大河原克行の「パソコン業界、東奔西走」

NECのノウハウ活かし、ThinkPadなどを電話サポート

~福井市のレノボ・スマートセンターを見る

 レノボ・ジャパンが、ThinkPadをはじめとするThinkシリーズ、およびIdeaPadなどのLenovo製品の電話サポート強化に乗り出している。2011年7月に、レノボとNECによるジョイントベンチャーをスタート。それ以降、レノボ製品の電話サポート業務をNECパーソナルコンピュータに委託。その体制を維持しながら、レノボ・ジャパンならではのサービス品質の向上を図り、顧客満足度を高めることに成功している。ThinkシリーズおよびIdeaシリーズのサポートを行なっている福井県福井市のレノボ・スマートセンターを訪れる機会を得た。その様子をレポートする。

レノボ・スマートセンターは福井市内にある

ねばり強い県民性が強みに

 レノボ・ジャパンの電話サポートを行なうレノボ・スマートセンターの拠点は、福井市内に置かれている。

 以前は、NECパーソナルコンピュータが発売するコンシューマ向けPCのLaVieシリーズおよびVALUESTARシリーズの電話サポートを行なう拠点であったが、2011年7月にレノボとNECによるジョイントベンチャーをスタート。それにあわせて、レノボ製品の電話サポートを、NECパーソナルコンピュータへと移管することを発表。2011年10月に、IdeaPadをはじめとするLenovo製品の電話サポートを、従来の沖縄のサポート拠点から、NECパーソナルコンピュータの福井市のサポート拠点へと移行した。

 NECパーソナルコンピュータが、121(ワン・トゥ・ワン)コンタクトセンターの活動を通じて蓄積してきた、コンシューマ向けPCのサポートノウハウを活用しながら、レノボ・スマートセンターを稼働させたというわけだ。

レノボ・ジャパン サービス事業部コンタクトセンターオペレーション部・太田哲也部長

 「NECパーソナルコンピュータの121コンタクトセンターが持つ高いサポート品質とともに、コスト面でもメリットがあるという見通しから、NECパーソナルコンピュータへとサポートを委託。それまでは行なっていなかった、土日、祝日の電話受付も行なう体制とした。福井の拠点へ移管したのは、規模という点で最適であると判断したため」と、レノボ・ジャパン サービス事業部コンタクトセンターオペレーション部・太田哲也部長を当時の様子を語る。

 当初は、121コンタクトセンターの一部を間借りして、20人規模でスタートしたという。

 「現在でも、ほぼ100%が福井県出身者で対応している。ねばり強い福井の県民性は、サポートにも適している。また、他県のサポート拠点よりも、離職率が低いという特徴もある。スキルの高い人材を継続的に雇用でき、スキルの蓄積にも効果がある。また、技術系の大学が多く、技術スキルの高い人材を雇用できるという点も、福井市ならではの特徴だと言える」という。

 2012年2月には、レノボがグローバル規模で、サポートセンターの基幹システムの入れ替えを実施。まずはIdeaPadなどのコンシューマ製品を対象に、それまでの日本独自の基幹システムからのシステム移行を行なったのに続き、2012年7月には、Thinkシリーズのサポート業務の基幹システムの移行を実施。これにあわせて、従来、日本IBMが行なっていたThinkシリーズの電話サポートを、福井市のサポート拠点へと移管した。

 「2012年7月には、福井市のサポート拠点に、IdeaPadなどのコンシューマ向けPCと、コマーシャル向けPCであるThinkシリーズのサポートをすべて統合。さらに、これまでの121コンタクトセンターの機能を、北海道、東京、大阪、沖縄の4つのサポート拠点に分散。福井市のサポート拠点は、レノボブランド製品だけに特化した体制となった」(レノボ・ジャパンの太田部長)。

 さらに、このタイミングにあわせて、Thinkシリーズのオンサイト修理の受付機能であるレノボ・オンサイトセンターも統合。現在も、この体制を維持している。

 現在、福井市の拠点には、直接電話サポートを行なうスマートセンターと、修理受付を行なうオンサイトセンター、管理部門をあわせて約180人が勤務。また、2014年8月には新たに岩手県盛岡市にもコンシューマ製品の電話サポートを行なう拠点を新設。これにより、福井においてコマーシャル製品のりサポートを行なっていたエージェントを、コマーシャル製品へと振り分け、ThinkPadなどの電話サポートの対応人数を増加させる一方、コンシューマ製品のサポート拠点を分散することで、災害時なども継続的に稼働できる体制を整えた。

 「中長期的には、盛岡市のサポート拠点の増員や、Thinkシリーズのサポート体制の分散化も図っていきたい」と太田部長は語る。

レノボ・スマートセンター内の様子。手前がコマーシャル製品、奥がコンシューマ製品のエリア
センター内にはLenovoのロゴやポスターなどが掲示されている
エージェントの机の様子。顧客情報や修理情報などを閲覧する業務用PCと、検索作業などに利用するPCを設置
1つのブースを2人のエージェントが利用する
1人のエージェントに区切られたプースもある
エージェントが利用するPCはレノボブランドとNECブランドが混在

失敗をテコに改善を図る取り組みも

 だが、これまでの歴史の中で、すべてがうまくいっているわけではない。

 例えば、2012年7月に、オンサイト保守の受付を、日本IBMから移管した際、契約している企業ユーザーに対して、契約された規定時間内にオンサイト要員を手配できなかったり、修理用のパーツの在庫切れなどが発生。これによって、顧客満足度が大幅に悪化したこともあった。

 NECのコマーシャル向け製品のサポートは、NECフィールディングが行なっており、福井市の拠点をはじめとしてNECパーソナルコンピュータが行なってきたのはコンシューマ向けPCのサポート。これまでコマーシャル向けPCのサポートノウハウが蓄積されていなかったことも影響していると言えそうだ。

 「実際に運用してみると予想していなかった問題が発生し、お客様に大変なご迷惑をおかけした。だが、その後、お客様の声をフィードバックし、改善を加えていった結果、2013年春には、顧客満足度が改善。現在では、かつてのサポート体制よりも、高い満足度を得る水準にまで戻っている」と言う。

顧客満足度向上に向けた取り組みの数々

 レノボ・スマートセンターでは、電話サポートや修理が終了したユーザーに再度電話をかけ、アンケートに回答してもらい、独自に顧客満足度を推し量っている。

 ここでは、1~10段階までで評価してもらう仕組みとしているが、現在、8点台半ばを維持するという高い評価を得ている。

 「2年前に比べると、評価は大幅に改善している。だが、目指すのは9点以上。まだまだ努力する必要がある」と、太田部長は高い目標達成に意欲を見せる。

 掛かってきた電話への応答率を示す着呼率も高い水準で安定し、待ち時間を短縮させることができているほか、エージェントのスキル向上や、参照するデータベースの蓄積、システムの使い勝手の向上などにより、効率的なサポートを実現できる体制が整ってきた点も見逃せない。

 「コンシューマ製品では、じっくりと説明をしてもらいたいというユーザーが多い一方で、コマーシャル製品では短時間に効率的に問題を解決しして欲しいというユーザーが多い。こうしたユーザーの要求を瞬時に判断して、それぞれのユーザーの要望に対して、柔軟に対応できる『応用力』が、ここ1年でついてきた。また、オンサイト修理についても、実際に現場に出向くフィールドエンジニアとの連携強化を図ることができ、これも顧客満足度の向上に寄与している」とする。

 また、12月には、IdeaPadおよびLenovoシリーズの一部ノートPCやオプションのACアダブタに同梱されたAC電源コードに発熱、発火の可能性があり、無償で交換を行なうことを発表したが、レノボ・スマートセンターでは、それに伴って、専任担当者を配置して、急激な増加する問い合わせに対応。こうした柔軟な運営体制が取れる点も特徴の1つとなっている。

 実際、全世界のレノボのサポート拠点としても、日本のレノボ・スマートセンターの評価はトップレベルの水準にあるという。

 また、オンサイト修理センターは、他の国ではレノボ・スマートセンターのエージェントが兼務で対応しているが、日本だけが専任体制となっているのも特筆できる。

 「日本のお客様は、サービス品質に対する要求が高い。オンサイト修理の受付では、修理に必要なパーツを選定するところまでを、オンサイトセンターのエージェントが担当する。電話口で故障の内容を聞き、修理箇所を見分け、最適なパーツを手配するにはかなりのスキルが必要であり、同時に定められた時間内にフィールドエンジニアを派遣して、修理を完了させるための手配を行なうことになる。そのため最もスキルの高いエージェントを、オンサイト修理の専任担当者として配置している」という。

 こうした日本独自の取り組みも、日本の顧客から高い評価を得ている理由の1つだろう。

今後も加速するNEC PCとの連携

 レノボ・ジャパンとNECパーソナルコンピュータは、2014年4月に、サポート部門の組織統合を図っている。

 業務を実行する部門は、レノボコンタクトセンターオペレーション部と、NECコンタクトセンターオペレーション部となっているが、それらを統合する組織を一本化し、相互に情報共有や、人的リソースの共有といったところにも踏み出している。

 「既に、NECパーソナルコンピュータの121コンタクトセンターで有効だと思われる技術情報などについては、レノボ・スマートセンターのデータベースからも閲覧できるような仕組みになっている」という。

 また、2014年5月以降に発表したAndroid OS搭載のタブレット製品のサポートおよび修理窓口を、NECパーソナルコンピュータ群馬事業場内に新設した「レノボ・サポート タブレット窓口」に移管。NECパーソナルコンピュータが持つ修理のノウハウを活用するといったシナジーも発揮。修理品質の向上や納期改善に繋げている。

 「今後は、ノウハウの共有をさらに推進させるとともに、将来的には、一人のエージェントが、レノボ製品も、NEC製品もサポートできるような体制を構築することで、特定の製品に問い合わせが集中した場合にも柔軟に対応できたり、災害時にも継続的な稼働が行なえる体制を構築することも検討したい」としている。

 現在、バラバラに稼働しているサポート業務に関する基幹システムの統合も、今後の課題の1つと言えるだろう。

 NECパーソナルコンピュータのサポートノウハウに、レノボ・ジャパン独自のノウハウを組み合わせることで、レノボ製品のサポートは進化を続けている。この取り組みはまだまだ続くことになりそうだ。

 なお、レノボ・スマートセンターの電話番号は、0120-000-817(通話料無料)。月~日曜日の午前9時~午後6時までが受付。毎月第2日曜日および12月30日~1月3日までは休業となっている。

【お詫びと訂正】初出時、携帯電話向けにナビダイヤルの電話番号を記載しておりましたが、現在は携帯電話からもフリーダイヤルで受け付けています。お詫びして訂正いたします。

不具合を再現させる検証用のノートPCはボックスに入れて管理する手法を採用
約500台のPCが検証用として管理されている
検証用のデスクトップPCやワースステーション、サーバーも用意
オンサイトセンターの様子
修理内容からパーツの選定もここで行なう。最もスキルの高いエージェントを配置
エージェントの教育を行なうトレーニングルーム
休憩時間に使用するリフレッシュルーム

(大河原 克行)