ゲーミングPC Lab.
GTX 970M搭載で薄型軽量のゲーミングノート「Razer Blade」
~Razerらしい尖った設計が光る
2016年7月29日 06:00
Razer製ゲーミングノートPC「Blade」の国内販売が、6月に開始された。Razerと言えばマウスを始めとしたゲーミングデバイスのメーカーとして知られているが、最近では本機や「Blade Stealth」といったノートPCも手掛けている。
「Blade」の特徴は、名前の印象通りの薄さだ。3,200×1,800ドットのマルチタッチ対応14型液晶に、Core i7-6700HQ、GeForce GTX 970Mを搭載しながらも、厚み約17.9mmという薄さを実現。ハイスペックなゲーミングノートPCでありながら、Ultrabookと呼べるサイズに収まっている。また重さも約1.93kgで、スペックから考えると相当に軽量だ。
ゲーミングデバイスメーカーらしい尖ったPCとなっているが、実際の性能や使い心地がどうなのか、順にお伝えしていこう。
薄さと性能を両立させる特殊設計
「Blade」のスペックは下記の通り。SSDの容量が256GBのものと512GBのもので2モデル用意されており、今回は256GBモデルのものをお借りしている。
CPU | Core i7-6700HQ(2.6GHz) |
---|---|
チップセット | Intel HM170 |
GPU | GeForce GTX 970M(6GB) |
メモリ | 16GB DDR4-2133 |
SSD | 256GB |
ディスプレイ | 14型QHD+(3,200×1,800ドット)IGZO、静電容量マルチタッチ方式 |
OS | Windows 10 64bit |
販売価格(税別) | 229.980円 |
CPUは4コア8スレッドのCore i7-6700HQ、GPUはGeForce GTX 970Mと、ゲーミングノートPCとしては十分にハイスペックな組み合わせ。メインメモリも16GB、SSDも256GB搭載し、ゲーム用途には妥協のない組み合わせになっている。HDDや光学ドライブは非搭載となっている。
ディスプレイは14型で3,200×1,800ドットのIGZOパネルで、マルチタッチに対応。タッチパネル採用もあってか、光沢パネルを採用している。
拡張端子は、Thunderbolt 3(USB Type-C兼用)、USB 3.0×3、HDMI 1.4b出力、3.5mmヘッドフォン/マイク複合ポートとなっている。本機は有線LANポートは搭載しておらず、無線LANにゲーミング向けのIEEE 802.11ac対応、Killer Wireless-AC 1535を搭載している。ゲームは有線でという声が根強い中、薄さ優先とは言え無線LANのみの仕様にしたのは、かなり思い切った設計だ。
本体サイズは、345×235×17.9mm(幅×奥行き×高さ)で、重量は約1.93kg。電源は165WのACアダプタで、70Whのリチウムイオンポリマー電池を搭載する。
薄型でも万全の性能を発揮
続いて各種ベンチマークソフトのスコアを見ていきたい。利用したのは、「3DMark v2.1.2852」、「ファイナルファンタジーXIV: 蒼天のイシュガルド ベンチマーク」、「ドラゴンズドグマ オンライン ベンチマーク」、「バイオハザード6 ベンチマーク」、「ファンタシースターオンライン2 キャラクタークリエイト体験版 EPISODE4」、「CINEBENCH R15」、「CrystalDiskMark 5.1.2」、「BBench」。
ベンチマークスコアの結果は、およそ構成通りという印象。「ファイナルファンタジーXIV: 蒼天のイシュガルド ベンチマーク」では、フルHDではまったく問題ないが、4Kだとやや不足。本機のディスプレイ解像度である3,200×1,800ドットでも、少し画質は下げた方が良さそうだ。
高性能なPCを薄型に詰め込んだ分、排熱で苦労して性能を発揮しきれない……という可能性も考えたが、性能面での問題は感じられなかった。
【表2】ベンチマークスコア | |
---|---|
3DMark v2.1.2852 - Time Spy | |
Score | 312 |
Graphics score | 269 |
CPU test | 3,573 |
3DMark v2.1.2852 - Fire Strike | |
Score | 6,534 |
Graphics score | 7,458 |
Physics score | 9,431 |
Combined score | 2,734 |
3DMark v2.1.2852 - Sky Diver | |
Score | 18,663 |
Graphics score | 25,150 |
Physics score | 8,494 |
Combined score | 16,395 |
3DMark v2.1.2852 - Cloud Gate | |
Score | 19,735 |
Graphics score | 47,265 |
Physics score | 6,495 |
3DMark v2.1.2852 - Ice Storm Extreme | |
Score | 59,213 |
Graphics score | 68,739 |
Physics score | 39,875 |
ファイナルファンタジーXIV: 蒼天のイシュガルド ベンチマーク(DirectX 11/最高品質) | |
3,840×2,160ドット | 2,172 |
3,200×1,800ドット | 2,964 |
1,920×1,080ドット | 7,252 |
ドラゴンズドグマ オンライン ベンチマーク(最高品質) | |
1,920×1,080ドット | 8,361 |
バイオハザード6 ベンチマーク | |
1,920×1,080ドット | 13,575 |
ファンタシースターオンライン2 キャラクタークリエイト体験版 EPISODE4(簡易設定6) | |
1,920×1,080ドット | 16,616 |
CINEBENCH R15 | |
OpenGL | 99.50fps |
CPU | 675cb |
CPU(Single Core) | 135cb |
SSDはSamsung製「MZVLV256」。M.2/PCIeの高速ストレージで、シーケンシャルリードは1.5GB/sを超えている。速度もさることながら、M.2タイプのSSDを採用することで、薄さにも有利に働くのだろう。本機はこれ以外のストレージを搭載しておらず、SDカードスロットすらないという徹底ぶりだ。
バッテリ持続時間は「BBench」で測定。キーストロークとWeb巡回ありの設定で、満充電から約5.9時間。「ファイナルファンタジーXIV: 蒼天のイシュガルド ベンチマーク」をループ再生させた場合(NVIDIA Battery Boostはオフに設定)は約1時間となった。さすがにGPUを含めてフルに使うとバッテリ消費が激しいが、オフィスユース的な用途ならぼちぼち持続する。
性能と薄さの両立の裏で「Blade」は何を削ぎ落としたのか
次に試用した感触をお伝えする。見た目は話の通りに薄く、しかもデコボコした場所がなく一定した厚みになっている。手に取ると、見た目によらずずっしりとした重さを感じる。本体そのものの重量があるのではなく、薄い本体に凝縮されて見た目より重く感じるという印象だ。剛性も高くがっしりとした手触りで、ディスプレイ部分も含めてたわみを感じない。まさに「Blade」という名前がふさわしい手触りだ。
色は一面ブラックだが、ロゴ部分だけは緑色で描かれている。ロゴ部分はLEDが仕込まれており、電源を入れると光る仕掛けもある。とは言え派手なのはそこだけだ。天面はサラサラした感触の加工で、角は丸く加工してある。マットブラックのカラーリングと、質実剛健で無駄のない印象は、Razerのゲーミングデバイスを使ったことがある人なら「なるほどRazerっぽいな」と感じるはずだ。
電源を入れると、PCIe接続のSSDだけあって、あっという間に起動する。ほとんど音もなく起動するので、タブレットPCを触っているかのような印象だ(タッチも使えるので余計に)。3,200×1,800ドットのIGZOパネルは精細で明るい。光沢パネルが気になる人もいると思うが、反射低減加工がされているようで反射率は低くなっており、なおかつディスプレイもかなり発色が良く明るいので、使い始めると反射は気になりにくい。
アイドル時はほぼ無音で、薄い見た目からもファンレスなのかと思ってしまった。しかしGeForce GTX 970Mを搭載してファンレスというのはさすがに無理がある。ベンチマークテストを走らせると、途端にファンが回り出した。
底面から吸気、背面から排気のようだ。ただ本体が薄いこともあってか、ディスプレイを開いた状態だと、背面の排気ファンの風が開いたディスプレイの端に当たり、ディスプレイの前にも流れてくる。それほど強い風量ではないので、手をかざしたりしなければ気付かない人も多いだろう。
問題は風ではなく、騒音だ。ベンチマークテストを動かし始めてまもなく、ファンが高速に回り始める。騒音はけたたましいと言わざるを得ず、ゲームプレイ時にはヘッドフォンは必須になるだろう。薄い本体で高性能なCPUやGPUを冷却するため、小型ファンを全力で回しているのだと思われる。
また排熱も十分とは言えない。ベンチマークテストを始めると、右手のリストレスト部がかなり熱を持ち始める。しばらく放置しておくと、左右のリストレスト部が触れないほど熱くなる。ベンチマークテストほどに過酷な負荷がかかるゲームは少ないかもしれないが、それでも本体のあちこちがかなりの熱を持つのは確かだ。
キートップはそこまで酷く熱くはないので、高負荷のゲームを長時間プレイする際には、キーボードに置く左手側だけでもリストレストを使うなどの対策をした方がいい。あるいはゲームパッドを使う、「Razer Tartarus」のような左手キーパッドを使うなどで回避するのも手だ。
キーボードはテンキーレスのアイソレーションタイプ。ストロークは浅めだが適度なクリック感がある。配置にも余裕があり、タイピングやW/A/S/Dキーの操作も快適だ。キーボードバックライトも搭載しており、付属のソフトで光るキーや色を変更できる。FPSやMMOといったゲームジャンル別のプリセットも用意されており、W/A/S/Dキーなどよく使われるキーだけを光らせることもできる。
また付属ソフトには、キーボード入力を記録・再生するマクロ機能、WindowsキーやAlt+F4、Alt+Tabを無効化できるゲーミングモード、キーストロークを記録し統計を取る機能など、ゲーマーにはありがたい機能も用意されている。
スピーカーはキーボードの左右に縦長の形状で配置されている。音質は人の声がクリアに聞こえるチューニングで聞き取りやすい。高音・低音とも控えめなので音楽鑑賞に適するとは言えないが、薄い本体の割には自然な聞き心地の音が出ていて印象は悪くない。
ネガティブな評価になる部分もあるが、ハイスペックなPCを薄型化・小型化しているのだから、しわ寄せが冷却周りに来るのは当然とも言える。それでも動作が不安定になることはなかった点は評価すべきだし、薄型軽量でありながら高性能なことに関してはほかの追従を許さない、唯一無二の価値を持つ製品であることは確かだ。
ゲーミングデバイスは、一般向けのデバイスとは異なり、特徴的な性能や形状のものが多い。マウス1つ取っても製品のバリエーションは多彩で、どれがぴったり来るかはその人次第、遊ぶゲーム次第だ。「Blade」も放熱や騒音の問題が許せないという人もきっと多いと思うが、これもゲーミングデバイスの1つと考えれば、長所・短所を含めて「これでいいんだ」と思う人が買えばいい。Razerはほかにない価値を恐れず提供するのだ、というコンセプトが伝わってくる製品だ。