山田祥平のRe:config.sys

WiMAX2+の3日間3GB制限。えっ、まだ実施してなかったの?

 ワイヤレスブロードバンドは電波という有限の資源を使い、それが認可制である以上、カネで解決することができない奥深い問題を抱えている。それは、月間通信制限なしを強くアピールしてユーザーの支持を勝ち取ってきたWiMAXとて例外ではない。その制限がいよいよ始まるという。

こらえかねてついに制限運用開始

 UQコミュニケーションズからとうとう、3日間3GB制限を5月末頃に開始するということになったという話を聞いた。正直なところ、「えっ、まだ実施していなかったの?」と、ちょっと驚いた。同社は、昨年(2014年)秋の時点で、2015年4月1日からの3日間3GB制限実施の可能性をアナウンスしていたから、もうとっくに制限運用が始まっていると思っていたからだ。

 同社によれば、これまでもあまりにも極端なデータトラフィックについては、ゆるやかな帯域制限を課するなどしながら、不公平にならないように、全体のトラフィックを調整してきたようだ。そのWiMAXが、いよいよ5月末頃には、より厳しい帯域制限になるという。同社の試算では、約15%のヘビーユーザーによる極端な使い方を制限できるようになるそうだ。

 3日間で3GBというのは、どのくらいのトラフィックかというと、ざっくりいって、フルHDのYouTubeコンテンツを3時間視聴すれば達する量だ。毎日1時間ずつ見ても、それが積算されることで3日間で3GBに到達する。

 手元の環境では、自宅には光回線が別途あって自宅でWiMAX2+を使うことがないため、WiMAX2+のトラフィック量は月間4GB前後となっている。だから個人的にはたぶん今回の制限運用には無関係であると思われる。使い方としては、朝出かける時にモバイルルータの電源をオンにして持ち出し、戻ってくるまでそのままだ。移動中は、スマートフォンやタブレットなどが接続しっぱなし、移動先ではPCを開いてやはり繋ぎっぱなし。YouTubeなどの大容量コンテンツをモバイル視聴しないということもあるが、それで150MB/日程度ということになる。

 想像するに、今回の厳しい制限開始によって影響を受けるユーザーは、モバイルも固定も、すべてのインターネットトラフィックをWiMAX2+に頼っているユーザーなのではないだろうか。

 そういう使い方なら、そりゃ、超えるのも当たり前だし、だからこそ、これまで格安といってもよかったWiMAXを愛用してきたのだろう。

制限適用状態を体感、やはりガマンは必要

 仮に影響を受けることになってしまった場合、どのような状況に耐えなければならないのだろうか。これについては、未実施ということで未踏の領域となる。UQは、制限する場合にも、実用域を極端に超えるようなお仕置き的制裁を加えることはないとしている。具体的には標準画質のYouTubeコンテンツを見るのに支障のない程度ということなのだが、こればかりは実際に試してみないと分からない。標準画質のYouTubeは、1Mbps程度とされている。つまり、フルHDのYouTubeに対して10分の1の帯域幅だ。そんなに落として大丈夫なのか。

 実際に試させてもらった。

 同社にお願いして、実際に制限を受ける状態にしたアカウントのSIMをモバイルルータに装着し、制限を受けていないSIM装着時の同じルータと快適度を比較させてもらった。

 結論から言うと、とりあえずガマンできない速度ではない。スピードテストをしてみても1Mbpsを下回ることはないように見える。YouTubeも画質が360pなら何の問題もなかった。もちろん爆速の日本のインターネットに慣れたスピード感からすれば極端に遅い。重いサイトを開くにも一呼吸を覚悟しなければならないだろう。1Mbpsは、450MBを1時間かけなければさばけない速度なのだから当たり前だ。オーバーヘッドを考えれば300MB/時程度を覚悟する必要がある帯域幅だ。でも、TwitterとFacebookを楽しむくらいなら、制限を受けていることにも気が付かないかもしれない。

 ユーザーがこの制限を回避するための方法は1つしかない。それは自粛だ。悲しいけれどもそれが現実だ。

 一般的に言われている説として「2-8論」というのがある。ISPを通過するトラフィックの8割は、2割のユーザーによるものだという考え方だ。UQは、今回の運用開始で約15%のユーザーが影響を受けると言うが、この上位約2割のユーザーがやりすぎということになる。

 これには、固定回線の代わりにWiMAX2+という訴求をしているUQにも責任はある。そういう使い方を訴求すれば、3GB/3日間はアッという間だからだ。それ以外にも月間トータルではそれほど使っていなくても、たまに意識しないで3日で3GBを超えてしまうカジュアルユーザーもいるだろう。WiMAXのサービスイン以来、これまでUQは「放題」を強くアピールしてきた以上、騙されたと感じられるのもある程度は仕方がないと言える。

倍額払えば本当の無制限になる?

 いずれにしても、制限を受けないための抜け道はない。でも、制限を受けにくくする裏技はいくつかある。

 今回の措置では3日間の合計トラフィックが3GBを超えた場合、超えた日の翌日正午頃から制限が開始されることになっている。つまり超えた瞬間から帯域が狭まるのではなく、超えた瞬間から翌日正午までの執行猶予期間があるわけだ。そして、その間にどれだけ多くのトラフィックを発生させたとしても、そこにあるのは「超えた」という事実のみだという点に注目してほしい。

 そして、連続した3日間の合計トラフィックが3GBを下回ったところで制限は解除される。つまり、制限を受けたら2日間ガマンするという事実を受け入れること、そしてそれをうまく回避する方法がわかっていれば何とかなる。いろいろな方法があると思うが、

・1GB/日を確実に守る。フルHDのYouTubeは1時間まででガマン。
・3GB到達直前を厳密にチェックして、突破しそうなときだけ自粛する。
・あきらめて為すがままとなる。

といったことしかユーザー側ではできない。発生させたトラフィック量については、ユーザーが自分でチェックすることもできる。UQユーザーは、MyUQアカウントを使って過去3日分の通信量を照会できるからだ。でも、このシステムでは3GBを超えてしまった翌日にしか、そのことが分からない。時既に遅しで、リアルタイムの値によって通信量を抑えるといった自粛ができないわけだ。それがリアルタイムで分かるように、当日を含む過去3日分の通信量を得られるようにして欲しいし、スマートフォン用に通信量照会アプリを用意するといったことをUQには求めたい。

 さらに、今回の制限運用開始は、決して月間通信量に影響を及ぼすものではない。今、日本のモバイルシーンではざっくり1GB/1,000円という価格が定着しそうな印象があるが、WiMAX2+のサービスは、3GB/3日間という制限を超えない限りは月間通信容量無制限という「ツープラスギガ放題」プランが選べる。3日置きに30GBのデータ通信をすれば、月間合計で300GBに達する。GB単価は200円に満たないのだ。こうした選択肢を用意しているモバイルネットワークはWiMAX2+だけと言っていいだろう。

 スーパーな裏技としては、複数の回線を契約して、制限を受けた時点で別の回線にスイッチすれば本当の無制限になる。計算上は3アカウント必要だが、トラフィック量によっては2契約でなんとかなるかもしれない。固定回線を別に調達すれば、ほぼ同様の金額がかかることを思えば、実にアクロバティックな方法ではあるが、外出用と固定用の合計コストでの比較では一考に値するのではないか。

 今回、ギリギリまで制限の本格運用を先送りにしてきたUQのやり方を見ていると、同社の姿勢のようなものが見えてくる。同社としてもずっとやらずに済ませたかっただろう。

 今回の制限運用開始によって、仮に約15%のユーザーが意識的に自粛するようになれば、帯域にも余裕ができ、様子を見ながら、制限時の帯域幅を少しずつ上方修正するようなことも期待できるのではないか。もっとも、帯域に不安があるのにカネで解決できないのは、バックボーンではなく、無線区間である点で問題の根は深い。電波が有限の資源である以上、UQの努力だけではなんともしがたいところが悩ましい。

(山田 祥平)