ゲーミングPC Lab.
NVIDIA G-SYNC対応ノート、iiyama PC「Lev-17VX085-i7-VRV」
~G-SYNCは画質向上のみならず省エネにも寄与
(2015/7/4 06:00)
iiyama PC(ユニットコム)が新たに仕掛けるゲーミングPCブランド「LEVEL∞」(レベル インフィニティ)にて、17.3型ゲーミングノートPC「Lev-17VX085-i7」シリーズが6月30日に発売された。
本機はNVIDIAが開発したGPU-ディスプレイ同期技術「G-SYNC」を搭載しているのが特徴。ノートPCでG-SYNCを搭載した製品は珍しく、「LEVEL∞」ブランドを立ち上げるのにふさわしい製品と言える。今回は本機のレビューをお届けする。
75Hz液晶を搭載したハイエンドゲーミングノート
今回テストしたマシンは、ラインナップ中位となる「Lev-17VX085-i7-VRV」を一部カスタマイズしたものとなっている。標準の主な仕様は下記のとおり。
【表1】Lev-17VX085-i7-VRV | |
---|---|
CPU | Core i7-4790 |
GPU | GeForce GTX 980M(8GB) |
メモリ | 8GB DDR3L-1600(4GB×2) |
SSD | 256GB(PLAXTOR M6e M.2 2280シリーズ) |
HDD | 1TB |
ディスプレイ | 17.3型非光沢液晶(フルHD/IPS/G-SYNC) |
税別価格 | 277,980円 |
このうち、評価機では、CPUが「Core i7-4790K」、メモリが16GB(8GB×2)にアップグレードされたものを使用した。この構成での税別価格は295,440円となる。
スペックを見れば分かるとおり、以前レビューした「15GSX8550-i7-QVSB」などと同じく、CPUはデスクトップ用で、チップセットもデスクトップ向けのIntel Z97を搭載している。これによって、単にモバイル用より性能が高まるだけでなく、モバイル向けのNVIDIA Optimus対応機が持つ「Oculus Rift」との互換性の問題を回避できるメリットもある。
ストレージはSSDとHDDを同時搭載できるだけでなく、さらにHDDを追加してSSD+HDD×2の構成にもできる。ただし光学ドライブは構成によらず非搭載となる。
ディスプレイは17.3型の非光沢液晶。G-SYNC対応であるほかに、液晶のリフレッシュレートが75Hzとなっている。一般的な液晶ディスプレイは60Hzなので、液晶そのものの性能でも優位性がある。なおかつIPSパネルというのは、見え方にこだわる人は嬉しい仕様といえる。
電源は出力230WのACアダプタ。かなり巨大な上、コンセントからアダプタまではデスクトップPC用の太いケーブルになっており、アダプタとケーブル込みで約1.1kgある。PC本体の重量はバッテリ込みで約3.9kgなので、合計で約5kgになる。本体サイズは約418×282×38.9mm(幅×奥行き×高さ)。
ハイエンドゲーミングノートPCにふさわしい性能
それでは各種ベンチマークソフトのスコアを見ていきたい。利用したのは、「3DMark v1.4.915」、「ファイナルファンタジーXIV: 蒼天のイシュガルド ベンチマーク」、「バイオハザード6 ベンチマーク」、「ファンタシースターオンライン2 キャラクタークリエイト体験版 ver.2.0」、「CINEBENCH R15」、「CrystalDiskMark 4.0.3」、「BBench」。
結果を見る前に1つお知らせしておきたい。ベンチマークの際にG-SYNCをオンにすると、その性質上、スコアが悪く出てしまう。その理由は後述するが、スコアはG-SYNCをオフにした状態を標準値として見ていただきたい。G-SYNCをオンにしたスコアも参考として掲載しておく。
なお「ファイナルファンタジーXIV: 蒼天のイシュガルド ベンチマーク」に関しては、フルスクリーンでの挙動にトラブルが発生したため、簡易フルスクリーンモードで計測し、G-SYNCオン/オフでの比較は掲載していない。
テスト結果としては、「GeForce GTX 980M」を搭載しただけあって、フルHDクラスなら楽勝という結果が出ている。今時のゲーミングPCとしても十分満足できる性能だ。
Lev-17VX085-i7-VRV(カスタム) | ||
---|---|---|
CPU | Core i7-4790K | |
GPU | GeForce GTX 980M(8GB) | |
メモリ | 16GB DDR3L-1600(8GB×2) | |
SSD | 256GB(PLAXTOR PX-G256M6e) | |
HDD | 1TB(HGST HTS541010A9E680) | |
OS | Windows 8.1 Update 64bit | |
G-SYNCオフ | G-SYNCオン | |
「3DMark v1.4.915 - Fire Strike」 | ||
Score | 8,591 | 8,618 |
Graphics score | 9,844 | 9,835 |
Physics score | 11,615 | 11,725 |
Combined score | 3,664 | 3,707 |
「3DMark v1.4.915 - Sky Diver」 | ||
Score | 23,534 | 15,353 |
Graphics score | 31,841 | 16,407 |
Physics score | 10,419 | 10,768 |
Combined score | 22,028 | 18,210 |
「3DMark v1.4.915 - Cloud Gate」 | ||
Score | 25,748 | 13,822 |
Graphics score | 68,686 | 17,225 |
Physics score | 8,077 | 8,173 |
「3DMark v1.4.915 - Ice Storm Extreme」 | ||
Score | 155,284 | 18,327 |
Graphics score | 305,523 | 17,228 |
Physics score | 57,067 | 23,601 |
「ファイナルファンタジーXIV: 蒼天のイシュガルド ベンチマーク」(DirectX 11) | ||
1,920×1,080ドット/最高品質 | 9,256 | - |
「バイオハザード6 ベンチマーク」 | ||
1,920×1,080ドット | 13,907 | 10,505 |
「ファンタシースターオンライン2 キャラクタークリエイト体験版 ver.2.0」 | ||
1,920×1,080ドット/簡易設定5 | 69,810 | 3,990 |
「CINEBENCH R15」 | ||
OpenGL | 142.32fps | 144,41fps |
CPU | 787cb | 815cb |
CPU(Single Core) | 167cb | 166cb |
ストレージはM.2 PCI Express 2.0接続のPLEXTOR製SSD「PX-G256M6e」、HDDはHGST製「HTS541010A9E680」が採用されていた。SSDはPCI Express 2.0接続だけあって、シーケンシャルリードが741.7MB/secと、かなり良好な値が出ている。
バッテリの持続時間は、「BBench」でキーストロークとWeb巡回あり(Wi-Fi接続)の設定で、バッテリ切れまで約2.5時間。「ファイナルファンタジーXIV: 蒼天のイシュガルド ベンチマーク」を実行した場合はバッテリ切れまで約50分となった。ゲームプレイの際には、ACアダプタの接続はほぼ必須だろう。
G-SYNCで何がどう変わるのか
それでは本機の肝であるG-SYNCについて説明していく。PCのディスプレイは、一般的には1秒間に60回(60Hz)の表示更新がある。これは規則正しく行なわれ、60Hzであれば0.0166……秒に1回更新されることになる。
しかしPCのビデオカードで生成される映像は、60Hzとは限らない。最新のヘビーな3Dゲームを高画質でプレイすれば、1秒間に60回も映像を生成できず、結果としてカクカクした映像が見える。逆に昔の軽い3Dゲームなら、1秒間に何百回と映像を生成できるが、ディスプレイに表示できるのは1秒間に60回しかないので、その全ては表示できない。
軽いゲームで映像をいっぱい生成する分には構わないように思えるが、これが原因でティアリングという問題が発生する。ディスプレイ表示は60Hzで処理されるのに、GPUからはそれ以上のスピードで画像が送信されるので、1枚の映像を表示し切る前に次の映像が入り込んでしまう。その結果、1コマに複数枚の映像が混じり、横方向にズレが発生した映像が見えてしまう。
これを改善するための策として、ディスプレイの更新頻度よりも多く映像を生成しないようにするのが「V-SYNC」という技術だ。必要以上の映像を作らないので、ティアリングは発生しない。昔から存在し、多くのゲームで設定が可能だ。
しかし「V-SYNC」にも問題がある。ヘビーなゲームでは、ディスプレイの更新頻度に映像の生成頻度が追いつかない。この状態でV-SYNCをオンにすると、ディスプレイの更新タイミングで新たな映像が生成できず、次の更新タイミングを待つことになる。そのため、ディスプレイの更新タイミングで映像が変わったり、変わらなかったりする。ティアリングがない変わりに、動画としてはより不規則にカクカクした印象になり、不快感が増す。また表示遅延も生むため、ゲームにおいて不利になる。
この2つの問題を解決するため、G-SYNCではGPUがディスプレイの表示タイミングを制御している。映像が生成できたらすぐ表示を更新するので、最速で画面が更新される。一方でV-SYNCと同様にディスプレイの更新頻度を超えるような映像生成をしないので、ティアリングも発生しない。
非同期で動いていたディスプレイとGPUを、同期して動かすことによって上記の問題を解決する、というのがG-SYNCの発想だ。端的に言えば、本機のディスプレイリフレッシュレートは「最大75Hzで動的に変化」する。
長々と文章で説明したが、よくわからない方も多いと思う。「ファンタシースターオンライン2 キャラクタークリエイト体験版 ver.2.0」の中でティアリングが目立つシーンをハイスピードカメラで撮影したので、G-SYNCのオン/オフで映像がどう変わるのかご覧いただきたい。
G-SYNCをオンにするとベンチマークテストの結果が悪くなる現象は、フレームレートが最大75fps(=ディスプレイの最大リフレッシュレート)に制限されるためだ。その証拠としては「3DMark」のスコアを見ると分かるが、負荷が軽いテストほどスコアの差が大きくなっている。
ただし、G-SYNCをオンにすることによって、ベンチマークのスコアが下がっても、ゲームが重くなるわけではない。蛍光灯の点滅が認識できないように、60Hzで表示を行なっていれば、人間の目には十分スムーズだ。つまり、60fpsを超えるような演算性能は、ベンチマークでは高い評価となるが、極端な言い方をすると無駄に演算しすぎているとも言える。この点はまた後述する。
G-SYNCは映像品質向上だけでなく発熱低減にも効果
ここからは実際の使用感を見ていきたい。G-SYNCの効果については、見比べると確かにティアリングの有無は感じられる。あまりゲームに詳しくない人でも、映像が滑らかに見える程度の違いは感じられるだろう。
実際にゲームプレイをしてみると、G-SYNCの有無でプレイ感が変わるかというと、そこまで劇的ではない。確かに映像のメリハリがよくなった感じはするが、G-SYNCがなくともゲームが破綻していたわけではないので、ビジュアル面で感動的な違いがあるとは言い難い。
しかしビジュアル面以外で、G-SYNCの有無で感動的な違いがある。「ファンタシースターオンライン2 キャラクタークリエイト体験版 ver.2.0」をベンチマーク計測時と同じ設定で、G-SYNCをオン/オフそれぞれで1回実行した際、「HWMonitor」を使ってCPUやGPUの状態を計測した。
2つのデータを見比べてると、明らかな違いが出ている。G-SYNCオンの時にはCPUの最高温度が77℃だったのに対し、G-SYNCオフの時には100℃まで上昇している。GPUもG-SYNCオンの時の最高温度が58℃なのに対し、G-SYNCオフの時は77℃になっている。
「ファンタシースターオンライン2 キャラクタークリエイト体験版 ver.2.0」をG-SYNCオフで実行すると、フレームレートが300fpsを超えるシーンもある。G-SYNCオンだと最大75fpsに制限されるため、無駄な描画処理が発生せず、処理負荷が大幅に低減される。その結果、CPUやGPUの消費電力が少なく済み、温度も上がらないというわけだ。
処理負荷だけの話をすればV-SYNCでも同様のメリットが得られるはずだが、先述の通り表示遅延が発生する。その点、G-SYNCなら、ゲーム個別の設定でV-SYNCをオンにする必要もない……というか、本機ではV-SYNCの設定があるゲームでV-SYNCをオフにしておくべきだ。
先の比較テストの際、本体後部にあるファンの回り方も当然異なってくる。G-SYNCオンで負荷が少なく済んでいれば、ファンもあまり回らず静かだし、G-SYNCをオフにして負荷が高くなるとファンがうるさく回るし排熱も熱いくらいになる。バッテリ消費に関しては、元々モバイル機でもなく、さほど持続しないので大きなインパクトはなさそうだが、静音性と発熱に対してはG-SYNCが有効に働くと言っていい。
より高負荷なゲームであれば、G-SYNCオン/オフ時の消費電力の差は小さくなっていくと思われるが、それでもG-SYNCオンの優位がなくなることはない。ベンチマークテストという、ある意味特殊な状況を除けば、G-SYNCをオフにするメリットはないし、購入者が深く考える必要もない。
性能とは別軸の幸せを感じられる1台
というわけで、以下はG-SYNCオンでの使用感をお伝えする。本体の天板とリストレスト部はラバーコーティングされており、適度な滑り止め感がある。背面はザラザラとした触感だ。重さは約3.9kgと重めながら、厚さは38.9mmとさほど分厚いわけでもないので、持ちやすくはある。
排熱は本体後部のファンから行なう。使用時に見える位置にはファンがないため、普段は熱や音はあまり気にならないものの、重めの3Dゲームを動かすと結構な勢いでファンが回る。デスクトップ用CPUを搭載しているだけあって放熱量が多いので、後ろに熱に弱いものを置いておかないようにしたり、向かいに人がいる時に高負荷にしないなどの配慮が必要だ。
キートップへの熱の伝わり方は穏やかで、リストレスト部も含めてほんのり温まる程度。不快に感じるほどの熱は伝わってこない。キータッチは浅めながらクリック感があるタイプだが、カチャカチャというタイピング音はかなり抑えられており、ゲームプレイの邪魔にならない。キーボードバックライトも搭載しているので、暗所での利用も可能だ。
サウンドは液晶ディスプレイの付け根部分にステレオスピーカーが内蔵されている。サイズ的に低音は出にくいが、高音は自然でステレオ感もある。ゲームプレイには十分活用できるだろう。
G-SYNCは究極のビジュアルと応答速度を目指したもので、ゲームのプレイ感の助けにはなるが、劇的な違いを体感できるかと言われると少々難しい。ただノートPCと組み合わせた時には、ビジュアルの向上に加えて発熱への対策にもなる。ただ発熱については、NVIDIA製GPUであればBattery Boostによってフレームレートを制限する手もあるので、結局のところは究極を求めるか否かが本製品の評価のカギになるだろう。
ただ、PCはスペックが高ければいいという発想から、別軸の評価基準が生まれたという点では興味深い。誰もが最高スペックを必要としているとは限らないが、G-SYNCはむしろオーバースペックな時に効果を発揮する代物なので、恩恵を受けられる状況は意外と多い。また本機は液晶ディスプレイが最大75Hzで駆動するため、一般的なゲーミングノートPCより滑らかな映像を見られるというのも単純にメリットだ。見た目にこだわる人はぜひ店頭などでチェックしてみていただきたい。