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GTX 1060より高性能/低消費電力な新ミドルレンジGPU「GeForce GTX 1660」
2019年3月14日 22:00
NVIDIAは3月14日、GeForce GTX 16シリーズに、新たなミドルレンジGPU「GeForce GTX 1660」を追加した。
今回は、同GPUを搭載するZOTAC製ビデオカード「ZOTAC GAMING GeForce GTX 1660 TWIN FAN 6GB 192BIT GDDR5 (ZT-T16600F-10L)」でベンチマークテストを実行し、新GPUのゲーミング性能をチェックする。
TU116ベースのミドルレンジGPU「GeForce GTX 1660」
GeForce GTX 1660は、上位モデルのGeForce GTX 1660 Tiと同じGPUコア「TU116」を採用する、GeForce GTX 16 シリーズのミドルレンジGPU。
TU116はTuringアーキテクチャを採用したGPUコアだが、RTコアやTensorコアが省かれているため、DirectX Raytracing(DXR)やDLSSのサポートが省かれている。
GeForce GTX 1660のTU116コアは、22基のStreaming Multiprocessorが有効化されたものであり、1,408基のCUDAコアや、88基のテクスチャユニットを備えている。メモリインターフェイスは192bitで、8Gtpsで動作する、6GBのGDDR5メモリと接続している。そのほかのおもな仕様は、以下の表に記載した。
GeForce GTX 1660のおもな仕様 | |||
---|---|---|---|
モデルナンバー | GeForce GTX 1660 | GeForce GTX 1660 Ti | GeForce GTX 1060 6GB |
アーキテクチャ | Turing | Pascal | |
製造プロセス | 12nm FFN | 16nm FinFET | |
GPUコア | TU116 | GP106 | |
Streaming Multiprocessor | 22 基 | 24 基 | 10 基 |
CUDAコア | 1,408 基 | 1,536 基 | 1,280 基 |
Tensorコア | ─ | ||
RTコア | ─ | ||
テクスチャユニット | 88 基 | 96 基 | 80 基 |
ROPユニット | 48 基 | ||
ベースクロック | 1,530 MHz | 1,500 MHz | 1,506 MHz |
ブーストクロック | 1,785 MHz | 1,770 MHz | 1,708 MHz |
メモリ容量 | 6GB (GDDR5) | 6GB (GDDR6) | 6GB (GDDR5) |
メモリスピード | 8.0 Gtps | 12.0 Gtps | 8.0 Gtps |
メモリインターフェイス | 192 bit | ||
メモリ帯域 | 192 GB/s | 288 GB/s | 192 GB/s |
SLI対応 | ─ | ||
消費電力 | 120W |
カード長173.4mmのコンパクトさが特徴のGeForce GTX 1660搭載ビデオカード「ZOTAC GAMING GeForce GTX 1660 TWIN FAN 6GB 192BIT GDDR5」
今回のテストに用いる「ZOTAC GAMING GeForce GTX 1660 TWIN FAN 6GB 192BIT GDDR5 (ZT-T16600F-10L)」は、GeForce GTX 1660をリファレンス仕様に準拠したスペックで搭載した、ZOTACオリジナル設計のビデオカードだ。
カード長を173.4mmに抑えたコンパクト設計を特徴としながらも、4+2フェーズの電源回路を備えるオリジナル基板と、デュアルファンGPUクーラーを搭載。ミドルレンジクラスのビデオカードとしては、充実したハードウェア構成を採用している。
動作に必要なPCI Express補助電源コネクタは8ピン1系統。ディスプレイ出力端子には、HDMI 2.0b×1基とDisplayPort 1.4×3基を備えている。
テスト機材
GeForce GTX 1660の比較用GPUとして、上位モデルの「GeForce GTX 1660 Ti」と、Pascal世代のミドルレンジGPU「GeForce GTX 1060 6GB」を用意した。
両GPUを搭載したビデオカードもZOTAC製で、GeForce GTX 1660 Tiは、GeForce GTX 1660と同系統のコンパクト設計採用モデル「ZOTAC GAMING GeForce GTX 1660 Ti 6GB GDDR6 (ZT-T16610F-10L)」、GeForce GTX 1060 6GBは、オーバークロックモデルの「ZOTAC GeForce GTX 1060 6GB AMP Edition (ZT-P10600B-10M)」をそれぞれ利用する。テスト時の各ビデオカードの動作仕様は以下の通り。
各ビデオカードのテスト時動作仕様 | |||
---|---|---|---|
GPU | GeForce GTX 1660 | GeForce GTX 1660 Ti | GeForce GTX 1060 6GB |
ビデオカードベンダー | ZOTAC | ||
製品名 | ZT-T16600F-10L | ZT-T16610F-10L | ZT-P10600B-10M |
ベースクロック | 1,530 MHz | 1,500 MHz | 1,556 MHz |
ブーストクロック | 1,785 MHz | 1,770 MHz | 1,771 MHz |
メモリ容量 | 6GB (GDDR5) | 6GB (GDDR6) | 6GB (GDDR5) |
メモリスピード | 8.0 Gtps | 12.0 Gtps | 8.0 Gtps |
メモリインターフェース | 192 bit | ||
メモリ帯域 | 192 GB/s | 288 GB/s | 192 GB/s |
ビデオカード検証用のベース機材には、Intelの8コア/16スレッドCPU「Core i9-9900K」を搭載した、Intel Z390環境を用意した。
グラフィックスドライバについては、GeForce GTX 1660は、レビュアー向けのベータ版を利用し、比較用のGPU 2モデルについては、テスト時点での最新版ドライバ「GeForce Game Ready Driver 419.35」を利用した。
テスト機材一覧 | |||
---|---|---|---|
GPU | GeForce GTX 1660 | GeForce GTX 1660 Ti | GeForce GTX 1060 6GB |
CPU | Core i9-9900K | ||
CPUクーラー | ASUS ROG RYUJIN 240 | ||
マザーボード | ASUS TUF Z390-PLUS GAMING (UEFI: 2012) | ||
メモリ | DDR4-2666 8GB×2 (2ch、19-19-19-43、1.2V) | ||
システム用ストレージ | Intel SSD 760p (256GB SSD/M.2-PCIe 3.0 x4) | ||
アプリケーション用ストレージ | SanDisk Ultra 3D SSD (1TB SSD/6Gbps SATA) | ||
電源 | 玄人志向 KRPW-TI700W/94+ (700W 80PLUS Titanium) | ||
グラフィックスドライバ | 419.35 Beta (25.21.14.1935) | GeForce Game Ready Driver 419.35 (25.21.14.1935) | |
OS | Windows 10 Pro 64bit (Ver 1809 / build 17763.348) | ||
電源設定 | 高パフォーマンス | ||
室温 | 約28℃ |
ベンチマーク結果
今回実行したベンチマーテストは、「3DMark(グラフ1~7)」、「VRMark(グラフ8~9)」、「ファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター ベンチマーク(グラフ10)」、「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク(グラフ11)」、「バトルフィールド V(グラフ12)」、「Forza Horizon 4(グラフ13)」、「シャドウ オブ ザ トゥームレイダー(グラフ14)」、「アサシン クリード オデッセイ(グラフ15)」、「モンスターハンター:ワールド(グラフ16)」、「オーバーウォッチ(グラフ17)」、「ゴーストリコン ワイルドランズ(グラフ18)」。
3DMark
3DMarkでは、「Time Spy」「Fire Strike」「Night Raid」「Sky Diver」でスコアを取得した。
DirectX 12高負荷テスト「Time Spy」において、GeForce GTX 1660はGeForce GTX 1060 6GBを約23~26%上回った。上位モデルのGeForce GTX 1660 Tiとの差は約13~14%。
DirectX 11高負荷テスト「Fire Strike」でのGeForce GTX 1660は、GeForce GTX 1060 6GBをフルHD解像度のFire Strikeで約6%、WQHD解像度のFire Strike Extremeでも約2%差で上回ったが、4K解像度のFire Strike Ultraでは、逆に約9%の差をつけられている。
GeForce GTX 1660 Tiとの差は約18~20%で一貫していることから、これはTuring世代とPascal世代の性能特性の違いによるものと考えられる。
中負荷テストでは、GeForce GTX 1060 6GBを、DirectX 12テストの「Night Raid」で約13%、DirectX 11テストの「Sky Diver」では約8%上回った。GeForce GTX 1660 Tiとの差は、どちらのテストでも10%前後となっている。
VRMark
VRMarkでは、「Orange Room」「Cyan Room」「Blue Room」を実行し、それぞれのスコアと平均フレームレートを比較した。
GeForce GTX 1660は、全てのテストでGeForce GTX 1060 6GBを上回っており、その差はOrange Roomで約17%、Cyan Roomは約41%、Blue Roomは約32%だった。DirectX 12テストのCyan Roomだけでなく、5K解像度で実行されるBlue Roomでも大きな差をつけた。
一方、上位モデルであるGeForce GTX 1660 Tiとの差は、約16~17%だった。VRAMの世代こそGDDR5とGDDR6で異なっているが、同じGPUコアをベースにしたGPUだけに、性能特性は類似したものとなっているようだ。
ファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター ベンチマーク
ファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター ベンチマークでは、描画設定を「最高品質」に設定し、フルHDから4Kまでの画面解像度でスコアを取得した。
GeForce GTX 1660は、GeForce GTX 1060 6GBに約6~7%の差をつけて上回った。GeForce GTX 1660 Tiとの差は約16~20%だが、16%差だったのはGeForce GTX 1660 TiでCPUによるボトルネックが生じるフルHD解像度のみで、GPU負荷が高まるWQHD解像度以上では、約20%の差となっている。
GeForce GTX 1660で、ベンチマークの最高評価「非常に快適」の基準である7,000を超えたのは、WQHD解像度までで、WQHD解像度での平均フレームレートは56.6fpsだった。
FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク
FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマークでは、描画設定を「高品質」に設定し、3通りの画面解像度でスコアを取得した。
GeForce GTX 1660は、GeForce GTX 1060 6GBを約13~17%上回った。上位モデルのGeForce GTX 1660 Tiとの差は約16~18%。
バトルフィールド V
バトルフィールド Vでは、グラフィックスAPIにDirectX 12を選択し、描画品質プリセットを「最高」にセットしてフレームレートを測定した。
フルHD~WQHD解像度において、GeForce GTX 1660はGeForce GTX 1060 6GBを約14~16%上回った。GeForce GTX 1660 Tiとの差は約19~20%。
4K解像度で、GeForce GTX 1660が上位モデルのGeForce GTX 1660 Tiを上回っているが、これはVRAM使用量が6GBを超えたことで、著しい性能低下が生じた結果だ。今回テストしたGPUは、いずれも4K解像度かつ「最高」設定ではプレイ不可という以上の意味はない。
Forza Horizon 4
Forza Horizon 4では、描画設定プリセットを「ウルトラ」に設定し、各画面解像度で実行したベンチマークモードの結果を比較した。
GeForce GTX 1660は、GeForce GTX 1060 6GBを約12~15%上回っている。GeForce GTX 1660 Tiとの差は約14~16%。
GeForce GTX 1660は、WQHD解像度でも60fpsを超えるフレームレートを記録しており、WQHD解像度以下なら、高品質かつ滑らかな描画でゲームを楽しむことができるだろう。
シャドウ オブ ザ トゥームレイダー
シャドウ オブ ザ トゥームレイダーでは、描画設定プリセットを「最高」に設定し、3通りの画面解像度でベンチマークモードを実行した。グラフィックスAPIはDirectX 12を利用している。
GeForce GTX 1660は、GeForce GTX 1060 6GBを約22%上回り、GeForce GTX 1660 Tiとの差は約18%だった。
GeForce GTX 1660は、WQHD解像度で44fpsを記録している。これは、WQHD解像度以下であれば常時30fpsの維持が期待できる結果だ。60fps以上での動作を期待するのであれば、画面解像度はフルHDを選択すべきだろう。
アサシン クリード オデッセイ
アサシン クリード オデッセイでは、描画設定プリセットを「最高」に設定し、3通りの画面解像度でベンチマークモードを実行した。
GeForce GTX 1660はGeForce GTX 1060 6GBを約12~16%上回った。GeForce GTX 1660 Tiとの差は約16~22%。
アサシン クリード オデッセイは、30fpsからプレイ可能なタイトルであり、GeForce GTX 1660は、WQHD解像度かつ高画質設定でも、30fps前後での動作が期待できる。ただ、より滑らかな60fpsでの動作を狙いたいのであれば、フルHD解像度でも画質設定の妥協が必要となる。
モンスターハンター:ワールド
モンスターハンター:ワールドでは、描画設定プリセットを「最高」に設定して、3通りの画面解像度でフレームレートを測定した。
GeForce GTX 1660は、GeForce GTX 1060 6GBを約19~22%上回り、GeForce GTX 1660 Tiとの差は約15%だった。
GeForce GTX 1060 6GBは、WQHD解像度以下であれば30fps以上での動作が期待できる。一方、フルHD解像度でのフレームレートは60fpsに届いておらず、滑らかな描画を期待するなら描画設定の調整が必要だ。
オーバーウォッチ
オーバーウォッチでは、描画設定プリセットを最高の「エピック」に設定し、3通りの画面解像度でフレームレートを測定した。
GeForce GTX 1660は、GeForce GTX 1060 6GBを約4~6%上回り、GeForce GTX 1660 Tiとの差は約17~19%だった。
フルHD解像度でGeForce GTX 1660が記録したフレームレートは120Hzに達しており、高リフレッシュレートディスプレイとの組み合わせによって、60fpsを超える滑らかなフレームレートでのプレイが期待できる。
ゴーストリコン ワイルドランズ
ゴーストリコン ワイルドランズでは、描画設定プリセットを「ウルトラ」に設定し、3通りの画面解像度でベンチマークモードを実行した。
GeForce GTX 1660は、GeForce GTX 1060 6GBを約7~12%上回り、GeForce GTX 1660 Tiとの差は約14~26%だった。GeForce GTX 1660 Tiとの間に約26%の差がついたのは4K解像度で、メモリ帯域の差が性能に大きく影響したようだ。
オープンワールド系シューティングであるゴーストリコン ワイルドランズは30fpsからプレイ可能なタイトルで、GeForce GTX 1660はWQHD解像度までなら30fpsを超える平均フレームレートを記録している。60fps以上での動作を狙うならフルHD解像度でも描画設定の調整が必要だ。
消費電力
以下のグラフは、アイドル時消費電力と、ベンチマーク実行中のピーク消費電力を測定したものだ。消費電力は電源ユニットに接続したワットチェッカーで測定した。
アイドル時の消費電力はGeForce GTX 16シリーズ2モデルが37Wで並び、GeForce GTX 1060 6GBが1W低い36Wを記録した。いずれのビデオカードも、アイドル時消費電力は大差ないといって差し支えない結果だ。
GeForce GTX 1660のピーク消費電力については、高いフレームレートを記録したテストでは、CPU消費電力の増加も伴って、GeForce GTX 1060 6GBを上回ったものもみられるが、GPU負荷が高くフレームレートが低いテストであるTime Spy ExtremeやBlue Roomでは、GeForce GTX 1060 6GBの消費電力を下回っており、ビデオカード自体の消費電力は、GeForce GTX 1660が比較製品の中で最も少ないことがわかる。
実消費電力の大小については、GeForce GTX 1060 6GB搭載ビデオカードのみがオーバークロックモデルであることも考慮すべきだが、ワットパフォーマンスに関しては、GeForce GTX 16シリーズが、Pascal世代のGeForce GTX 1060 6GBを上回っていることは間違いない。
GeForce GTX 1660で、FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITIONベンチマークを、4K解像度かつ「高品質」設定で実行したさいのGPUモニタリングデータをまとめたものが以下のグラフだ。GPUのモニタリングはGPU-Zで行なった。
ベンチマーク中のピークGPU温度は68℃で、ブースト動作のしきい値である、Temp Targetの83℃までには15℃の余裕がある。実際、ベンチマーク中のGPUは、ブーストクロックの1,785MHzを超える1,850MHz前後で安定して動作しており、ZOTAC GAMING GeForce GTX 1660 TWIN FAN 6GB 192BIT GDDR5のGPUクーラーは、常時ブースト動作を維持できている。
ファン回転数のピーク値は約2,100rpmで、アイドル時には約1,400rpmで動作していた。アイドル時の動作音は比較的静かだが、ベンチマーク中はそれなりの風切り音が発生する。動作ノイズはコンパクト設計の代償とも言える要素だが、低い温度で安定しているGPU温度を見ると、ユーザーの責任でファン制御を静粛性寄りにチューニングできる余地はありそうだ。
GeForce GTX 1060 シリーズを置き換える新世代ミドルレンジGPU
GeForce GTX 1660は、GeForce GTX 1660 TiとGeForce GTX 1060 6GBの間を埋めるゲーミング性能を備えたビデオカードだ。もっとも、両GPUの間を埋める存在というよりは、GeForce GTX 1060 シリーズを置き換える存在となるだろう。
今回のテストに用いた、ZOTACのGeForce GTX 1660搭載ビデオカードの税込販売価格は3万円前後になると見込まれており、この価格は、GeForce GTX 1060 6GBの価格帯に被るかたちとなる。
同価格帯であれば、1~2割ほど高性能で、ワットパフォーマンスにも優れたGeForce GTX 1660の方が、より魅力的な選択肢となるのは明らかだ。
美しいグラフィックスや、高フレームレートを求めるゲーマーにとっての入口を担ってきたGeForce GTX 1060シリーズの後継として、コストパフォーマンスに優れた製品の展開を期待したい。