ワコム、ペンタブレット技術説明会を開催
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株式会社ワコム常務執行役員 山田正彦氏。手にしているのはペン検出センサー(左)と液晶パネル |
9月13日開催
株式会社ワコムは13日、同社のペンタブレット技術および、Tablet PCに対する取り組みに関する説明会を開催した。
Tablet PCは、マイクロソフトが11月7日に発売する「Windows XP Tablet PC Edition」を搭載する、ペン入力デバイスや無線LANなどを備えた小型PC。基本的にはマウスやキーボードを必要とせず、ペン入力のみで操作が可能になる。8月には各PCベンダから試作機も公開された。
Tablet PCに採用されるペン入力デバイスは、東芝、NECカスタムテクニカ、日本エイサーなど、Tablet PCベンダの80%に相当するメーカーに対してワコムが提供するという。
説明会では株式会社ワコム常務執行役員の山田正彦氏が挨拶し、「PCは表現、コミュニケーションのためのツールへ進化し、常に持ち歩く道具となってきている。だが、モバイル環境ではキーボード+マウスという形態よりも、ペン入力のほうがさまざまなシーンでの利用に適している」と、モバイルPCのTablet PCへの移行は自然な流れであることを強調した。
同社はTablet PCの開発について、マイクロソフトと3年ほど前から技術協力をしてきたという。具体的にはハードウェアの設計からドライバ、インクデータ(ペンの描画データ)の定義、アプリケーションでの利用方法など、ペンタブレットデバイスに関するさまざまな技術協力をしているという。
液晶パネルとペン検出センサー(手前) | より小型のペン検出センサー。上はPDAサイズのもの |
また、新たにTablet PC用の低消費電力チップを開発したほか、ペン検出センサーをモジュール化し、さまざまなサイズの液晶に対応できるようにしたという。現時点では8.4/10.4/12.1型の3サイズが提供されている。
Tablet PCで採用されているタブレット技術は「Wacom Penabled Technology」と名付けられ、ペンに乾電池などを内蔵しない、電磁誘導方式を採用している。電磁誘導方式はワコムのペンタブレット製品にも採用されており、低消費電力、小型化など、さまざまなメリットがあるという。
従来のPDAなどで採用されているタッチパネル式センサーでは、液晶パネルの前面にセンサーを貼り付ける形態をとるため、液晶パネルの表示品質が劣化する。これに対し電磁誘導方式では、液晶パネルの背面にセンサーシートを貼り付ける仕組みのため、液晶画面品質の劣化はおきないとしており、今後はPDAなどの画質向上にも必要不可欠な技術という。
なお、Tablet PCに搭載されるタブレットデバイスについては、同社製品に従来から採用されているものと同等で、筆圧も512レベルまで検出可能。傾き検出機能など、グラフィックユーザー向けに特化した機能などは省略されているものの、ハードウェア的には対応可能という。また、将来的にはペンにIDをもたせ、特定のユーザーのみが操作できるようにする機能なども持たせることもできるという。
同社はペン入力デバイスを開発するにあたって、「ペンを使って紙に書く感覚」の再現に重点を置いているという。特に日本語は字画が多く、滑らか過ぎるパネル上ではうまく文字を書くことができない。そのため、ペンと液晶パネルとの自然な摩擦感を再現することが重要で、液晶表面のシートは常に開発を続けているという。山田氏は、「ペン入力デバイスは、最終的には回路よりも素材進化が重要になり、デジタル素材革命が起こっていくだろう」とも語った。
タブレットは回路技術よりも素材の開発が重要になる | タブレットは医療現場にも導入されている。左は従来の電子カルテ。右はタブレットを利用した「アナログ的な」電子カルテ。PCの専門知識が無くても従来の手書きのカルテと同様の作業で電子化できるのがメリット |
□ワコムのホームページ
http://www.wacom.co.jp/
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【8月28日】マイクロソフト、Windows XP Tablet PC Editionを日米同時発売
~富士通製Tablet PC試作機を公開
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2002/0828/ms.htm
(2002年9月13日)
[Reported by kiyomiya@impress.co.jp]
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