ASUS webstorage
Fingertapps Otganizer

 デスクトップアプリは、「AudioWizard」、「マカフィーインターネットセキュリティ」、「ASUS Vibe Fun Center」、「ASUS Launcher」、「ASUS Manager」、「eManual」、「ASUS DVD」、「CyberLink Photo Director 3」、「CyberLink PowerDirector 10」、「Kingsoft Office」。

 印象的なのは、以前はバラバラのUIだった同社の各ツールを1つにまとめた「ASUS Manager」だ。ご覧のように統一されたUIで非常に扱いやすく、そして分かりやすくなっている。できればWindowsストアアプリ版も欲しいところだ。

 また、タスクトレイには、UPSの状態を示す「Built-in UPS」が常駐し、バッテリの状態を確認可能だ。

ASUS Manager/ホーム
ASUS Manager/システム
ASUS Manager/更新
ASUS Manager/セキュリティ
ASUS Manager/バックアップと復元
ASUS Manager/電源
Built-in UPS
ASUS eManual
ASUS オーディオマネージャ

 ベンチマークテストは「winsat formal」コマンドと、PCMark 7(PCMark 8 バージョン2はなぜか完走しなかった)の結果を見たい。またCrystalMarkのスコアも掲載した(4コア4スレッドで条件的には問題ない)。

 winsat formalの結果は、総合 5.6。プロセッサ 7.8、メモリ 7.8、グラフィックス 5.9、ゲーム用グラフィックス 5.6、プライマリハードディスク 5.9。PCMark 7は3766。CrystalMarkは、ALU 74772、FPU 66169、MEM 66969、HDD 15418、GDI 18820、D2D 7193、OGL 16050。

 Core i5-4440を搭載したデスクトップPCとしては標準的なスコアとなっている。加えてメモリを16GB搭載しているので、結構ヘビーな用途でも十分活用可能だろう。

winsat formalコマンドの実行結果。総合 5.6。プロセッサ 7.8、メモリ 7.8、グラフィックス 5.9、ゲーム用グラフィックス 5.6、プライマリハードディスク 5.9
PCMark 7。3766
CrystalMark。ALU 74772、FPU 66169、MEM 66969、HDD 15418、GDI 18820、D2D 7193、OGL 16050

 以上のようにM70AD-JP003Sは、このクラスのPCとしては珍しく、Wi-FiとBluetoothに対応。加えてQiとNFCを搭載し、スマートフォンなどと一緒に使うことを考慮したデスクトップPCだ。全てが無線と言うこともあり、非常にスマートに扱うことができる。

 外出時はスマートフォンを使い、戻った時にデータなどをサクッと転送しつつ、充電したいユーザーにお勧めの1台と言えよう。

(西川 和久http://www.iwh12.jp/blog/