日立、ノートPC水冷システムを国内でも公開
~第3四半期にPrius、FLORAとして製品化の予定

3月14日



 株式会社日立製作所は14日、IDFで公開したノートPC向け水冷システムを国内で報道陣向けに公開した。

 公開された試作機は、IDFでの公開と同様にA4オールインワンノートとB5サブノート。CPUはA4機がモバイルPentium 4-M 1.7GHz、B5機がモバイルPentium III(クロック等は不明)とのこと。このうち、A4オールインワンノートに水冷システムを搭載した製品を、第3四半期に日立のノートPC「Prius」、「FLORA」として発売すると発表した。

A4オールインワンノート A4オールインワンタイプの水冷システムがわかるスケルトンモデルを液晶パネル裏から見る。銀色の板が放熱板で、この裏側に冷却液の配管が通る リザーブタンク周辺。タンクはこの位置にある必要はないが、試作機では水冷であることを強調するために目立つところにつけた。実際の製品では位置、形状とも変更される可能性が高い
ヒンジ部にはフレキシブルチューブを採用 底面。とくに変更点はないように見える 使用時に水冷であることを意識させるものはなにもない
B5サブノートの実験機。リザーブタンクは本体側にあり、液晶パネル裏には配管と放熱板のみ。製品化は、水冷システムのコストが下がってから検討するそうだ 黒い部分がポンプ。ポンプの向こう側にリザーブタンクがあるB5機では放熱板と配管がパネル裏に「アドオン」されたように見える。そのため、厚みもベースとなったB5機(FLORA 220FX)よりも厚い
B5機のヒンジ部分。フレキシブルチューブになっている 底面(バッテリーが外されている状態)。こちらも特に変更は無いように見える。 B5機でWindows XPを起動

●静音化を目的として開発

篠崎雅継 事業部長 源馬英明 事業企画室長

 発表会では日立製作所 インターネットプラットフォーム事業部の篠崎雅継 事業部長が水冷システム開発の経緯を、源馬英明 事業企画室長が水冷システムの詳細を説明した。

 これによると、このシステムの開発が始まったのは約3年半前で、目的は「TDP(Thermal Design Power:熱設計消費電力)30W以上の高性能CPUを搭載し、かつ静かなPCを実現すること」。高性能CPUを冷却するためのファンの騒音は、図書館や病院などの公共の場で周囲に迷惑をかけるほか、大量のPCが一斉に稼動する学校などでも問題になるという。

 水冷システムの採用により、26db以下の静音性が確保できるという。


●PC以外への応用も

 水冷システムは静音化のほか、ノートPCディスプレイ背面から廃熱するためにパームレストが熱くならない、CPU以外のデバイスも一緒に冷却できるといった効果もあるとした。

 また、冷却システムのレイアウトが空冷より自由になるため、デスクトップPCやブレードサーバー(超高密度サーバー)のほか、PDP(プラズマディスプレイ)やプロジェクターの冷却システムとしても応用可能とのこと。IDFでの発表後、PCよりも応用製品への引き合いが強かったという。なお、日立もデスクトップPCへの応用を検討中だが、その際、電源の空冷ファンをどうやって無くすか、が問題になるという。

●耐用年数は5年以上

 冷却液に不凍液を使っており(そのため、正確には水冷でなく「液冷」と呼ぶ)、A4試作機の場合、冷却液の総量は60ml、リザーブタンク容量は50ml、流量は1ml/sec。配管の総延長は1.5m、径は2mm。

 タンクからポンプで送り出された冷却液は、ステンレス製の配管を通ってCPUに装着された純アルミの水冷ジャケットを通過後、アルミ合金の放熱板を通ってタンクに戻る。CPUを冷却して水冷ジャケットから出てきた冷却液の温度は、室温35度のときに70~75度まで熱せられているが、放熱板を通過してリザーブタンクに戻るときは50~55度までに冷えている。実際の使用環境は室温20度程度となるため、そのぶんだけ冷却液の温度も下がる。

 配管のうち本体と液晶パネルをつなぐヒンジ部分はフレキシブルチューブを使用、この部分からごく少量の冷却液が蒸発するが、これをカバーするためにリザーブタンクを設けた。蒸発量は湿度0%の環境で5年間連続運転して25mlで、この状態でも問題なく稼動する「メンテナンスフリー」を実現しているという。なお、ディスプレイの開閉耐久性は2万回としている。

会場に貼られていた説明。左から2枚目ではA4機のポンプの位置などがわかる。左から3枚目下は、液晶パネル裏の構造。LCDパネルと配管、放熱板をプラスチックのパーティションで区切り、安全性を確保している。

 動作温度は0~40度、保管温度は飛行機の貨物室や炎天下の自動車内に置かれることを考慮して-20~60度。湿度0%で44,000時間(5年)の連続運転に耐えるが、実際の使用環境を考慮すると、実質の耐用時間は長くなるという。

 水冷システムでは、ノートPC全体の重量や消費電力が空冷と変わらないとしているが、コストは1.5~2倍になる。このため、台湾や日本の部品メーカーに技術を供与し、大量生産によってコストを下げるという。すでに日立電線株式会社との契約が済んでおり、同社から水冷モジュールが発売される予定。このモジュールを利用したPCを、日立以外からリリースすることも可能となっている。

□日立製作所のホームページ
http://www.hitachi.co.jp/
□日立電線のホームページ
http://www.hitachi-cable.co.jp/
□関連記事
【2月26日】【本田】第142回:A4ノートPCの常識を変えるノートPC向け水冷システム
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2002/0226/mobile142.htm

(2002年3月14日)

[Reported by tanak-sh@impress.co.jp]

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