西川和久の不定期コラム

ASUS JAPAN「TAICHI」
~天板にもタッチ対応フルHD液晶を搭載するUltrabook



製品写真

 ASUS JAPAN株式会社は11月14日、トップカバーにも11.6型フルHD液晶パネルを搭載するUltrabook「TAICHI」を発表、12月8日より出荷を開始する。開けばノートPC、閉じればスレートPCになるユニークな1台だ。編集部から試作機が送られてきたので、試用レポートをお届けしたい。

 なお、試用したのは試作機でソフトウェアが最終版ではないため、製品版とは異なる可能性がある。


●開けばノートPC、閉じればスレートPC!?

 Windows 8出荷以後、キーボードと合体してノートPCになるスレートPC、液晶パネルがスライドしノートPCにもスレートPCにも変形できるPCなど、いろいろなタイプのものが発表された。

 今回その極め付けとも言えるのがこの「TAICHI」だ。何と惜しげもなくトップカバーへもIPS式11.6型フルHDタッチ対応液晶パネルを搭載し、開ければノートPC、閉めればスレートPCになるUltrabookだ。コスト的にはどう考えても不利な仕掛けだが、利便性を優先したスタイルと言えよう。

 価格はオープンプライスだが、店頭予想価格は139,800円。つまり国産機と比較しても十分競争力のある製品に仕上がっているわけである。主な仕様は以下の通り。

ASUS「TAICHI」の仕様
CPUCore i7-3517U
(2コア/4スレッド、1.9GHz/
Turbo Boost 3.0GHz、キャッシュ4MB、TDP 17W)
チップセットIntel QS77 Express
メモリ4GB
SSD256GB
OSWindows 8(64bit)
ディスプレイ11.6型IPS液晶ディスプレイ、1,920×1,080ドット
フロントはタッチ非対応/非光沢、リアは10点タッチ対応/光沢
グラフィックスCPU内蔵Intel HD Graphics 4000
Micro HDMI出力、miniVGA出力
ネットワークEthernet(USBアダプタ)、IEEE 802.11a/b/g/n、
Bluetooth 4.0
その他USB 3.0×2、音声入出力、
フロント92万画素/リア500万画素カメラ、電子コンパス、
加速度センサー、ジャイロスコープを搭載、
電磁誘導ペン付属
サイズ/重量306.6×199.3×3~17.4mm(幅×奥行き×高さ)
/約1.25kg
バッテリ駆動時間最大約5.2時間
店頭予想価格139,800円前後

 プロセッサはIntel Core i7-3517U。2コア4スレッドでクロックは1.9GHz。Turbo Boost時3.0GHzまで上昇する。キャッシュは4MB。TDPは17Wだ。このクラスとしては珍しくチップセットはIntel QS77 Expressを採用。メモリは4GB、ストレージはSSDで256GB搭載している。OSは64bit版Windows 8だ。

 グラフィックスはプロセッサ内蔵Intel HD Graphics 4000。Micro HDMI出力、miniVGA出力を装備。miniVGA出力は、汎用的なミニD-Sub15ピンへの変換ケーブルも付属する。

 ネットワークは、有線LANがUSBアダプタを使用したEthernet、無線LANはIEEE 802.11a/b/g/n。Bluetooth 4.0にも対応。このUSBを使ったEthernetアダプタは、同社の他のUltrabookでも付属していたものだ。NASなどとの併用を考えると、Gigabitに非対応なのは残念なところかも知れない。

 そのほかのインターフェイスは、USB 3.0×2、音声入出力、フロント92万画素/リア500万画素カメラ。センサーとして電子コンパス、加速度センサー、ジャイロスコープを搭載。加えて256段階の筆圧を検知できる電磁誘導ペン付属が付属する。

【お詫びと訂正】初出時に、「指紋センサー搭載」としておりましたが、実際には搭載いたしません。お詫びして訂正させて頂きます。

 サイズ306.6×199.3×3~17.4mm(幅×奥行き×高さ)、重量約1.25kgのUltrabookで、バッテリ駆動時間は最大約5.2時間となっている。

 そして最大の特徴は11.6型フルHD解像度(1,920×1,080ドット)のIPSパネルを何と2枚搭載していることだ。片方はタッチ非対応でノートPC時に使用、もう一方は、トップカバー側に10点タッチを搭載し、トップカバーを閉めた時にスレートPCへ変身する。ノートPCとして開いている時は何も表示しない作動に加え、対面表示も可能(ミラー作動と画面拡張作動)だ。

 これまでスレートPCにキーボードユニットが合体するタイプや、液晶パネルを180度回転させトップカバーを閉めればスレートPCになるタイプなどは試用したことがあるものの、贅沢に2枚使ったPCは初めて触った。しかもIPS式フルHD解像度の11.6型が2枚! である。製品が発表された時、驚かれた読者の方も多いのではないだろうか。

フロント。特に何も無い。液晶パネルは明るくコントラストも高い。タッチには非対応天板。こちらにも液晶パネルがある、10点タッチ対応だ。こうして見るとなかなかカッコいい底面には1枚の大きなパネルで覆われ、ストレージやメモリへアクセスする小さいパネルは無い。バッテリは内蔵式で交換できない
左側面には、音声入出力、USB 3.0×1、miniVGA、ボリューム、トップ液晶パネルロックスイッチを装備キーボードはアイソレーションタイプ。パームレストは渋いメタリックのダークグレイで質感も良い右側面には、電源入力、USB 3.0×1、MicroHDMI出力、電源スイッチを備える
重量は実測で1,257gキーピッチは実測で約19mmACアダプタと付属品。幅5cmほどの小さい電源アダプタ。USB→Ethernetアダプタ、MicroVGA→ミニD-Sub15ピンアダプタ、電磁誘導ペン。この他に本体がすっぽり入るケースも付属
トップカバーを閉めると自動的にスレートPCモードになるiPad3との比較。さすがにパネルが11.6型、さらにフチも少しあり、フットプリントはかなり大きい
【動画】トップカバーを閉めるとスレートPCになる様子

 トップカバーは冒頭に書いたように、IPS式11.6型フルHDでタッチ対応の液晶パネルで覆われている。光沢タイプなので、OFFの時も黒光りして独特の雰囲気を醸し出す。ただ指紋が付きやすい点は、欠点と言えば欠点だ。

 筐体の他の部分は、ダークグレイのヘアライン仕上げで落ち着いたルックスだ。高さは3~17.4mmとUltrabook仕様で非常に薄く高級感たっぷりである。

 左側面は、音声入出力、USB 3.0×1、miniVGA、ボリューム、トップ液晶パネルロックスイッチ。右側面は、電源入力、USB 3.0×1、microHDMI出力、電源スイッチ。裏側はストレージやメモリへアクセスできる小さいパネルは無く、1枚の大きなパネルで覆われている。バッテリは内蔵式で交換できない。ACアダプタは幅5cmとかなり小型だ。直接コンセントへ接続する形状となっている。

 液晶パネルはどちらも11.6型。IPS式なので視野角は広い。明るさ発色共に文句無し。また輝度を最小にしても十分表示内容が分かる。タッチは非常にスムーズ。Windows 8らしい操作が可能だ。ただ贅沢を言えば、ノートPC時に使う液晶パネル側もタッチ対応だとさらに良かったと思う。

 キーボードはアイソレーションタイプだ。全体を強く押すと若干たわむが、個人的には許容範囲。十分なストロークとクリック感もある。

 パームレストは11.6型としては手前が広く操作しやすい。全体的にほんのり暖かくなるが、気にならないレベルだ。ノイズや振動はストレージがSSDなので低いレベルに抑えられている。タッチパッドは物理的なボタンは無く、パネルが左右に傾くタイプで、クリック感があり面積も広い。

 サウンドはクオリティ、最大出力共に十分。音楽を聴くにしても動画を観るにしても楽しめる。「Waves MAXXAudio」でいろいろ調整でき、好みのサウンドに仕上げることも可能だ。

 重量が約1.2kgあるため、スレートPCとしては重たいものの、Ultrabookとしては平均的。ただトップカバーを閉めた時、即スレートPCになるのは便利な上、加えてミラー表示と拡張表示(フルHD2枚分)にも対応しているため対面表示も可能。いろいろな用途があるのではないだろうか。全体的に良くまとまっている1台だ。

●Core i7とSSDで高速作動

 OSは64bit版のWindows 8。スタート画面は3面(3面目はほんの少し)。ASUSアプリ以降がカスタマイズされている部分となる。比較的大目のWindowsストアアプリが配置され、デスクトップアプリは計5点と少なめだ。デスクトップは左側にツール系のショートカットが並び、右側にはInstant Onウィジェットと同社お馴染みのパターン。

 SSDは「SanDisk SD5SE2256G1002E」を搭載。C:ドライブ約95GB、D:ドライブ約118GBが割り当てられている。C:ドライブの空きは66.8GB。ただし試作機と言うこともあり、出荷版とは異なる可能性がある。2ドライブの割振りが半端な容量なので、C:ドライブのみの1パーティションでも良さそうだ。

 Wi-FiとBluetooth 4.0はIntel製(Centrino)、USB→Ethernetアダプタは「ASIX AX88772B USB2.0 to Fast Ethernet Adapter」が使われている。

スタート画面1。Windows 8標準Windowsストアアプリスタート画面2。ASUSアプリ以降がプリインストールスタート画面3。最後の5つがデスクトップアプリ
クラシックデスクトップ。左側にツール系のショートカット、右側にはInstant Onウィジェットデバイスドライバ/主要なデバイス。SSDは「SanDisk SD5SE2256G1002E」、Wi-FiとBluetooth 4.0はIntel製(Centrino)、USB→Ethernetアダプタは「ASIX AX88772B USB2.0 to Fast Ethernet Adapter」SDDのパーティションはC:ドライブ約95GB、D:ドライブ約118GBの2パーティション

 インストール済みのソフトウェアは、Windowsストアアプリとして、ASUS Calculator、ASUS Converter、ASUS Taichi Essentials(動画)、ASUS Tutor for Taichi、Fresh Paint、NB Guide、Skype、SuperNoteなどがある。

 「ASUS Tutor for Taichi」は、TAICHIの特徴である2枚の液晶パネルをどのように使うかの説明がされている。ただし現状は英語版。「SuperNote」はタッチ対応のノートアプリだ。指はもちろん、付属の電磁誘導ペンを活用できる。

 ただソフトウェアで細かい点だが気になるのは、このTAICHIの表記が、“TAICHI”、“Taichi”、“TaiChi”などと表記ゆれがあり、統一されていないことだ。コンシューマにおいてブランドを定着させたいのであれば、どれか(おそらくTAICHI)に統一すべきだろう。

アプリ画面1アプリ画面2アプリ画面3
ASUS Taichi EssentialsASUS Tutor for TaichiSuperNotes

 アプリ画面は計3面。前半約1/3がWindowsストアアプリ、後半約2/3がデスクトップアプリで構成されている。

 デスクトップアプリとしてインストール済みのソフトウェアは、Intel AT Service、ASUS Install、ASUS Instant Connect Installer、ASUS InstantOn、ASUS Live Update、ASUS Screen Share、ASUS Taichi Home、TaiChi Setting、eManual、Power4Gear Hybrid、Splendid Utility、USB Charger Plus、Kingsoft Officeなどがある。

 多くが同社お馴染みのツール系だ。新しく加わったものとして「ASUS Taichi Home」が挙げられる。全画面表示なので一見Windowsストアアプリに見えるものの、デスクトップアプリだ。マシン各種ステータスの確認設定に加え、2枚の液晶パネルの作動モードも設定できる。

 ただし、これはTAICHI固有の機能ではなく、基本的にノートPC+ディスプレイと同じで、「ミラーモード」と「拡張表示モード」、「ノートパソコンモード」(トップカバー液晶パネルOFF)、「タブレットモード」(ノートPC側の液晶パネルOFF)の組合せで機能している。また、この作動は左側面にある「トップ液晶パネルロックスイッチ」と連動し、ロック時はトップカバー側の液晶パネルを使うモードは選べない。つまり非表示となる。

ASUS Taichi HomeデュアルスクリーンモードTaiChi Setting

 今回ベンチマークテストはWindows エクスペリエンス インデックスとPCMark 7、BBenchの結果を見たい。参考までにCrystalMarkの結果も掲載した(今回の条件的には特に問題は無い)。

 Windows エクスペリエンス インデックスは、総合 5.5。プロセッサ 7.1、メモリ 5.9、グラフィックス 5.5、ゲーム用グラフィックス 6.4、プライマリハードディスク 8.1。PCMark 7は4924 PCMarks。CrystalMarkは、ALU 44233、FPU 42059、MEM 41154、HDD 39480、GDI 15326、D2D 1863、OGL 5769。使用感としては、Core i7とSSDのスコアが支配的だったこともあり、何をしても非常に快適という印象だ。

 BBenchはPower4Gear High Performanceモード、バックライト最小、キーストローク出力/ON、Web巡回/ON、Wi-Fi/ON、Bluetooth/ONでの結果だ。バッテリの残5%で12,556秒/3.5時間。バッテリ交換できないため、1日中外で使うには少し厳しいところか。

Windows エクスペリエンス インデックス(Windows 8から最大9.9へ変更)は総合 5.5。プロセッサ 7.1、メモリ 5.9、グラフィックス 5.5、ゲーム用グラフィックス 6.4、プライマリハードディスク 8.1PCMark 7は4924 PCMarks
BBench。Power4Gear High Performanceモード、バックライト最小、キーストローク出力/ON、Web巡回/ON、Wi-Fi/ON、Bluetooth/ONでの結果だ。バッテリの残5%で12,556秒/3.5時間CrystalMarkはALU 44233、FPU 42059、MEM 41154、HDD 39480、GDI 15326、D2D 1863、OGL 5769

 以上のようにASUS「TAICHI」は、一見11.6型の液晶パネルを搭載したUltrabookであるが、実はトップカバーも10点タッチ対応の液晶パネルを搭載。開ければノートPC、閉めればスレートPCになる非常にユニークな製品だ。加えてCore i7プロセッサと256GBのSSDを搭載、価格は14万円を切るなど、構成を考えるとコストパフォーマンスも抜群。

 有線LANがUSB経由のEthernet、メモリが4GBなどスペック的には惜しい部分もあるにはあるが、そのほかは総じて完成度が高く、Windows 8マシンらしい操作性とUltrabookの携帯性を求めるユーザーにお勧めしたい1台と言えよう。