山田祥平のRe:config.sys

【特別編】この夏、大きく変わるGoogleマップ

 Google I/O 2013で大きくアピールされていたのが地図サービスのGoogle Mapsだ。関連セッションも20近くが用意され、カンファレンス開幕当日にプレビュー版も公開されている。ここでは、この新しい地図サービスが意味するところを見ていくことにしよう。

Google I/O 2013スタートと同時にプレビュー版が公開

 Google Mapsは、そのプレビュー版がすでに公開されている。最初にサイトを開くと招待バナーが表示され、しばらく待つと使えるようになる(編集部注:5月20日現在、使用できない場合があることを確認しております)。一度、この手続きをすれば、以降はこのURLを開くだけで、新しい地図サービスをプレビュー体験することができるようになっている。すでに、現バージョンのGoogleマップを開くと、招待のバナーが表示されていて、直接このページに誘導されるようになっているようだ。Googleによれば、まずは、PCにおけるプレビュー版でスタートし、この夏には、AndroidやiOSアプリとして公開される予定だということだ。もちろん今回は、iPad版にも期待してほしいということだった。

 新しいマップでは、通常モードとライトモードが用意され、WebGLをサポートしていないブラウザでは、自動的にライトモードで稼働する。Windows 8上のInternet Explorer 10ではライトモードとなり、3D Earthビューやその他の3D機能は利用することができない。全機能をプレビューしたい場合は、Google Chromeを使うのがいいだろう。

 開いた地図を一目見ればわかるが、実にシンプルなデザインになっている。これまで黄色っぽい色で表示されていた主要道路は白色に変更され、高速道路のオレンジ色は少し濃く表示されるようになった。地図関連のプレス向けラウンドテーブルに出席して、カラーリング変更の理由を尋ねてみたところ、地図上の情報が道路の色の中に埋没してしまうことを回避するためだという。確かに、現在、地点の保存に使われているスターの黄色が道路の黄色の中に埋もれてしまってわかりにくいと感じることがあったので、これは改善といってもいいだろう。

 また、基本的に2ペインで操作することが多かった地図が、ウィンドウ全体をフルに使って操作するように変わっている。Google I/O 2013では、Google Maps関連のセッションが20近く提供されていて、そのうちのいくつかを聴講したが、同社によれば、地図はそれそのものがUIであると主張していた。地図をインタラクティブに扱えるようにすることで、さまざまな情報を見つけ出すには、複数のペインに分割するよりも、ひとつのウィンドウで操作できた方がいい。紙の地図が引き合いに出されて新Google Mapsの改良点が説明されていたが、当然のごとく、紙の手書き地図にはペインなどないわけだ。また、これは想像に過ぎないが、PCでの地図体験と、スマホやタブレットでの地図体験をより近いものにすることも考えられていそうだ。

シンプルになった新マップ

 ウィンドウの最上部にはシンプルな検索ボックスが用意されている。また、ウィンドウ下部には、現在表示中のエリアのランドマークや風景、名所などの写真が並んでいる。それぞれの写真にマウスポインタを重ねると、その写真がどこで撮ったものなのかを示す引き出し線が地図上のポイントと写真を結ぶようになっている。

 検索ボックスに、検索ワードを入れて検索させると、履歴が検索ワードを補完しようとする。個人的には現在表示されているエリアにおける検索ワードの結果を提示してほしいところだが、サンフランシスコの地図が表示されていても、hotelというキーワードを入れると東京やラスベガス、バルセロナといった過去に自分が検索した履歴からhotelを含むものが提示されてしまう。だが、単純にhotelと入れれば現在表示中の地図に、hotelの位置がマッピングされるので、大きな不便はない。もちろん「ホテル サンフランシスコ」と入力すれば間違いない。

 当然、日本語対応だ。「ホテル」、「カフェ」、「コンビニ」といったキーワードを入れると、地図内の該当する地点に、それぞれを連想させるマークが表示される。うまくマッチングできない場合に備え、他のキーワードの候補も表示されるし、また、上位の検索結果はリストとして表示させることもできる。

 地図内で、めぼしいマークをクリックすると、それに応じて地図上の道路名表示などが変わる。紙に地図を書いて、誰か他の人にそこへの道を案内する際に、目的の場所に到達するためには、何を目印にすればいいのか、どの道路を使うのがわかりやすいかなどを考慮して道路名などを記入するわけだが、それに近いことをIT的に実現しているのだという。

 クリックした地点によって、利用するであろうメインの道路以外は白から少しトーンを落とした色に再描画される。また、検索ボックスの下にはその地点の住所、ストリートビューのスタート地点、口コミへのリンクなどを挙げたカードが表示される。また、このカードからルート・乗り換えの案内をスタートさせたり、地点を保存したりができるようになっている。

ナビゲーションも大きく進化

 ある地点からある地点までのナビゲーションも大きな進化を遂げている。たとえば「日比谷 帝国ホテル」というキーワードで検索すると、帝国ホテルがズーミングされ、カードには「じゃらん」を使った同ホテルの予約リンクも提示される。これは広告であることもきちんと明示されている。

 だが、地図上の「帝国ホテル東京」は、ポイントとしてマークされていない。マークがついているのは帝国ホテル内にあるテナントや飲食店などだけで、クリックしても肝心の帝国ホテルを地点として認識させることができない。だから、期待に添った動作をさせようと思うのなら、検索ワードとして「帝国ホテル」を入れたときに提示される候補から「帝国ホテル東京」を選択するのがカンタンだ。変に「日比谷」といった絞り込みワードを自分で入力するよりも、Googleにまかせてしまった方が期待通りの結果が得られるようだ。

 さて、この帝国ホテル東京が見つかって、そこにこれから向かいたいとしよう。まずは、念のために地点を保存してスターをつけておこう。

 そして、検索ボックス下の「ルート・乗換」をタップすると、「帝国ホテル東京」が地点B、すなわち行き先となった状態で検索ボックスが開き、これまでに検索した地点の候補などが表示される。この中にはあらかじめ設定しておいた自宅や職場といった地点も含まれる。

 ここで、地点Aに適当な検索ワードを入れてもいいし、地図上の別の地点をクリックすることでもそこが地点Aとしてセットされ、デフォルトでは車でのルートが表示される。もちろん、ボタンのクリックで、公共交通機関、徒歩などを指示することもできる。

 公共交通機関での案内を指示すると、いくつかの候補が表示される。地下鉄での移動の場合は、次の出発の時刻なども分かるようになっている。ここで「その他のオプションと時間」を開くと実に便利な情報ページが表示される。提示された複数の候補でどのようなタイムライングラフで目的地に到達できるかが一目で分かるようになっていて、すぐに出発するのか、何時に着きたいのか、何時に出発したいのか、あるいは、利用する交通機関などをここでまとめて設定できる。また、地図も小さく表示されるが、1クリックでその区間をクローズアップした全画面の地図に遷移することもできる。

これからの地図関連アプリがAPIの駆使でよりリッチなものに

 3D機能を駆使している点でも、新しいGoogle Mapsは圧巻だ。ウィンドウ左下の地図・地球切り替えでEarthビューに移行できるようになっている。右側のボタンで角度を変えることができ、ストリートビュー的な写真と3DによるCG描画がシームレスに融合して望みのビューで町並みを見ることができる。東京エリアは今ひとつに感じるが、サンフランシスコなどの街をこのビューで見ると、相当すごいことがバックグラウンドで行なわれていることが分かる。ここで得られる体験は、街のストリーミングそのものだ。現在は不可能だが、こういうことができるようになれば、各地にライブカメラを設置し、リアルタイムでその場所の様子が分かるようにするといったことも、Googleならやりかねないと思ってしまう。

 こんな具合に大幅に進化したGoogleマップだが、地図APIを使えば、アプリの開発者にとって何ができるのかをさまざまな形で提示した希有なワークショップになっていることが分かる。そこにはビジネスチャンスが山のようにあり、Googleマップを使うことで、アプリ開発者がどのようなアプリを作れるのかのヒントになっているわけだ。まさに宝の山だ。

 Google Maps API v2では、ユーザーが歩いているのか、電車に乗っているのかといったことが分かる「Activity Recognition」や、GPSやWi-Fi、3Gなどを統合して現在位置を特定する「Fused Location Provider」といったロケーションAPIがサポートされるようになり、地図を使った各種のアプリは、これまでよりも、いっそう楽しく便利な、そしてリッチなものにできるはずだ。

 さらに、新しいGoogle Cloud Messegingによりタブレットとスマホとの間の同期などがサポートされるようになることで、もっと高度なこともできるはず。そのあたりは、アプリ開発者の創造性に委ねられることになるわけだが、Googleとしては、今回のGoogle I/Oにおいて、その可能性をできうる限り示すことで、今後のスマートフォンやタブレットでの展開に備えてほしいというメッセージを発信したわけだ。

 ちなみに、ラウンドテーブルの場でたずねたところ、Windows 8のストアアプリのリリースについては予定がないということだった。新しいUIでの利用は、ストアアプリ版のIEなり、Chromeを使うしかない。今のところストア版のIEでは、地図をピンチ操作でズーミングできないなど、使い勝手の点ではかなりプアなものになっている。今後、このあたりが、どのように改善されていくかに注目しておきたい。

(山田 祥平)