世界最大級のロボット専門展示会「2001国際ロボット展」
エンターテイメントロボットもちょっとだけ出展してました

会期:2001年11月13日~16日

会場:東京ビッグサイト



 東京ビッグサイトでロボット展示会「2001国際ロボット展」が開幕した。国際ロボット展は基本的に産業用ロボットの展示会で、工場などで使われているロボットアームなどが展示の中心だ。しかし、会場には「エンターテイメントロボットゾーン」が設けられていたり、研究開発中の最先端ロボットも展示されている。その中からいくつかをご紹介しよう。



●バンダイのネット対応ロボ「NET-BORG」

 バンダイは「エンターテイメントロボットゾーン」にブースを構え、猫型ロボット「BN-1」のプログラミングキットなどとともに、Webサーバー内蔵の移動ロボット「NET-BORG(ネットボーグ)」を参考出展している。

 NET-BORGはインターネット技術を使ってコントロールできるロボット。無線LANインターフェイスとWebサーバーが搭載されていて、パソコンからLAN経由でロボットにアクセスできる。NET-BORGにアクセスすると、ブラウザにはロボットが撮影したリアルタイム動画と、操作ボタンが表示され、そのボタンを押せばロボットが動く、という仕組みだ。細かい仕様はまだ決まっていないが、展示されていたNET-BORGには2個のキャタピラとカメラが搭載されていた。

 NET-BORGは来年市販される予定。まずは博物館などの業務向けに販売される見込みだが、ニーズを見ながら個人向けにも市販したいとのことだ。個人向けとして市販する場合、10万円以下の価格にしたいという。

 なお、展示されているロボットには、九州松下電器製のWebカメラ「KX-HCM1」が搭載されている。これはWebサーバーを内蔵し、LAN経由でWebブラウザから画像の取得・カメラのパン・チルト動作の制御ができるというもので、現在のNET-BORGはKX-HCM1にキャタピラを追加して動作している。現在のところバンダイでは、NET-BORGを九州松下と共同開発するとは決めていないが、KX-HCM1の技術提供を元にNET-BORGが開発されれば、システムを開発する手間が省けるので、もっと早い段階でNET-BORGが登場するかも知れない。

NET-BORGの外観。まだ参考出展の段階なので、製品化の際にデザインが変わる可能性がある ブラウザでアクセスした画面。動画は意外なほど滑らかに動く

□バンダイ ロボット研究所のホームページ
http://www.roboken.channel.or.jp/



RoboLinkのデモ。さまざまなメーカーのロボットや玩具が協調して動作する

 「エンターテイメントロボットゾーン」のステージでは「RoboLink」の展示を行なっている。RoboLinkとは、さまざまなロボットに共通のインターフェイスを持たせることで協調作業を行なわせようというワーキンググループ。イワヤ、タカラ、ダイヘン、トミー、松下電器産業、富士通大分ソフトウェアラボラトリ、富士通研究所といった、玩具メーカーから産業用ロボットメーカーまで、幅広い企業が参画している。

 RoboLinkでは、複数のロボットに共通のインターフェイスを持たせ、協調作業を行なえることを目指している。デモではMIDIの特定のパートとシンクロするロボットを組み合わせ、ロボットオーケストラを実演していた。普通のロボットでこうした協調作業を行なうのは手間がかかるのだが、共通の接続手段を持つことで、さまざまな機能を持つロボットを組み合わせた作業を行なおう、というのがRoboLinkの狙いだ。

□RoboLinkの資料ページ
http://www.osl.fujitsu.com/osl/contents/RoboLink/



●コミュニケーションロボット

 開発中のロボットなどは、会場内の「ロボットテクノプラザ2001」で展示されている。人型ロボットなど、大型ロボットの展示も多いが、人間とのコミュニケーションを重視したロボットもいくつか展示されている。

 国際電気通信基礎技術研究所(ATR)の「muu」は、人対人のコミュニケーションを研究するために開発されたちょっと変わったロボットだ。1個の目玉というデザインが非常に奇妙だが、これは動物行動学者ローレンツの「幼児図式」(哺乳類の赤ん坊が他の個体に可愛がられるように獲得した丸っこくやわらかい形態)を元にしたデザインで、手足など複雑な表現要素を省いてシンプルにしているのだという。

 muuには会話をするためのスピーカーとマイクのほかにも、モータとカメラが搭載されていて、ただ人間と声を交わすだけでなく、近くの人間に顔(体?)を向けたり、会話にあわせてうなずく、体を振る、などの身振りができる。

 muuができる会話はシンプルなもので、相手の言葉に合わせて「あんなぁ」、「なんやなんや」などと関西弁で反応する、といったもの。必ずしも会話が成立するとは限らないのだが、身振りなどからコミュニケーションを取っている、と感じさせるような反応をmuuが返すようになっている。

 いちばんユニークなのがmuuが複数台セットになっているということ。muu同士でも会話をするので、muuの群れと人間で「話し手」、「聞き手」、「傍観者」がダイナミックに変化するコミュニケーションを行なえる。muu同士で会話が盛り上がっている中に割り込むと、ロボット相手に疎外感すら得られてしまう。muuは人間同士のコミュニケーションを研究するために開発されているので、こうした普通のおもちゃロボットとは一味違ったコミュニケーションが楽しめるのが特徴だ。

muuの群れ。こいつらが互いに会話をしている様は多少不気味だが、慣れると意外と可愛い muuの中身。日立のCPU SH4を使っている。距離センサーや移動用の車輪とモーターも搭載している

松下の高齢者福祉用ロボット「こうちゃん」。お年寄りと福祉センターとの仲介役を、軽く身振りを交えながら行なってくれる。現在大阪の池田市にて実用試験中 併設イベントの「国際新技術フェア2001」で展示されていたインタロボットのSDEIR。入力された音声を元に、身振りなどを生成する。博物館などの案内役ロボットとして使われている

□ATRのホームページ
http://www.atr.co.jp/
□インパクサイト「松下パビリオン」内のロボット紹介ページ
http://www.smilennium.co.jp/kaden/robot/index.html
□インタロボットのホームページ
http://www.i-robot.co.jp/



●人型ロボットとかもいくつかありました

富士通のHOAP-1

 富士通は、人型ロボット「HOAP-1」を展示・実演している。HOAP-1は実験用のロボットで、大学などの研究機関に対してすでに販売を開始している。価格は制御パソコン込みで500万円程度。

 HOAP-1はUSBで制御するようになっている。左右の足に6個ずつ、左右の手に4個ずつ装備されたモーターは、すべてUSB接続されていて、コントローラとなるパソコンを有線のUSBで接続した場合、ロボット側に搭載されたハブがその信号を分岐させ、各モーターに信号を伝えるようになっている。無線LANを使った制御も可能とのこと。なお、制御コントローラ側として、展示機ではFMVを使っていたが、ロボット制御のためのリアルタイム性が必要なため、OSには産業用のRT-Linuxを使用している。


HOAP-1の足。各関節にはモータとコントローラ、ギアボックスがモジュール化されている HOAP-1の頭部。カメラが2台搭載されている

川田工業の人型ロボットisamuも展示されていたが、残念ながら動作させるデモはないとのこと 人型ではないが、千葉大学の地雷除去ロボット。6本足で歩きながら金属センサと目印用カラースプレーをかざす姿は、昆虫っぽい

開会式のテープカットに参加した人型ロボットTMSUK VISOR。市販のTMSUK IVに明治大学が開発した立体視システムが搭載されている TMSUK VISORはリモコン制御。手先の作業が多いので、立体視のメリットが多い

□富士通オートメーションのホームページ
http://www.automation.fujitsu.com/
□関連記事
【9月10日】富士通オートメーション、2足歩行ロボットの一般販売を開始
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20010910/fujitsu.htm
□RoboCraftのホームページ
http://www.kawada.co.jp/ams/rd/index.html
□関連記事
【11月8日】川田工業、Pentium III搭載の2足歩行ロボット「isamu」を公開
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20011108/isamu.htm
□テムザック
http://www.tmsuk.co.jp/



 人型ロボットではないが、経済産業省の外郭団体である製造科学技術センターは原子力防災支援システムを展示している。これは原子力事故が起きた際に、人間に代わって現場で作業するリモコンロボットを作ろうというシステム。'99年に東海村ウラン加工工場で発生した臨界事故を機に、'99年度中に補正予算が実行され、2000年度末に完成したというものだ。

 システムは東芝、日立、三菱重工、日商岩井とフランスのサイバネティックの全5社によって作られている。全部で5つのロボットで構成されるが、会場では東芝、日立、三菱重工による4つのロボットが展示されていた。いずれのロボットも極限条件での作業を前提にしていて、背丈は建物の中で行動できるように成人男性程度。階段なども移動可能なキャタピラや、ロボットによっては作業用の大型アームやセンサーなども備えている。

ブースに指揮車両が横付けされ、コンテナ部分が開いて中が覗ける

 なお、これらのロボットは「災害が起きた現場に駆けつける」という性質上、制御装置一式は指揮車両に納められ、どこでも運用できるようになっている。展示ブースには指揮車両が横付けされていて、まさにロボット操縦席という内部がうかがえるようになっていた。

 ちなみにフランスやドイツではこうしたロボットによる原子力事故対策チームが常設化していて、事故が起きた際には24時間で現場に駆けつけ、ロボットによる作業を開始できるという。日本ではそういった体制はまだ作られておらず、今回展示されたシステムも、今年度中の評価試験で実用化するかどうかを決める段階とのこと。近い将来に「災害あるところ、どこでも駆けつけるロボット部隊」が創設されるかどうかは、今後の政府の予算次第ということだ。


東芝の「SMERT-M」。現場に最初に乗り込み、放射能濃度などを検査したり、作業の監視支援をする。首が長くのびるのがポイント。有線・無線の両方で動作する 日立の「SWAN」。軽作業を担当。ドアを開けたり、制御盤の操作などが行なえる。アームは1本だが、手先のツールは自分で交換することが可能 三菱重工の中作業ロボット「MARS-A」(手前)と重量物搬送ロボット「MARS-T」(奥)。MARS-Tの背中には、真っ平らな机があるイメージ。各メーカー、同時作業時にぶつからないように、ロボットの色が塗り分けられている

東芝のロボットには親機「SMERT-M」に搭載できる子機「SMERT-K」がある。「SMERT-K」もセンサ部である首が伸びる 操縦コンソール。どのメーカーのロボットも、制御盤上に2本のキャタピラ制御レバーがついている。Windowsの画面も表示されている。これは日立の制御盤

三菱重工の制御装置だけ、椅子にも操作装置がついている。「建設重機などの操縦者にも使いやすいように」との配慮だそうだ いちばん最初に現場に乗り込む東芝の「SMERT-M」は、素早い運用に対応できるよう、アタッシュケース型携帯コントローラーが用意されている

□2001国際ロボット展のホームページ
http://www.nikkan.co.jp/eve/01robot/
□製造科学技術センターのホームページ
http://www.mstc.or.jp/


(2001年11月14日)

[Reported by 白根 雅彦]

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