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Macを売却/下取り/譲渡するときの正しい初期化手順

 新しいMacを購入する際はそれまで使っていたMacをショップに売ったり、Appleに下取りに出したり、家族や友人などに譲渡したりすることがあるでしょう。その際は、Macをしっかりと初期化することが大切です。正しい初期化作業は自分自身の個人情報を守るためだけでなく、新しいオーナーが問題なく利用できるようにするためにも不可欠です。ここでは、なぜ初期化を行なう必要があるのかを解説したうえで、Macの種類に合わせた最適な初期化方法をナビゲートします。

Macを盗難被害から守るための「アクティベーションロック」が、Macの売却時に悩みの種となることがあります。売却や譲渡の際は、正しい手順での初期化が欠かせません

なぜ初期化が必要なのか?

 Macの初期化がなんとなく面倒に感じる人もいるかもしれません。「大した情報は保存していないし、気になるデータだけ削除しておけばいいのでは?」と思う人もいるのではないでしょうか。

 しかし、その考え方は非常に危険です。ここでは、2つの視点からMacの初期化の必要性について解説しましょう。

 1つ目は、自分自身のためです。Macにはクレジットカード情報やWebサービスのID&パスワードなど、機密性の高い情報が数多く記録されています。それぞれの情報が格納されている場所も多岐に渡るため、ユーザーが個別に消去していくのは極めて困難です。

 そうした情報がもしも悪意のある人に漏れてしまうと、その被害は計り知れません。たとえ漏れたものが特定のSNSのログイン情報だけだったとしても、そこから別のWebサービスのID・パスワードを推測され乗っ取られてしまう可能性があります。

 また、本人になりすまして会社の同僚にコンタクトをとり、企業の機密情報にアクセスするためのログイン情報を聞き出されてしまうかもしれません。些細な情報だと思っていても、その裏には想像を遥かに超えるリスクが潜んでいるのです。

 2つ目は、次に使う人や買取業者のためです。最近のMacには「アクティベーションロック」という機能があり、Apple IDのパスワードを知らないとMacの消去や初期化ができなくなっています。

 そのため、もしMacを売ったり誰かに譲ったりしたとしても、そのMacを手に入れた人が新しいマシンとしてセットアップできないのです。まさに「宝の持ち腐れ」状態というわけです。

 アクティベーションロックは、AppleシリコンまたはApple T2セキュリティチップを搭載したMacで有効になります。Apple T2セキュリティチップは2018年に発売されたMacから採用されていますので、それ以降のMacを下取り/売却/譲渡するときは特に注意しましょう。

Apple T2 セキュリティチップを搭載したコンピュータ

  • iMac(Retina 5K,27-inch,2020)
  • iMac Pro
  • Mac Pro(2019)
  • Mac Pro(Rack,2019)
  • Mac mini(2018)
  • MacBook Air(Retina,13-inch,2020)
  • MacBook Air(Retina,13-inch,2019)
  • MacBook Air(Retina,13-inch,2018)
  • MacBook Pro(13-inch,2020,Two Thunderbolt 3 ports)
  • MacBook Pro(13-inch,2020,Four Thunderbolt 3 ports)
  • MacBook Pro(16-inch,2019)
  • MacBook Pro(13-inch,2019,Two Thunderbolt 3 ports)
  • MacBook Pro(15-inch,2019)
  • MacBook Pro(13-inch,2019,Four Thunderbolt 3 ports)
  • MacBook Pro(15-inch,2018)
  • MacBook Pro(13-inch,2018,Four Thunderbolt 3 ports)
Macの種類や年代を確認するには、[アップルメニュー]→[このMacについて]を選ぶのがいいでしょう

Macの種類によって手順は異なる

 Macの初期化の方法は、搭載されているチップやmacOSのバージョンによって異なります。AppleシリコンとApple T2セキュリティチップ&macOS Monterey以降のOSを搭載したMacの場合はかなりシンプルな操作になりますが、それ以外のMacの場合は複数のステップを辿る必要があります。

 下記にてMacの条件による作業の違いをフローチャートにまとめましたので参考にしてください。

前述の方法で自分のMacの種類を調べ、どの初期化方法を選ぶべきかを判断しましょう

 それでは、個々のステップについて解説していきます。自分のMacに該当する部分をチェックしてみましょう。

1.AppleCareの保証を解約または移行する

 有償サポートの「AppleCare+ for Mac」に加入している人は、解約を行なうことで残存期間分の返金を受けることができます(一括払いの場合)。Appleのサポートページから連絡して解約を申し出ましょう。

 また、支払い方法を月払いまたは年払いにしている場合は、解約により以後の請求がキャンセルできます。手順は、まず「App Store」アプリを起動して左下の自分の名前をクリックし、画面右上にある[アカウント設定]を選びます。

 すると、アカウント情報のウィンドウが開くので、そこから[管理]の[サブスクリプション]項目を探し出し、[管理]ボタンを押してから契約中のAppleCare+をキャンセルします。

 さらに、Apple Care+は他の所有者に移行することも可能です(一括払いの場合)。下取りや売却ではなく、知り合いにMacを直接譲る場合に利用してみましょう。AppleCare+を解約するのと同じように、Appleのサポートページから申し込みが行なえます。

AppleCare+の解約や移行はAppleのサポートページから行なえます。[App &サービス]欄の中にある[ハードウェア保証]を選び、そこから[AppleCareプランの解約]や[AppleCare プランの移行]項目を選んで進めます

2.「すべてのコンテンツと設定を消去」を使う

 Appleシリコン、またはApple T2セキュリティチップを搭載し、Monterey以降がインストールされたMacの場合、手順は非常にシンプルです。

 「システム設定」を開いて[一般]項目を選ぶと[転送またはリセット]という項目があるのでそれを選択。そして[すべてのコンテンツと設置を消去]というボタンが現れるのでクリックしましょう。

 すると新しくウィンドウが現れ、バックアップやサインアウトなど、一つひとつステップごとに案内してくれます。画面の指示に従って操作をすれば安全に初期化を行なえます。

 なお、初期化が完了するとMacは自動的に再起動し、Macを初めて設定したときと同じ「設定アシスタント」が開きます。Macを売却/譲渡する場合は、設定アシスタントを進めずに電源ボタンを長押しして終了しましょう。

 Appleシリコン、またはApple T2セキュリティチップを搭載し、Monterey以降がインストールされたMacの場合は、これですべての作業が完了です。

「システム設定」を開き、[一般]→[転送またはリセット]を選択。すると[すべてのコンテンツと設置を消去]というボタンがあるのでクリックして進めましょう
ウィンドウが表示され、1ステップずつ消去方法をナビゲートしてくれます

3.ファイルをバックアップまたは転送する

 「すべてのコンテンツと設定を消去」が利用できないMacの場合は、ユーザーが一つひとつ操作を行なう必要がありますので、以降の手順を踏んで初期化を行なう必要があります。

 そのためにまず必要なのが、Mac内のデータのバックアップです。バックアップの方法はいくつかありますが、macOS標準機能のTime Machineを使ってMac全体をバックアップするのがおすすめです。

 もし新しいMacが手元にある場合、「移行アシスタント」を使って情報を直接転送することもできます。Mac同士をThunderboltケーブルでつないで転送したり、Wi-Fi経由で転送したりすることも可能です。

 ただし、データ量が多いとWi-Fi経由の転送にはかなりの時間がかかります。注意しましょう。

日常的にTimeMachineを使っている人も、初期化の前に[今すぐバックアップを作成]で最新のバックアップをとっておきましょう

4.iTunesからサインアウトする

 Mojaveやそれ以前のOSを使っている場合、「iTunes」アプリでサインアウトを行ないます。Catalina以降のOSならこの操作は不要です。

 iTunesの[アカウント]メニューから[認証]→[このコンピュータの認証を解除]を選び、操作を進めます。

5.iCloudからサインアウトする

 続いてiCloudのサインアウトを行ないます。「システム設定」(Monterey以前の場合は「システム環境設定」)を開き、自分のApple IDを選択。切り替わった画面の中にある[サインアウト]ボタンをクリックします。

 iCloudのデータのコピーをMac内に残すかどうかを尋ねられた場合は、ひとまずコピーを残しておいても構いません。後ほどデータをまとめて消去するからです。

Venturaの場合、システム設定で自分のApple IDの情報を表示した画面の一番下に[サインアウト]ボタンがあります

6.iMessageからサインアウトする

 iCloudからサインアウトしても、iMessageのサインアウトは行なわれません。「メッセージ」アプリを起動して、サインアウトしましょう。

メッセージを起動したら、[メッセージ]メニュー→[設定]を選び、設定ウィンドウを開きます。続いて[iMessage]アイコンを選択したのち、[サインアウト]ボタンをクリックしましょう

7.Bluetoothデバイスのペアリングを解除する

 MacにBluetooth対応のキーボードやマウスなどをつないでいて、Macを手放したあともそれらのアクセサリは自分で使い続ける場合は、このタイミングでペアリングを解除しておくといいでしょう。

 ペアリング解除は必須ではありませんが、次のペアリングがスムーズになります。

システム設定で[Bluetooth]項目を選びます。ペアリングしているデバイスの一覧が表示されるので、解除したいデバイス部分にマウスポインタを乗せましょう。[接続解除]ボタンが表示されるのでクリックします

8.Macを消去・再インストールする

 ここまで来たら、いよいよMacの消去と再インストールを行ないます。まずはシステム終了を選んで、Macを一度終了させましょう。

 そして再びMacの電源ボタンを押して起動したら、すぐに[command]キー+[R]キーを押し、アップルマークが表示されるまで押し続けます。しばらく待つと[macOS 復旧]という画面が表示されるので、そこから[ディスクユーティリティ]を選択します。

 ディスクユーティリティの画面が表示されたら、左側から内蔵ボリュームを選び、上部のツールバーから[消去]を選びます。ボリュームの名称とフォーマットの種類を設定する画面になるので、それぞれ設定しましょう。

 ボリューム名称は標準的な「Macintosh HD」にしておくのが無難です。フォーマットは、macOS 10.13(High Sierra)以降のOSで利用する場合は、[APFS]を選んでおくといいでしょう。

 消去が完了したら、ディスクユーティリティを終了します。前の画面に戻るので[macOSを再インストール]を選択してインストールを行ないます。

 インストールが終了すると、自動的にMacが再起動して設定アシスタントが表示されます。設定を続けずに、[command]キー+[Q]キーを押してシステム終了しましょう。

これまで問題なく起動できていたマシンであれば、[command]キー+[R]キーで[macOS復旧]画面が起動するはずです。「リカバリモード」とも呼ばれます
ディスクユーティリティで内蔵ボリュームの消去を行ないます。誤って外部ストレージを選んでしまわないように注意。ミスを避けるため、外付けストレージは全部外しておくのがおすすめです

9.NVRAMをリセットしてシステム終了する

 Intelチップを搭載したMacの場合、Macの電源を入れたらすぐに[option]キー+[command]キー+[P]キー+[R]キーを同時に押し、20秒ほど押し続けてからキーを離します。この操作によって、「NVRAM」(PRAM)というものがリセットされます。

 NVRAMとは、Macの音量や画面解像度、変更されたセキュリティ情報といった情報を保管しているメモリ装置です。リセットすることで、NVRAMに保存されていた情報が消去されます。

 なお、この操作はAppleシリコンを搭載したMacでは必要ありません。

アクティベーションロックの問題が増えている

 最近は、Apple T2セキュリティチップを搭載したMacが下取りや中古に出されるケースが増えてきました。それに伴い、アクティベーションロックがかかった状態のMacが持ち込まれるケースも多く、買取業者の頭を悩ませています。

 困るのは買取業者だけではありません、わざわざショップに持ち込んだのに「この状態では引き取れません」と言われ持ち帰る羽目になってしまったら、ユーザーにとっても時間の痛手です。郵送による買取の場合もそのまま送り戻されることになり、かなりの時間ロスになってしまうでしょう。

 あらかじめ正しい初期化を行なっておくことで買取の流れがスマートに進み、ユーザーも買取業者も、そして次に使いたい人も、みんながハッピーになれるのです。