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イケア、ニューノーマル時代に求められるオフィスリニューアルを支援

イケア・ジャパン本社の受付スペース

 イケア・ジャパン株式会社4日、千葉・船橋にある本社で記者説明会を開催し、中小企業のオフィス改装に向けた取り組みを紹介するとともに、ニューノーマル時代に求められるオフィスに合わせて改装した自社内を初めて公開した。

ニューノーマル時代に求められるオフィスとは?

 冒頭では、同社 IKEA for Business Developerの佐川季由氏が、ニューノーマル時代に求められるオフィスの姿を紹介。同社が中小企業600人、そして社内に対してアンケート調査を行なったところ、以下のような目立った回答が得られた。

 まず、新型コロナウイルス感染防止のため、多くのテレワークを推進しているが、それに伴ってテレワークによるメリット(通勤時間の短縮や時間についての自由度の向上)に伴って、デメリットも多く存在することがわかったという。

 デメリットを具体的に挙げると、リモートワークによる孤独感、雑談のなさ、コミュニケーション不足である。このため、同僚とのコミュニケーションの円滑化や、雑談のために出社したいと回答した人も多くいると言い、オフィスにコミュニケーションスペースを求める声が6割をも超えた。

佐川季由氏
アンケートの中で85%の人が、テレワークにデメリットもあると感じているという
職場では、コミュニケーションや雑談など、心の“密”が求められている
そのためコミュニケーションスペースを求める声が66%に上った

 そのため、実際にオフィスのリフォームを考えている中小企業も半数を占めるとしている。その中で、リフォームに伴う費用、そして持続可能性を重視している企業も半数を超えており、IKEA for Business部門としては、同社が持つコスト面での強み、そして持続可能性重視のデザインでこのニーズに応えていく考えを示した。

 家庭向けインテリアでイメージの強いイケアだが、法人向けサービスも2010年から展開しており、2021年7月には「IKEA Business Network(メンバーシップクラブ)」をアップグレード。入会費/年会費は無料で登録でき、インテリアデザインのアドバイスサービスを無料でできるほか、ビジネスの基礎やスタッフの管理、空間づくりソリューションについて必要な知識が学べるオンライントレーニングを提供。また、リロクラブが運営する福利厚生サービス「福利厚生倶楽部」と業務提携し、メンバーの従業員を対象に福利厚生サービスを特別価格で利用できる特典も提供している。さらに、11月30日までは「IKEA Business Network誕生記念キャンペーン」を実施しており、メンバーが3万円以上購入すると、全商品が通常価格から10%割引となっている。

【11月5日訂正】記事初出時、法人向けサービスの開始時期が誤っておりました。お詫びして訂正します。

 現時点ではイケアの総売上のうち、10%程度をこの企業向けサービスが占めているが、本格展開に伴って、より多くの中小企業に加入して利用してもらいたいという意向を示した。

IKEA Business Networkの展開
IKEA Business Networkメンバーの特典

コミュニケーションのためのスペースを充実させたイケアのオフィス

 イケアではこのような取り組みを進める一方で、手本となるよう、自社のオフィスもリニューアルを行なった。

 同社 Service Office People & Culture Managerの小山寛氏によると、イケアは全従業員が平等で、好きなキャリアパスを選択できるという制度を強力に推し進めており、この取り組みによってダイバシティ(多様性)に富んだ考え方を実現しているという。

 具体的には、2021年7月時点で女性の管理職の割合が51%に上っているほか、キャリアも単なるステップアップのみならず、働きたい分野に自由に行け、家族の事情などに合わせて“ステップダウン”も選べるようなパスを用意している。また、託児所「Dagis」を会社の横に併設するなど、子育て支援にも力を入れている。

小山寛氏
従業員の力や可能性を信じるイケアの人事理念
同社が考える従業員(コワーカー)の多様性。第1要素は生まれながらにして存在するもの、第2要素はその後に与えられるもの
イケアでのキャリアの機会
男女平等を意識した採用。託児所Dagisを併設する、フレキシブルな働き方に対応するといった取り組みも行なっている
発表会のビデオでは、同社代表取締役社長兼Chief Sustainablity Officerのヘレン・フォン・ライス氏もメッセージを寄せ、ジェンダー平等の実現に向け取り組みを行なっていることをアピールした

 こうした社員一人ひとりを大切にする社風のもと、ニューノーマル時代を迎えるにあたって、オフィスに求める声を社内でアンケートを実施したところ、社外アンケートとほぼ同様の声が上がり、従業員同士のコミュニケーションが円滑に取れるようなオフィスへのリニューアルの実施に至ったとしている。

 イケアの新オフィスは、社員同士が気軽にコミュニケーションできるスペースとして「#Chat」が用意されているほか、オンライン会議をするスペース「#Online」や、集中のためのスペース「#Focus」などを用意している。

コミュニケーションスペースがほしいという従業員の声
リニューアル後のフロアプラン

 ちなみに#Chatはテーブルと椅子があるだけでなく、ソファが2つ置かれているようなスペースもあり、従業員同士がリラックスした姿勢で雑談できるような工夫もなされている。一方で#Onlineと#Focusでは、周囲に声が漏れにくく、外部の騒音もある程度遮断できる自社のパーティション「EILIF」を採用するといった工夫も見られた。

 いわゆる事務室のようなスペースは「#Co-work」と呼ばれ、完全アドレスフリー化がなされていた。なお、先述の通りイケアは社員平等を掲げているため、管理職などでも特定の席はなく、ほかの従業員と同じ席だという。現時点では週2まで出社できることとなっているため、出社率は30~40%程度だが、コロナ収束後、全社員が出社しても全席確保できている。なお、70席はデュアルディスプレイが標準装備されていた。

 ちなみに説明員によれば、新型コロナウイルス感染症が流行する前では、オンライン会議ではなく出張が一般的だった。このためオンライン会議専用スペースを設けたというのも、ある意味時代のニーズに応えたものである。

千葉県船橋市にあるイケア・ジャパン株式会社本社
入り口では、歴代の代表的な製品が写真展示
こちらはオープンなミーティングスペース「#Collaboration」。発表会もここで行なわれた
#Collaborationのすぐ横に#Chat。気軽に集まって会話できる
こちらはソファが置かれた#Chat。レゴもあり、ちょっと息抜きできる
ここまでくるとミーティングスペースというよりも自宅のリビング感覚だ
入り口のところにも#Chat。お客様が来館した際にちょっとした話ならここでもOK
さらに別の#Chat。2人が向かい合って雑談できる
会社の隅にある#Chat。ソファでゆったりできる
こちらはイケアが登場する雑誌や本を置いたコーナー
数々の受賞トロフィーも置かれていた
オンライン会議用スペース#Online。手回しだが、机の高さを調節できる
周囲への音漏れを抑えるよう、自社のパーティション「EILIF」を採用
こちらは集中できるスペースの#Focus。EILIFを採用しているほか、電動で昇降できる机もあり、立って作業できる
昼食や休憩ができるスペース#Recharge。席の間隔を開けながら席数を増やす工夫をしているという
食品を開発するグループが開発した製品も置かれている
いわゆる執務室の#Co-work。70席でデュアルディスプレイを完備