ラオックス、ザ・コンピュータ館を10月26日にリニューアルオープン
~中小企業、SOHOのIT化を支える街へ秋葉原を変革

ラオックス代表取締役社長
谷口好市氏
10月2日発表



 ラオックス株式会社は、ザ・コンピュータ館のリニューアルを含む、秋葉原地区店舗の大幅な再編を行なう。

フロア構成
 同社の基幹店舗であるザ・コンピュータ館は、既報通り、SOHO/中小企業を対象とした店舗へリニューアルし、10月26日にオープンする。

 1階にはノートパソコン、PDA、デジタルカメラを展示、2階には周辺機器、アクセサリー、3階にはパソコンソフト、4階にはデスクトップパソコン、ディスプレイ、プリンタを展示販売する。

 また5階を「ビジネスIT支援フロア」として、中小企業向けの相談カウンター、SOHO向けシステムの常設デモストレーションコーナーを設置する。従来のネットワーク館で取り扱っていた製品群を、5階フロアを中心に全館に展開するというのが基本コンセプトといえる。さらに、6階にはイベントフロアを設置し、セキュリティ、経営支援、ブロードハンドなどを中心としたイベント・セミナーを開催する。

 一方、これまでザ・コンピュータ館の1階に配置していた書籍売り場は、現在のマック館の場所に「ザ・コンピュータBOOK館」として、国内最大規模のコンピュータ書籍専門店として独立させる。オープンは10月15日。

店舗名は従来通り「ザ・コンピュータ館」 各店舗の位置付け

 またマック館は、中央通り沿いのナカウラ2号店の場所に移転、「現在の5フロアから、地下1階地上5階の6フロア体制となり、事実上、マック館は拡大することになる」(ラオックス・松波道廣取締役)という。オープンは10月12日。

 さらに、現在のネットワーク館をザ・コンピュータOFFICE館として、オフィスサプライ、オフィス家具などの専門店とする。オープンは10月26日。

 同時に、ザ・デジタル館は、11月上旬にブロードバンドとオーディオ・ビジュアルをテーマとしたデジタル生活を提案する店舗構成へと変更する。店内では、30台以上のパソコンでブロードバンドを体験できるようにする考えだ。

 今回のリニューアルにはいくつかのポイントがある。

 第1点目には、ここ数年、年商300億円が上限となっていたザ・コンピュータ館の売上高を、2004年度までに500億円規模にまで引き上げる狙いがある点だ。既存の機器販売に加えて、サービス、ソリューションなどの付加価値型ビジネスを増加させることで、約200億円の上乗せを見込む。

 実は、この売上数値の達成には懐疑的な見方も出ているが、「ザ・コンピュータ館の初年度売上げは60億円であったことを考えると、当時、この店舗が300億円まで拡大するとは、誰も思っていなかった。500億円という数字も同じように見えるかもしれないが、達成できない数字ではない」(松波取締役)と鼻息は荒い。

 第2点目には、リニューアルをソフトバンクの子会社である、ソフトバンク・コマースとの提携によって実施している点である。

 ソフトバンク・コマースの4,000社にのぼる取引先の製品を活用し、中小企業、SOHO向けの店舗構成へと変更させる。中小ソフトメーカー「SIer」を、ラオックスビジネスパートナーとして組織化し、パートナー各社から人的資源を含めた総合支援を行なう体制をつくる。また、ブロードバンドに対応した40種類以上のASPメニューを用意し、100種以上のソリューションプロダクトや、20種類以上のPCサーバー、アプライアンスサーバーなどの取り扱いを行なう。

 エフアンドエムの助成金受給診断制度を取り入れた助成金獲得支援、総務・経理業務支援などのほか、行政や金融機関などの中小企業向け施策や支援などについての情報提供、ソフトバンク・コマースが提供する10万アイテムにおよぶ商品データベースの提供や、IT企業と、ITの導入を予定している企業とを結ぶ、スキルデータベースの提供などを予定している。

 こうした取り組みは、まさに、ソフトバンク・コマースとの提携によって実現されるものであるといえよう。

 第3点目は、今回のリニューアルで、秋葉原全体の流れを大きく変えようという意識が働いている点だ。

 ザ・コンピュータ館は、'90年4月にオープン以来、秋葉原をパソコンの街へと変革させたという実績がある。それが、現在の郊外型パソコン店の流れへとつながっていると、同社では分析している。

 ラオックスの谷口好市社長は、「昭和20年代、組立ラジオ人気による露天商の繁栄に始まった秋葉原は、昭和30~40年代の家電ブーム、昭和50年代の家電全盛期とパソコン黎明期を経て、現在のマルチメディアの街へとつながった。こうした動きは、すべて秋葉原が発信源となり、全国へと広がり、秋葉原は次の新しい商品を模索するという繰り返しだ。今回のリニューアルも、こうした秋葉原の新たな取り組みのひとつになる」と意欲を見せている。

 東京都が掲げる「秋葉原地区まちづくりガイドライン」に則った、新たなIT関連産業の世界的拠点として秋葉原を位置づけるとともに、政府が推進しているe-japan重点計画で、中小企業のIT化が今後の課題となっていることにも注目した展開となっている。

 極論すれば、いまやフィギュアの街、アニメの街という側面が強まっている現在の秋葉原の動きに対して、秋葉原電気街の雄であるラオックスが打ち出した回答が、今回の「中小企業、SOHO向けのITの街」というわけだ。

ソフトバンク・コマース代表取締役社長 宇陀栄次氏
 ソフトバンク・コマースの宇陀栄次社長は、「中小企業、SOHOユーザーのIT化の機運が高まる一方で、どこにいったら相談できるのか、あるいはシステムを手に入れられるのか、といった声が出てきた。こうした問題を解決するのが今回のラオックスの取り組みであり、それに向けて全面的に支援する」と話す。

 秋葉原を中小企業、SOHOのIT化を支える街への変革が狙いというわけだ。

 だが、中小企業、SOHO向けのこのリニューアルが、すぐに結果に結びつくというわけではないのは、ラオックスでも十分承知しているようだ。

 中小企業、SOHO向けとした新生ザ・コンピュータ館において、メーカー自らがコンシューマ向けと位置づける、ソニーのVAIOシリーズの展示販売が継続的に行なわれる予定であることからも、それは証明される。つまり、コンシューマを完全に退けるのではなく、様子を伺いながら、徐々に中小企業/SOHO向けの領域を増やしていくということになりそうなのだ。

 ラオックスの挑戦は秋葉原を変えることができるのか。まずは、年末から年度末までの動きが、ひとつの評価基準となりそうだ。


□ラオックスのホームページ
http://www.laox.co.jp/
【8月1日】ザ・コンピュータ館が中小企業向け/SOHO向けにリニューアル
~秋葉原全体の方向性にも影響
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20010801/laox.htm

(2001年10月2日)

[Reported by 大河原 克行]

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