ASUSTeK 「Eee PC 1008HA」
~スタイリッシュな新デザインボディで魅力が向上



ASUSTeK 「Eee PC 1008HA」


 ASUSTeK Computerは、ネットブック「Eee PC」シリーズの最新モデルとなる「Eee PC Seashell」シリーズ2モデルを発表した。極小マザーボードを採用するとともに、貝殻をモチーフとした新デザインの薄型ボディを採用することで、イメージが一新されている。今回、このEee PC Seashellシリーズ2モデルのうち、10.1型液晶を搭載する「Eee PC 1008HA」を試用する機会を得たので、詳しく見ていくことにしよう。

●新デザインの薄型ボディを採用

 Eee PC 1008HA(以下、1008HA)を取り出して最初に感じたのは、かなりスタイリッシュになったな、という印象だった。本体サイズは、262×178×18~25.4mm(幅×奥行き×高さ)、重量は実測値で1,050gと、従来モデルとなるEee PC S101とサイズ、重量ともにほぼ同じ。しかし、シリーズ名「Eee PC Seashell」が示す貝殻をモチーフとし、曲面を多く取り入れたデザインによって、イメージは大きく変わった。

 液晶面を閉じた状態では、天板から底面まで同じ色で塗装され、光沢加工も施されているため、プラスチック感がむき出しで安っぽいという、ネットブックにありがちな印象がほとんどない。また、本体側面に用意されているポート類は、電源コネクタを除いて全てフタでカバーされており、通常はポートが見えないように工夫されている。これによって、周囲にポート類が並ぶ、いかにもノートPCといった印象も受けない。さらに、液晶ヒンジ周辺も含め、接合部のぐらつきやすき間などは全く感じられず、細部にわたっての仕上げも格段に向上している。

 細かな部分でのコストダウンを感じさせるような仕上げのアラはほとんどなくなっており、製品としての完成度や魅力が大きく向上したと言っていい。なんとなくだが、MacBook Airを強く意識してデザインしているな、という印象を受ける。

天板部分。プラスチック感が少なく、安っぽい感じはない。また、Eeeロゴ以外には装飾もなく、すっきりしているフットプリントは、262×178mmと、従来モデルのEee PC S101とほぼ同等本体正面。貝殻をモチーフとしたボディは、周辺部に曲面が多いだけでなく、周辺部までしっかり作り込まれ、完成度が高い
左側面。厚さは18~25.4mmと、非常に薄い背面。中央に電源や充電中を示すLEDが取り付けられている。また、右下のスリットはファンの排気口だ右側面。左側面も含め、ポート類はフタで隠されており、非常にすっきりとしている
本体底面。天板と同じカラーで、メモリスロットなどのフタもなく、かなりシンプルだ本体重量は、実測値で1,050gと、ネットブックの中でもかなり軽い部類に入る

●マザーボードの小型化で、HDD搭載ながらS101と同等の薄型化を実現

■■注意■■

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・筆者およびPC Watch編集部では、この記事についての個別のご質問・お問い合わせにお答えすることはできません。

 先ほど、本体サイズが従来モデルのS101とほぼ同等と紹介したが、実はこれこそ1008HAの大きな特徴だ。なぜなら、1008HAでは、2.5インチHDDを搭載しているにも関わらず、S101とほぼ同じ薄さを実現しているからだ。

 S101には、HDD搭載モデルとしてS101Hという姉妹モデルが用意されていたが、そちらは、本体の高さが25~27.5mmと、S101に比べて厚くなっていた。しかし、1008HAでは、HDDを内蔵したうえで、S101とほぼ同等の薄さを実現している。スペックだけからはなかなかわかりにくいものの、大きな進化と言っていい。

 では、なぜHDDを内蔵しながら薄型ボディを実現できたのか。それは、1008HAでは、非常に小さなメイン基板が採用されていることに尽きる。そこで、基板を取り出してその大きさを確認してみることにした。

 本体の分解手順は、従来までとほぼ同じで、まずツメで固定されているキーボードを外し、キーボード下と底面のネジを外せばいい。ちなみに、ネジが1本シールで封印されており、そのシールを剥がすと保証が受けられなくなる点も従来通りだ。

 キーボード面の本体カバーを外して中を見ると、本体中央から手前側に、横に長い黒い物体が見える。これは、内蔵のリチウムポリマーバッテリだ。S101ではバッテリパックとなっていたが、1008HAでは本体内蔵となり、基本的に着脱が行なえなくなっている。これは、デザイン面(底面のフタを省く)や、薄型化を追求した結果だろう。

 リチウムポリマーバッテリの上にある、フレキシブルケーブルの下の黒い部分が2.5インチHDD。そして、HDDの左に見えるのがマザーボードだ。マザーボードを取り出して、500円玉と並べて撮影した写真を見ると、その小ささがよくわかってもらえると思う。S101のマザーボードと比較すると、半分以下の小ささだ。この小さなマザーボードに、CPUとチップセット、さらに裏面にはメインメモリ用のSO-DIMMスロット、無線LANモジュールが取り付けられたMini PCI Expressコネクタなどが集約されている。この、マザーボードの小型化によって、HDDを搭載するスペースが確保され、S101と同じ薄さが実現できたというわけである。

キーボード下のネジには、おなじみの封印シールが貼られており、このシールを剥がすと保証が受けられなくなるキーボード面のカバーを外した状態。中央下の黒い帯が内蔵のリチウムポリマーバッテリ。その上の、フレキシブルケーブルの下にあるのがHDDだメインのマザーボード。2.5インチHDD程度のサイズと非常に小さい
CPUクーラーを外した状態マザーボード裏面。SO-DIMMスロットとMini PCI Expressスロットを用意。Mini PCI Expressスロットには、小型の無線LANモジュールが取り付けられているHDDは、厚さ9.5mmの2.5インチSATAドライブを採用している
内蔵リチウムポリマーバッテリは、容量が2,900mAhだ

●CPU以外の基本スペックは、S101Hとほぼ同じ

 デザインは一新されたものの、基本スペックはS101Hと大きく変わっていない。目立つ変更点は、CPUが1.66GHz動作のAtom N280になったことだけで、チップセットのIntel 945GSE Express、メインメモリ1GB、160GB HDD、IEEE 802.11b/g/n対応無線LAN、Bluetooth 2.0+EDRなどに変更はない。

 液晶パネルは、1,024×600ドット(WSVGA)表示対応の10.1型液晶を採用。S101Hの10.2型液晶よりわずかに小さくなっているが、サイズはほぼ同じと考えていい。液晶表面は、Eee PCシリーズ初となる光沢処理が施されており、発色はかなり鮮やかになったという印象だ。ただし、映り込みは比較的激しい方で、天井の照明などが映り込んで気になる場面もありそうだ。

 本体側面のポート類は、冒頭でも紹介したように、全てフタがされている。使う時にいちいちフタを開けなければならないのは少々面倒に感じるかもしれないが、ポートを保護する意味も兼ねるため、筆者はフタの存在は利点と思う。用意されているポートは、左側面がミニD-Sub15ピンとUSB 2.0×1、右側面がUSB 2.0×1とマイク/ヘッドフォン端子、100BASE-TX対応Ethernetとなる。ちなみに、ミニD-Sub15ピンは小型の特殊なコネクタが採用されており、ディスプレイの接続には変換アダプタを利用することになるが、この変換アダプタは本体底面に収納できるようになっている。必要なときにすぐ取り出せ、使用が終わったら目立たないように収納できる点は、なかなかよく考えられている。

 キーボードは、キーピッチこそ約17.5mm(実測値)と従来のEee PCシリーズのキーボードとほぼ同じだが、キーの形状が台形に近いものから平面に近い形状へと変更。また、カーソルキーの上下が小さくなり、キー1段内に詰め込まれている。それでも、キータッチは大きく変わっておらず、配列もいびつな部分はなく、従来モデルのキーボードと同様に、扱いやすさは申し分ない。ポインティングデバイスのタッチパッドは、パッド面がパームレストと一体となり、目立たないように工夫されている。指2本でスクロールや拡大/縮小などの操作が行なえるため、パッド面の端がわかりづらくとも操作性は悪くない。ただ、左右のクリックボタンが一体型となっており、ボタン中央付近でのクリック操作が行なえない点は少々気になった。

1,024×600ドット表示対応の10.1型液晶。表面は光沢処理が施され、やや映り込みが気になるものの、発色は鮮やかだ液晶中央上部には130万画素のWebカメラを搭載左側面には、電源コネクタに加え、独自形状のミニD-Sub15ピンと、USB 2.0×1を用意
ミニD-Sub15ピンは、専用の変換アダプタを利用するVGAコネクタは、本体底面に収納できるようになっているキーボードは、キーの形状が変わり、カーソルキーの形状が変更になっているが、変則的な配列は一切無く、扱いやすい
キーピッチは実測で約17.5mmと、従来モデルのキーボードとほぼ同じピッチを実現しているポインティングデバイスのタッチパッドは、パッド面がパームレストと一体となっている。クリックボタンは左右一体構造で、少々扱いづらい右側面には、USB 2.0×1、マイク/ヘッドフォン端子、Ethernetの各コネクタを用意
右側面手前にはSDカードスロットも用意。ダミーカードで保護するタイプだ付属のACアダプタは、従来モデル同様非常に小型だが、コネクタ形状が変更となり互換性はないACアダプタは、電源ケーブルを含めて199gと非常に軽量だ
付属のケースは、従来モデルとほぼ同じものだ

●モバイル性に優れ、持ち歩くマシンとしておすすめ

 では、ベンチマークテストの結果をチェックしていこう。利用したベンチマークソフトは、Futuremarkの「PCMark05 (Build 1.2.0)」と、HDBENCH.NETの「HDBENCH Ver3.40beta6」、スクウェア・エニックスの「FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3」の3種類を利用した。また、比較用として、従来モデルのS101およびS101Hの結果を加えてある。

 結果を見ると、CPUの動作クロックが向上しているために、従来モデルより若干パフォーマンスが向上していることがわかる。とはいえ、その差はそれほど大きなものではなく、パフォーマンスは従来モデルとほぼ同等と考えていい。

 次にバッテリ駆動時間のチェックだ。テスト方法は、省電力機能を切るとともに、液晶輝度を最大に設定し、無線LANを動作させた状態で、動画ファイル(WMV9、ビットレート1,156kbps、640×480ドット)をWindows Media Player 11を利用して連続再生させるというものだ。結果は約2時間37分と、SSD搭載のEee PC S101Hとほぼ同じであった。カタログ値では、バッテリ駆動時間は約5.5時間とされているが、省電力機能を切った状態で2時間37分も持つなら、省電力機能を有効にし、バックライト輝度を下げるなどすれば、3時間半から4時間は十分に利用できるものと思われる。薄型・軽量の本体と加え、モバイル性能はかなり高いといえる。

【ベンチマーク】

Eee PCEee PC S101HEee PC S101
CPUAtom N280(1.66GHz動作)Atom N270(1.6GHz動作)Atom N270(1.6GHz動作)
ビデオチップIntel 945 GSE ExpressIntel 945 GME ExpressIntel 945 GME Express
メモリ1GB1GB1GB
OSWindows XP Home Edition SP3Windows XP Home Edition SP3Windows XP Home Edition SP3
PCMark05 Build 1.2.0
PCMark Score166115311759
CPU Score155614931492
Memory Score252324322414
Graphics Score633577545
HDD Score477440477755
HDBENCH Ver3.40beta6
All407974038045668
CPU:Integer986459896898124
CPU:Float687026800667228
MEMORY:Read512045069849495
MEMORY:Write515525105650243
MEMORY:Read&Write901808997688536
VIDEO:Recitangle181581738717759
VIDEO:Text10192105349164
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VIDEO:DirectDraw292935
DRIVE:Read595346360283934
DRIVE:Write541515458446800
DRIVE:RandomRead251041997662326
DRIVE:RandomWrite262022444414151
FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3
LOW154315431541
バッテリ駆動時間

2時間37分2時間00分2時間38分

 貝殻をモチーフとした新デザインを採用する1008HAは、仕様面こそ従来モデルから大きく変更されておらず、カタログスペックをチェックしただけでは、それほど興味がわかない人も多いかもしれない。しかし、細部までしっかり作り込まれた本体の仕上げの良さや、HDD内蔵ながら非常に薄く軽いボディなど、実際に手にすれば、その印象が大きく変わるはずだ。とにかく、これまでのEee PCシリーズとはレベルの違う完成度が実現されており、最近続々投入されている日本の大手メーカー製ネットブックと比較しても、十分張り合える魅力がある。最近では、高解像度液晶を搭載するネットブックも登場してきており、その点では少々見劣りするのも事実だが、価格ではまだまだWSVGA液晶搭載ネットブックが有利で、優れた携帯性も含めて、広くおすすめしたい製品だ。

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(2009年 7月 14日)

[Text by 平澤 寿康]