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COMDEX Fall 2002


AMD ヘクター・ルイズ社長兼CEO基調講演
“Athlon 64”でクライアントにも64bitをもたらす
~NVIDIAがシステムバス400MHz版のAthlon XPをデモ

AMDの社長兼CEO ヘクター・ルイズ氏

会期:11月18日~22日(現地時間)
会場:Las Vegas Convention Center



 AMDのヘクター・ルイズ社長兼CEOはCOMDEX Fallの基調講演に登場し、これまでコードネームClawHammerと呼ばれてきたクライアント向け次世代Athlonについて、デスクトップ向けをAthlon 64、モバイル向けをモバイルAthlon 64と名付けたことを明らかにした。

 また、基調講演の中では、人気の3DゲームUnreal Tournament 2003の64bit版を用意していることを明らかにし、2003年にユーザー向けにダウンロードで対応することなどを明らかにした。初めてこうした大きなイベントの基調講演に登場した、ルイズ氏は最後に登場した元ガンズ・アンド・ローゼス(GUNS N'ROSES)のギタリストであるスラッシュ(SLASH)氏と、一緒に「Knockin' On Heaven's Door」の賛歌で“64bitのテーマ”をセッションするなど、普段は堅いイメージで鳴らす同氏らしからぬ華やかなステージとなった。



●クライアント向けの次世代Athlonは64bitの名前を冠したAthlon 64

Athlon 64のロゴ

 今回の基調講演で最も注目を集めたことは、これまでコードネームClawHammer、さらには次世代Athlonの名前で呼ばれてきた、同社の次世代クライアント向けCPUが、“Athlon 64”というブランドネームに設定されたことが明らかにされたことだ。

 「これまでAMDはPCゲーム業界に対して大きな関わりを持ってきたが、今後もそれを維持していく。そして今日、発表するAthlon 64により、ゲーム業界に対してさらなるパワーをもたらすことができるだろう」と、64bitの可能性がPCゲーム業界に新たな可能性をもたらすと述べた。

 さらに、有名な3Dゲームシリーズ「Unreal」の開発元である、Epic GamesのCEO ティム・スゥイニィー氏と副社長のマーク・レイン氏を壇上に呼び、同社の最新3DゲームUnreal Tournament 2003を64bit版にポーティングしたバージョンを公開した。実際に、x86-64で64bitモードを利用するには、OSが64bitをサポートしていなければならないため、OSにはSuSE Linuxの64bit版が利用されている。

 Epic Gamesのスゥイニィー氏によれば、Athlon 64がリリースされたあと、64bit版のUnreal Tournament 2003がアップグレード版としてダウンロード可能になることが明らかにされた。

Epic Gamesのティム・スゥイニィー氏とマーク・レイン氏は、Unreal Tournament 2003の64bit版をデモ。64bitのSuSE Linuxで動作している。Athlon 64のリリース後に、アップデート版をダウンロードできるという



●クライアントでも64bitのメリットをアピールしていく方向性を打ち出す

 今回の“Athlon 64”というブランドネームは、単にブランドネームに64がついたというだけではなく、AMDがクライアントにおいても64bitのメリットを訴えていく方向性を打ち出したという点で注目しなければならない。

 これまで、AMDはクライアントにおける64bitの用途や可能性に関して特に語ってこなかった。AMDがx86-64について語るときには、サーバーやワークステーションがメインのトピックで、一部アプリケーションについて(例えば音声認識など)についてはメリットがあるかもしれないが、将来的な話だとしていた。2003年という短い期間にクライアントでも64bitのメリットを、という姿勢を明確にしたのは今回が初めてだ。

 Intelはすでに様々な価格帯にHyper-Threading Technology(以下HTテクノロジ)のPentium 4を提供することをOEMメーカーに対して明らかにしている。詳しくは後藤弘茂氏のレポート“Intel、来年第2四半期にFSB 800MHzのHT対応版Pentium 4を投入”を参照していただきたいが、2003年の第3四半期にはHTテクノロジ、800MHzシステムバス、デュアルチャネルDDR400の組み合わせで性能面で大攻勢をかける。

 こうしたIntelの新しいロードマップは、AMDのAthlon 64を恐れているのではないかという見方をする業界関係者は少なくない。つまり、実際にメリットがある、ないに関わらず、現在の32bitの“32”という数字の倍となる“64”という数字を冠する64bitに対して警戒しているのではないだろうか。

 PC業界において、数字が持つマジックを一番知っているのはIntelだ。実際にあまりメリットがなかったとしても、エンドユーザーは1.7GHzよりも1.8GHzが優れていると思い、PC100よりもPC133の方がメリットがあると考える。となれば、AMDが“64”というのを全面に押し出せば、Intelとしてもそれに対抗していく必要がでてくるが、今のところIntelは64bitという武器は持っていないわけで、他の武器で対応する必要がある。それがHTテクノロジであり、800MHzのシステムバスであり、デュアルチャネルDDR400であるわけだ。そうした意味で、AMDが64bitを前面に押し出していくことは、Intelにとって一番嫌なシナリオであり、AMDにとっては優れたシナリオであるといえるだろう。

 ただし、課題もある。例えばOSだ。すでに述べたように、x86-64を64bitモードで利用するには、OSが64bitに対応している必要がある。しかし、現在のクライアント用OSであるWindows XPはもちろん64bitに対応しておらず、すぐ64bitに対応させるというのも難しいだろう。このため、今回のデモも64bitのLinuxを利用して行なわれたわけだが、コンシューマにLinuxをデュアルブートでインストールしてくれ、というのは少々難しい。

 そこで、AMDは、ハイエンドユーザーで、そうしたことも難なくこなす可能性が高い3Dゲームユーザーに的を絞り、マーケティングしていくことに決めた、おそらくそういうこではないだろうか。

 対Intelという意味では、非常に正しい戦略であるといえ、今後も対応するタイトルが増えることを期待したい。




●NVIDIAはシステムバス400MHzのAthlon XPとGeForce FXの組み合わせをデモ

 また、昨日GeForce FXを発表したNVIDIAのジェンスン・フアン社長兼CEOが登場し、前日発表したばかりのGeForce FXを利用したデモを行なった。

 デモは、nForce2とGeForce FXの組み合わせで行なわれたが、システム構成には注目だ。というのも、デモが終わったあとで、NVIDIAのハン社長は「今回のデモは400MHzのシステムバスを利用して行なわれている。20%の性能向上があり、もしAthlon XP 2800+と同じクロックで利用すれば、3200+に相当することになるだろう」と述べ、会場から大喝采を受けていた。

 ただ、これが直接Athlon XPのシステムバス400MHz版のリリースにつながるかと言えばそうではないようだ。基調講演後の記者会見でルイズ氏は「具体的なプランがあるわけではない。ただ、今日のハン氏のデモを見てもわかるように、ほとんど問題なく動作していることは事実だ。Athlonのヘッドルームは高いところにある」と、技術的な可能性を言及するにとどまり、具体的なプランは特にまだないというのがAMDの基本姿勢のようだ。

 しかし、システムバス333MHzの時も、NVIDIAはnForce2の発表会で、システムバス333MHzの可能性に言及し、その後333MHzはサポートされた。となれば、今回も400MHzのシステムバスが実現される可能性というのは、かなり高いのではないだろうか。

 折しも、Intelは2003年の半ばにメインストリーム向けのチップセットでDDR400のサポートを決めている。となれば、それにパフォーマンス面で対応するために、システムバス400MHzをサポートし、DDR400との組み合わせでAthlon XPのパフォーマンスアップを目指すというシナリオが描かれていても不思議ではない。そうした意味で、注目すべきデモだったということができるだろう。

NVIDIAのジェンスン・フアン社長兼CEOが登場し、Athlon XP+nForce2+GeForce FXのデモを行なった。しかも、システムバスの設定は400MHzになっているという



●ヘクター氏らしからぬ明るい演出で、苦境を吹き飛ばせることができるかも

 基調講演の最後には、ヘクター氏自らギターを握り、“AMD~64”という歌詞の歌を披露した。普段は、まじめそうに見えるヘクター氏だが、大学時代には学業そっちのけでバンド活動に勤しんでいたそうで、なかなか堂々たるセッションを披露した。しかも、途中から、Paradise Cityなどのヒット曲で日本でも有名なガンズ・アンド・ローゼス(GUNS N'ROSES)の元ギターリストであるスラッシュ氏が登場し、さらに場を盛り上げた。

 先週、全従業員の15%にあたる2,000人のリストラを発表するなど、決して明るい話題だけではない同社だが、今回の基調講演は内容も盛りだくさんで、来場者に明るい未来を見せることができたという意味では、かなり成功した講演だったと言っていいのではないだろうか。この苦境をAMDが乗り切ることができるか、それはAthlon 64がOEMメーカーに、そしてエンドユーザーにどれだけ受け入れられるか、にかかっていると言えるだろう。

あのヘクター氏が自らギターを持って演奏。会場は大きく盛り上がった 途中から、元ガンズアンドローゼスのスラッシュ氏が登場。さらに会場は盛り上がった 前CEOのジュリー・サンダース氏も会場で講演を聴いていた

□COMDEX Fall 2002のホームページ(英文)
http://www.comdex.com/fall/
□関連記事
【11月20日】AMD、「ClawHammer」を「Athlon 64」と命名
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2002/1120/amd.htm
【11月15日】米AMD、全世界の従業員2,000人のリストラを発表
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2002/1115/amd.htm

(2002年11月20日)

[Reported by 笠原一輝@ユービック・コンピューティング]


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