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AMD次期CEOのヘクター・ルイズ氏来日
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ヘクター・ルイズ社長兼COO |
2月13日
今年の春にジェリー・サンダース会長兼CEO(最高経営責任者)の後を引き継ぎCEOに就任する予定のヘクター・ルイズ社長兼COO(最高執行責任者)が来日、今後のAMDの方針を説明する記者会見を13日に都内のホテルで開いた。この中でルイズ社長はUMCとの提携や、Alchemy Semiconductorの買収に関して説明した。
●3つの基本要素“コンピューティング、ストレージ、コネクティビティ”が今後のAMDの戦略
日本AMDの堺和夫社長に紹介され登場したルイズ氏は、今後のAMDの基本方針を「3つの基本要素」というキーワードで表現した。その基本要素とは「“コンピューティング”、“ストレージ”、“コネクティビティ”の3つ」(ルイズ氏)であり、それぞれ既にAMDの収益の柱となっているx86プロセッサ(Athlon XPやDuron)事業、フラッシュメモリ事業、そして先日Alchemy Semiconductorを買収したことで手に入れた組み込み向けMPU事業の3つを意味している。今回はこの3つのうち、主に“コンピューティング”つまりx86プロセッサ事業と“コネクティビティ”つまり組み込み向けMPU事業について焦点が当てられ、説明された。
x86プロセッサ事業に関しては、もはや説明するまでもないだろう。'99年にリリースしたK7コアは好調に売り上げを記録しており、昨年の10月にリリースしたAthlon XPの成功もあいまって、調査会社のMercury Research and SIAによれば2001年はPC向けプロセッサ市場の20.4%というシェアを獲得するに到っている。ルイズ氏によればさらにシェアを獲得し、30%を超えることが当面の目標であるという。「2002年の目標としては、デスクトップPC市場における好調さを維持し、ノートPCやサーバー向けにおいても市場を獲得していくことが目標となる」(ルイズ氏)というのも既定路線どおりで、今年には製造プロセスルールを0.13μmに微細化した「Thoroughbred」、さらにはアーキテクチャの改良や、64bit命令セットを搭載した「Hammer」の登場によりこれらを実現していくということだ。
●UMCとのジョイント工場は2005年の半ばには稼動させる
以前、日本AMDの社長である堺和夫氏にインタビューした時に「うちはシェア30%を実現する準備はできている。具体的にはそれだけのプロセッサを製造するキャパがあるということだ」というお話を伺ったことがある。その時点では、ドイツにあるFab30、米国テキサス州オースチンにあるFab25でプロセッサを製造していたが、Fab25では0.13μmのプロセッサは製造しないため、別途なんらかの手を打つ必要があった。その時点では具体的な回答はなかったが、そうした予告を具体化したのが今回のUMCとのジョイントと言える。
UMCとのジョイントに関しては既に後藤氏のコラム( http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2002/0208/kaigai01.htm )でも触れているので、ここでは簡単に説明するに留めるが、今回の契約で重要な点は以下の3つである。
(1)UMCとの共同で合弁会社(AU Pte Ltd.)を設立し、シンガポールに300mmウェハに対応した工場を建設、所有、操業する
(2)UMCと新しいプロセス技術を開発する
(3)UMCの台湾工場でK7世代のファウンダリ契約を結ぶ
この契約に関してルイズ氏は「300mmウェハの世代では柔軟性がなによりも重要だ。実際、300mmウェハのFabを立ち上げるには物凄いコストが必要になり、それを出せるのはIntelぐらいなものだろう。だが、こうしたジョイントにより大幅にコストを削減することができる」と述べ、そのコストメリットを強調した。
また、ルイズ氏は新しい工場の稼働は0.065μm世代からとなり2005年半ばごろとなることを明らかにした。また「0.13μm、0.095μmに関しては、これまでどおりモトローラと共同で開発していく。0.065μm以降はUMCと共同で開発していく」と述べた。
AMDにとって今回のUMCとの契約は、来るべき300mmウェハ時代に乗り遅れないようにするという「将来への投資」という意味でも、ファウンダリ契約によるK7コアの生産キャパの確保という「近い将来問題になるであろう事への対処」という意味でも「30%の市場シェア」を実現するための重要な武器となるだけに、ルイズ氏が非常に力を入れて説明していたのが印象的だった。
●Alchemy Semiconductorの買収によるメインターゲットは日本市場だ
引き続きAlchemy Semiconductorの買収に関する説明を行なった。ルイズ氏はその理由を「インターネットアクセスデバイスなどの市場は、半導体業界にとって潜在的な市場だからだ」と説明した。現在はPCだけが非常に目立っているが、今後は携帯電話、インターネットアプライアンス、ホームゲートウェイ、ホームサーバーなどいわゆる「デジタル家電」と言われる機器の需要が高まると見られている。つまり、非常に高い成長が期待できるジャンルである、と言えるのだ。
そうした背景もあり、IntelはStrongARMを旧DECから買収し、XScaleマイクロアーキテクチャとして発展させているし、その他の半導体メーカーもARMやMIPSのアーキテクチャに基づいた組込用MPUをリリースしている。その市場にAMDも殴り込むために、MIPSアーキテクチャに基づいた組込用MPUをリリースしているAlchemy Semiconductorを買収したというわけだ。
特に日本では、前述のようなデジタル家電がもっとも受け入れられやすい市場と見られていることもあり、「日本市場における浸透に力を入れていきたい」(ルイーズ氏)と強調した。
●Yamhillはx86-64戦略が正しかった証明である
なお質疑応答では、先日San Jose Mercury Newsが1月24日付で報じたIntelの64bit命令セット「Yamhill Technology」が実際に投入された場合の影響は? という質問も出たが「その件に関しては、そうした報道があったことは承知しているが、Intelが公式に認めたわけではないので憶測の域を出ない。が、仮にそれが事実だったとすれば、それは当社のx86-64が正しかった事の証明であり、既に当社には1年以上のリードがある」(ルイズ氏)と述べ、64bitの命令セットではAMDが1年以上先行しているので問題ないという見解を明らかにした。
□日本AMDのホームページ
http://www.amd.co.jp/
□関連記事
【海外】MIPSコアと、UMCと提携した300mmウエーハの新Fab
~明確になったAMDの次の次の手
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2002/0208/kaigai01.htm
【海外】IntelがIA-32の64bit拡張「Yamhill」を開発している理由
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2002/0131/kaigai01.htm
(2002年2月14日)
[Reported by 笠原一輝@ユービック・コンピューティング]
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