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COMDEX/Fall会場レポート:自作PCパーツ・その他編
時代はデュアルチャネルDDRへ
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SiS655チップセット |
会期:11月18日~22日(現地時間)
会場:Las Vegas Convention Center
すでに前日レポートや会場レポートでもレポートしているように、今年のCOMDEX/Fallは3つあるLas Vegas Convention Centerのホールのうち2つのみを使っており、テロの影響で縮小したと言われる昨年を下回る規模となってしまっていた。
確かに会場が小さくなったこともあり、目につく展示物も減っているが、よく見ていくと「おっ」と思う製品も少なくない。本レポートではそうした会場で見かけた製品をいくつか紹介していこう。
●デュアルチャネルDDRを利用可能なE7205搭載マザーボードが注目を集める
MSIのE7205搭載マザーボード |
Intelは、11月19日にこれまでコードネーム“Granite Bay(グラナイトベイ)”で呼ばれてきたPentium 4用チップセットを、E7205として発表した。
E7205はデュアルチャネルのDDR266をサポート、帯域幅が4.2GB/secになった。Pentium 4のシステムバス533MHzの帯域幅4.2GB/secとマッチすることになり、システムバスやメモリのどちらかがボトルネックとなることはない。
これに対して、現在のPentium 4用のメインストリーム向けチップセットであるIntel 845GEやIntel 845PEでは、メインメモリがDDR333の1チャネル。帯域幅が2.7GB/secで、メモリ側がボトルネックとなってしまい、バランスがとれた状態に比べてパフォーマンスは低下する。
システムバスとメモリのバランスがとれたPentium 4用チップセットとしては、PC1066(1066MHzのDirect RDRAMを搭載したメモリモジュール)をデュアルチャネルで利用できるIntel 850Eがあったが、PC1066の価格がやや高かったことがあり、コストパフォーマンスの点で難点があった。そこで、DDR SDRAMが利用可能でありながら、バランスのとれたE7205の登場が待ち望まれていた。
すでにE7205を搭載したマザーボードはIntel Developer Forumなどでも公開されていたが、今回は実際にマザーボードベンダなどから公開されている。その中でもユニークな製品は、GIGA-BYTE TechnologyのGA-8INXPだ。GA-8INXPはDPS(Dual Power System)というユニークな仕様を採用しており、アドオンでVRM(Voltage Regurator Module)を追加できる。すでにオンボード上には、標準のボルテージレギュレータが搭載されているが、追加のVRMを挿すことにより、2つのVRMを利用して、CPUに対しより安定した電源供給を行ったり(パラレルモード)、2つ目のVRMをバックアップとして利用することができる(バックアップモード)。
GIGA-BYTE TechnologyのGA-8INXP。E7205を搭載したATXマザーボード | DPSを挿入するスロット | 青く光っているのがDPS。電源周りに仕様上の余裕が発生するので、安定して利用できる |
●SiSのデュアルチャネルDDRチップセットのSiS655が初お目見え
ただ、E7205はPentium 4用チップセットでも、ワークステーション向けとして設計されているため、チップセット自体の価格がデスクトップPC用の倍ぐらいと高いこと、また高価な6層基板を利用しなければならないことから、非常に高価になってしまっている。
実際、マザーボードベンダに聞くと、安価なモデルでも200ドル(日本円で約24,000円)程度と説明しているところが多く、100ドル(同約12,000円)~150ドル(同約18,000円)程度のIntel845ファミリーを搭載したマザーボードと比べてやや高価になっている。
そこで、注目を集めているのが、サードパーティのチップセットだ。10月に行なわれたVIA Technology ForumではVIA TechnologiesがP4X600のデモを披露し、大きな注目を集めた。P4X600はデュアルチャネルのDDR333をサポートしており、メモリの帯域幅は5.4GB/secに達する。これにより、533MHzのシステムバスの帯域(4.2GB/sec)を上回り、メモリがボトルネックになることをさけることができる。
そして、サードパーティのもう一方の雄であるSiSも、今回のCOMDEX/FallでSiS655を発表している。SiS655は、SiSのシングルチャネル用チップセットであるSiS648をデュアル対応としたもので、デュアルチャネルDDR333をサポートしている。SiS655のメモリアクセスは、128bitモードの他、コンカレントデュアル64bitモード、シングル64bitモードの3つのモードから選ぶことができる。
128bitモードでは、必ず同じサイズ、同じタイプのDIMMを2枚一組で利用する必要があるが、コンカレントデュアル64bitモードでは異なる容量・タイプのDIMMを組み合わせてデュアルチャネル構成を取ることが可能になっており、性能ではやや128bitモードに劣るものの、柔軟性が確保されている。
このほかの仕様はSiS648と同じで、533MHzのシステムバス、AGP 8X、サウスブリッジはMuTIOL 1Gで接続されるSiS963。4層基板を採用しており、200ドルを切る価格を実現可能という。今回SiSは、動作デモを顧客やプレス向けに行なったほか、マザーボードベンダでもサンプルボードが展示されていた。
なお、SiS655はすでにエンジニアリングサンプルが顧客向けに配布されており、年内には大量出荷版がリリースされる予定となっている。
SiS655のライブデモ。2チャネル構成で動作していたが、1チャネル構成や複数種類のDIMMを混在してのデュアルチャネル動作も可能 | ECSのSiS655搭載ATXマザーボード「L4SS5A」 | MSIのSiS655搭載マザーボード「655 Max」 |
●SiSのXabre600やATIのRADEON 9500などが展示される
グラフィックスカードでの大きな話題は、NVIDIAからNV30ことGeForce FXが発表されたことだが、そのほかにもいくつかの最新製品が展示されて話題を呼んだ。SiSは低価格ながらピクセルシェーダやAGP 8Xなどの最新技術をサポートすることで大きな話題を呼んだXabre400の後継となる、Xabre600を発表した。
Xabre600は、Xabre400の上位バージョンで、基本的にはXabre400と同じ世代の製品だ。ただ、製造プロセスルールは0.13μmに微細化され、コアクロックはXabre400の250MHzから300MHzへと大きく引き上げられている。また、同時にメモリクロックも、Xabre400の500MHz(250MHzのDDR)から600MHz(300MHzのDDR)に引き上げられており、3D描画能力が大きく引き上げられているのが特徴だ。
従来のXabreシリーズでは、バーテックスシェーダがソフトウェアで実現されていたため、3Dアプリケーションによってはピクセルシェーダを認識できず、せっかくのピクセルシェーダが使えないということが少なくなかった。が、Xabre600では、Vertexlizerというバーテックスシェーダのハードウェアエンジンがあるようにソフトウェアで見せかける仕組みが採用されており、そうした問題も解決することができるという。
この他にも、AGPの帯域を最適化するXmartAGP、2D/3Dでコントラストや輝度を自動的に切り換えるXmartVision、2D/3Dでクロックを切り換えて消費電力を押さえるXmartDriveなどの新しい仕組みも採用されている。
なお、Vertexlizer、XmartAGPなどの機能は、いずれもXabreシリーズの新しいドライバのバージョン(Xminator-Ⅱ)で実現されることになるので、従来のXabreを利用しているユーザーでも恩恵を受けることができる。なお、Xabre600はすでに量産出荷がされており、まもなく市場に登場する予定という。
また、GIGA-BYTE Technologyは、ATI TechnologiesのRADEON 9700ファミリーの廉価版となるRADEON 9500を搭載したビデオカードを公開した。
RADEON 9500は、RADEON 9700の廉価版と位置づけられており、DirectX9をフルサポートし、AGP 8Xに対応している。詳細は明らかにされていないが、おそらくコアやメモリなどのクロックをRADEON 9700よりも下げることで廉価版としたシリーズと考えられている。
GeForce4 Tiシリーズでも、コストパフォーマンスではTi4200などの低いクロックのバージョンが優れており、人気も高い。そうした意味ではRADEON 9500もそうしたポジションの製品として人気を得る可能性が高く、注目したい。現時点では、出荷時期、価格などは未定とされているが、ATIはRADEON 9700シリーズの発表会において9500を第4四半期に出荷するとしており、まもなく出荷されると考えていいだろう。
Xabre600、Xabreシリーズの最上位モデルで、コア300MHz、メモリ600MHzで、3D描画能力が向上している | ECSのXabre600搭載ビデオカード | GIGABYTEのRADEON 9500を搭載したビデオカード。RADEON 9700の廉価版となる |
●4X書き込みが可能なDVD+RWドライブをリコーとTDKが展示
リコーとTDKは、4倍速の書き込みが可能なDVD+RW/+Rドライブを展示した。リコーブースのパネルによれば、展示されていたドライブはDVD+RW、DVD+Rに4倍速で書き込みが可能になっており、バッファアンダーラン防止機能としてJustLinkをサポート、OSから直接DVD+RW/CD-RWに書き込みが可能になるMt.Rainier仕様をサポートしているという。製品名などは今のところ未定で、展示されていたのはOEM向けであるという。
また、TDKのindiDVDは、リコーと同じくDVD+RW、DVD+Rに対して4倍書き込みが可能になっており、CD-Rへの書き込みは16倍、CD-RWへの書き込みは10倍、DVDの読み込みは16倍、CD-ROMの読み込みは32倍となっている。パネルには「JustLink」のロゴがあることから、バッファアンダーラン防止機能のJustLinkに対応していると考えていいだろう。なお、両製品とも出荷時期・価格に関しては未定で、日本での発売も未定であるという。
リコーの4倍書き込みが可能なDVD+RW/+Rドライブ。動作中のデモは公開されていなかった | TDKの4倍書き込みが可能なDVD+RW/+Rドライブ“indiDVD” |
このほか、リコーのブースではDVD+RW/+Rドライブ(2.4倍、Mt.Rainier対応)の12.7mm厚のノートPC向けスリムドライブ、松下電器のブースではDVD-Multiに対応した12.7mm厚のスリムドライブなどが展示された。ノートPCでは、すでにDVD-RWドライブが製品化されているが、DVD+RW/+RドライブやDVD-Multiドライブの投入も期待されており、来年にはこうしたドライブを搭載したノートPCを入手できそうだ。
リコーの12.7mm高のスリム型DVD+RW/+Rドライブ。書き込み速度は2.4倍 | 松下電器産業やTEACなどが公開したスリム型DVD-Multiドライブ |
●ついにディスプレイなしバージョンも登場、まだまだ続くデスクノートブーム?
デスクトップPCのコンポーネントを採用することで価格を安価にした、いわゆる“デスクノート”を最近よく見かけるが、その火付け役でもあるECSは、デスクノートをさらに進化(?)させた製品を展示した。それが写真のディスプレイなしデスクノートだ。
乱暴にいってしまえば、ノートPCからディスプレイをはずして、本体部分だけにした製品で、既存のアナログディスプレイに接続して利用することになる。車社会の米国では、やや大型のデバイスでも十分ポータブルな製品となるので、例えば会社と家にディスプレイだけをおいて、このような製品を持ち歩いて使うという使い方も十分考えられる。日本でこういうデバイスが受けるかどうかはかなり疑問だが、ユニークな製品とは言えるだろう。
韓国のPROMEDIAは、さらにデスクノートを推し進め、すべてのコンポーネントをデスクトップPCのもので作ったという製品を公開した。
デスクノートといえども、CPUがデスクトップPCのものを利用しているものの、メモリモジュールはSO-DIMM、HDDは2.5インチ、グラフィックスチップはNVIDIAのGeForce2 GOなどモバイル系のコンポーネントを利用していることが多い。
ところが、PROMEDIAのInnoDeskでは、メモリモジュールはデスクトップPC用の184ピンのDIMM、HDDは3.5インチ、ビデオチップはデスクトップPC用のチップセット内蔵と、完全にデスクトップPCのコンポーネントを利用して作られている。このため、コストはデスクトップPCとほぼ同じで、デスクノートよりもさらに安価に作ることができるという。サイズ的にかなり大きくなってしまい、日本では受け入れられないかもしれない。が、米国のユーザーはかなり気になるようで、多くの来場者が足を止めていた。
ECSが公開した、ディスプレイをなくしてデスクノート。すでにノートといえないが、車社会の米国ではポータブルなコンピュータとして受けるかも? | PROMEDIAのInnoDesk。液晶以外はすべてデスクトップPC向けのコンポーネントを利用している |
□COMDEXのホームページ
http://www.comdex.com/fall/
□関連記事
COMDEX/Fall 2002レポートリンク集
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2002/link/comd02_i.htm
【11月21日】COMDEX Fall 2002展示会場レポート
IEEE 802.11g関連製品が多数展示
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2002/1121/comdex08.htm
【11月18日】COMDEX Fall 2002前日レポート
昨年とは一転、のんびりムードで準備が進む展示会場
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2002/1118/comdex01.htm
【11月19日】SiS、Hammer対応チップセット「SiS755」
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2002/1119/sis.htm
【10月10日】VIA Technology Forum 2002レポート
VIAが2002年~2003年のロードマップを公開
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2002/1010/vtf2.htm
【9月13日】IDF2002 Fallレポート:展示会場編
Placer、Granite Bay、Intel845PEなど最新チップセットを搭載したマザーボードが展示
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2002/0913/idf06.htm
(2002年11月22日)
[Reported by 笠原一輝@ユービック・コンピューティング]
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