パナソニック「Let'snote B10」
~シリーズ初、フルHD液晶採用の新モデル



パナソニック「Let'snote B10」

3月11日 発売

価格:オープンプライス(実売175,000円前後)



 パナソニックは、Let'snoteシリーズの新モデルとなる、「Let'snote B10」シリーズ(型番:CF-B10Aシリーズ)を発表した。Let'snoteシリーズとして初となる、フルHD液晶を採用するとともに、光学式ドライブ内蔵15型液晶搭載ノートとして世界最軽量を実現している。今回、このLet'snote B10をいち早く試用する機会を得たので、スペック面や使い勝手などを紹介していこう。

●Let'snoteシリーズ初のフルHD液晶採用

 Let'snote B10シリーズの最大の特徴となるのが、Let'snoteシリーズとして初となる、1,920×1,080ドット(フルHD)表示に対応した15.6型ワイド液晶を採用している点だ。Let'snoteシリーズは、Let'snote Jシリーズの登場によって、全シリーズがワイド液晶化を果たした。ただ、表示解像度はLet'snote Fシリーズの1,440×900ドットが最高となっており、フルHD解像度をサポートするモデルはこれまで存在しなかった。最大サイズの液晶を搭載するLet'snote Fシリーズでも14.1型と、液晶サイズがそれほど大きくなかったという点が、大きな理由だったと思われる。

 それに対し、Let'snote B10では、液晶サイズが15.6型と、Let'snote Fシリーズよりもひと回り大きくなっている。そこで、フルHD表示対応液晶パネルが採用されることになったわけだ。表示解像度がフルHDとなったことで、表示領域はLet'snote Fシリーズの1,440×900ドット液晶の1.6倍で、より多くの情報を表示できるようになり、作業効率も大きく向上するはずだ。ビジネスシーンでの利用を考えると、16:9のフルHD液晶より、縦の表示領域の多い16:10(1,920×1,200ドット)の液晶パネルを採用してもらいたかったところではあるが、フルHD解像度でももちろん不満はない。

 パネルの表示品質は、従来のLet'snoteシリーズに採用されている液晶パネルよりも発色が鮮やかという印象を受けた。従来のLet'snoteシリーズに搭載されていた液晶は、青の発色が若干強いものが多かったが、Let'snote B10の液晶では、そういった印象が少なくなっている。パネル表面は非光沢処理となっているため、いわゆる光沢液晶よりも発色の鮮やかさ劣るが、比較的素直な発色が実現されていると感じた。ただ、上下の視野角はかなり狭く、見る角度の違いで色合いがかなり違って見える点は少々気になった。

 また、15.6型というサイズは、フルHD解像度を実現する液晶パネルとしては小さい部類に入る。ドットピッチは0.18mmと、Let'snote Fシリーズの1,440×900ドット14.1型の0.211mmよりかなり小さい。そのため、表示されるアイコンの文字がかなり小さくなる。それでも、Let'snote Jシリーズに搭載されている、1,366×768ドット10.1型液晶に比べると文字は大きく表示されるため、筆者の個人的な印象では、見づらいと感じるほどではなかった。もし文字が見づらいと感じるようであれば、積極的にフォントサイズを大きくしたり、解像度を切り替えて利用すればいいだろう。

 ところで、Let'snote B10には、「画面分割ユーティリティ」と呼ばれるツールが用意されている。これは、フルHDのデスクトップ領域を、2分割、3分割、4分割し、常に特定のレイアウトで利用できるようにするもの。アプリケーションなどのウィンドウを最大表示させた場合、あらかじめ設定した分割領域内でのみ最大表示されるようになる。これによって、複数のアプリケーションを同時に利用する場合に、表示領域を特定して、使いやすいレイアウトを実現できる。こういった使い勝手を高めるツールを標準で用意している点は、大いに歓迎したい。

1,920×1,080ドット表示に対応した、15.6型ワイド液晶を搭載。ドットピッチは細かいが、文字の視認性は悪くない。上下の視野角は狭いが、発色は自然で、表示品質は悪くない画面分割ユーティリティを利用すれば、画面内にウィンドウ最大表示の領域を設定でき、常に決まったレイアウトで複数のアプリケーションを利用可能となる画面分割は2分割、3分割、4分割まで設定でき、分割の割合も自由に変更可能だ

●ボディサイズはかなり大きいが、重量は約1,880gと軽い

 フルHD表示対応の15.6型ワイド液晶を採用しているために、Let'snote B10はボディサイズがかなり大きくなっている。フットプリントは、370.8×229mm(幅×奥行き)と、横幅がLet'snote Fシリーズよりも約44mm大きくなっている。ただ、Let'snote Fシリーズのようなハンドルは用意されず、縦の短いアスペクト比16:9の液晶パネルを採用していることもあり、奥行きはLet'snote Fより約22mm短くなっている。それによって、本体はかなり横長になったという印象を強く受ける。高さは、31.4~43.2mmと、手前から奥に向かって厚くなっている。こちらは、Let'snote Fシリーズより最大で5mmほど薄くなっている。

 重量は、カタログ値で約1,880g、実測では1,873gであった。ボディサイズが大きいために、実際に手に持つとこの数値よりもかなり軽く感じる。モバイルノートというには、サイズがかなり大きく重いのは間違いないが、オフィスで別室まで持ち歩いたり、出張などで外出先に持ち出す場合でも、この重量ならそれほど苦にはならないだろう。

本体天板部分。フットプリントは、370.8×229mm(幅×奥行き)と、かなり横長なボディとなっているDOS/V POWER REPORT誌との比較でも、かなり横長なボディということがわかる。逆に、奥行きは短い本体正面。手前は高さが31.4mmと、奥より薄くなっている
左側面。奥は43.2mmと、手前側より厚くなっていることがわかる。ただ、Let'snote Fシリーズよりは5mmほど薄い背面。右側にバッテリスロットがある
右側面。ボディデザインは、従来のLet'snoteシリーズとほぼ同等だ重量は、実測で1,873g。1.9kgを切っており、ボディサイズを考えると非常に軽量だ

●堅牢性は、他のシリーズより若干劣る

 天板部分は、他のLet'snoteシリーズ同様、ボンネット構造を採用しており、優れた耐圧性能を実現している。他にも、外部からの圧力が加わりにくいように、内部基板をフローティング構造にしたり、衝撃緩衝材でHDDを包んで保護するといった、堅牢性を高める仕様が随所に盛り込まれている。

 ただ、Let'snote B10シリーズは、他のシリーズのように、常に持ち歩くモバイルノートではなく、基本的にはデスク上に設置して利用し、会議の時などに別室に持って移動したり、出張時や外出先での打ち合わせなどにも比較的楽に持ち出せるという位置付けの製品だ。そのため、堅牢性に関しては他のモデルよりも若干下げているようで、落下試験は26方向、非動作時での30cm落下試験のみが行なわれ、防滴仕様のキーボードや、キーボード部にこぼれた水がボディ外に流れやすいウォータースルー構造などは採用されていない。また、耐圧性能についても、他モデルのような具体的な数値は公表されていない。こういった面からも、Let'snote B10シリーズが、日常的に持ち歩くモバイルノートとは異なる位置付けの製品であることがわかるだろう。

 とはいえ、一般的なA4ノートPCと比べると、堅牢性が高いことは間違いない。常に持ち歩かずにデスク上で利用している場合でも、電源ケーブルを足で引っかけてデスク上から落下してしまうといったトラブルは、思った以上に発生している。そういったトラブルから守るという意味でも、Let'snote B10の堅牢性は、他のデスクノートなどと比較して大きな魅力となるはずだ。

天板部分は、Let'snoteシリーズでおなじみのボンネット構造を採用。素材はもちろんマグネシウム合金で、優れた堅牢性を実現している液晶パネル部と本体側に凹凸構造を持たせた抱え込み構造により、落下時の液晶パネルの破損の危険性を低減

 もちろん、物理的な堅牢性だけでなく、TPMチップによる保存データの暗号化や、BIOSパスワード、ポートやスロットの有効/無効設定機能などビジネスシーンで必要とされるセキュリティ機能もしっかり盛り込まれている。Let'snoteシリーズがビジネスシーンで広く利用されているのは、このような物理的な堅牢性の高さに加えて、優れたセキュリティ機能が盛り込まれているからだが、その点はLet'snote B10シリーズにもしっかり受け継がれており、心強い。

●19mmピッチの正方キーキーボードを採用

 キーボードは、Let'snote Fシリーズ同様、アルファベットキーのキーピッチが縦横とも19mmのフルサイズキーボードを採用している。ただし、Let'snote Fシリーズのキーボードと同じものが利用されているのではなく、新開発のキーボードが採用されている。

 本体横幅に余裕があるため、キーピッチが狭くなっているキーは最上段の列以外には基本的に存在せず、配列のおかしい部分も全くない。キーのタッチは柔らかめだが、しっかりとしたクリック感があり、デスクトップ用キーボードとほぼ同等の感覚で利用可能だ。

 Let'snote Fシリーズのキーボードでは、カーソルキーの「↑」が「ろ」キーと「右Shift」キーの間に配置されるなど、若干扱いづらい部分があったが、Let'snote B10ではカーソルキーがShiftキーより1段下がった位置に置かれ、配列の問題が解消されている。さらに、Enterキーの右側に、Home、PgUp、PgDn、Endの各キーが独立して用意されている点も、操作性の向上という意味で歓迎できる。ちなみに、Enterキーの右側4個のキーには、Fnキーとの併用で、表示解像度の変更や、無線機能のON/OFFと、内蔵光学ドライブの電源制御機能も割り当てられている。

 ポインティングデバイスは、Let'snoteシリーズでおなじみの、円形のホイールパッドを搭載する。ただ、クリックボタンがパッド下部だけでなく上部にも配置された、ツインクリックボタン構造となっている点が新しい。キーボードから大きく手を移動させずにクリック操作が行なえるようになったことで、操作性が向上している。

デスクトップ用キーボードと遜色のない使い勝手を実現したフルサイズキーボードを搭載アルファベットキーのキーピッチは、縦横19mmの正方キーを採用。タッチは柔らかめだが、しっかりとしたクリック感がある
Enterキー右に、Home、PgPu、PgDn、Endの4つのキーを用意。Fnキーとの併用で無線LANや内蔵光学ドライブのON/OFF、解像度の変更なども行なえるポインティングデバイスは、おなじみのホイールパッドだが、パッド上部にもクリックボタンを配置したツインクリックボタン構造を採用している

●PCカードやExpressCardなどの拡張カードスロットは用意されない

 CPUは、いわゆる第2世代Coreプロセッサー・ファミリーであるCore i5-2520M(2.50GHz)、チップセットはvPro対応のIntel QM67 Expressを採用している。Intel QM67 Expressを採用していることで、Intel 6シリーズチップセットの不具合問題が気になるところだが、Let'snote B10をはじめ、2011年春モデルのLet'snoteシリーズでは、不具合の対象である3Gbps対応のSATAポートは一切利用されず、HDDやSSD、光学式ドライブは全て不具合の発生しないSATA 6Gbps対応のSATAポート0およびポート1に接続されている。つまり、Let'snoteシリーズに関しては、心配は無用だ。

 メインメモリは、標準で4GB搭載し、最大で8GBまで搭載可能。本体底面のフタを開けると、メインメモリ用のSO-DIMMスロットにアクセスでき、標準で1スロットが空きとなっている。ストレージは、500GBのHDDを標準搭載。HDDは、バッテリスロット側面部のフタを開けることで簡単に取り出せるようになっている(HDDの取り出しや交換は保証外)。また、光学式ドライブはDVDスーパーマルチドライブだが、Let'snoteシリーズでおなじみの、パームレスト部が開くシェルドライブではなく、一般的なトレー式ドライブが採用されている。光学式ドライブは本体正面に取り付けられているので、デスク上でも利用しやすい。

 無線機能は、IEEE 802.11a/b/g/n対応の無線LANのみとなっており、ワイヤレスWANやWiMAX、Bluetoothなどは搭載しない。

 本体側面のポート類は、左側面にGigabit Ethernet、HDMI出力、USB 2.0×2が、右側面にUSB 2.0×1とアナログRGB出力が、正面にSDカードスロット(SDXC、UHS-I対応)がそれぞれ用意されている。PCカードスロット、ExpressCardスロットは用意されないため、拡張性はやや低い。また、USB 3.0が用意されていない点も少々残念だ。

 なお、直販の「マイレッツ倶楽部モデル」では、シリーズ初となるBlu-ray Discドライブを搭載するほか、Bluetoothを追加し、CPUもCore i7-2620M(2.70GHz)に強化される。

左側面には、電源コネクタ、Gigabit Ethernet、HDMI出力、USB 2.0×2ポートを用意右側面には、USB 2.0×1ポートとアナログRGB出力を用意。PCカードスロットやExpress Cardスロット、USB 3.0ポートは用意されない本体正面には、電源ボタンとヘッドフォン・マイク端子に加え、SDXCカードスロット(UHS-I対応)と光学式ドライブを搭載
光学式ドライブはDVDスーパーマルチドライブで、通常のトレー式ドライブが採用されている裏面のフタを開けると、メインメモリ用SO-DIMMスロットにアクセスできる内蔵HDDは、バッテリスロット部から簡単に取り出せるようになっている

●気楽に持ち歩けるデスクノートとしておすすめ

 では、パフォーマンスをチェックしていこう。利用したベンチマークソフトは、Futuremarkの「PCMark Vantage Build 1.0.1 1901」と「PCMark05 Build 1.2.0 1901」、「3DMark06 Build 1.1.0 1901」、カプコンの「モンスターハンターフロンティアベンチマーク【絆】」の4種類。比較用として、TOUGHBOOK CF-31とLet'snote J9 プレミアムエディションの結果も加えてある。

 結果を見ると、全ての結果でCore i5-520M搭載のTOUGHBOOK CF-31を大きく上回っているだけでなく、Core i7-640M搭載のLet'snote J9 プレミアムエディションに対しても、ベンチマークによっては上回っている部分があり、優れたパフォーマンスが実現されていることがわかる。また、CPU内蔵グラフィック機能のIntel HD Graphcs 3000は、従来のIntel HD Grahicsから大幅に描画能力が向上しており、軽めの3Dゲームも快適にプレイ可能なほどの3D描画能力を実現。もちろん、ビジネスアプリケーション利用時にも、この描画能力の高さが快適度の向上につながる。

 Let'snote B10TOUGHBOOK CF-31Let'snote J9 プレミアムエディション
CPUCore i5-2520M (2.50/3.20GHz)Core i5-520M (2.40/2.93GHz)Core i7-640M (2.80/3.46GHz)
チップセットIntel QM67 ExpressIntel QM57 ExpressIntel HM55 Express
ビデオチップIntel HD Graphics 3000Intel HD GraphicsIntel HD Graphics
メモリPC3-8500 4GBPC3-8500 2GBPC3-8500 4GB
ストレージ500GB HDD (HTS545050B9A300)160GB HDD256GB SSD
OSWindows 7 Professional 64bitWindows 7 ProfessionalWindows 7 Professional 64bit
PCMark Vantage x64 Build 1.0.1 0906a
PCMark Suite6587502110081
Memories Suite373025605129
TV and Movies Suite387632203484
Gaming Suite380025235677
Music Suite6620515112765
Communications Suite8797617710729
Productivity Suite5765377314057
HDD Test Suite3287279122773
PCMark05 Build 1.2.0
PCMark ScoreN/A5156N/A
CPU Score917556338622
Memory Score721161936455
Graphics Score374625582392
HDD Score5153462530735
3DMark06 Build 1.1.0 0906a
3DMark Score294717221395
SM2.0 Score956503403
HDR/SM3.0 Score1153721571
CPU Score355223553125
Windows エクスペリエンスインデックス
プロセッサ7.16.47
メモリ5.95.55.9
グラフィックス4.43.93.5
ゲーム用グラフィックス65.14.8
プライマリハードディスク5.95.36.8
モンスターハンターフロンティアベンチマーク【絆】
1,280×720ドット1440N/AN/A
1,920×1,080ドット732N/AN/A

 次に、バッテリ駆動時間だ。まず、省電力設定を、Let'snoteオリジナルの省電力設定「パナソニックの電源管理(省電力)」に設定し、無線機能は無線LANのみを有効にした状態で、BBenchを利用してキー入力とWeb巡回にチェックを入れて計測したところ、約6時間05分だった。また、省電力設定を「高パフォーマンス」、バックライト輝度を100%に設定し、無線LANをONにした状態で、動画ファイル(WMV9、ビットレート約8Mbps、1,280×720ドット)を連続再生させた場合には、約2時間08分だった。他のLet'snoteシリーズに比べると、バッテリ駆動時間はかなり短いものの、常に持ち歩くモバイルノートという位置づけではないことを考えると、これだけのバッテリ駆動時間があれば十分に満足できるだろう。加えて、1時間で約8割充電できる急速充電にも対応している。ちなみに、付属のACアダプタは小型・軽量のため、本体と同時に持ち歩くとしても苦にならないはずだ。

標準で、容量46Whのリチウムイオンバッテリが付属するACアダプタは、他のLet'snoteシリーズ同様、小型のものが付属重量は、電源ケーブル込みで実測246.5gと軽量で、本体と同時に持ち歩く場合でも苦にならない

 Let'snote B10は、重量は約1.88kgで本体サイズもかなり大きいため、モバイルノートシリーズであるLet'snoteシリーズとしては、かなり異質な存在と言える。とはいえ、光学式ドライブを内蔵する15.6型ワイド液晶搭載ノートとして世界最軽量を実現するとともに、堅牢性やセキュリティ性など、Let'snoteシリーズの特徴はしっかり盛り込まれている。拡張カードスロットやUSB 3.0が無いなど気になる部分もあるが、基本スペックが充実しており、拡張性は思ったほど気にならない。

 日常の持ち運びで約1.88kgという重量と本体サイズに我慢できるなら、モバイル用途でも活用できるかもしれない。だが、やはり手軽に持ち歩けるビジネス向けのデスクノートや、高解像度の作業性を求めるユーザーに広くオススメしたい製品だ。

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(2011年 2月 21日)

[Text by 平澤 寿康]