Hothotレビュー

薄型軽量ゲーミングノート「Razer Blade」がモデルチェンジ

~GeForce GTX 1060採用で排熱問題を大幅改善

Razer Blade

 Razerが手掛ける薄型ゲーミングノートPC「Razer Blade」に、GeForce GTX 1060を搭載した新モデルが登場した。日本国内でも、秋葉原・TSUKUMO eX.の地下1階にある「RAZERZONE」にて23日に発売されたが、当日は予約分だけで売り切れ(AKIBA PC Hotline!の記事へのリンク)。発売前から高い注目を集めていたのが分かる。

 「Blade」という名前の通り、厚さ17.9mmのスマートな外見に、ゲーミングPCに求められるパワーを詰め込んだ。3,200×1,800ドットのIGZOマルチタッチパネルと、1,920×1,080ドット(フルHD)のIPS非光沢パネル(タッチパネルなし)の2モデルを用意(12月25日時点で、国内販売されているのは1,920×1,080ドットモデルのみ)。さらにストレージは256GB、512GB、1TBのPCI Express接続のM.2 SSDを選択できる。

 今回お借りできたのは、1,920×1,080ドットのディスプレイと、512GB SSDを搭載したもの。旧モデルでは3,200×1,800ドットのモデルをお借りしたので解像度は違うが、処理能力の比較には支障ないと思われるので、ベンチマークテストの結果を比較しながらご紹介しよう。

変更点はGPUとストレージなど一部のみ

 今回借りた新型「Razer Blade」のスペックは下記の通り。

【表1】Razer Bladeの主な仕様
CPUCore i7-6700HQ(3.5GHz)
GPUGeForce GTX 1060(6GB)
メモリ16GB DDR4(PC4-17000 8GB×2)
SSD512GB(M.2 PCIe)
ディスプレイ14型非光沢液晶(1,920×1,080ドット)
OSWindows 10 Home
税別価格240,800円

 旧モデルからの変更点を見ると、GPUがGeForce GTX 970MからGeForce GTX 1060になった。CPUは、本機の発表時点で第7世代Coreプロセッサのクアッドコア版が用意されていないという理由から、Core i7-6700HQに据え置き。デュアルチャネルで16GBのメインメモリ、14型のディスプレイ、OSなども据え置きだ。

 有線LANポートは非搭載で、無線LANにゲーミング向けのIEEE 802.11ac対応、Killer Wireless-AC 1535を搭載しているのも同じ。拡張端子は、Thunderbolt 3(USB Type-C兼用)、USB 3.0×3、HDMI 2.0出力、3.5mmヘッドフォン/マイク複合ポート。見た目には同じだが、HDMIのバージョンが1.4bから2.0にアップしている。

 本体サイズは、345×235×17.9mm(幅×奥行き×高さ)で、重量は約1.89kg(3,200×1,800ドットのモデルでは1.93kg)。電源は165WのACアダプタで、70Whのリチウムイオンポリマー電池を搭載する。これも変更なしだ。

 GPUにGeForce GTX 1060を採用しているのが面白い。旧モデルから順当なグレードアップを図るなら、GPUはGeForce GTX 1070にするべきだが、新型は世代が進んでグレードが落ちた形になっている。これについては性能の比較でぜひを問うべきだろう。

グラフィックス性能はやや向上。SSDも高速化

 それでは各種ベンチマークソフトのスコアを見ていきたい。利用したのは、「3DMark v2.2.3509」、「ファイナルファンタジーXIV: 蒼天のイシュガルド ベンチマーク」、「ドラゴンズドグマ オンライン ベンチマーク」、「バイオハザード6 ベンチマーク」、「ファンタシースターオンライン2 キャラクタークリエイト体験版 EPISODE4」、「CINEBENCH R15」、「CrystalDiskMark 5.1.2」、「BBench」。

 ベンチマークスコアの結果を旧モデルと比較してみる。「3DMark」は旧モデルでは「v2.1.2852」でテストしているので、念のため参考値としてご覧いただきたい。

 「ファイナルファンタジーXIV: 蒼天のイシュガルド ベンチマーク」は、GPUの性能がダイレクトに反映されやすいためか、旧モデルとの差が1,920×1,080ドットで約3割、3,840×2,160ドットでは約5割と大きい。ほかのベンチマークテストでも同等かやや上回る結果を出しており、性能は旧モデルに勝るとも劣らないことが確認できた。

 ディスプレイがフルHDなので、この性能であればゲームも十分快適だろう。HDMI 2.0出力で4Kの外部ディスプレイに接続するのも容易だが、この場合はさすがに性能がもう一声欲しいところ。上位モデルの3,200×1,800ドットをターゲットに性能を調整しているようだ。

【表2】ベンチマークスコア
新モデル旧モデル
「3DMark v2.2.3509 - Fire Strike」
Score8,8106,534
Graphics score10,3877,458
Physics score9,1979,431
Combined score4,0032,734
「3DMark v2.2.3509 - Sky Diver」
Score22,15218,663
Graphics score33,73125,150
Physics score8,7168,494
Combined score17,55516,395
「3DMark v2.2.3509 - Cloud Gate」
Score22,22819,735
Graphics score63,34147,265
Physics score6,7946,495
「3DMark v2.2.3509 - Ice Storm Extreme」
Score72,44159,213
Graphics score97,58468,739
Physics score38,09139,875
「ファイナルファンタジーXIV: 蒼天のイシュガルド ベンチマーク」(DirectX 11/最高品質)
3,840×2,160ドット3,3702,172
1,920×1,080ドット10,2047,252
「ドラゴンズドグマ オンライン ベンチマーク」(最高品質)
1,920×1,080ドット8,4528,361
「バイオハザード6 ベンチマーク」
1,920×1,080ドット13,87713,575
「ファンタシースターオンライン2 キャラクタークリエイト体験版 EPISODE4」(簡易設定6)
1,920×1,080ドット16,81916,616
「CINEBENCH R15」
OpenGL91.07fps99.50fps
CPU672cb675cb
CPU(Single Core)124cb135cb

 SSDは「CrystalDiskMark」で計測。使われていたSSDはSamsung製「MZVLW512」。旧モデルではSamsung製の256GBタイプ「MZVLV256」だったので容量も違うが、次世代の製品となりシーケンシャルでの速度は2倍以上に伸びている。GPUだけでなく、ストレージも着実に性能が向上しているというのは嬉しい。

【CrystalDiskMark】
新モデルSSD(Samsung MZVLW512)
旧モデルSSD(Samsung MZVLV256)

 バッテリ持続時間は「BBench」で計測。ディスプレイの明るさ40%の状態で、キーストロークとWeb巡回あり(Wi-Fi接続)で約3時間42分、「ファイナルファンタジーXIV: 蒼天のイシュガルド ベンチマーク」をループで動かした時には約1時間7分動作した。GPUの変更のおかげか高負荷時の持続時間は少し伸びている(旧モデルは同条件で約1時間)ものの、バッテリのみでゲームをプレイするには厳しい。普段使いのモバイルノートと考えれば十分な持ちが期待できる。

GPUの変更により排熱問題が劇的に改善

高負荷時はリストレスト部が熱を持つが、旧モデルからはかなり改善された
付属のソフトでファンコントロールを2段階に変更できる

 以前、筆者が旧モデルを試用した際の感想をまとめると、高性能と薄さを両立しつつも、排熱周りには難ありというものだ。薄型の本体で高性能なCPUやGPUの排熱を処理するため、薄型のファンが全力で回りけたたましい騒音が出る上、高負荷状態が続くとリストレスト部が熱くて触れないほどの熱になった。

 新モデルで採用されたGeForce GTX 1060を含むPascalアーキテクチャのGPUは、前世代のGeForce GTX 900シリーズで使われたMaxwellアーキテクチャに比べて、性能の向上とともに消費電力の削減に成功している。新世代のGPU、かつ1ランク下のグレードのGPUを採用することで、GPUの性能を向上、あるいは維持させつつ、消費電力を低減、ひいては発熱を大幅に減らせるのでは? という期待がある。

 実際に使用してみると、アイドル時は旧モデルと同様にほぼ無音。排熱に関してもまったく気にならない。ベンチマークテストを走らせると、やはりファンが回り出す。ファンのノイズはやはり相当なうるささで、ヘッドフォンなしでのゲームプレイには向かない。しかし常時フル回転しているという感じではなく、ファンが強まったり弱まったりという挙動が感じられる。一定ではないのがストレスになる面もなくはないが、旧モデルに比べれば騒音は少しは減っていると言っていい。

 では排熱はどうか。リストレスト部はやはり熱を持つのだが、熱くて触れないというほどまでには至らない。触って温かいという程度には収まっている。ここにずっと手を置いてゲームをプレイしたいとは思わないが、旧モデルと比べれば雲泥の差なのは間違いない。キートップの熱も低減され、特にW/A/S/Dキー付近は冷やされているので、リストレストさえ置けば概ね快適と言える環境にはなる。

 ファンノイズの低減という点ではあまり期待しない方がいいが、熱処理においては大幅な改善が見られる。排熱問題は「Razer Blade」シリーズにおいて深刻な弱点だったので、GPUを最新のものに置き換えることでシンプルに改善を図ろうという意図なのだろう。グレードとしては1つ下げてGeForce GTX 1060を選んだのは大正解だと思う。

 なお本作の付属ソフトを使って、ファンコントロールを2段階に調整できる。通常は静音モードとなっているが、クールモードを選ぶとファンがより回転する。静音モードでも高温になれば相当回るので、両方試してみて具合のいい方を選ぶといい。

薄型ゲーミングノートPCとしての完成度が一段向上

本体形状は旧モデルと変わらず。それでもこの薄さは驚異的だ

 そのほかの外観や使用感については旧モデルの記事をご覧いただきたい……で済ませたいほど変化がないのだが、頭をリセットして改めて評価していこう。

 外見は一面マットブラックで統一され、角が丸く取られている以外は平坦な形状。ディスプレイを畳んで手に持つと、17.9mmの薄さがはっきりと実感できる。重さは2kg弱で、意外と重いと感じてしまうのは、持った時の薄さのインパクト故だろう。本体の剛性も高く、薄さと同時にがっしりした印象もある。

 起動中は天板のロゴが緑色に光る。インジケータは、本体前面に充電状態などを示すLEDが1つあるだけで。電源ランプやSSDのアクセスランプはない(電源は背面ロゴがランプと言えなくもないが)。

 ディスプレイは14型のフルHDで、IPSパネルだけあって視野角は広い。派手な色表現ではなく、過不足ない性能といった印象だ。

 キーボードはかな印字がされておらず、一瞬英語キーボードかと思ってしまうが、ちゃんと日本語キーボードである。アイソレーションタイプで、14型のテンキーレスとあって、配列はかなり余裕がある。カーソルキーの形状が独特な点だけは要確認。ストロークは浅いものの、しっかりしたクリック感がある。キーボードバックライトも搭載しており、付属のソフトで光り方のカスタマイズもできる。キーボードマクロなどの設定も可能だ。

 スピーカーはキーボードの左右に配置。音質は高音が強めで、小型スピーカーなりの音なのだが、付属の「Dolby Digital Plus」によって劇的に変わる。音楽やゲーム、映画など音質を変えるモードがあり、音楽はボーカルや楽器の音の1つ1つがシャープに聞こえ、ゲームではセリフがクリアに聞こえるなど、うまく味付けされている。

 起動はとても高速で、起動ボタンを押してログイン画面が表示されるまで約6秒。薄い本体を開いて、すぐに起動するという手触りは、切れ字のいい刀を連想させる。これも「Blade」においては重要な要素だ。

 総合的には、薄型ゲーミングPCとしての完成度がまた一段と上がったという印象だ。大きな弱点だった排熱問題はある程度解消されたが、筆者の感覚では「普通に使うのに何とか許せる範囲の熱になった」というのが正直なところで、文句なしに快適ですと言うにはまだ遠い。

 薄さと排熱の両立は極めて難しい問題で、完璧に解決せよというのは酷だ。排熱に難があっても薄型を実現するのか、排熱を万全にするため厚くするのか。「Razer Blade」は前者をベースにどこまで快適性を高められるかを考える、数少ない製品であることは間違いない。あとは個々の用途次第。これでいいと思える人は、旧モデルから見ればかなり増えることは間違いないのだから、そこを高く評価するのが筋というものだろう。

本体色はマットブラックで統一。天板のロゴだけが自己主張する
電源を入れるとロゴが点灯するが、背面になるので使用者からは見えない……
フルHDのIPSパネルを採用したディスプレイ
アイソレーションタイプのキーボード。バックライトも搭載
タッチパッドも黒で統一。ボタン部分が横長の独特な形状
本体前面はインジケータが1つあるだけ
左側面はUSB×2とヘッドフォン/マイク端子、電源端子
右側面はThunderbolt 3、USB、HDMI 2.0
底面には吸気口、背面にはディスプレイの下部から覗き見える位置に排気口がある
ACアダプタは165W出力にしてはかなり小さい
キーボードのバックライトは光る位置と光り方を調整できる
キーボードマクロツールも搭載
マウスやキーボードの操作を追跡記録するツールも用意
サウンドは「Dolby Digital Plus」で抜群に良くなる