~AMD A4-3300M搭載で39,900円の15.6型ノートPC |
日本HPから発売された「HP Pavilion g6-1100」シリーズは、CPUとしてAMD A4-3300Mを搭載した15.6型ノートPCである。AMD A4-3300Mは、開発コードネーム「Llano」と呼ばれていたCPUであり、CPUとGPUを1つのダイに統合していることが特徴だ。
AMDは、CPUとGPUを統合したプロセッサを「Fusion APU」と名付けているが、AMD Aシリーズは、今年1月に登場した「AMD Eシリーズ」「AMD Cシリーズ」に続く、第2弾となる。AMD E/Cシリーズは、IntelのCULV CPUやAtom対抗となるモバイルノートPC向け製品であり、性能よりもTDPや消費電力の低さを重視していた。一方AMD Aシリーズは、AMD E/Cシリーズよりも高性能なメインストリーム向け製品であり、ノートPC向けだけでなく、デスクトップPC向け製品も発表されている。
AMD Aシリーズは、Phenom IIをベースに改良したCPUコア(クアッドまたはデュアル)とRadeon HD 6000世代のGPUコアを統合したプロセッサであり、TDPは35Wまたは45Wである。日本HPは、AMDのプロセッサを積極的に採用しており、今回レビューするHP Pavilion g6-1100は、国内で正式に販売されるノートPCとしては、初のAMD Aシリーズ搭載製品となる。
●Turbo CORE採用で最大2.5GHzまでクロックが向上HP Pavilion g6-1100シリーズは、メモリ容量やHDD容量、Officeの有無などの違いによって全部で4つのモデルが用意されているが、今回試用した「HP Pavilion g6-1100AUエントリーモデル」(以下g6-1100AU)は最下位のモデルで、直販価格が39,800円と非常に安いことが魅力だ。
価格が安いからといって、ボディが安っぽいという印象はなく、同社のミドルクラスの製品と比べても作りや質感は見劣りしない。本体のサイズは、378×246×30.5~38mm(幅×奥行き×高さ)で、重量は約2.36kgである。ボディカラーはチャコールグレーで、表面には光沢がある。
CPUには前述の通り、AMD A4-3300Mを搭載する。A4-3300MはデュアルコアCPUで、動作クロックは1.9GHzだが、IntelのTurbo Boostに似たTurbo COREと呼ばれる自動オーバークロック機能を備えており、熱設計枠内で最大2.5GHzで動作する。
メモリ容量は、今回試用したg6-1110AUでは2GBとやや少ないが、上位モデルのg6-1102AUやg6-1103AUでは4GBとなっている。メモリスロットは2基用意されており、最大8GBまで増設が可能だ。g6-1100AUのHDD容量は320GBだが、上位モデルでは500GBとなっている。
また、光学ドライブとして、DVDスーパーマルチドライブを搭載している。AMD A4-3300Mは、Radeon HD 6480Gと呼ばれるGPUコアを内蔵しているが、SP数は240、コアクロックは444MHzとなっている。DirectX 11に対応しており、Core iシリーズ内蔵のグラフィックスコアより描画性能は高い。このクラスのノートPCとしては、高い基本性能を備えているといってよいだろう。
●タッチパッドの有効/無効をワンタッチで切り替えられる
液晶は15.6型ワイドで、解像度は1,366×768ドットと標準的だ。光沢タイプの液晶なので、外光の映り込みがやや気になることがある。また、上下の視野角がかなり狭く、上方から液晶を見ると、画面がかなり白っぽくなってしまう。液晶の品質はそれほど高いとは言えないが、ネットサーフィンや文書作成など、一般的な作業を行なうには十分なレベルだ。液晶上部には、約30万画素のWebカメラが搭載されており、ビデオチャットなどに利用できる。
キーボードは全90キーで、キーピッチは19mm、キーストロークは2mmと余裕がある。キーピッチも均等でキータッチも良好だが、Enterキーが右端ではなく、Enterキーの右側にもPgUpキーやPgDnキーが配置されているので、慣れるまで違和感を感じる人もいるだろう。
ポインティングデバイスとしては、タッチパッドを搭載する。タッチパッドとパームレストの間に段差のないシームレスなデザインを採用しており、外観がすっきりしていて美しい。また、パッド部分の表面には細かな突起が設けられており、指との摩擦が適度で使いやすい。パッドの左上には丸い凹みがあるが、ここをダブルタップすることで、パッドの有効/無効の切り替えが可能だ。パッドを無効にすると、パッドの上部にあるインジケータが点灯する。外付けのマウスなどを利用する場合に便利だ。
●必要にして十分なインターフェイスを搭載
インターフェイスも必要にして十分なものを搭載している。USB 3.0に非対応なのが残念だが、USB 2.0×3とHDMI出力、ミニD-Sub15ピン、有線LANなどを備えるほか、SDメモリーカードやMMCに対応した2in1メディアスロットを搭載する。サウンドにもこだわっており、音質に定評のあるALTEC LANSINGブランドのステレオスピーカーを搭載するほか、高音質化技術のSRS Premium Soundもサポートする。
ワイヤレス機能としては、IEEE 802.11b/g/n準拠の無線LANに対応する。なお、Officeがプリインストールされているg6-1101AUとg6-1103AUの2モデルは、Bluetooth 3.0もサポートしている。F12キーが無線LANオン/オフスイッチになっており、ワンタッチで有効/無効にできるのは便利だ。
バッテリは10.8V/47Whの6セル仕様で、公称約6時間15分の駆動が可能だ。ACアダプタがこのクラスの製品としてはコンパクトで軽いのも評価できる。実際に、バッテリベンチマークソフトの「BBench」(海人氏作)を利用し、1分ごとに無線LAN経由でのWebアクセス、10秒ごとにキー入力を行なう設定でバッテリ駆動時間を計測したところ、5時間19分の駆動が可能であった。モバイルでの利用を前提としていない、A4サイズノートPCとしてはバッテリ駆動時間も長い。
バッテリは10.8V/47Whの6セル仕様である | CDケース(左)とバッテリのサイズ比較 |
ACアダプタはこのクラスのノートPC用としてはコンパクトだ | CDケース(左)とACアダプタのサイズ比較 |
●CPU性能はIntelのCULV CPUを上回り、GPU性能は第2世代Core iを上回る
本製品は、国内で発売されるノートPCとして初めてAMD A4-3300Mを搭載した製品であり、そのパフォーマンスが気になるところだ。そこで、参考のためにベンチマークテストを行なってみた。利用したベンチマークプログラムは「PCMark05」、「PCMarkVantage」、「PCMark 7」、「3DMark03」、「FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3」、「ストリーム出力テスト for 地デジ」、「CrystalDiskMark」だ。
比較用として、レノボ「IdeaPad Y570」、富士通「LIFEBOOK AH52/DA」、ソニー「VAIO Y(YA)」、ソニー「VAIO S(SA)」、NEC「LaVie S LS550/ES」の値も掲載した。
【表】ベンチマーク結果HP Pavilion g6-1100AU | IdeaPad Y570 | LIFEBOOK AH52/DA | VAIO Y(YA) | VAIO S(SA) (SPEEDモード) | VAIO S(SA) (STAMINAモード) | LaVie S LS550/ES | |
CPU | AMD A4-3300M (1.9GHz) | Core i7-2630QM (2.0GHZ) | Pentium B940 (2GHz) | Core i3-380UM (1.33GHz) | Core i5-2540M (2.6GHz) | Core i5-2540M (2.60GHz) | Core i5-2410M (2.30GHz) |
ビデオチップ | Radeon HD 6480G | GeForce GT 555M | Intel HD Graphics | Intel HD Graphics | Radeon HD 6630M | Intel HD Graphics 3000 | Intel HD Graphics 3000 |
PCMark 05 | |||||||
PCMarks | N/A | N/A | 5165 | N/A | N/A | N/A | N/A |
CPU Score | 4733 | 9268 | 5043 | 3586 | 9594 | 9608 | 7709 |
Memory Score | 3878 | 8964 | 6743 | 3465 | 10256 | 10255 | 8588 |
Graphics Score | 4055 | 8157 | 3001 | 1572 | 7608 | 5122 | 4580 |
HDD Score | 5646 | 17644 | 5614 | 5251 | 34742 | 33909 | 5616 |
PCMark Vantage 64bit | |||||||
PCMark Score | 3676 | 9886 | 4618 | 3219 | 10239 | 10019 | 5736 |
Memories Score | 2447 | 5337 | 3043 | 2045 | 6173 | 5483 | 4088 |
TV and Movie Score | 2440 | 5495 | 3071 | 2331 | 4767 | 4937 | 4271 |
Gaming Score | 2987 | 10114 | 3261 | 2093 | 10370 | 8027 | 4409 |
Music Score | 3746 | 10463 | 5006 | 3529 | 12876 | 12996 | 6394 |
Communications Score | 3886 | 8129 | 4493 | 2829 | 12045 | 12289 | 6305 |
Productivity Score | 3101 | 8125 | 3250 | 2907 | 8201 | 8134 | 3117 |
HDD Score | 3190 | 9964 | 3523 | 3063 | 17903 | 17649 | 3669 |
PCMark Vantage 32bit | |||||||
PCMark Score | 3604 | 9284 | 4235 | 未計測 | 9921 | 9341 | 5317 |
Memories Score | 2507 | 5186 | 2903 | 未計測 | 5943 | 5227 | 3902 |
TV and Movie Score | 2443 | 5442 | 3066 | 未計測 | 4746 | 4900 | 4297 |
Gaming Score | 2530 | 8958 | 2687 | 未計測 | 8602 | 7382 | 4121 |
Music Score | 3743 | 9545 | 4513 | 未計測 | 12005 | 12193 | 5884 |
Communications Score | 3768 | 7469 | 4202 | 未計測 | 11255 | 11212 | 6218 |
Productivity Score | 3145 | 7427 | 3488 | 未計測 | 7797 | 7609 | 2901 |
HDD Score | 3151 | 9948 | 3523 | 未計測 | 17788 | 17780 | 3662 |
PCMark 7 | |||||||
PCMark score | 1335 | 未計測 | 未計測 | 未計測 | 未計測 | 未計測 | 未計測 |
Lightweight score | 1308 | 未計測 | 未計測 | 未計測 | 未計測 | 未計測 | 未計測 |
Productivity score | 894 | 未計測 | 未計測 | 未計測 | 未計測 | 未計測 | 未計測 |
Creativity score | 1558 | 未計測 | 未計測 | 未計測 | 未計測 | 未計測 | 未計測 |
Entertainment score | 1336 | 未計測 | 未計測 | 未計測 | 未計測 | 未計測 | 未計測 |
Computation score | 1321 | 未計測 | 未計測 | 未計測 | 未計測 | 未計測 | 未計測 |
System storage score | 1383 | 未計測 | 未計測 | 未計測 | 未計測 | 未計測 | 未計測 |
3DMark03 | |||||||
1,024×768ドット32ビットカラー(3Dmarks) | 9545 | 23571 | 7673 | 2802 | 20441 | 11117 | 9325 |
CPU Score | 1166 | 1988 | 1120 | 613 | 2573 | 1725 | 1533 |
FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3 | |||||||
HIGH | 4173 | 7706 | 2640 | 1317 | 7715 | 4009 | 3586 |
LOW | 6374 | 8791 | 4062 | 1910 | 10519 | 5766 | 5273 |
ストリーム出力テスト for 地デジ | |||||||
DP | 91.77 | 99.97 | 99.97 | 77.7 | 99.97 | 99.97 | 100 |
HP | 100 | 99.97 | 100 | 99.97 | 99.97 | 100 | 100 |
SP/LP | 99.97 | 100 | 99.97 | 100 | 100 | 99.97 | 99.97 |
LLP | 99.97 | 100 | 99.97 | 100 | 99.97 | 99.97 | 100 |
DP(CPU負荷) | 59 | 8 | 46 | 37 | 12 | 12 | 14 |
HP(CPU負荷) | 29 | 8 | 24 | 21 | 5 | 6 | 8 |
SP/LP(CPU負荷) | 18 | 7 | 19 | 20 | 3 | 4 | 5 |
LLP(CPU負荷) | 13 | 6 | 14 | 14 | 3 | 3 | 4 |
CrystalDiskMark 2.2 | |||||||
シーケンシャルリード | 77.49MB/sec | 90.73MB/sec | 64.18MB/sec | 88.75MB/sec | 673.2MB/sec | 665.5MB/sec | 88.69MB/sec |
シーケンシャルライト | 58.42MB/sec | 86.12MB/sec | 69.38MB/sec | 87.92MB/sec | 652.6MB/sec | 644.2MB/sec | 89.30MB/sec |
512Kランダムリード | 15.79MB/sec | 36.70MB/sec | 30.28MB/sec | 35.09MB/sec | 431.1MB/sec | 418.7MB/sec | 35.77MB/sec |
CPUの基本的な処理能力を計測するPCMark05のCPU Scoreは4733であり、通常電圧版のCore i7やCore i5の半分程度だが、超低電圧版のCore i3-380UMの3586に比べると高い。Core i3の下位に位置するPentium B940のCPU Scoreは5043で、ほぼ同等の性能といえる。PCMark05のGraphics Scoreは4055で、Core i3-380UMやPantium B940に比べて高く、Intel HD Graphics 3000を内蔵する第2世代Core iシリーズに迫るスコアだ。
システムの総合的なパフォーマンスを計測するPCMark VantageのPCMark Scoreは3676(64bit版)であり、Core i3-380UMの3219を上回っている。3D描画性能を計測する3DMark03のスコアは9545で、さすがに単体GPUを搭載したIdeaPad Y570やVAIO S(SA)には及ばないが、第2世代Core iシリーズの内蔵GPUに比べるとスコアは高い。
FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3のスコアも同じ傾向であり、CPU内蔵GPUとしては、かなり高い描画性能を持つといえる。そこで、ゲームベンチの「ストリートファイターIVベンチマーク」(1,280×720ドットで計測)と「バイオハザード5ベンチマーク」(1,280×720ドット、ベンチマークテストBで計測)を計測したところ、ストリートファイターIVベンチマークの結果は42.87fps、バイオハザード5ベンチマークの結果は20.1fpsとなった。ストリートファイターIVのように、比較的軽めのゲームなら遊べそうだ。Windowsエクスペリエンスのスコアは4.5から6.1と、バランスがよく、この価格の製品としては優秀だ。
Windowsエクスペリエンスインデックスのスコア。一番低いスコアが4.5であり、価格を考えると優秀だ |
●幅広い用途に対応できるコストパフォーマンスの高い1台
g6-1100AUは、AMDのメインストリーム向け新プロセッサ「AMD A4-3300M」の採用により、低価格と高性能を両立させたことが魅力だ。Atomを搭載したネットブックと同程度の価格でありながら、その性能はAtomとは比べものにならない。特にGPU性能は第2世代Core i内蔵GPUよりも高い。最下位モデルのg6-1100AUは、メモリが2GBと少ないが、メモリを4GB以上に増設すればより快適に利用できる。幅広い用途に対応できるノートPCであり、コストパフォーマンスを重視する人にお勧めしたい。
(2011年 8月 12日)
[Text by 石井 英男]