富士通、3,000億円をかけた大規模リストラを実施
~「経営責任ない」と秋草社長

富士通 秋草直之社長
8月20日 発表



 富士通株式会社は、3,000億円の特別損失を計上して実施する構造改革の全容について発表した。

 「2001年度を徹底した構造改革の年と位置づけ、新たな成長戦略を目的とした構造改革を推進する」(富士通・秋草直之社長)として、全世界で1万6,400人の人員削減を含む、リストラを推進する。

 今回の構造改革は、7月27日に行なわれた第1四半期業績発表の際に明らかにしていたもの。

 プロダクトに関しては、より選択と集中を推進する一方、ゼロ成長を前提とした事業および工場の清算を行ない、「はやりの言葉で言えば、骨太の構造改革をしたい」(秋草社長)とした。

 具体的な成長戦略としては、ソフト・サービス事業による事業拡大を掲げ、全事業部門におけるソフト・サービス事業の加速、インフラ・サービスへの注力を推進する。設備投資に関しても、従来の半導体集中型の投資形態からソフト・サービスを中心にとした投資戦略へと転換することを明言した。

 また、最先端デバイス、光技術、モバイル技術、高信頼性サーバーおよびファイル技術といった富士通が得意とするコアテクノロジー/プロダクトへのリソースの集中、グループとしてのグローバル競争力の強化などを掲げた。

●電子デバイス部門で大幅な削減

 今回の特別損失3,000億円をかけた事業構造改革では、市場全体が過去最大規模の停滞ぶりをみせている半導体分野の再編が中心となった。

 電子デバイス部門では、あきる野テクノロジセンターへの開発リソースの集中、富士通グレシャム工場のAMDとの合弁事業化や国内半導体製造ラインの統廃合、後工程会社の整理統合などにより1,250億円、2,400人の削減を予定。また、国内関係会社の事業のスリム化のほか、PDPに関してはを宮崎工場1番館を停止し、2番館へ集約、LCDに関しては、設計開発を分社化して効率化を図るといった取り組みで200億円、2,700人の削減を図る。

 一方、情報処理グループにおいては、コアビジネスの強化として300億円の構造改革費用を計上しており、具体的には、開発体制の再編としてUNIXサーバー/ファイル開発を富士通主体へと移行、IAサーバー開発のFSCへの移管、プロセッサの開発を担当していた米HAL社の清算、北米におけるソフト事業の強化を図る。

 また、国内工場のスリム化として、サーバー/ファイルの製造拠点を現在の長野、沼津およびPFUの3拠点体制からPFU1拠点に統合するほか、IAサーバーの製造とデスクトップパソコンの製造ラインを統合する。

 さらに、情報処理グループにおける独立ビジネスの選択と集中を目指し500億円を計上、採算性の低いデスクトップ向けHDD事業から撤退するとともに、サーバー/モバイル向けHDDにリソースを集中、同時にシステムプリンタの製造を富士通周辺機へ集約、カラーレーザープリンタ事業のミノルタへの譲渡、スキャナ事業のPFUへの統合、プリント板の国内製造工場の集約などを図る。

 そのほか、通信ビジネスグループでは450億円のリストラ費用を計上、フォトニック、IP、3Gモバイル分野にリソースを集中させるとともに、小山、那須、沼津工場の人員再配置、海外の人員削減を行なう。

 今後の事業拡大の柱となるソフト・サービスグループでは、300億円の構造改革費用を計上、グローバル体制の再編などを推進する。

 これらのリストラ策により、海外1万1,400人、国内9,700人の合計2万1,100人が人員対策の対象となり、そのうち1万6,400人が削減対象となる。

 国内では、工場部門からの配置転換が中心となり、営業/SEの強化に1,400人、製造力の強化に2,100人、特定スキルの別会社化に1,200人、退職に2,500人、外注/請負の削減に2,500人を計画、「人員削減はすべて今年度中に行なう予定」(秋草社長)だという。

●2003年度には4,000億円の利益確保目指す

新たな成長戦略
 富士通では、今回の構造改革によって、2003年度には、営業利益4,000億円を目指す。同時に棚卸資産を半減し、5,000億円規模に削減、また、株主資本利益率(ROE=税引利益/株主資本)は10%以上を目指す。

 「ROEは、10%を維持しないと、事業の拡大や変化への対応力が失われる。また、営業利益4,000億円は、売上げを削減してでもきちっと達成したい数値目標」(富士通・高谷卓副社長)と位置づけた。

 2003年度には、6兆1,000億円の売上高を目指し、そのうち主力となるソフト・サービス事業は2兆6600億円にまで拡大する考え。「ソフト・サービス事業は、情報処理、半導体、通信の各分野にまたがる形になり、こうした売上を含めれば、6割程度はソフト・サービス関連が占めるだろう」(高谷副社長)としている。

 富士通は、第1四半期の決算発表で、大幅な赤字決算となるとともに、期末決算の大幅な下方修正を余儀なくされた。この背景には、富士通の「マーケティングの甘さ」があったといわれる。

 今回の中期経営目標は、高谷副社長が「きちっと達成することを目標にしたもの」というように、読みの甘さ」を許さない姿勢を自ら強いた。「仮に成長がストップしても、市場環境が変化しても、営業利益4,000億円は達成する」というコメントにも強い意志が見られた。

 だが、その一方で、経営責任については、秋草社長自らが「(経営責任は)関係ない」と一蹴する場面も見られた。

 秋草社長は、「数字は数字としてあるが、半導体業界が最悪の事態となっていることが業績悪化の要因。社長責任ではなく、業界として、いまどうなっているのかという理解が必要。責任問題よりも、この事態にひたすら対応していくことが重要だと考えている」とコメント、さらに、「構造改革は、痛みを伴うもの」として、リストラを強力に推進していく姿勢を見せた。

 自らの進退よりも、リストラによる構造改革を推進することが先決とした秋草社長に対する評価は、2003年の利益目標の達成を待つまでもなく、今年1年の人員削減と構造改革の推進ぶりとその成果によって、推し量られることになるだろう。

□富士通のホームページ
http://jp.fujitsu.com/
□ニュースリリース
http://pr.fujitsu.com/jp/news/2001/08/20.html
□関連記事
【8月3日】富士通、PC向け3.5インチHDDの新規開発を中止
http://www0.watch.impress.co.jp/docs/article/20010803/fujitsu.htm
【7月27日】富士通、大幅な下方修正。今年度は赤字転落の見込み
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20010727/fujitsu.htm

(2001月8月20日)

[Reported by 大河原克行]

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