西川和久の不定期コラム

Ryzen 7 8845HS搭載、静かで発熱も抑えめのミニPC!「Beelink SER8」

Beelink SER8

 BeelinkはRyzen 7 8845HSを搭載したミニPCを販売中だ。編集部から実機が送られて来たので、試用レポートをお届けしたい。

Ryzen 7 8845HS/32GB/1TB搭載ミニPC!

 BeelinkのミニPCは過去何度も本連載で扱っている。イメージ的にはブラックな筐体に赤い電源ボタン……だったのだが、今回ご紹介する「SER8」は、そのイメージとは真逆のシルバーなMac mini的デザインになっている。同社のサイトを眺めるとまだ黒+赤デザインが残っているので、このモデル固有とも考えられる。そう言えば「SER7」も同じ感じのデザインだった。

 余談になるが、横並びの別モデルでIntel Core Ultra 5 125H搭載の「SEi14」も販売中だ。気持ち高めだが、Intel派の方はこちらを選択するのもありだろう。Ryzen 7 8845HS/32GB/1TB搭載「SER8」の主な仕様は以下の通り。

Beelink「SER8」の仕様
プロセッサRyzen 7 8845HS(8コア16スレッド、最大クロック5.1GHz/キャッシュ 8+16MB/TDP 45W/cTDP 35-54W)
メモリ32GB(16GB DDR5-5600×2/SO-DIMM最大256GB)
ストレージM.2 2280 SSD 1TB/2スロット1つ空き
OSWindows 11 Pro(23H2)
グラフィックスRadeon 780M(12コア)/DisplayPort、HDMI 2.1、Type-C
ネットワーク2.5GbE、Wi-Fi 6E、Bluetooth 5.2
インターフェイスUSB4、USB 3.1 Type-C×1、USB 3.1×2、USB 2.0×2、3.5mmジャック×2
サイズ/重量(実測)約135×135×45mm、778g
カラーバリエーションFrost Silver、Space Gray
セール価格10万1,692円(32GB+1TB)

 プロセッサはZen 4アーキテクチャのRyzen 7 8845HS。8コア16スレッドで最大クロック5.1GHz。キャッシュ 8+16MB、TDP 45W、cTDP 35-54W。加えて最大16TOPSのNPUを搭載。Ryzen AIで利用可能だ。ただし、タスクマネージャーにはNPUの項目はなく、AMD独自仕様となる。なおNPUは上位SKUのRyzen 9 8945HSにも搭載されている。

 このNPU、Intel Core Ultra 5 125Hの時もそうだったが、具体的に何に使われるのか明示してほしいところ。

 メモリは16GB DDR5-5600×2(SO-DIMM)の計32GB。最大256GBまで増設可能とあるが、128GBのSO-DIMM……見たことがない。実質32GB×2で64GBというところか。ストレージはM.2 2280 SSD 1TB。M.2スロットは2つあり、1つが空きとなる。OSはWindows 11 Pro。23H2だったので、この範囲でWindows Updateを適用し評価した。

 グラフィックスはプロセッサ内蔵Radeon 780M(12コア)。外部出力用に、DisplayPort、HDMI 2.1、USB4を備えている。

 ネットワークは2.5GbE、Wi-Fi 6E、Bluetooth 5.2。そのほかのインターフェイスは、USB4×1、USB 3.1 Type-C×1、USB 3.1×2、USB 2.0×2、3.5mmジャック×2。前面と背面両方に3.5mmジャックがあるのはちょっと珍しいだろうか。

 カラーバリエーションは、Frost Silver、Space Grayの2色が用意され、サイズ約135×135×45mm、重量778g(実測)。

 セール価格で10万1,692円(32GB+1TB)。内容を考えると安いのだが、消耗品として扱える10万円未満だと、特に企業などでは購入しやすくなる。メモリかストレージを削った(16GBか512GBか)安価なモデルも欲しいところ。しかしこの消耗品は10万円未満というのは、いったい何十年前の基準だ(笑)!? 円安もあり、そろそろ変えて欲しいところ。

前面。電源ボタン、3.5mmジャック、USB 3.1 Type-C、USB 3.1
背面。USB 3.1とUSB 2.0×2、2.5Gigabit Ethernet、DisplayPort、HDMI、3.5mmジャックUSB4、電源入力
裏面とiPhone 13 Pro。NUCタイプは数多くご紹介しているが、少し大きめか
付属品。ACアダプタ(サイズ約70×70×30mm、重量275g、出力19V/5.26A)、HDMIケーブル
BIOS / Main。起動時[DEL]キーで表示
BIOS / Advanced
重量は実測で778g
いつものキーボード付きモバイルモニターへ接続。USB4があるのでType-Cケーブル1本で接続可能

 今回手元に届いたのはSpace Gray。筐体は金属製で質感も良く、なかなかカッコいい。また両サイドにスリットがなくスッキリした印象を受ける。iPhone 13 Proとの比較から分かるように、これまでご紹介したNUCタイプとしては少し大きめ。重量は実測で778g。ACアダプタと合わすと約1kg。これも若干重めだ。とは言え持ち運べないサイズ/重量感ではない。出先にモニター、キーボード、マウスがあればハイパフォーマンスで作業することができる。

 前面は電源ボタン、3.5mmジャック、USB 3.1 Type-C、USB 3.1。背面はUSB 3.1とUSB 2.0×2、2.5Gigabit Ethernet、DisplayPort、HDMI、3.5mmジャックUSB4、電源入力を配置。

 裏は前後にバー式の足がある。ここがメッシュになっているのは、裏から吸気し、リアから出すというエアフローになっているとのこと。またVESAマウンタ系のネジ穴がないのが、このクラスとしては珍しいところか。

 付属品は、ACアダプタ(サイズ約70×70×30mm、重量275g、出力19V/5.26A)、HDMIケーブル。BIOSは起動時[DEL]キーで表示と一般的なものだ。

 内部へのアクセスは、まず裏の四隅にゴムがあるのでこれを外す。ただちょっと外しにくいのが難点。この下にネジがあるので外して、裏パネルにある取手? を引っ張ればOKだ。

 内部には裏から吸気している関係から、もう1枚、埃よけのパネルがあり、これはネジ2本で外すことができる。M.2 SSDの上には結構大きな放熱板と、メモリがCrucial製であるのが分かる。

裏パネルを外したところ。四隅の小さいゴムを外すとネジが見える。ただこのゴムが結構外し難い
内パネルを外したところ。内部にもう1つパネルがあるので、ネジ2つ外せばSSDやメモリにアクセスできる。M.2 SSD上にある大きな放熱板と、メモリがCrucialなのが印象的

 ファンレスではないものの、ノイズは製品サイトで32dBを謳っているだけに静かだ。また熱処理も上手くできているのか発熱がほとんどない。CPUに負荷をかけるベンチマークテスト実行中でも、背面から出るエアが少し暖かい程度。これならいろいろな意味で安心して運用できる。

Intel Core Ultra 5 125Hと比較して+αのハイパフォーマンス!

 初期起動直後は、壁紙などのカスタマイズはなく、素のWindows 11 Pro 23H2のまま。構成が構成なだけに、一般的な処理であれば全くストレスを感じないレベルで動作する。

 ストレージはM.2 2280 1TBのCrucial「CT1000P3PSSD8」が使われている。このクラスでCrucialはちょっと珍しい。仕様によると、シーケンシャルリード5,000MB/s、シーケンシャルライト3,600MB/s。CrystalDiskMarkのスコアもそのまま(以上)出ている。C:ドライブのみの1パーティションで約930GBが割り当てられ空き893GB。

 2.5GbEはRealtek Gaming 2.5GbE、Wi-FiはIntel AX200、BluetoothもIntel製だ。上記したようにNeural processorsの項目はない。

初期起動時のデスクトップ。Windows 11 Pro 23H2標準
デバイスマネージャー/主要なデバイス。ストレージはM.2 2280 1TBのCrucial「CT1000P3PSSD8」。2.5GbEはRealtek Gaming 2.5GbE、Wi-FiはIntel AX200、BluetoothもIntel製
ストレージのパーティションはC:ドライブのみの1パーティションで約930GBが割り当てられている
Software: Adrenalin Edition

 ベンチマークテストは、PCMark 10、PCMark 8、3DMark、Cinebench R23、CrystalDiskMarkを使用した。

 少し前にIntel Core Ultra 5 125H搭載ミニPCをご紹介したが、スコアを見比べると本機がほぼ全面的に少し優っている(劣るのは一部)。NPUの性能比較が含まれないため正当な評価ではないものの、CPU+iGPU性能だけ見れば……という感じだ。

 逆にこれまでIntelプロセッサのiGPUは、Radeon 780Mに全く歯が立たなかったのに、Intel Arc graphicsで結構追い上げているので驚いた次第。

【表】ベンチマーク結果
PCMark 10 v2.1.2662
PCMark 10 Score7,367
Essentials11,296
App Start-up Score16,746
Video Conferencing Score8,452
Web Browsing Score10,184
Productivity10,420
Spreadsheets Score13,292
Writing Score8,169
Digital Content Creation9,221
Photo Editing Score10,546
Rendering and Visualization Score11,281
Video Editting Score6,591
PCMark 8 v2.8.704
Home Accelarated 3.04,774
Creative Accelarated 3.0N/A
Work Accelarated 2.05,594
Storage5,092
3DMark v2.29.8256
Time Spy3,387
Fire Strike Ultra2,370
Fire Strike Extreme4,225
Fire Strike7,937
Sky Diver27,040
Cloud Gate34,296
Ice Storm Extreme159,463
Ice Storm177,313
Cinebench R23
CPU14,756(4位)
CPU(Single Core)1,792(1位)
CrystalDiskMark 6.0.0
Q32T1 シーケンシャルリード5,149.260MB/s
Q32T1 シーケンシャルライト4,743.036MB/s
4K Q8T8 ランダムリード2,297.053MB/s
4K Q8T8 ランダムライト2,131.204MB/s
4K Q32T1 ランダムリード691.080MB/s
4K Q32T1 ランダムライト392.657MB/s
4K Q1T1 ランダムリード66.073MB/s
4K Q1T1 ランダムライト139.145MB/s

 以上のようにBeelink「SER8」は、Ryzen 7 8845HS/32GB/1TBを搭載したミニPCだ。音も静かで大した発熱もなく快適に運用できる。加えてメモリもストレージもCrucial採用のこだわった逸品だ。

 特に気になる部分もなく、NPUはともかくとして、CPU+iGPUが高性能のミニPCを探しているユーザーにお勧めしたい1台と言えよう。