西川和久の不定期コラム

エプソン「Endeavor NB50E」
~AMD E-450を搭載したコンパクトネットトップ



 最近、AMDのグラフィックス統合型APU、E-450を使ったノートPCや小型デスクトップPCが色々出てきた。CPUのパワーはそれなりだが、GPUがクラスの割に強力で、普段使いであれば十分なパフォーマンスでWindowsが動くのが特徴的だ。

 今回ご紹介するエプソンの「Endeavor NB50E」もそのE-450を搭載したマシンのうちの1つで、幅がたった2cmの非常にコンパクトなマシンだ。


●幅わずか2cmの超コンパクトPC

 同社のコンパクトPCシリーズは数年前から販売されており、筆者はWindows 7搭載モデルとして、2009年12月に「Endeavor NP12-V」の試用レポートを掲載している。当時のスペックはAtom 230プロセッサとSiS672(ビデオ機能内蔵)+SiS968チップセットで、メモリ1GB、HDD 160GBなどの仕様で、価格は32,800円。その後、デュアルコアAtomモデルや、メモリ2GB搭載など、スペックを上げながら現在に至っている。

 今年(2012年)の1月に発表された新機種は2モデルある。1つは「NP30S」だ。プロセッサはAMD C-60(1.0GHz、ビデオ機能内蔵)、メモリ2GB、AMD A45 FCHチップセット、250GB HDD、OSに32bit版Windows 7 Home Premium SP1を搭載した固定仕様で価格は29,820円。プロセッサとメモリが非力なため、用途は限られるものの、価格は3万円を切っており、用途がうまくハマればコストパフォーマンスは高いと言える。

 そしてもう1つが今回ご紹介する「NB50E」だ。先の「NP30S」をベースに、プロセッサをAMD E-450 APUへ強化するとともに、メモリ、ストレージ、OSをBTOで選択できる直販モデルとなっている。編集部から届いた「NB50E」の仕様は以下の通り。

【表】「Endeavor NB50E」の仕様
CPUAMD E-450 APU
(2コア/2スレッド、クロック1.65GHz、
キャッシュ512KB×2、TDP18W)
チップセットAMD A50M FCH
メモリ4GB/PC3-10600 DDR3 1333MHz SDRAM
(1スロット/空き0)
SSD80GB
OSWindows 7 Home Premium SP1(64bit)
グラフィックス内蔵AMD Radeon HD6320、
DVI-I(ミニD-Sub15ピン変換付き)
ネットワークGigabit Ethernet
その他USB 2.0 前面×2/背面×4、音声入出力(前面/背面)
サイズ/重量サイズ75×154×199(幅×奥行き×高さ)mm
約760g(スタンド込み)
価格33,390円~(メモリ2GB/250GB HDD)/今回の構成52,290円

 プロセッサはAMDのグラフィックス統合型E-450 APU。2コア/2スレッド、クロック1.6GHz、キャッシュ 512KB×2、そしてTDP 18W。チップセットは対となるAMD A50M FCH。メモリは4GB搭載済だ。BTOで2GBの選択もできる。OSは64bit版Windows 7 Home Premium SP1。なおBTOではWindows 7 Professional SP1、各32bitか64bitの選択にも対応している。

 グラフィックスはAPU内蔵のRadeon HD 6320。プロセッサ内蔵型のGPUとしては、DirectX 11をサポートするなどなかなか強力だ。出力はDVI-Iのみで、ミニD-Sub15ピンへの変換コネクタが付属する。最大解像度は1,920×1,200ドットとなる。

 ストレージはBTOで2.5型250GB HDD(5,400rpm)、500GB(7,200rpm)、そしてSSD 80GBを選択可能だ。そして今回のモデルはSSDを搭載していた。

 ネットーワークはGigabit Ethernetのみで、Wi-FiやBluetoothは非対応。その他のインターフェイスは、USB 2.0×6、音声入出力とシンプルだ。

 サイズは75×154×199mm(幅×奥行き×高さ)、重量約760g。ただしこれはスタンドを含んだものであり、スタンド無しだと、20×154×173mm(同)/約590gとなる。オプションの「ディスプレイ一体型キット」を使えば液晶ディスプレイの背面へNB50E本体の取り付けも可能だ。

 今回の構成(64bit Windows 7 Home Premium SP1/4GB/SSD 80GB)で価格は52,290円となる。USBが2.0なのは惜しいものの、Gigabit Ethernetなど最低限のスペックは確保しつつ、このサイズは魅力的と言える。加えて、国際エネルギースタープログラムVer.5.0(2009年度7月基準)をクリア。通常消費電力はたった8.7Wで、待機時作動音は約22dBと、静音性もなかなかのものと言えよう。

フロント。スリムでコンパクトなことがわかる左側面。上側にパワースイッチのみ。後の金具は「セキュリティーロックホール」背面。DVI-I、USB 2.0×4、Gigabit Ethernet、電源入力、音声出力
右側面。こちら側には何も無い。奥行きもそれほどない付属品は、リカバリCD、小冊子、USBインターフェイスの10キー付きキーボード&マウス、スタンド、DVI-I→アナログRGB変換コネクタ、ACアダプタ(19V/3.24A)重量はスタンド無しで実測590g
フロントパネルを外したところ。USB 2.0×2、音声入出力を備えるスタンド部。本体の凸とスタンドの凹を合わせネジで止める内部。ネジ6本(うち2本はフロントパネル内)と、DVIコネクタのネジを外し、内部の爪をゆっくり外す。非常にシンプルな内部だ

 まず驚いたのが、約3年前に記事にした「NP12-V」と筐体の構造がほとんど変わっていないことだ。内部のレイアウトもほぼ同じだ。この数年間で搭載しているプロセッサも含めアーキテクチャはかなり変わっているにも関わらず、ほぼ同じ筐体に収まっている。同社のこだわりがある部分と言えよう。

 デザインも変わらず、ホワイトをベースとしたシンプルなもの。以前フロントパネルの開け閉めがしにくいと書いた部分は、パネル自体が取外し可能となり、扱いやすくなった(ただしその代わり紛失する可能性はあるが)。

 分解の方法も変わらず、本体側のネジを6本と、DVI-Iのネジを2本(以前これは無かった)外し、細いマイナスドライバーで何カ所かにある爪を押し込んでいけばパカッと外れる。この時、フロントのUSB 2.0と音声入出力の部分がパネルに引っかかっているので、うまくずらしながら外すのがコツだ。とは言え、BTOによってメモリ4GBも選択可能で、ストレージの容量もそれなりにあるため、分解を必要とするケースは、これまでのモデルよりかなり減ると思われる。

 作動時のノイズや振動、熱に関しては、ほとんど問題無いレベルに抑えられている。これまでのノウハウが有効活用されている雰囲気だ。

●SSD搭載でレスポンスが大幅向上

 OSは64bit版のWindows 7 Home Premium SP1。グラフィックスがメモリ共有タイプなので、4GB搭載でちょうどいいところ。ストレージはIntel製のSSD「SSDSA2CW080G3」が使われていた。C:ドライブのみの1パーテーションで、約71.8GBが割当てられ、初期起動時空き領域は53.5GBとなる。

 用途にもよるだろうが、オフィス系の書類中心で、大容量の画像や動画データを置かない限り、何とかなる範囲だろう。もし不足になった場合は、Gigabit Ethernetに対応しているので、NASで対応も可能だ。

 サウンド、そしてネットワークアダプタにはRealtekが使われていた。AMD E-450 APU搭載機としては標準的な構成だろう。

起動時のデスクトップ。左側に同社お馴染みのショートカットが並ぶ。グラフィックスがメモリ共有なので、実質3.61GBの空きとなるデバイスドライバ/主要なデバイス。SSDはIntel製の「SSDSA2CW080G3」。サウンド及びネットワークアダプタはRealtekだC:ドライブのみの1パーテーション。約71.8GBが割当てられている

 プリインストールのアプリケーションは、他社製として「マカフィーセキュリティーセンター(90日期間限定版)」、自社製として「PCお役立ちナビ」、「リカバリーツール」、「初期設定ツール」、「お客様満足度アンケート」など。

 これも筐体と同じく、3年前の「NP12-V」と内容がほぼ同じだ。当時の記事と比較すると「i-フィルター 5.0 1カ月試用版」がない程度だろうか。ハードウェア、ソフトウェア共に、このシリーズのコンセプトがブレていないことがわかる。

 なおBTOではプリインストールのソフトウェアも選択でき、例えばオフィス系では、「Microsoft Office」、「KINGSOFT Office 2012」、「Open Office」などの項目がメニューにある。

PCお役立ちナビお客様満足度アンケート初期設定ツール

 ベンチマークテストはWindows エクスペリエンス インデックスとCrystalMarkの結果を見たい。また参考までに少し前に掲載したSAPPHIREの「EDGE-HD3 Mini PC」(AMD E-450/4GB/320GB HDD)の値をカッコ内に併記している。

 Windows エクスペリエンス インデックスは、総合 3.9。プロセッサ 3.9(3.9)、メモリ 5.9(5.9)、グラフィックス 4.6(4.5)、ゲーム用グラフィックス 4.5(5.9)、プライマリハードディスク 7.0(5.9)。グラフィックスの値が違うのはメモリ構成だろうか。さすがにSSDは速度的に圧倒的な違いがあることがわかる。

 CrystalMarkは、ALU 10912(10963)、FPU 10576(10148)、MEM 8916(8594)、HDD 23085(9043)、GDI 4914(4843)、D2D 2310(2500)、OGL 11442(11430)。こちらはGDI/D2D/OGLともに大差無し、同じくSSDの2万越えがポイントだ。これによって実際操作すると、特に不満無くWindows 7を操作することが出来る。

 初代Windows 7搭載機「NP12-V」のスコア(2GB搭載時、カッコ内はメモリ1GBの値)は、プロセッサ2.3(2.3)、メモリ4.4(3.9)、グラフィックス3.2(1.0)、ゲーム用グラフィックス3.0(3.0)、プライマリハードディスク5.4(5.4)だった。このことから、3年の歳月を経てかなり実用的に使えるシステムになったと言えるだろう。

Windows エクスペリエンス インデックスは総合 3.9。プロセッサ 3.9、メモリ 5.9、グラフィックス 4.6、ゲーム用グラフィックス 4.5、プライマリハードディスク 7.0CrystalMark。ALU 10912、FPU 10576、MEM 8916、HDD 23085、GDI 4914、D2D 2310、OGL 11442

 以上のようにEndeavor NB50Eは、机の上に置いても一般的なノートPCよりフットプリントは小さく、全く邪魔にならないマシンだ。さらにメモリ4GB搭載すればWindows 7も普通に動き、重い処理さえしなけえればプロセッサのパワー不足も気にならない。加えて静音性と省エネの観点からも魅力的と言えるだろう。

 BTOでOSとメモリ、そしてHDDまたはSSDの組合せが可能なので、AMD E-450を搭載したコンパクトなPCに興味あるユーザーへお勧めしたい製品と言えよう。