平澤寿康の周辺機器レビュー

ASUSTeKのUSB 3.0/SATA 3.0コンボカード「U3S6」
~USB 3.0経由でSATAと同等の速度を発揮



「U3S6」

発売中
価格:オープンプライス



 ASUSTeKは、USB 3.0とSATA 3.0の2種類の最新インターフェイスに対応する拡張カード「U3S6」を発売した。SATA 3.0またはUSB 3.0に対応する拡張カードは既に何種類か登場しているが、1枚で双方に対応する製品はこれが初。単独で2種類の最新インターフェイスを拡張できるとあって、大いに注目されている。今回、USB 3.0対応外付けHDDおよびSATA 3.0対応HDDと合わせて試用する機会を得たので、使い勝手やデータ転送速度などを見ていきたいと思う。

●USB 3.0とSATA 3.0をそれぞれ2ポートずつ用意

 U3S6の基板上には、USB 3.0コントローラとしてNEC製の「μPD720200」が、SATA 3.0コントローラとしてMarvell製の「88SE9123」がそれぞれ搭載されている。また、それぞれのコントローラは、PLX Technology製のPCI Expressスイッチチップ「PEX8613」に接続されており、マザーボード側とはこのスイッチチップを介して接続されている。これにより、USB 3.0コントローラのμPD720200と、SATA 3.0コントローラの88SE9123それぞれに500MB/secの帯域が割り当てられ、各インターフェイスの速度をほぼ損なうことなく利用できるとしている。

 USB 3.0の速度は最大5Gbps(500MB/sec)だが、SATA 3.0の速度は最大6Gbps(600MB/sec)であり、本製品のコントローラの帯域を上回っている。とはいえ、それは理論値で、SSDやHDDを単体で接続して利用する場合には、各規格の性能を最大限に引き出せると考えて問題ないだろう。

 接続インターフェイスは、USB 3.0がブラケット部に2ポート、SATA 3.0が基板上に2ポートそれぞれ用意されている。そのため、USB 3.0は外付けでのみ、SATA 3.0は内蔵でのみ利用可能となる。PCとの接続インターフェイスはPCI Express x4を採用。PCI Express x4/x8/x16スロットに取り付けて利用することになる。基板サイズは、76×122mm(幅×奥行き)。一般的拡張カードに比べると高さが低くなっているものの、Low Profileの高さ64mmより大きく、Low Profileスロットでは利用できない。

基板上に、USB 3.0とSATA 3.0のコントローラを搭載。接続インターフェイスはPCI Express x4だNEC製のUSB 3.0コントローラ「μPD720200」(左)とMarvell製のSATA 3.0コントローラ「88SE9123」を搭載。中央は、PLX Technology製のPCI Expressスイッチチップ「PEX8613」だ
USB 3.0ポートは、ブラケット部に2ポート用意SATA 3.0ポートは、基板右上に2ポート用意

●USB 3.0経由でSATA接続と同等の速度を確認

 では、パフォーマンスをチェックしていこう。まずは、USB 3.0対応の外付けHDDを、U3S6のUSB 3.0ポートに接続した場合の速度からだ。

 利用したUSB 3.0対応外付けHDDは、ASUSTeKからU3S6と同時に提供された評価用機材だ。既存の3.5インチHDDケースをベースとして、内部の基板をSATA-USB 3.0変換基板に変更したものと思われる。また、内蔵されていたHDDは、Seagate製の「Barracuda 7200.12」の500GBモデルだ。回転数7,200rpm、キャッシュが16MB、データ転送速度は最大160MB/secとされている。

 ベンチマークソフトは、CrystalDiskMark 2.2.0を利用した。テスト環境は下に示す通りだ。

・テスト環境
CPU:Core i5 750
マザーボード:Intel DP55KG
メモリ:PC3-10600 DDR3 SDRAM 2GB×2
グラフィックカード:Radeon HD 4670
HDD:Western Digital WD3200AAKS
OS:Windows 7 Ultimate 32bit

利用したUSB 3.0対応外付けHDD。市販品ではなく、評価用機材だ内蔵されていたHDDは、Seagate製のBarracuda 7200.12、500GBモデルだ
USB 3.0の速度を引き出すには、USB 3.0対応機器を、USB 3.0専用ケーブルを利用して接続する必要があるUSB 3.0対応機器をUSB 2.0ポートに接続すると、このような警告メッセージが表示される

 まず初めに、USB 3.0専用ケーブルを利用し、U3S6のUSB 3.0ポートに接続して計測してみたところ、シーケンシャルリードが132MB/sec、シーケンシャルライトが129.4MB/secであった。この速度は、回転数が7,200rpmの一般的な3.5インチSATA HDDをSATAポートに接続した場合とほぼ同等だ。試しに、HDDケースから内蔵HDDを抜き出し、マザーボードのSATAコネクタに直接接続して速度を計測してみたところ、シーケンシャルリードが132MB/sec、シーケンシャルライトが130.5MB/secと、USB 3.0接続時とほとんど同じ結果であった。もちろん、ランダムライトの結果もほぼ同じである。

 USB 3.0接続では、HDDケース内のSATA-USB 3.0変換チップや、U3S6上のPCI Expressスイッチチップを経由しているものの、それらがオーバーヘッドとはなっておらず、HDDが持つ速度が最大限引き出されていると考えていいだろう。

 使い勝手は従来のUSB機器と全く同じだ。ホットプラグやホットスワップにももちろん対応しており、使い方は従来のUSBと全く同じ。また、速度こそ遅くなるものの、USB 2.0ポートに接続しても問題なく利用できる。とにかく、従来のUSB機器と同じように、全く違和感なく利用できると考えていい。ただし、USB 3.0対応機器は、USB 3.0専用のUSBケーブルを利用してUSB 3.0対応のホストに接続しない限り、USB 3.0で接続されない点は注意したい。

 ちなみに、実際にこのHDDケースをマザーボードのUSB 2.0ポートに接続してみたところ、デバイスとしては全く問題なく認識され、HDDへのアクセスも問題なく行なえた。ただし、接続時に「USB 3.0ポートに接続するとさらに高速で実行できます」という警告メッセージが表示されるとともに、速度はシーケンシャルリード、シーケンシャルライトとも34.79MB/secと、USB 2.0相当となった。

U3S6のUSB 3.0ポートに接続して測定した結果
マザーボードのSATA 2.0ポートに接続して測定した結果
マザーボードのUSB 2.0ポートに接続して測定した結果

●HDD程度の速度ではSATA 3.0の高速性を活かしきれない
SATA 3.0対応HDDであるSeagate製のBarracuda XTの2TBモデルを利用した

 次に、SATA 3.0ポートの速度を見ていこう。こちらは、SATA 3.0対応HDDとして、Seagate製の「Barracuda XT」の2TBモデルを利用した。回転数は7,200rpmだが、キャッシュが64MB搭載されており、従来モデルよりも高速なデータ転送速度を実現した製品だ。このHDDを、U3S6のSATA 3.0ポートに接続し、速度を計測した。比較するマザーボードのSATA 2.0はAHCIモードに設定してある。

 結果を見ると、シーケンシャルリードで143.4MB/sec、シーケンシャルライトで140.3MB/secと、先ほどのBarracuda 7200.12よりもリード/ライトともに10MB/sec以上高速であった。とはいえ、この速度はSATA 2.0の上限にも達しておらず、インターフェイス/HDDともにSATA 3.0に対応したことによる速度向上ではないと思われる。そこで、マザーボードのSATA 2.0ポートに接続して同様に速度を計測してみたところ、やはりU3S6のSATA 3.0ポートに接続した場合と全く変わらない速度が出た。

 この結果を見る限り、先ほどのUSB 3.0での検証同様、U3S6上のPCI Expressスイッチチップがオーバーヘッドとはなっておらず、HDDが持つ速度が最大限引き出されていると考えていい。ただ、やはりHDDを単体で利用する場合には、SATA 2.0でも速度にまだまだ余裕があり、SATA 3.0の必要性はまったく感じられない。複数のSSDをRAID 0構成で利用する場合などに、初めてSATA 3.0の高速さが活きてくるはずだ。

U3S6のSATA 3.0ポートに接続して測定した結果
マザーボードのSATA 2.0ポートに接続して測定した結果

●USB 3.0だけでも十分に魅力がある

 今回のテストでは、SATA 2.0に対するSATA 3.0の優位性はほとんど感じられなかったものの、USB 3.0については、内部SATA接続時と全く同じ速度が引き出せるだけでなく、従来のUSB機器と全く同じ感覚で扱えるユーザビリティの高さが確認でき、USB 2.0に対する優位性を十分に実感できた。

 ちなみに筆者は、今回USB 3.0対応機器を利用してみて、eSATAの存在意義は完全に失われたと感じた。とにかく、USB 3.0の利用だけでも十分にU3S6を導入する動機になるはずだ。もちろん、優位性があまり感じられないとはいえ、SATA 3.0が搭載されている点も将来性という意味では十分に魅力であり、USB 3.0やSATA 3.0を拡張するインターフェイスカードをそれぞれ単独で購入するよりもメリットが大きいと言っていいだろう。

 現時点では、SATA 3.0対応ストレージデバイスやUSB 3.0対応周辺機器は非常に数が少なく、まだまだ積極的に利用しようという状況ではないないかもしれない。とはいえ、近い将来チップセットにSATA 3.0やUSB 3.0が内蔵されるのは間違いなく、将来性の不安は非常に少ないと考えていい。実売で5,000円を切る価格で販売されている点も嬉しく、考えて購入する価値は十分にあるはずだ。

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(2009年 11月 19日)

[Text by 平澤 寿康]